不定期更新とは書いてるけどなるべく月曜日に投稿したいな。
この世界に転生して、ヴェルドラを捕食して数日が経った頃。
俺達はスライムタワーになって雑談しながら洞窟内を探検していた。
なぜスライムタワーになっているかというと……
『せっかくスライムが三匹いるからスライムタワー作ろうぜ』
……とキョウムが提案してきたからである。
何言ってんだコイツと思ったものの、俺も別に嫌ではないのでその案に乗ったが……思った以上に動きやすかった。ちなみに下段がキョウム、中間が俺、上がユメである。
だが、俺が『捕食』出来るものを見つけると、すぐさまキョウムは喰わせようとしてくるため、途中途中で足を止めた。俺がヴェルドラ以外に『捕食』したものは綺麗な輝きを放つ鉱石、ヴェルドラと出会うまでに喰いまくった植物。そして俺の攻撃手段を確保するための地底湖の大量の水だ。
ついでに、それだけ喰っても俺の『捕食者』の『胃袋』にはまだまだスペースがあり、ヴェルドラを飲み込んだ上でも七割程の空きがある。凄まじい容量だな。
その後、キョウムとユメの指導の下、攻撃技『水刃』を獲得した。ヴェルドラから俺の守護を任された二人だったが、弱肉強食の世界で生き抜くためにも、俺にも戦える力を持ってもらうとのことらしい。
欲を言えばこの二人が使える魔法も教わりたかったが、それはこの世界の一般常識を知るまでお預けということになった。残念。魔法は男のロマンなのに……
洞窟を進んでいるうちに大きな門の前にきて、門からガチャという音が聞こえたので咄嗟に隠れる。丁度門の前にいてスライムタワーの形を崩していたのだが、キョウムとユメも俺についてきてくれた。
「この鍵もうボロボロだぜ」
「仕方ないでやんすよ、三百年も手入れされて無かったんでやすから」
「でもでもぉ、ギルマスも私達をこき使いすぎよう! 封印の洞窟の調査にいけだなんてぇ」
俺達の前に現れたのは楽しげに笑いながら話す、三人組の人間だった。
それぞれが装備を整えていて、こんな洞窟にいることから、恐らく冒険者だと思われる。
元人間としては話しかけてみたい気持ちはあるが、今の俺はスライムだし言葉も通じないから、彼らに見つかった瞬間、即討伐なんてことになる可能性がある。
まあそうなったところで、キョウムやユメがいるので逆に返り討ちにするかもしれないが、異世界に来て早々に人殺しなんて勘弁なので声を掛けるのは止めておこう。
…………と、俺が諦めようとした瞬間。
『ワタシ、あの人達にこの洞窟について聞いてくる!』
ユメがそう言ったので、慌てて止めようとした俺だったが…………目の前で起きた出来事に呆気を取られ、絶句してしまった。
ユメがスライムの身体をコネコネと動かし始めたと思ったら、美少女の姿に変身したからだ。
大自然を思い浮かべる翡翠の瞳。髪は綺麗な紺碧色で、肩辺りまで伸びている。
背丈は女子高生くらいだが、顔には幼さが残っている。いや、身に纏う衣服からそういった要素が感じられるのかもな。何故ならユメの衣装は魔女の姿を形作ったような、大きいサイズの真っ赤なとんがり帽子に黒いローブ。華奢な体であることを強調するように、スカートの丈は少し短くて活発なイメージが感じられる。風が吹けば見えそう…………いやいや、これはセクハラになるな。俺は紳士なので、そういうやましい考えは持たないのだ。
だが、そんな魔女の姿とは不釣り合いに黄金の機械が耳に取り付けられている。
そして、ローブで若干見えづらかったがユメは腰当たりに剣を携えていた。魔女っ子のような姿だが、もしかしたら闘う際にはその剣を抜くこともあるのかもしれない。
それはともかく、スライムが人間になるという意味不明な光景を前にしたら、俺に止めるなんてことは不可能だった。だが、流石というべきか、キョウムはすぐさま止めるように呼びかけてくれた。
『アホ、早く戻ってこい』
『うわー酷! ワタシはアホじゃない!』
『戦闘や作戦立案の時以外ではアホだろ』
『……流石のワタシも傷つくよ?』
『お前、自分の今までの行動を振り返りやがれ。それとお前はこんな事で傷つかないだろ』
そんなことを言い合っている様子をみると、やっぱり兄妹というだけあって凄く仲が良さそうである。ちなみに俺にも年が離れた兄がいたが、ここまでは仲良くなかった気がするな。
それからキョウムは真面目にユメに解説をし始めた。
『さっきあの人間たちは三百年間この門は手入れされてないって言ってただろ。いくらお前が完璧に人間に化けていたとしても、三百年も開閉されていない門から出てきたら、人間じゃないことはどんなバカでも分かるぞ。…………分かったならとっとと戻れ』
『はーい』
キョウムの解説を聞いたユメは渋々といった感じで少女の姿を崩し、スライムの姿に戻り、スライムタワーに戻って来た。俺たちが話し込んでいる間に冒険者たちは行ってしまったようだ。なので、俺たちも門を潜り抜けて先に向かうとしよう。
『念のため聞くけど二人はスライムだよな?』
『そうだよ~』
『まあ、リムルと同じく一般個体とは大分違うけどな』
何だか俺まで化け物扱いされているのは解せないが、それも仕方ない。だってどう考えても『大賢者』と『捕食者』なんて、スライムが持っていいスキルじゃないと思う。ヴェルドラを助けるために『捕食者』の方はある程度みんなに説明したが、『大賢者』のことは教えていない。とても便利な能力ではあるのだが、頭の中に会話相手がいるなんて言ったら頭がおかしいとか思われそうだから、言うつもりはないのである。
それに、ユメはユニークスキル『閲覧者』を所持していることを教えてくれたが、キョウムは全然能力開示してくれなかったしな。
その後、俺たちは門の先に足を踏み入ると、真っ黒の蛇みたいな魔物と遭遇した。見た目はとても怖かったのだが、俺が怖いと思う暇もなく…………
『
…………ユメが恐らく重力に関する魔法を使って即座に蛇を殺していた。怖すぎるだろ。さっきの姿通り、魔法を使うのが得意なようである。
そして俺は『大賢者』にこの蛇を喰うように推奨されて、言われるがまま――気持ち悪い気分を無視しながら――捕食し、黒蛇の固有スキル『毒霧吐息』と『熱源感知』を獲得した。味覚なくてよかった。
ついでに『大賢者』曰く、この黒蛇は
黒蛇のスキルを確認していると、『魔力感知』が他の魔物を捉え、そちらの方に意識を向けるとコウモリが三匹飛んでいた。待てよ? あのコウモリを捕食出来れば……
『キョウム、あのコウモリを捕食したいから捕まえてくれ』
『流石リムル。積極的にスキルを獲得して強くなろうとする姿勢、オレは好きだぜ』
何だか勘違いしているみたいだけど、捕食したいのは本当だから、反論はせずに見守る。
俺の頼みを聞いたキョウムが『
コウモリを喰うという気持ち悪いシチュエーションを少しでも和らげるため、捕食する傍らで会話を続けた。
『キョウムも魔法が得意なのか?』
『得意と言えば得意だが、オレたちは近接戦闘もできる。スライムの姿なら魔法メインだが、人型なら接近戦メインだな』
『ということはキョウムも人型になれるのか』
『オレたちのマスターが優秀だからな』
『マスター?』
こいつらが別世界の魔物だということは説明されたが、二人の住んでいた世界については聞いていなかった。まあ、別世界の魔物という情報のインパクトが凄すぎたし、雰囲気的に言いたくなさそうだったのが聞けなかった原因なんだが。
キョウム曰く、彼らの世界はブレイクワールドと呼ばれていて、人間は住むことさえできないような荒れ果てた世界だという。俺の前世で当たり前のようにあった木々や海といった自然がないどころか、歩くことが出来る大地さえも満足になくて、一つ一つの星は東京ドーム一個分程度の大きさしかないらしい。
加えて、その世界では魔素が充満しているため魔物がわんさかと溢れかえっており、知性なく暴れ回る魔物はいないが、農業もなければ工業もないので人間の生存には全く適していないようだ。
更に魔物がはびこっているので魔素濃度が異様に高く、普通の人間ならばブレイクワールドに足を踏み入れるだけで状態異常に陥ったりするとのこと。
聞けば聞くほど、どんな魔境だよという感想が頭に浮かんでくる。といっても、人の故郷を馬鹿にするのはダメだと思うから言わないけど。
そんな世界でこの二人は人間――正確には
『しかも便利なことに、スライム形態の時の強さはそのまま人間形態に直結するから人間形態の方が優秀なんだよね~』
『人間形態が優秀だという意見には賛成だが、オレはスライム形態の方が楽だな』
彼らにとっては戦いが有利になるという意味合いでしかないらしいが、元人間としては羨ましい限りである。
そんなことを話しているとコウモリの解析が終了した。このコウモリの種族名は
それから俺は三日三晩、大賢者のサポートありきで試行錯誤を行い、ようやく俺の目的は達成された。そう、元人間である俺にとってはなくてはならない発声器官を作ることに成功したのである!
「あーあー、二人とも聞こえる?」
試しにキョウムとユメに向かって話しかけてみる。
今まで『念話』に頼って喋っていた俺がいきなり声を出したから、この二人もさぞかし驚いて……
「ああ、聞こえるぞ」
「うん、バッチリ聞こえるよ」
あれ? 思った以上に驚いてくれなかったし、当たり前のようにこいつらはスライム形態のまま声を出しやがった。いや、体の構造を自由に変えられるこいつらにとっては、発声器官を作るなんて簡単なことだったな。自慢しようとした俺が恥ずかしい。
そんな俺をよそに、二人は物騒な会話を始めていた。
「それにしても『捕食』は便利な力だな」
「だね~。元の世界の装置に頼って他の魔物と融合してるワタシからすれば羨ましいよ」
「やっぱり理性のない魔物はどんどん喰わせるか」
「そうだね~。理性があっても有害ならば喰わせよっか」
そんな恐ろしい会話をスライム兄妹は繰り広げていて、ちょっと怖いと思ったのは内緒だ。
大げさだな………と俺は思ったが二人はその言葉をそのまま有言実行して見せた。
蛇や蝙蝠の近くには魔物があまり居なかったので、この三日間は襲われることはなかったのだが、そこから先は魔物との連戦だった。といってもキョウムとユメがいたから俺の出番はなかったけど。
コウモリの次に出会ったのは大きなトカゲだった。かなり腹が減っていたのか、俺達を見つけるなり、その巨体で攻撃を仕掛けてきたのだが…………キョウムの魔法で即殺される。
「リムルのエサにするか。体を木端微塵にしないように……『
キョウムがそう呟くとトカゲのいた場所がいきなり爆ぜ、トカゲの丸焼きが完成した。
現実にこんな料理があっても絶対に食べることはないのだが、味覚はないし、捕食したらスキルを獲得できるのだから細かいことは気にせずに喰うとしよう。
トカゲの丸焼きを無事に捕食して、獲得したのは『身体装甲』。このスキルの使い道は後で模索してみよう。ちなみにトカゲの種族名は
トカゲを捕食した後、直ぐにガサガサという音が(魔力感知で)聞こえ、即座に身構えた。音からなんとなく察していたのだが、現れたのはでかい蜘蛛だった。こちらに関しては見た目から拒絶したいくらいなので、すぐさま『水刃』をぶっ放そうとしたけれど……
「ほい、一仕事完了っと」
ユメがそんなことを言った途端、蜘蛛の周りにたくさんの氷の塊が出現して、それらが一斉に蜘蛛に向かって放たれる。蜘蛛はかなりの大きさだったため避けることも出来ずに全弾命中してしまい、あえなく絶命していた。今の現象は
ユメは蜘蛛が絶命したことを確認すると、こちらの方を見て、「ほらリムル、ご飯だよ」と言ってきた。俺をペットか何かだと勘違いしてるんじゃないかと密かに思ったため「その言い方はやめろ」とだけ言って、尻込みしながらも頑張って蜘蛛を捕食し、スキル『粘糸』『鋼糸』を獲得した。
スキル狩りは順調に進んでいて、そろそろ戦闘に使えそうなものを選出しようかなと思案にふけっていた時、この洞窟内の最後の魔物に遭遇した。
そこにいたのはでかいムカデで、俺は思わず「キモ」と呟いていた。先程の蜘蛛もそうなのだが俺は虫全般が苦手なのだ。以前の人間だった時ならば、虫を見つけたら直ぐに殺虫剤の出番だっただろう。しかし、界渡りして魂が鍛えられたからかは分からないが、今は少しの嫌悪感だけで済んでいる。正直なところありがたかった。
そんな俺の事情を他所にキョウムはムカデと戦い……ではなく、キョウムによる即殺が行われていた。
「うーん、まだ使っていない属性はたくさんあるがこれにするか。『
キョウムは軽く実験をするような口調でそういうと、一条の光がムカデに向かっていった。その光がムカデと命中すると、接触した部分から高熱が迸る。黒蛇から獲得した『熱源感知』で見てみると千度を超える熱量が確認できた。ムカデがそれほどの熱量に耐えられる訳もなく簡単に仕留められる事になった。
ムカデを捕食して『麻痺吐息』を獲得しながら、キョウムやユメの使っていた魔法を思い出す。水、重力、風、爆発、氷、熱。その魔法のどれもが俺がいた世界では見ることが叶わない、魅力的なものだったので、いずれ俺も使ってみたいものだな。そう思いながら洞窟探検を再開したのである。
……そういえば俺が獲得した『水刃』使う場面無かったな。というよりあの二人がいるなら俺が戦う手段持たなくてもいいんじゃないか? という疑問さえも頭をよぎる。
まあでも、ヴェルドラはこの世界が弱肉強食だと言っていた。俺にも戦う手段は必要なのだろうし、備えあれば患いなしという言葉もあるくらいなのだから、用心しておくに越したことはないだろう。別に二人のように戦闘狂というわけではないが、ヴェルドラに面白おかしい話を聞かせるためにも、もっと強くならないとな。
誰かキョウムやユメの人型のイラスト書いてくれないかな~