改造スライムと転生スライム   作:黒井政人

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 物語ってどこで区切れば面白くなるんだろう?


出会い

 

 

 故郷の星がマ素によって汚染されたため、惑星創造機械“マザー”の力を使って新たな星を創り上げ、そこに移住する計画を立ち上げたモンスターマスター達。

 彼らにはマザーを起動させるために、エネルギー源であるマデュライトと星を作る力の動力源である陸・海・空の神々の力の結晶が必要であった。マデュライトは故郷の星に大量にあったため問題無し。だが、もう一方の素材が厄介で、神々の力の結晶を手に入れるにはそれぞれの神を倒す必要があり、その難易度は想像を絶するものだった。しかし彼らは故郷を救うという目的の下、多大な犠牲を出しながらも、神々の討伐に成功する。

 集まったそれらを用いてマザーを起動させようとしたが…………途中までは上手く行ったものの、マデュライトの中のマ素にとある異分子が混入されていたために、星をも作り出す力が暴走。これにより正常だったマザーは汚染されて、世界全てがマ素で満たされ、次元そのものにも大きな影響を与えることになる。

 

 

 

 

 マザーの暴走によって、元々そこに住んでいた魔物やマスター達が連れて来た魔物達は、当然の如く暴れ出し、そこにいた人間や使役されていた魔物の多くが殺された。そのため、一時撤退を余儀なくされたが元の星に帰ることはできなかった。その理由は新たな星を作り出すのに失敗した上に、帰ってもマ素を浄化する方法がなく、何もできないからである。

 

 

『先代が従えていた神獣がいればこの難局をひっくり返せたのにな』

 

 

 当時のバトルGP最後の覇者が思わずそう愚痴をこぼしてしまうのも仕方ない事だろう。

 神獣とはマ素のバランスを司る者であり世界の均衡を保つ者。 

 三百年に一度、人間界にて魔王軍がいる魔界へと通じる門……通称“奈落門”と呼ばれるゲートが開かれるのだが、それを閉じる事を使命として神に遣わされた存在であり実力もかなりのもの。更に神獣はマ素を司るので、マ素によって汚染された星を再生させる事もできるのである。

 だがしかし、神獣の援護は期待出来なかった。何故なら、百年程前に姿を確認されていたのでどんなに少なく見積もっても後二百年は現れることはなかったからだ。

 加えてマザーの暴走によって、ブレイクワールドに隣接していた異界、神獣界と魔界にも影響が及んでいた。神獣にも魔王軍にも多大な損害が与えられ、どちらの陣営も自力では回復不能の状態に陥ってしまったからだ。

 

 

 そんなことは知る由もないマスターであったが、仲間たちと共に地獄と化したマザーから脱出し、“灼熱火山”と呼ばれる“星”へと避難した。そこでモンスターマスター達は秘密基地を作り再起を図ることになる。もう一度汚染されたマザーに行って浄化を果たし、少しでも自分達が世界に犯した罪を清算するために。

 

 

 だが、再起を図るにせよ、失われた人材を蘇らせる事も出来ず、モンスターマスターの数はどんどん減っていくばかり。安全な大地等どこにもなく、更にマザーが暴走したことで、凶モンスターと呼ばれるマ素に完全に染まり切った魔物達が生まれたために、戦いに対応できる者はたった一人しかいなくなった。その者はバトルGP最後の覇者であり、最強のモンスターマスターであり、神々の戦いにおいても活躍していた者であった。

 

 しかし、その者も最後の最期まで闘い抜いたが、マザーを浄化することは出来ず志半ばで死んでしまった。そのモンスターマスターが死んだことで、人類の希望は絶え絶望のみがモンスターマスター達に降りかかる。もう無理だ、自分達ではどうしようもない等々、そんな考えが彼らの頭に支配するのみ。

 

 そんな中、一人の科学者が最強のモンスターマスターから託された、計画を開示した。

 それは禁忌の術式でありながら、人類にとって最後の切り札である計画。

 

 

 

 ――ジョーカー計画――

 

 

 

 その計画に使われる術式は人類の技術の集大成で、一人の人間を時間の影響を受けない培養液に入れ、培養液に入れた人間を量産して、無限にモンスターマスターの肉体を生み出し続ける。そして生み出された肉体に、術式対象者の意識を植え付け、生きた人形とするものであった。

 

 だがこの術式にはいくつか問題があった。

 まず初めに、その術式は一度も実験されていないので成功率は不明である点だ。理論上は可能だったのだが、失敗すれば人一人の命を失い、ましてやそれを最強のモンスターマスターに試して失敗したら、自分達の手で唯一の希望を摘むことになる。故に最強のモンスターマスターがいる時には出来なかったのだ。

 次に、その術式が一度作動されれば停止することは出来ないので、術式対象者は闘い続ける宿命から逃れられない。そのため、世界を救うために生み出されるその肉体は、凶モンスターとも渡り合える程のモンスターマスターでなければならない。その上、記憶と経験は蓄積されるように出来ていたので強靭な精神を有している必要があったのだが、そんな素質を持つ者は彼らの中にはいなかった。

 

 

 一体どうすれば…………と頭を悩ませている彼らに一人の少年が立候補した。その少年は今は敗れてしまった最強のモンスターマスターの弟であったため、才能という観点では充分だったのだが、齢は十にも至っていない。それ故に当然周りの人達は反発したものの、少年の意志が揺らぐことはなかった。自分一人の犠牲で皆が救われるならば安いもの、お兄ちゃんみたいに最期まで戦い抜き世界を平和に導きたい、と。

 

 少年の強い決意を聞いた後では否定する者などいなかった。そして計画が始動されることになり、術式を発動することになるのだが…………ある意味では成功しながらも、術式的には失敗することになる。

 

 成功情報は肉体の生成に成功し、意識を植え付けた生きた人形が完成したこと。 

 失敗情報はその肉体に埋め込まれた意識に少年の自我がなく、代わりに用いられたのは万が一の時のため、術式に備えらていた最強のモンスターマスターの複製疑似人格(コピープログラム)。その過程で少年の自我は消えてしまった。

 

 …………だが、これでよかったのかもしれない。十歳にも満たない少年が闘いの日々を過ごして絶望するよりも、命尽きる時まで信念を貫き通した者の方が彼らも安心できるのだから。そして、その複製疑似人格(コピープログラム)に合うように生み出される肉体にも細工され、生前の最強のモンスターマスターの姿が再現された。

 

 それから紆余曲折あったものの、不死身のモンスターマスターは快進撃を続け、マザーの浄化に成功する。マザーには万が一の為にコールドスリープ状態になっていた人間もそこそこいたので、人類の再起は可能であった。

 世界に及ぼした影響もマスターが偶然見つけた神獣達と共に魔界へと赴き、魔王と魔物を交えた交渉を行い、マ素の性質そのものを変えたことで、自然発生する魔物達も戦闘狂の部分は残しながらも、勝手に暴れるようなことはなくなったのだ。

 

 

 こうして不死身のモンスターマスターの活躍により、ブレイクワールドに平和が訪れる。

 そして人類は長い時間安寧を享受できたのだが…………

 

 

 

 

 今ではもう、不死身のモンスターマスターのみが、ブレイクワールドに取り残されていた。

 

 

 

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 

 

 ワタシはうんざりしながらネメシスと対峙していた。

 ハッキリ言って、この戦いはつまらなかった。

 ワタシとお兄ちゃんがマスターの最高傑作であり、特別だと分かっていても、そう思わずにはいられない。だって、最初の攻撃一発とワタシの『解析』能力でネメシスの実力を把握したけど、あまりにも弱いから。それこそマスターが作った魔物の方がマシだと思うほどに。

 これで魔王だなんて面白い冗談だとワタシは思う。

 魔王の体力及びマ素総量残り一割。

 

 

熱収束砲(ニュークリアカノン)!!」

 

 

 魔王は最後の力を振り絞って炎の魔法を放った。こいつは何がしたいんだろう。

 ワタシが魔法を吸収して、更に反射しているのに、そんな行動に出るなんて。何もしなくても死にそうだけど、こんなに弱いくせにワタシのことをムシケラ扱いした時の怒りは忘れてない。

 

 だからこそ、この怒りを発散するため、ワタシは絶望を与える事にした。

 

 

闇獄凍滅斬(ダークネスフロスト)

 

 

 辺りに漂っているマ素を綺麗な刃の形に整え、私のマ素を闇と氷の魔力(オーラ)に変換して刃に付与する。この工程を一瞬の内に数回行った後、魔王に向けて放出した。

 何千度に至るであろう熱光線を、闇と氷の刃の数々が正面から真っ二つにし、その勢いのまま魔王の肉体を切り刻んだ。

 

 

「弱すぎる。よくその程度の実力で魔王を名乗ろうとしたね。君」

 

 

 そう言ってワタシは魔王へと近づいていく。

 殺し合いにおいて相手の絶命を確認するまで油断することは許されない。その事だけはお兄ちゃんやマスターからも徹底して指導されているから、ワタシは相手の生命活動の確認は怠らない。

 案の定、この魔王はまだ息があった。

 

 

「い…ったい…………なに……もの…………なんだ…………お……前……は」

 

 

 刃で四肢が切断されてズタズタになり、虫の息になったネメシスが私に問いかけてきた。

 手加減をしたつもりもなかったけど、つまらなさ過ぎて無意識のうちに手を抜いていたのかな。もしくは久々に殺し合いをしたから勘が戻ってないのかも。やっぱり確認は大事だね。

 

 うーん、それにしてもこの問いにはどう答えればいいのかな。

 

 

「ただの負けず嫌いなスライムだよ」

 

 

 ワタシはネメシスの問いに適当に返答して、トドメの魔法を放って消し炭にした。後に残った魔王の魂を回収して、お兄ちゃんとマスターの所に戻るのだった。

 

 

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 

 

「マスター! ごみ掃除、終わりました!!」

「ご苦労」

 

 

 先程戦っていた様子とは打って変わって明るい感じでマスターに報告を終わらせたユメ。

 ユメが魔王をゴミとしか思ってないことに、少年は内心で呆れつつも当然の結果だと考える。

 それもその筈、ユメとキョウムの肉体にはこの世界の全種類の魔物が融合されているのだから。それは魔王も例外ではない。この世界の魔王や神を全て取り込んだ魔物と一匹の魔王種、力の差は歴然であり天と地程の開きがあるのだ。もっともそれだけではないのだが……

 

 

 スライム兄妹と少年が話しているとゴゴゴゴゴという音が鳴り響き、空間にヒビが入り大きく揺れ始めた。この空間を支えていた魔力の根源が死んだことで次元の狭間の維持が不可能になったのだ。しかし少年たちにとってはこれが狙いであった。次元の狭間が崩壊を始め、世界としての境界線が曖昧になるこの瞬間が。

 

 

「「それではマスター、行って参ります」」

「ふむ……いつも通り期待しているぞ」

 

 

 少年がそう言った直後パキッパキッと空間が崩壊を始めると共に、キョウムとユメが天を仰ぐと黄金のゲートが現れる。世界と世界を繋ぐ門……『次元門』である。

 

 『次元門』にキョウムが入り、続いてユメが入っていく

 その様子を確認し終えると、少年はボソッと呟いた

 

 

「…………今度こそ、あの二人にとってより良き世界にたどり着ければいいのだがな」

 

 

 自分で呟いたはずのその言葉に小さく笑みを浮かべながら、少年はその場を去るのだった。

 

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 

 オレが次元門を通過するなり、常時発動している『万能感知』によって周りの情報が入ってくる。どうやらここは洞窟内のようだ。恐らく、人間だったら真っ暗闇でなにも見えないだろう。

『次元門』は地面と並行に、なおかつ洞窟内ではあるが地面からはまあまあ離れていた場所に設置されていたので、オレはふわふわ浮かんでいた。これで真下にある地底湖に落下したら、バカ丸出しだな。

 

 オレがそう考えた直後、ユメが『次元門』から出てきた。

 ……そして、何を考えてるのか知らないが、空中にあった『次元門』から真っ逆さまに落下して、地底湖にドボンと落ちてしまう。

 何やってんだコイツ……

 

 

「うわ~びしょびしょだ~ショック」

「ユメ、何やってんだ? 馬鹿なのか? 馬鹿なんだな?」

「ちょっと! そこまで言わなくていいじゃん!」

 

 

 宙に浮かびつつ、ユメの方に近づきながら、心の中で思ったことをそのままユメに投げかける。

 それに対して、ユメは地底湖から顔を出し文句を言いながら、アホっぽい回答をする。

 

 

「いやさ、前回の世界で『次元門』を開いた時は地面にかなり近かったじゃん?」

「そうだな」

「だから、今回もそうなんじゃないかな~と思って、『次元門』を通ってすぐに『重力支配』を解除したら、落下しちゃった!」

「やっぱり馬鹿だな」

「ひどい! いいじゃん別に。この程度で死ぬなんてことないんだしさ!」

 

 

 それはその通りだが、せめて普段からもう少ししっかりしてくれ。

 そう思うものの、もはや手遅れなのでオレは特に何も言わずにユメが地底湖から出るのを待つ。

 

 

 その後、ユメは地底湖からゆっくり出てきて、自身に付いた水滴を風魔法で吹き飛ばしてから、こう呟いた。

 

 

「いや~始まりの場所が水の中だなんてちょっとショックだね~」

「お前が油断しなければいいだけだろ」

 

 

 ダメだコイツ。早くなんとかしないと……

 そんな会話を繰り広げながら、湖から脱出したユメと共に、もう一度洞窟内を見渡す。

 

 地底湖の他には、魔素を帯びた鉱石やよく分からない植物、それと二つの道を発見した。

 ちなみに、オレ達が通った『次元門』はもう消えている。向こうの『次元門』が消滅したことで、こちらの『次元門』も消滅したからだ。

 

 辺りは真っ暗だが『万能感知』を持っているオレたちからすると、何の障害にもならない。なので、研究の為に鉱石と植物を一つずつオレのスキルで回収してから、ユメと一緒に直感で選んだ方の道を進む。

 二手に別れてもいいんだが、そうするとユメはうるさいんだよな。

 

 

 

 それから一時間くらいかけてかなりの距離を進むと、不意にユメがこう言った。

 

 

「それにしても、この場所ってかなり魔素が濃いよね~」

 

 

 その通りだった。最初にこの世界に来た時から濃密なマ素濃度だとは感じていたが、オレ達が選んだ道を進む度に、更にマ素濃度が高くなっていく。

 少なくとも、弱い魔物や人間がこの場に居たら、ほぼ確実に死に至るだろうな。

 

 

「ああ、これは戦闘のレベルも期待できるかもしれないな」

「前の世界みたいに退屈しなくてよさそうだね! 目的達成の為レッツゴー!」

 

 

 そんな言葉をユメが言い、オレ達はドンドン先へ進んでいく。

 

 

 

 ……そして。

 

 

『聞こえるか? 小さきものどもよ』

 

 

 黒光りする鱗を持った巨大な竜が、オレ達にそう問いかけてきたのだった。

 

 

 

 

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