改造スライムと転生スライム   作:黒井政人

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 新年あけましておめでとうございます。
 去年はたった一話しか投稿出来ず申し訳ありません。
 これからはもう少し頑張ります。



手伝い

 

 武装国家ドワルゴンから逃げるように、帰路に着いてから三日が経ち、オレたちの村に到着した。村で留守番していたホブゴブリン達はオレたちが到着すると、まずオレの人型の姿に驚いた後、盛大な歓声を挙げてくれた。(その反応を見て、「そう言えばこいつらにはオレの人型の姿を見せていなかったな」と今更ながら思ったのは内緒だ)

 ドワーフ達には既にオレらのことを話していたので、村の連中を見てもそこまで驚かれることもなく、ホブゴブリン達もリムルが連れて来た人たちということで、双方とも受け入れてくれている。

 

 リムル達の周囲がお祭り騒ぎとなっているのを機に、この村の守護を命じていたデモンスペーディオの下に移動する。すると、デモンスペーディオはオレに軽く頭を下げ、報告を始めた。

 

 

「キョウム様ガ旅立ッテカラ特ニ異常ナシ」

「了解。念の為にお前の記憶を覗かせてもらうぞ」

「承知」

 

 

 短いやり取りが終わると、デモンスペーディオの姿は消えてオレのリアクターの中に肉体と魂が戻ってくる。

 

 

 ブレイクワールドの魔物で魔物使役者(モンスターマスター)と契約を交わした者は、基本的にリアクター内のマスターが管理している空間で過ごしており、戦闘に参加するメンバー以外は基本的にその空間から出入りしている。

 そんな機能をマスターは長い年月をかけて改良を行い、今では契約を結んでいない相手でもリアクターに収納することが出来るようになった。そのおかげで、本来は“オレ達の(マスター)と契約を交わしている魔物”であっても、オレのリアクターで管理して他世界に連れて行くことができるのだ。

 といってもこれが許されているのは、マスターからリアクターを授けられ、なおかつマスターから配下を連れていく許可を得られた者のみ。故に、今のところ両手で足りる程度の奴しかいない。

 

 

 デモンスペーディオを回収して記憶を探ってみるが、特別気になることはない。強いて言えば周りのゴブリン村から何名かのゴブリンが来たぐらいだな。こちらは専門外なのでリムルに任せよう。

 

 デモンスペーディオの処理を済ませたオレがリムル達のところに戻ると、ちょうどユメがホブゴブリン達(とついでにテンペストウルフ)にドワーフ達の紹介をしていた。

 

 

「……ということで、カイジンとガルム、ドルド、ミルドの四人にはこれからお世話になるから、ちゃんと仲良くやってね!」

「ハハッ‼」

「カイジン達も頑張ってよ? 最初は慣れないかもしれないけど、みんないい子だからさ。困ったらワタシやリムルに頼ってね!」

「ハハハ、気にすんなユメ嬢。そこまで心配してくれなくてもすぐ慣れるだろうからな」

 

 

 ユメの心配を笑い飛ばすようにそう言ったカイジンに、思わずオレも苦笑してしまう。

 いくつもの世界を旅してきた感覚で言えば、魔物は基本的に悪という考えが根付いている場合が多く、この世界でも例外ではない。ドワーフ王国で調べた資料にも魔物は絶対悪として根絶すべきだという宗教もあるようだしな。

 それなのに、亜人という枠にも該当しないような魔物との共生をなんの問題もないという風に言えるのはすごいことだ。世の中全員がこんな感じなら、ユメもいろいろ演じる必要がなくなるんだろうな。まあ、大半はユメが色々警戒しすぎているだけだと思うが……

 

 これから世話になるドワーフの紹介を終えた時、リグルドに連れられていたリムルが戻って来た。見るからに面倒ごとが起きたという感じで、大体の予想はできるが一応聞いてみる。

 

 

「ようリムル、随分とお疲れのようだが、なんかあったのか?」

「ああ、キョウムか……実はな、ヴェルドラが居なくなった影響でいろんな集落からゴブリンがやって来てたんだが」

「……縄張り争いとかそういうのか。だがまあ、人口が増えただけならめでたいんじゃないか?」

「それはそうなんだが……数がな」

 

 

 リムルがそういうので、『万能感知』に意識を向けてみると……総勢五百匹くらいのゴブリンがいた。

 基本的に完全な弱者には興味がないので、索敵範囲にリムルを下回るような弱者が何人居ようが気にしていなかったんだが……確かにかなりの人数だな。全てを受け入れるとなったらオレ達の村も大所帯となる。

 

 

「ああ、確かにあの数だったら今住んでるところじゃスペースが足りないし、名付けをするのも大変だな」

「そうなんだよ。ということで二人共。悪いんだけど、名付けを手伝ってくれないか?」

 

 

 そう言ってリムルは、オレと面白半分で話を聞いていたユメに協力を求めてきた。

 手伝ってやりたい気持ちはあるんだが……残念ながら事情があるんだよな。

 

 

「わりいな、リムル。オレらは名付けに参加するわけにはいかないから頑張れ」

「応援するよ!」

「……分かった」

 

 

 そう言うとリムルは渋々といった感じで、引っ越し先の相談のためリグルドや建築関連の仕事に明るいミルドの下へと向かう。そして数十分後にこちらに戻ってきて名付けを始めた。

 

 

 オレたちが名付けをしない理由は何が起きるか分からないからだ。

 オレたちは外の脅威に対してだったらいくらでも対処することが出来るが、対象を護衛するという仕事で一番怖いのが内部からの裏切りだ。リムルの名付けを見る限り、名付け主(リムル)への忠誠心はかなり高いみたいだし、リムルの友人であるオレらにも敬意を払ってくれているが、名付けにも個人差があることは知っている。

 

 旅の途中でリグルから聞いた話では、かつてこの村を守っていたという先代リグルは魔王軍幹部から名付けを受けていた。しかし、リムルが名付けをした時とは違い、ホブゴブリンには至っていなかったらしい。もしもオレたちが名付けをして、リムルを超える化け物が生まれ、そいつがリムルを殺したらたまったものではない。

 

 なので、オレたちは名付けを行わない。少しでもリスクは減らしておきたいのだ。

 とは言っても、名付けには参加はしないが、これから仲間になる者の名前と顔だけは一致するようにリムルの近くを陣取る。ユメもオレの隣にいる。

 五百名の名前と顔を覚えろと言われると難しく感じるかも知れないが、ブレイクワールドでマスターと共に、何万を超える魔物の管理をしていたオレたちからすれば、余裕の妖術師だ。

 

 

 名付けを開始してから数時間が経ち、ミルド達が戻ってきた。引っ越し先の測量をしにいってたらしく、リムルの方にも意識を向けながら、同行していたホブゴブリン達にも労いの言葉をかける。

 

 

「よう、お疲れ様」

「ありがとうございます、キョウム様。といっても、現地を見に行っただけですし、木を伐採したりする作業もしなくちゃいけないんで、大変なのはこれからですがね」

「……」

 

 

 ホブゴブリン達はオレ達の言葉に感謝を述べながらそう言った。相変わらずミルドは喋らない。そのくせ、コミュニケーションには困らないところがミルドは不思議だ。

 ホブゴブリン達は口では大変だと言っているが、リムルの為なら頑張れる、そんな気配を感じ、オレは思わず笑みを浮かべた。もし、ユメが今人型で会話に参加し、この雰囲気を感じ取ったら、同じようにクスッと微笑をこぼしていることだろう。

 

 

「キョウム様? どうかされましたか?」

「何でもない。それより、オレも木を伐採するのを手伝ってやるよ」

「え? キョウム様が直々に我らのお手伝いをしてくださるのですか!」

「ああ、丁度リムルがスリープモードになって、暇になったんでな」

 

 

 オレが言葉を紡いでいた丁度この瞬間、リムルはスリープモードになっていた。

 見たところ、半数以上の名付けを終わらせたらしいが、流石に一度に五百名分の名付けをするのは無理だったようだな。まあ、リムルの総魔素(エネルギー)量から考えて不可能だろうとは思っていたが。

 

 リムルがスリープモードになったことで慌てたゴブリン達もいたが、リグルドの説明やユメが人型になって微笑むことで次第に落ち着きを取り戻していく。それと、リムルがスリープモードになった直後に、ユメがスライム姿から人型になるというのが定着しつつあるな。まあ、スライムが人型になるのは、一種のパフォーマンスとしてはなかなか悪くないとは思うが。

 そんなことはさておいて、その場が静かになった頃を見計らい、オレはユメへと声をかける。

 

 

「ユメ。ちょっと移住先の木の対処に行ってくるからリムルの面倒を見といてくれ」

「え!」

 

 

 地面に座りながらリムルを抱いていたユメは、驚愕したような表情になりながら声をあげた。その様子にホブゴブリン達がビクッと驚いている。

 そしてユメは、真剣な目つきになりつつ「あのさ……」っと緊迫感のある声でオレに尋ねる。

 

 

「……念のために言うけど、移住先以外の木を刈りつくしたり、森を焼き尽くしたりしないでよ?」

「オレをなんだと思っていやがる」

 

 

 ユメのアホみたいな発言に、オレは静かにツッコミを入れる。

 真面目に聞いて損した気分になったぞ。後、ここらへんでそういう発言は慎めバカ妹。

 そんなオレの心情を無視して、ユメはジト目になりつつ、言葉を重ねる。

 

 

「いや、お兄ちゃんは仕事は出来るけどさ、戦闘関連以外の仕事は適当じゃん。大雑把じゃん。六百年くらい前に過ごした場所(異世界)で、海が汚れてるからなんとかして欲しいって頼まれた時、海そのものを干上がらせて対処しようとしたの覚えてないの?」

「ギクッ」

 

 

 こいつ、余計な事を……

 確かにオレは、マスターから請け負った仕事や命令以外はそこまで真面目にやろうとはしない。優先順位がまるで違うので、当然だ。

 一応、そんなことがあったのは覚えているし、ユメが居たおかげでその場はなんとかなったので、当時はユメに心の中のみで感謝していたが、今ここでそれを言う必要はないだろ……!

 

 

「他にもさ……」

「あのなあユメ。確かにオレ一人だったら適当にやる可能性もあるが、リムルのことを考えてみろ。そんなことが出来ると思うか?」

 

 

 これ以上ホブゴブリン達の評価を下げないために、ユメの更なる発言を制止しつつ、現実問題に目を向けさせるために問いかける。

 オレの言葉に、ユメはハタっと目を見開いたような表情になり、それから辺り一帯を見回した。

 そして、ユメはうーんと唸った後に少しだけ考えるような素振りをして、やがて納得したような表情になり、オレの方に向き直る。その顔に浮かべているのは、ついさっきの疑わし気な表情ではなく、まるで感心したかのような表情だ。

 

 

「……それもそうだね。それじゃ行ってらっしゃい! くれぐれもやりすぎないでね!」

「ああ」

 

 

 フー、なんとかこれ以上周りのホブゴブリン達からの評価を落とすのは防げたな。

 ユメがブンブンと手を振る中で、オレは『空間転移』を使い現地へと直行すると、そこでは即席で作られた斧を持ったカイジンや数十名のホブゴブリン達が作業中だった。みんな真剣な表情で、熱心なことだ。

 勿論、オレが来ると聞かされていなかったみんなは、いきなり出現したオレに驚きの声をあげる。

 

 

「うお! キョウムの旦那じゃねえか。急に現れて来たから、驚いたぞ……」

「……作業の手を止めてしまったな。わりい」

 

 

 とりあえず、前触れもなく来たことには謝罪の言葉を口にする。

 ユメに対してだったらあまり謝りたくはないが、それ以外の連中には特にためらうことはない。

 

 

「それで、キョウムの旦那は一体何の用でここに来たんだ?」

「ミルド達から木を伐採してるって聞いたから、手伝いに来ただけだぜ」

「ほお、そいつはありがたいな」

「ということで、お前らは一旦作業の手を止めて、全員こっちに来い」

「……ん? 分かった」

 

 

 カイジンはオレの言葉に疑問を抱きつつも、ホブゴブリン達と一緒に従ってくれた。

 さてそれじゃあ、伐採予定の木の周りに人が居なくなったことだし、始めようか。

 

 オレはまず、左耳に付けているリアクターを片手で操作し、配下達を収容している空間とはまた別の、様々な道具を放り込んでいる亜空間と接続し、そこから一本の剣を引っ張り出す。ドワルゴンで観光した際に購入した、外見は何の変哲もない剣だ。

 カイジンはその剣を見て、おそらく無意識でほお……と呟いていた。

 

 

「キョウムの旦那。そいつは……」

「ああ、ドワルゴンの武器屋に並んでいた、魔鋼が使われた質のいい剣だ。なかなか高価だったが、他の武器よりも性能が良さそうだから、試しに買ってみたんだが……もしかしてカイジンが打ったのか?」

「まあな。それよりキョウムの旦那にそこまで言ってもらえるとは、職人冥利に尽きるぜ」

「そうか。ならこれからも期待しているから、頑張れよ」

「おうよ」

 

 

 改めて気合いが入ったようなカイジンとのやり取りをそこで終え、次に慎重に大気中からこの世界の魔素を集めて魔力へと変換し、刀身に付与した。面倒ではあるが、オレ達のマ素では自然に影響が出るので、やむなしだ。

 ある程度魔力が溜まったので、周りの者達をオレの後ろに下がらせ……横一文字に剣を振る。

 次の瞬間、伐採予定だった全ての木が根本の部分から綺麗に切断され、様々な方向から木の倒れる音が響く。これくらいならば、オレ達を監視している者達にとっても許容範囲内だろう。

 だが、その光景にギャラリーと化していたカイジンやホブゴブリン達は啞然としていた。

 

 

「……キョウム様……今のは一体?」

「空裂斬って技だ。魔素を練って風属性の斬撃を飛ばすだけの簡単な技だぜ」

「いやいや、キョウムの旦那、それを簡単って言うのはちょっと無理があるぞ……」

 

 

 周囲の者達は先程の光景とオレの言葉に、驚愕に満ちたような表情をしているが、本当に簡単な事だぞ。多分、リムルでも練習すればすぐに使えるようになるくらいの、初心者向けの技だ。

 というか、みんなはオレの行動にフリーズしているが、まだオレの手伝いは終わっていない。

 

 

「おいお前ら。まだ終わりじゃねえぞ」

「え? キョウム様……まだなにかやるおつもりですか?」

「ああ。といっても次のやつが済んだらオレは戻るから、お前らはそこらに倒れている木や今から出てくるものを、木材にするなりなんなりして、始末しといてくれ」

 

 

 オレはそう命令を下した後に、剣をリアクターの中へとしまい、一つの魔法を発動する。

 すると、残っていた木の根本部分が小刻みに揺れ始め、ズボッと音を出して地面から抜ける。そして、引っこ抜いた根っ子や辺りに散乱していた木をスキルで操作し、一か所に纏めた。

 これで木の大部分と根本全てが地面から離れたので、格段に仕事が減っただろう。周りの奴らもきっと大助かりなはずだ。オレもかなり満足だな。

 

 そう思って振り向いたら、またみんなが呆気にとられたような顔をしていた。デジャヴだ。

 続いて、さっきと全くホブゴブリンから全く同じ言葉が投げかけられた。

 

 

「……キョウム様……今のは一体?」

「“木の根っ子を抜く魔法”だ。かなり前に旅した場所で習得した魔法で、こういう場面にはピッタリの魔法だろ?」

「……キョウムの旦那は、もはやなんでもありなんだな」

 

 

 オレが自慢げに言うと、カイジンは悟りを開いたような目付きになっていた。

 まあ、これに関してはブレイクワールドの魔法でもないし、この世界の魔法でもないから、驚かれてもしょうがない。あの世界はくだらなくも面白い魔法がたくさんあって飽きなかったんだよな。またゆっくり旅をしてみたいものだ。

 そんなことを考えながら、後始末を周りの奴らに任せオレは村に戻るのだった。

 

 

 

 

 後日、スリープモードから復活したリムルにこのことを報告したら、普通に怒られた。

 配下の者達から仕事を奪うな、みたいな感じで。

 その際にユメがニヤニヤしながら「だから言ったのに~(笑)」みたいな雰囲気を醸し出していて、軽くイラッとした。後で一発ぶん殴っておこう。

 だが、よくよく考えてみたらリムルの指摘通りで、ホブゴブリン達の成長する機会の一つを奪ってしまう形になったことを自覚したので、素直に反省しようと思う。

 これからはもう少し自粛しようかな。

 





 私の作品ではこんな感じに新キャラが拠点に来たら、なるべく本編の次の展開に進む前にオリキャラとやりとりさせます。

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