改造スライムと転生スライム   作:黒井政人

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 不定期更新って書いてるけど、なるべく週一投稿したいなと思っている今日この頃。


次元の狭間

 

 

 誰が予想できただろうか。この世界が壊れた世界(ブレイクワールド)と呼ばれるようになるなど。

 誰が気づけただろうか。この世界の平穏に影が忍びよってきていたことに。

 

 

 

 かつてこの世界は輝いていた。

 遥か昔は暴れ回る野生の魔物達に成す術なく蹂躙されていた人類だったが、モンスターマスターの数が増加していくのに比例して、魔物の被害件数は年々減少していき、家族や仲間を失ったという話も次第に聞かなくなっていた。

 

 加えて、スカウトリングを開発した偉大な科学者が魔物同士を融合させる装置を作成したことで、モンスターマスターの目的が強力な魔物を仲間にすることから最強の魔物を作り上げることになった。そのため、魔物に関する事件が発生しなくなり、元々大人気だったバトルGPは大盛況となる。

 他にも、マ素を結晶化させたマデュライトという鉱石が新たなエネルギー源になるということが発表され、人類はそれを利用して高度な文明を築いていくことになり、この世界は活気に満ち溢れていったのだ。

 

 

 しかし、今ではもうこの世界でその様子を見ることは叶わない。何故なら発展を遂げていたその星は既に滅び、人間と呼ばれる者は絶滅してしまったからだ。今、この世界にあるのは両手で数えられる程度の不完全な星々と魔界と神獣界へと通じる門。そして、二度と起動することのできない、いつの時代から存在しているかも分からない惑星創造機械のみである。

 

 

 いつから歯車が狂い始めたのだろうか。

 数々の偉業を成し遂げた天才科学者が魔物の魅力に惹かれ、百パーセント善意でこの世界そのものを魔界にしようと企んだ時だろうか。もしくは、邪悪な科学者が作り上げた究極の破壊兵器が、戦の神を邪悪に染め上げてしまった時だろうか。はたまた、魔物の強さに増長してしまった人間達が戦争を起こしてしまったからだろうか。それとも……

 

 

 

 

 人間は悪知恵が働く生き物。そのため、高度な文明を遂げていったその大陸を狙う者達も存在していたのだ。そして、技術や文明を狙って大陸に侵攻してきたそんな侵略者達とその侵略者達に対抗するために集められた魔物使役者(モンスターマスター)とで戦争が勃発することになった。

 

 

 だが、これが最悪の結果を招くことになる。

 

 

 戦争をするだけであれば、モンスターマスター達が数多くいる方が負ける要素は少ない。大陸を滅ぼす勢いで宣戦布告もなくミサイル等を落とされたのならば、話は別なのかもしれないが、相手の目的はあくまでも文明なので善戦することができた。だが、侵略者達がエネルギー源にして高純度のマ素を結晶化させたマデュライトの倉庫を魔法で破壊してしまったのが運の尽き。その結果、マ素の侵蝕が始まってしまい、その大陸で人が住めなくなるどころか、マ素がその星を覆いつくすのも時間の問題となった。

 

 

 

 この事態を重く受け止めた各国の上層部や、バトルGP最後の覇者であるモンスターマスターとその仲間達はある計画を立ち上げた。それはこの星を捨てて、惑星創造機械“マザー”で人工的に星を作り上げ、そこに移住するという計画だ。当然ながらこの計画を拒否する愚か者はおらず実行することになるのだが……

 

 

 

 この計画もまた失敗することになる――

 

 

 

 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 

 

 マスターへの報告を終わらせた日から十日が経ち、オレとユメはマスターから呼び出された。

 そのため、マスターが住まうセンタービルの頂上で崩落都市を眺めつつ、次なる命令にワクワクしながらマスターが来るのを待つ。ユメもオレの左隣で瞳をキラキラさせていた。

 

 オレ達の瞳に映るのは普通の人間が見れば失神するような景色だ。

 大陸を闊歩する異形の魔物達。人間が暮らすのは不可能だと思える程の、破壊された道路や建物。この星を見渡そうと思えど、ビルの頂上から見るだけで大陸の端を確認できる程に狭い浮遊大陸。そしてその先には足の踏み場はなく、飛ぶことのできない者が奈落に落ちれば死あるのみの危険な星だ。

 そんな見慣れた景色をユメは飽きることなく眺めつつ、ポツリと呟く。

 

 

「やっぱり高い所からの景色は最高だね」

「この景色がいいのは同感だが、高い所が好きなんてやっぱり子供だな」

「ワタシは子供と呼べる年じゃありません~!」

「じゃあババアか」

「ワタシは若いよ! お兄ちゃんや何万年も生きているような神々と比べたらね!」

「実年齢を考慮しろ」

 

 

 そうやってムキになって言い返すところが子供なんだよな、と思いながらユメと言葉の応酬を続けていると、天空から生命反応が感じられた。

 すぐさまそちらの方に目を向けるとそこにはレジウィングと呼ばれる、普段は個人用のジェット機のような姿をした魔物が宙を舞っている。そして、『万能感知』を用いるとそのレジウィングの座席シートに乗るマスターの姿があった。オレ達はマスターと久々に会えたことによる歓喜の感情を隠しつつ、すぐさま頭を下げる(スライムだから頭はないけどな)

 

 

 マスターの外見は青いジーパンに黒色のシャツ。男子高校生くらいの背丈で左耳には魔物使役者(モンスターマスター)にとって必需品である黄金の機械――リアクターが取り付けられていた。腰に巻かれている茶色のベルトには用途不明の銀色の鎖のチェーンがぶら下がっている。首には赤いスカーフが巻かれており、それをマスターが手放したところは見たことがない。エメラルドグリーンの瞳はキラキラ輝いていてマスターの美形を更に際立てている。しかし、顔は美形だがマスターの白髪はいつもぼさぼさだ。マスター自身は気にしないようだが、もったいないと密かに思う。

 

 いろいろ観察していたが、マスターは色素変換(イメージチェンジ)という魔法を習得していて、異世界から帰ってくる度に服、スカーフ、目、髪の色が変わっている。なので、今がこの姿というだけの話であり、よくよく考えれば気にすることではない。

 

 …………ちなみにマスターはこの世界での唯一の人間。いや、正確には人間(ヒューマン)という種族ではない。見た目は完全に人間だが、人間にとって必須の身体活動をしていないし、身体能力は人間と同じであるものの、たとえ殺されても存在消滅することはない。魔物でも人間でもない特別な呪われた種族なのだ。

 

 そんなマスターの姿は常に威風堂々としており、圧倒的な覇気を纏っていた。その悠然とした態度でレジウィングから飛び降り、スタッと地面に着地するなり、オレ達の方に視線を向ける。

 

 

「待たせたな、ところでお前らちゃんと休んでいたか?」

「十日間、喧嘩を売られる度に相手をボコボコにしてきました」

「ワタシも同じく」

「………ちゃんと休め」

 

 

 マスターが呆れた様子でため息を吐きながらそう呟いた。

 

 マスターのおかげで、この世界で自然発生する魔物が好き勝手に暴れる事が無くなったとはいえ、マスターが造る魔物も野生の魔物も血気盛んだ。故に、オレたちが異世界から帰ってくる度にオレ達と戦いたがっていた魔物達はどんちゃん騒ぎになり、数日に渡って喧嘩を吹っかけてくるのだ。と言っても全員返り討ちにしているがな。

 

 いつものことなので、オレ達はマスターにいつものようにこう返す。

 

 

「「喧嘩を売ってきた方が悪いです」」

「……まあ元気そうだからいいけどな、さて本題に入るが」

 

 

 オレ達はマスターの言葉を待つ。いつも通りの命令だと思いながらも期待は胸に広がっていた。

 

 

「またお前たちに別世界に行ってもらう、そして目標達成のために尽力し、別世界の話を報告してもらう。いつも通りの命令だ、もちろんやってくれるよな?」

「「仰せの通りに」」

「よし、ならばすぐに出発だ、準備はできているな?」

「「もちろんです」」

 

 

 即答すると、マスターはすぐに飛翔呪文(ルーラ)を発動してその場から飛び立ち、オレ達もすぐさま後を追う。

 

 

 

 行き着いた場所の景色は見渡す限りの草花と山々だ。

 ここもまた数少ない“星”の一つ。“静寂の草原”。

 ここにも危険な魔物は存在せず、自然発生する魔物はスライムやオークといった弱小種族。たまに魔界から暇つぶしにやって来る魔物もいるが、無理矢理襲ってくるような奴はいない。このブレイクワールドにある星の中では比較的緑があって綺麗な場所なのでマスターも気に入っていらっしゃる。また、オレが生まれた場所でもあるので、オレも密かに気に入っている。

 

 

 オレ達とマスターが大地に降り立ち少しばかり歩くと、リアクターが周囲の空間の異常を検知し警鐘を鳴らす。マスターはその音に従って、耳に付けている黄金のリアクターを操作し始めると、目の前に紫色に妖しく輝く次元の狭間が出現した。リアクターの解析結果にオレは内心で喜んだ。

 

 

「お前たち、行くぞ」

「「はっ!」」

 

 

 マスターの言葉と同時に次元の狭間に侵入する。

 次元の狭間の中は深紅の空が広がっている。岩の柱が不規則に立っているが、不思議と足の踏み場は存在していて、不気味な雰囲気が漂っていた。そして圧倒的な威圧感がこの空間を支配している。リアクターの判定通り、無事に『異界の間』に来れたようだな。

 

 

「この場所は相変わらず不気味だな」

 

 

 マスターはため息を吐きながら気分が悪そうな顔をしてそう言った。確かにマスターの仰る通り、この場所には濃密なマ素が充満しており人間にとっては毒でしかない。だが逆に、そんな場所でも問題なく活動しているマスターは流石だ。

 

 

「「オレ(ワタシ)たちは魔物なので問題ありません」」

「……そうか」

 

 

 オレ達の返答にマスターは呆れたように相槌を打つ。

 そんな会話をしながらこの空間の中心―この空間を支えている濃密なマ素の発生源―に行くと、そこには偉そうにふんぞり返っている魔人がいた。

 

 男らしい顔つきで背丈は長身の筋骨隆々。髪は茶色のショートカットであり、切れ長の赤目は睨むだけで下位の魔物は死にそうだな。身なりを気にしてはいないようで上半身は衣服をまとわず、下が簡素な赤の長ズボンである。他にこれといった特色はなく、強いて目に付いたところを言えば魔力が備わっている首輪を付けている点くらいか。

 

 

 オレがそんな風に観察していると、その魔人はオレ達に気付いたようで偉そうに口を開いた。

 

 

「魔王ネメシス様の領土に勝手に入ってくるとは……死にたいようだな?」

「ユメ、やれ」

 

 

 魔王の口上が終わると同時にマスターが命令を下すと、傍に居た妹が勢い良くネメシスに突撃した。

 ただのスライムの突進と侮るなかれ、その攻撃は音速以上のスピードにユメの攻撃力も上乗せされているのでそこらの魔物が放つような下手な攻撃よりもよっぽど強く、回避は難しい。

 それを証明するが如く、ユメがネメシスの認識可能であろう速度を超越して腹あたりに攻撃が直撃させると、ネメシスの上半身と下半身が分かたれた。ネメシスは一瞬何が起きたか理解していないような表情をしていたが、理解が追い着くなり怒りの表情へと変貌させながら下半身の再生を始めた。

 

 

「ムシケラめ! スライムの分際で、よくもこの魔王ネメシス様の肉体に……」

「うるさいよ。それよりもさっさと再生したら? 魔王ならばもっと面白い技、あるでしょ? それとも……ワタシが回復してあげようか?」

 

 

 ネメシスが怒号を発し終わる前にユメは笑みを浮かべながら煽りまくる。それはネメシスの逆鱗に触れたようで、その怒りに呼応するように再生力が高くなり、即座に元の五体満足の状態に戻っていた。

 

 

「貴様アアアア! もう許さん! この俺の手で必ず息の根を止めてやる!」

 

 

 回復を終えるなりネメシスは『魔王覇気』を強烈に放ちながら、ユメへと踵落としを繰り出す。

 対するユメはネメシスの『魔王覇気』を相殺出来る程度に『威圧』で返し、攻撃に関しては『空間転移』でその場から消えることによって回避し、ネメシスの背後に現れた。

 そして囁く。

 

 

「相手になってあげる、その代わり全力で来なよ~」

 

 

 その発言と共に戦いが始まった。まあ結果は目に見えているけどな。

 ネメシスの実力を測定したが、ユメどころかマスターが作り上げた魔物にさえ及ばない。

 それにユメの挑発に簡単に乗っている時点で知能もたかが知れている。現に今もユメに対して単調な攻撃ばかりを繰り返しているので、天地がひっくり返ったとしてもユメに攻撃を当てる事はできないだろう。

 

 そんなことを考えながら戦いを見守っていると、マスターから質問が飛んできた。

 

 

「それにしてもユメの強さは相変わらずだな。お前もそろそろ追い抜かれるのではないか?」

「まさか」

 

 

 マスターからの冗談を一笑に付しつつも、その可能性を少しだけ考え、有り得ないなという結論に至る。妹に負けるなど兄貴の威厳にヒビが入るし、絶対に認められない。それにユメに負ける理由もないのだから。

 

 そう思いながらユメと魔王の戦いを、注意深く観察するのだった。

 

 

 







 改変する前はネメシスなんてオリキャラいなかったんだけどな。まあいいか。

 ネメシスにも一応設定はありますが、他のキャラと違ってペラッペラです。ただのかませ犬です。
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