改造スライムと転生スライム   作:黒井政人

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 遂に転スラの主人公が登場。

 最後にはまおりゅうオリジナルキャラクターも



リムル

 

 この世界に来て二週間が経った頃、その時はやって来た。

 ユメが言っていた通り、一匹のスライムが『水圧推進』にて猪突猛進の勢いで現れたのだ。

 

 ありとあらゆる魔物と融合した歪な魂を持つオレ達だからこそ、一目で分かる魂の綺麗さ。

 コッソリ『解析鑑定』を実行しようと試みたが、即座に妨害する用心深さ。今はまだ、Aランク上位程度の存在だと思うけど、成長すれば間違いない強くなりそうだ。

 

 ちなみにスライムがやって来る未来をユメが視た際に、この世界でのスライムの姿を確認したオレ達は、ササッとその姿を模倣していた。元々あった目や口は消え、目があった辺りにシワを作り、楕円形の形に整えた。色に関してはたいして変えずに、オレは藍色、ユメは緑色だ。

 何か言われてもユニークだと言い張るつもりなので、とにかくこれで、何の問題もなくこの世界でスライムとして過ごせる。

 

 目の前にやって来たこの世界(・・・・)のスライムを見てそう確信した瞬間……

 

 

『うっさい、ハゲ!』

 

 

 ヴェルドラがそのスライムに話しかけた際に、驚いたことに、そのスライムがヴェルドラに向かってハゲと(心の中で)言ったのだ。ちなみに、オレ達は今のところは会話に聞き耳を立てているだけだ。

 あ、こいつ大丈夫か? と思ったら案の定ヴェルドラは激怒した。そりゃあな。初対面の相手に髪のことでいじるなど、無神経そのものだ。いくら言葉に出さず単なる事実であったとしてもな。

 しかし話を聞いてみると、目が見えず、心に思うだけで返答が帰ってくるとは思わなかったかららしい。悪意はなかったらしく、これに関してはこちらの説明不足なので、どっちもどっちだな。

 とりあえず一旦そのスライムを除け者にして、オレ達だけで会話をする。

 

 

『なあ、ヴェルドラ。コイツ「魔力感知」使えないんじゃないか?』

『どうやらそのようであるな。強者は持っていて当たり前のスキルのはずなのだが』

『見た感じだけど、多分、生まれたばかりっぽい。お兄ちゃんが教えてあげたら?』

『ユメがやってもいいんだぜ?』

『ワタシ、相手が出来ない事を平然とやらせようとするお兄ちゃんなんて嫌い』

『冗談だ』

 

 

 そんな感じで、オレがそのスライムに『魔力感知』を教えることになった。

 

 元々、オレはマスターの右腕として仕えていた時期が永かったので、配下を鍛えたり技を伝授するのは得意中の得意だ。まあ流石に、個人が持っているような特別な権能については指導することは容易ではないが、既存の技やスキル、魔法に関しては特に問題は無い。

 

 そういう理由からユメがオレを推薦したんだろうし、仕方ないなと思いながらスライムに語りかける。

 

 

『聞こえるか? スライム?』

『あっはい。聞こえます。えーと、さっきの人とは違いますよね?』

『ああ。お前は目が見えないみたいだから、自己紹介は後にするぜ。今からお前には「魔力感知」というスキルを授けよう。このスキルがあれば、お前みたいに目や耳がない存在でも、見聞きすることが出来るようになるぜ』

『マジで! なんだかRPGゲームみたいだけど、ありがとうございます!』

 

 

 オレが偉そうにそう言うと予想外の反応が帰ってきた。

 ヴェルドラから聞いた話から考えて、RPGゲームっていう単語がこの世界にある訳がない。その単語を知ってるってことは元人間……転生者か? まあ、それは後で聞いてみよう。

 というわけでザックリと『魔力感知』の獲得方法を教えると、あっさりと獲得してくれた。かなり物覚えがいいみたいだな。

 周りが見えるようになったことでヴェルドラが自己紹介すると少しばかり怯えてしまっていた。

 ユメの権能の一部を借りて『思考看破』を行ってみると。

 

 

(竜じゃねーか!うん?ヴェルドラに気を取られていたけど、俺と色違いのスライムが二匹居る)

 

 

 どうやらオレ達に気付いたようだ。

 というか今思えば、超絶危険な暴風竜の前に二匹のスライムが居座っている状況、かなり面白いな。この世界の常識が覆りそうだ。まあそんなこと言ったら別世界からスライムが来るだけでも充分異常だと思うが。

 

 そんなことは置いといて、こちらも名乗っておこう。

 

 

『はじめまして。オレはキョウム。よろしくな』

『ワタシはユメ! よろしくね、スライム君』

『こちらこそ、よろしくな!』

 

 

 オレたちの紹介も終わったのでここからはお話タイムだ。

 話を聞くうちに次のことが分かった。このスライムもオレ達と同じく、ものすごく稀な方法でこの世界にきたらしい。といっても、『次元間』を作ってやって来たという訳ではなく、元は別世界の人間で刺されて死亡し、こっちの世界にスライムとして転生したとのこと。やっぱり異世界人の転生者だったか。

 オレたちはそういう事例をいろんな世界で見たことあるが、ヴェルドラはこの世界では事例がないことだと言っている。

 

 

『異世界人はたまにやって来るし、転生者もたまにいるのだがな』

 

 

 ヴェルドラの口ぶりからしても、異世界からの転生者は本当に珍しいようだ。

 まあ、他世界でも異世界からの転生者は珍しいと言えば珍しいので分からなくはないんだがな。

 

 ……と心の中で思っていたらヴェルドラが爆弾を投下してきた。

 

 

『広い意味で捉えれば、キョウムとユメも異世界人であるしな』

『え? そうなのか?』

『ちょ……ヴェル』

『うむ。こやつらは荒れ果てた異世界から無理矢理やって来た強力な魔物だぞ』

『は?』

 

 

 あーあ。

 ヴェルドラの言葉にスライムは滅茶苦茶驚いたようだ。

 そして、いきなりのヴェルドラの発言をユメが止めようとしていたが、どうやらそれは無駄に終わったようだな。ヴェルドラの言葉にユメは茫然自失となっていた。

 

 まあ、ヴェルドラに口止めしていなかった時点でこうなることは必定だ。

 別にオレや他の配下達はこういうのには鈍感なので、オレからしたらバラされてもあんまり驚きはしない。だが、ユメは感性豊かなのでなるべく秘密にしたがるのだ。

 といっても、ヴェルドラの時と同様にユメの心配は杞憂で終わるだろうな。

 なぜなら……

 

 

『へ~。それじゃあこの二人は異世界人ならぬ異世界魔物ってことか、すごいな』

 

 

 ……ヴェルドラの姿を見た直後でも、恐れはしていたがすぐに冷静さを取り戻していたからだ。

 リムルのその言葉にユメは一瞬驚いた後、リムルのその態度にホッとしたようだ。

 恐らく、元人間っていう要素もユメを不安にさせていたのだろう。ユメは性格上、あんまり人間が好きじゃないからな。

 それからユメはいつもの調子を取り戻して会話……というよりウザイ口調で自慢していた。

 

 

『でしょ! ワタシ達みたいに世界を渡り歩くなんて普通は不可能だからね~! 敬ってくれてもいいんだよ?』

『ユメ、自慢話はやめろ。ウザイぞ』

『え~いいじゃん! 少しくらい。本当にお兄ちゃんは一言多いんだから~』

『そういうのはまた今度にしろ』

『は~い』

 

 

 さっきまでヴェルドラの言葉でパニックになっていた奴だとは思えないな。

 

 

 それからヴェルドラはスライムと語り合い、会話の流れからここに封印された理由……つまり勇者に戦って敗北し、封印されたということを楽しそうに語っていた。

 スライムが「見惚れて負けたのか?」とヴェルドラに聞いた時は不覚にも笑いそうになった。ヴェルドラってそういうところありそうだよな、と思ったからだ。負けた張本人は否定してるが。

 

 そんな封印状態にあるヴェルドラに同情したのかは分からないが、スライムはヴェルドラにこんな事を提案してきた。

 

 

『それじゃあ、俺と友達にならないか?』

 

 

 ヴェルドラはその言葉に驚いたようで、『スライムの分際でこの我と友達だと?!』と返答した。正直言って、種族的には最低ランクのスライムが最高ランクの者と友達はほぼ有り得ないことだろう。(ドラゴン)系統は特に格下と対等にはなりたくないだろうから、いくらヴェルドラがいい奴でもこれは断るだろうな。

 

 そう思っていたが、オレの予想は裏切られた。

 先程はああ言ったヴェルドラだが、『嫌か?』とスライムが問うと『ば、馬鹿、誰も嫌とは言っておらぬであろう』とツンデレみたいな事を言って、スライムとヴェルドラは友達になったのだ。……いや、ヴェルドラチョロすぎないか? それでいいのか、天災級(カタストロフ)

 

 その後、スライムは続けてオレ達にもこう言ってきた。

 

 

『キョウムとユメも良ければ俺と友達にならないか?』

 

 

 ……なんだかマスターを彷彿とさせるな。このスライム。

 覇気やカリスマ性等はマスターの方が圧倒的に上だろうが、妙に優しいところやそういう言葉を当たり前のように言えるところはそっくりだ。

 別に、オレ達のマスターはマスターだけだし、オレ達のマスターへの忠誠心は永久不滅なので、このスライムをマスターだと思うのは有り得ないが、友達くらいなら全然なっても構わない。

 

 

『ワタシは賛成! こんな面白そうなスライム君とは友達になりたい!』

『まあ確かに、友達になっても何の損もないしな』

 

 

 ユメの明るい口調で発せられた思念にオレも便乗する。

 という感じでオレたちもスライムの友達なった瞬間、ユメがそういえばと言いながら、スライムの方からヴェルドラに視線を向ける(今は目がないから体の向きを少し変えただけだが)。

 

 

『ワタシ達とヴェルドラってどういう関係になるんだろうね?』

 

 

 ユメがそう呟くとヴェルドラとオレは首を傾げた。

 言われてみれば、この二週間、一緒にいたのにそういうことを考えた事がなかった。オレ達の関係性を決めなくても会話が成立していたし問題がなかったからだ。だったら今決めてしまえばいいか。

 

 

『ヴェルドラがいいなら友達でいいんじゃないか?』

『それ以外、しっくりこないよね~』

 

 

 実際は、この二週間ただただ喋っていただけだけどな。別に友達でも構わないだろう。

 オレたちがそう言うと、ヴェルドラが嬉しそうに『ククク、クッハッハ、クァーハッハッハ』と笑いの三段活用を使いながら返答した。

 

 

『良かろう! そこまで言うのであれば我が友ということにしようではないか!』

 

 

 まるでオレたちが懇願したみたいな言い方だが、それが照れ隠しなのはこの二週間の付き合いで理解できる。ヴェルドラはかなり強いが、(ドラゴン)系統らしくなく気さくでいい奴なんだよな。

 こうして、オレたちもヴェルドラの友達になったのだ。

 

 

 それからも会話が続き、スライムのユニークスキル『捕食者』でヴェルドラの封印を解くということになり、それに伴ってスライムとヴェルドラが互いに付ける名前を考えるようになった。

 

 ……うん? ヴェルドラがこのスライムに名前を付けるのは全然納得できるんだが……

 オレの疑問を解消するため、また一旦スライムを外して、ヴェルドラに声をかける。

 

 

『なあ、ヴェルドラには既に名前があるだろ? なんでこのスライムにも自身の名前を考えさせる必要があるんだ?』

『キョウムよ、このスライムが我と友達になるのだから、同格ということを魂に刻み込むのだ。それにこの名付けは互いの力を交換しあうものであるからな』

『……力を交換? ねえ、ヴェルドラ、ワタシはこの世界に来たばかりだから分からないけど、そこまでする必要あるの?』

『無論だ。名付けに関しては前に話したであろう。今回の方法では互いに力が損失することもないからな。我にとっても安心安全で名付けができるのだよ』

『なるほど』

『へ~勉強になるね~』

 

 

 正式な名付けとは違うらしいので意味あるのか? と思ったが、この名付けを行うことで、このスライムにはヴェルドラの加護が付与されるらしい。オレ達にはよく分からないが、まだこの世界に来て二週間だからな。この世界で生きる為にも更に知識を増やしておくとしよう。

 

 名前を考え始めてすぐに、スライムがテンペストを提案すると、ヴェルドラが大層気にいったらしく即座に受け入れて、ヴェルドラ=テンペストという名前に書き変わる。そしてヴェルドラの方もすぐにリムルという名前が浮かんだらしく、スライムはリムル=テンペストとなり、二人は同格になった。

 

 ちなみに、ヴェルドラから『お前達にも我の加護を授けることが出来るが、どうする?』と言われたが、勿論丁重に断った。既にマスターから賜った素晴らしい名前があるからな。今更名前を変えたり付け加えるなど、オレ達からすれば論外だ。それに加護を必要とする程オレらは弱くない。

 

 そしてスライム改めリムルがヴェルドラを捕食する時が来た。

 

 

『それじゃリムルよ、とっとと我を喰らってくれ』

『分かった、さっさと出て来いよ』

 

 

 ヴェルドラの言葉にリムルが応じる。

 ヴェルドラはその反応に満足したように頷くと、今度はオレたちの方に視線を向ける。

 

 

『それではキョウムとユメよ、我が解放されるまでリムルの守備を頼んだぞ』

『了解』

『任せて!』

 

 

 オレ達はその頼みを当然のように引き受ける。それに収容系能力者が死んだらその能力者が取り込んだ物も一緒に消えてしまう可能性が非常に高いので、前からオレとユメの間で、リムルの護衛をすることは決まっていたことなのだ。なんの問題もない。

 

 ヴェルドラが別れの言葉を告げると同時に、リムルのユニークスキル『捕食者』が発動して、みるみるうちにスライム体の面積を広げ、無限牢獄ごとヴェルドラに絡みついていく。そして全てを包み込んだと思ったらどんどん小さくなっていき、リムルは元の楕円形の形に戻っていた。さっきまでヴェルドラが居た場所には何も残っていない。

 

 まず間違いなくオレ達には出来ない芸当に少しばかり戦慄しながら、リムルに声を掛ける。

 

 

『サンキューリムル、ヴェルドラのことよろしくな』

『お願いね』

『おう、任せとけ』

 

 

 オレとユメの言葉にリムルは平然とそう答えた。

 リムルのその力強い言葉と共に、ヴェルドラが居た場所を尻目にその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 ヴェルドラがリムルの胃袋に収まってから、数日が経過したが、オレ達はまだ洞窟内にいた。雑談しながら移動しているしこんなものだろう。

 

 

 雑談の内容はリムルの身の上話とオレ達が旅してきた異世界の話。

 リムルは前世では三上悟という名のサラリーマンだったらしく、享年は三十七。結婚はしてなかったがそれなりに人生を満喫していたようだ。そして最期は後輩を通り魔から庇って命を落としたらしい。人を庇って死ぬなんてやっぱり優しい奴なんだな。

 

 

『いや~あんな簡単に死ぬとは思わなかった。まあスライムに転生したことの方が、死んだことよりも、もっと驚きだけどな』

『アハハハハ! 確かにそうかもね~。人生に突然幕が下ろされたと思ったらスライムに転生してるなんて、ワタシだったら笑っちゃうかも』

『オレは生まれた時からスライムだからあんまりその気持ちは分らないが、その状況は面白いな』

 

 

 そんな感じで笑い合いながら洞窟内をゆっくり進んでいた。

 ちなみに、異世界人は必ず何かしらのユニークスキルを獲得する、とヴェルドラは言っていたが、リムルの場合は喰いまくりたいと願ったら、ユニークスキル『捕食者』を獲得したという。

 人間の三大欲求の一つである食欲にちなんだ願望だからこそ、『無限牢獄』ごと取り込むような強力なユニークスキルを獲得できたのかもしれないな。スキルって願望が強ければ強いほどいいスキルを獲得できそうだし。

 

 

 ところで、ユメの『鑑定眼』でリムルのスキルを解析した結果、リムルはユニークスキルを二つ持っているという結果が出てきたのだが、二つ目のユニークスキルに関しては教えられなかった。

 本人曰く、言いたくないらしい。

 

 

『え~いいじゃん別に教えてくれても。減るもんじゃないんだしさ!』

『あのな~、こっちにも事情ってもんが……』

『おい、ユメ。リムルが困ってるだろ。友達だからと言って、なんでも知っていいと思ってるならそれは大間違いだぞ』

『う~』

 

 

 当たり前のようにユメが食い下がったので、オレは正論を述べて黙らせる。

 人間なら言いたくないことくらいはあるだろうからな。そこを尊重しなければ、人間とは仲良くなれないはずだ。今のリムルはスライムとは言え、元人間だから、そこらへんはオレも気を付けないとな。

 

 

 そう思いながら洞窟内を移動していると地底湖の前までやってきていた。

 オレ達がこっちの世界にやって来た際に付着していたマ素は、ヴェルドラと会った次の日に浄化して、念のため『次元門』やユメが落ちた地底湖辺りも対処済みだ。なので、この地底湖も魔素濃度が高いだけの地底湖に戻っている。

 

 

『懐かしいね~。この地底湖の上にはワタシ達の世界に通じる門があったんだよね~』

『二週間前の話じゃねえか』

『俺なんか『魔力感知』が使えなかったせいでこの地底湖に落下したんだけど。まあそのおかげで、エクストラスキル『水操作』を獲得できたから結果的には良かったんだがな』

 

 

 そんなことをサラッと言っているリムルだが、地底湖に入っただけで水操作ができるようになるってかなり凄いことじゃね? かなりスキルに愛されているな。

 というか待てよ? ヴェルドラからはリムルの守備を任されたけど、リムルも戦う手段くらいは持っておくべきだよな? オレ達が近くに居れば問題ないとは思うが、世界には絶対なんてないんだから、打てる手は打っておくべきだ。

 

 そう思案して、オレはリムルに呼びかける。

 

 

『リムル、特訓するぞ』

『特訓?』

『この世界は弱肉強食だからな。少しでも実力をつけておくに越したことはないだろ』

『確かに! ヴェルドラみたいな天災級(カタストロフ)相手の抵抗は無理だと思うけど、せめて災厄級(カラミティ)には勝てるようになって欲しいよね』

 

 

 ウンウンとユメが頷いているであろう姿を尻目に、オレもそうだなと呟く。

 オレ達はまだ、この世界の魔物の強さを詳しく知らないが、ヴェルドラから聞いた限りでは、リムルは災害級(ハザード)には勝利出来るだろう。天災級(カタストロフ)災禍級(ディザスター)に勝つのは無理だろうが、せめて、魔王の幹部に勝利できる程度には強くなってほしいというのがオレ達の本音だ。

 

 そこまでリムルが強くなってくれればこの世界では充分に生きられるはずだ。何故なら、もし本物の魔王が来ても、オレ達が相手すればいいのだし、最悪の場合はブレイクワールドに強制送還すればいいのだから。リムルならオレ達の世界のマ素を多少浴びても大丈夫だろうしな。

 

 

 

 ということで早速、リムル育成計画第一弾が始まった。第二、第三弾もいずれは実施する予定。

 第一弾ではとりあえず遠距離攻撃の手段を獲得させる。リムルの『捕食者』はオレが見てる限り、対象と接触する必要があるみたいだからな。遠距離相手に対処出来ないのは致命的だ。

 ということで、リムルにこの地底湖の水を三割程『捕食』させます。

 

 

『なんでだ?』

『いいからいいから』

 

 

 リムルはあんまり納得していなかったようだが、それでもオレの指示に従ってくれた。

 リムルが『捕食者』の権能で吸水したのを確認したら、即座にリムルに向けて水魔法をぶっ放します。

 

 

水球(ザバ)

『うわっ!?』

 

 

 リムルは驚きながらも迫りくる水玉を回避した。

 チッ、避けられた。まあいいや。面白い反応が見れたし。それに、ちょっとしたイタズラ心でリムルを狙ったが、実際、リムルに命中させる必要性はなかったからな。

 

 

『はい、リムル、今のを真似してみて』

『今の技を? まあいいけど………それよりキョウム? さっき俺を狙う必要あった?』

『ないな』

『ないのかよ!』

 

 

 はあ、とリムルはため息をつくような雰囲気を見せた後、試行錯誤を繰り返した。

 最初はただ大量の水を外に放出したり、小さな水玉をゆっくり動かしているだけだったが、十分経たないうちに、それなりの速度で撃ち出せるようになった。やっぱり中々センスがあるな。もしくは、リムルの前世である世界の化学や物理の知識を応用してるのかもな。

 

 オレが今まで記録した異世界の情報でも、知識が豊富な奴の方が魔法やスキルの扱いが上手い傾向にあるし、そういう点では、前世の記憶を持っているのはなかなかの強みだ。といっても、魔法はイメージの世界だから、凝り固まった考えをされたら困るがな。

 

 

『ふう、意外と簡単だったな』

『……筋がいいな』

『この調子なら高難易度の技も問題なさそうだね!『水操作』って極めれば鉄さえも切断できるし、物理、魔法どっちをとってもかなり汎用性が高いからね~』

 

 

 それから少しの間、リムルは『水操作』を使っていろいろ模索していると、一刻も必要とせず攻撃手段を獲得して見せた。スキル『水刃』というらしい。

 この水刃はオレが先程見せた水球(ザバ)と同じような技でありながら、殺傷力はこちらの方が圧倒的に上。何故なら撃ち出される水がその名の通り、刃の形に整えられて、それなりの速度で射出されるからだ。この技に耐えるなんて、ブレイクワールドの野良の魔物では無理だろう。これで生まれたての魔物だと……

 

 想定していたよりも凄い技を獲得してくれたので、オレは驚愕しながらも安心する。この調子ならば次第に強力な技をたくさん獲得してくれそうだ。

 この世界にも魔法があるとのことなので、ブレイクワールドの魔法を教えようかなという考えも頭をよぎったが…………それは流石にやめておいた。魔法が発動出来る事はこの世界に来て確認したものの、この世界の魔法を見たことがないため、限度が分からない。

 水球(ザバ)みたいな超初級の技ならともかく、効果範囲内の全ての生物を死滅させる技やブラックホールを発生させる技は、世界によっては禁術認定されており、一発ぶっ放しただけで世界が壊れてしまうこともあるのだ。

 

 流石にそんな事態は嫌なので、この世界をもっとよく知ってから指導することにしよう。

 そんなことを考えながら、洞窟探検を再開するのだった。

 

 

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 

 

 

 

 リムルが『捕食者』でヴェルドラごと『無限牢獄』を飲み込み、キョウムとユメと共に出発した後。

 『無限牢獄』のすぐ側の水溜りの水面に、真っ黒な毛皮のローブを纏い、頭までフードを被った者の姿が映る。

 

 

「よくも私の研究材料を飲み込んだわね、あのスライム達」

 

 

 基軸世界の裏側で、鏡の魔女「イジス」はそう呟いた。

 

 

 





 リムルとヴェルドラが最初の友達というのは譲れないのでこんな風に書かせていただきました。

 キョウムとユメはリムルとヴェルドラとは同格ではありません。名付けに参加していないので当然ですよね。


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