改造スライムと転生スライム   作:黒井政人

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 ちょっとだけリムルの性格が変わっちゃってるかも・・・




ゴブリン達

 

 

「さてどうする?」

 

 

 一か月以上もの間滞在していた洞窟を抜け出したオレたちは、この世界で初めての太陽光を浴びながら、ユメとリムルに問いかけた。

 

 目の前には見渡す限りの森。他世界ならば、何度も見たことがある光景だがオレ達の世界では決して見ることが叶わない綺麗な景色。脆弱な種族であるが故に荒れ果てた世界に閉じ込められているマスターに、是非とも一度は見てもらいたい景色の一つだ。

 

 そんなことを考えながらも状況把握は怠らない。魔素濃度は薄いし、『万能感知』を使って周辺を観察しても、強者の反応は感じられない為、洞窟内よりかは安全だと思われる。

 

 

「とりあえずこの森を歩くか」

「賛成!」

 

 

 リムルの意見にすぐさまユメが賛同したことで、適当に散策することになった。実際、問いかけたのはオレだが、それ以外特にやることないしな。

 

 

 リムルは洞窟内で蜘蛛を捕食する事によって獲得した『粘糸』や『鋼糸』を上手く使い、枝に糸をくっつけまたすぐに次の枝へと振り子の要領で素早く移動していた。……そういえばそんな能力者を題材にした映画が他世界にあった気がする。

 ………ああ、思い出した。クモ人間だ。ユメが確か「面白かった!」とか言って色々解説してくれた気がするが、異世界の魔導書を解読するのに夢中でほぼ聞いてなかったんだよな。記録はあるはずだから、今度見てみようかな。

 

 ちなみにオレたちは宙に浮かびながらリムルの後を追っていた。魔法や『重力操作』を使えれば空を飛ぶなんて容易いし、速度も自由自在なので移動の際にはかなり便利だ。これくらいなら後でリムルに教えてやるか。羨ましそうに見てる気がするし。

 

 途中で額に星のマークがある狼とその他数匹の狼と会い、理性があるようなのでリムルに喰わせようか悩んでいたら、リムルを見るなり一目散に逃げていった。追いかけようかとも思ったが面倒くさくなり、いつかまた会えるだろと考えて見逃した。会えなくても探し出して狩ればいいだけだしな。

 

 

 糸を使っての移動に飽きたのか、リムルが地面に降りてきたので、オレたちも飛行を止めて着地し、先程と同じスライムタワーに戻って移動を再開した。スライムタワーを完成させた直後、リムルが質問を投げかけてきた。

 

 

「お前等スライムタワーになるより空飛ぶ方が楽じゃないのか?」

「いや、どっちもたいして労力は変わらないぞ」

「うんうん、慣れるまでは空を飛ぶ方が大変だと思うけど、感覚さえ掴めれば……ん?」

 

 

 ユメがリムルの質問に答えていたが、およそ三十匹くらいの軽武装の魔物の集団が目の前に現れたので、その会話は打ち切られた。

 

 緑の肌にボロボロの衣服。知能がそこまで高くなさそうな雰囲気。スライムと同じくらい弱そうな子供の体格。オレの異世界の知識から考えて、こいつらはゴブリンだろうと推測したが正解だった。

 そういえばゴブリンってオレ達の世界にはいないんだが、魔物の系統としては何に分類されるんだ? 一番考えられるのは自然(フェノメノン)系かな。まあどうでもいいことだが。

 

 そのゴブリンたちの内、赤いバンダナを付けた隊長格らしき一匹が口を開く。

 

 

「強き者たちよ…………この先に何か用事がおありですか?」

「初めまして、でいいのかな? 俺はスライムのリムルという」

 

 

 リムルが喋る様を見たゴブリン達がザワザワと騒ぎ始めた。

 ヴェルドラも言っていたが、この世界のスライムは全然たいしたことがなく、思考もしない最弱の存在らしいので、リムルが会話出来る様子に驚いたのだろう。

 

 

「で、俺たちになんか用か? 俺たちはこの先には、別に用事なんかないぞ?」

「左様でしたか。強力な魔物の気配がしたので、警戒に来ただけです」

「強い魔物の気配? もしかしてこいつらか?」

 

 

 ゴブリンの言葉を聞いたリムルはオレやユメの事だと思ったらしいけど、オレ達のことではないはずだ。何故なら、リムルと違ってオレたちは人間が存在する世界でも世界に異常を発生させずに過ごせるように、マ素の循環を完璧にしているからだ。

 というかオレ達のマ素はこの世界の魔素と少し違い『汚染』の効果があるので、この世界の人間や弱い魔物が浴びたらどんな効果が発揮されるか分からないから、迂闊に放出出来ないんだよな。

 

 

「いえ、そちらの方達からは強い気配を感じません」

「まあ、ワタシたちはちゃんと力を抑えているからね~」

「確かに、じゃあ強い魔物の気配は感じないぞ?」

「御冗談を、そのようなお姿をされても我々は騙されませんぞ」

 

 

 どうやら強い魔物というのはリムルのことを言っているらしい。

 確かにリムルからは魔素が漏れ出ているけど、オレたちからすれば、たいしたことないから無視していた。まあ、E~Fランクぐらいのゴブリンからすれば、リムルから出ている魔素は脅威以外の何ものでもないだろう。さっきの狼達もそれで逃げて行ったんだろうし。

 

 

『なあキョウム、何で俺が恐れられてるんだ?』

『……もしかしてそれ無意識にやってたのか?』

『それ?』

『……魔力感知で自分の事を見たら現状がよく分かると思うぜ』

 

 

 リムルが魔素を漏らしているのは魔物に襲われないためだと思っていたが、思い違いだったな。まあまだ生まれて数ヶ月程度のはずだし、魔素のコントロールが未熟なのは仕方ないとは思う。

 そんなことを考えていたら、オレから指摘されたリムルがすぐさま魔素をしまい込む事に成功した。産まれて間もないのに、『魔力感知』もすぐに習得するし、器用な奴。鍛えがいがあるな。

 

 

 リムルが魔素を収納したことにゴブリンは感謝を述べつつ自分達の住処に案内してくれた。会話の流れから今日は泊めてくれるらしい。ちなみにスライムタワーは崩して、リムルを真ん中にして、オレは右側に、ユメは左側に位置している。

 

 案内された村はボロボロで――まあ期待していなかったからいいんだが――その中でも一番マシな建物っぽい建造物で待っていると、ヨボヨボの老人ゴブリンとさっき声をかけてきた隊長格らしきゴブリンが現れた。老人ゴブリンはここの村長だった。

 

 オレたちはゴブリンからいろんな話を聞いた。なんでもヴェルドラがいなくなったことで魔物が活発に動きはじめ、人間もこの森に侵入するようになったらしい。あの様子からじゃ想像できないが、天災級(カタストロフ)と呼ばれるだけあって、やっぱりヴェルドラはすごかったとのこと。

 

 そして村長はオレたちに頼み事をして来た。

 どうやら、ヴェルドラがいなくなったことで百匹ぐらいの牙狼族がこの地に攻め込んで来て、ゴブリンたちは応戦したが、「リグル」という名前を持ったネームドゴブリンも敗北してしまい、他の村はこの村を見捨てたとのこと。

 そのため、この村には牙狼族に対抗する戦力も皆無なので、オレたちの力で牙狼族を倒して欲しい、と涙を流しながら土下座してきた。恐らく、藁にも縋る思いだろうが……

 

 牙狼族は恐らくさっき見かけた狼のことだろうから、実力的には何の問題もない。だが、オレ達がこのゴブリン達を助ける義理もなければ、滅茶苦茶弱いので配下にする気も起きず、メリットがないのも事実ので、引き受けるかは別だ。オレとユメだけで旅をしていたらまず助けない。ユメも多分オレと同じ結論になるだろう。

 

 オレが薄情にそう考えていると、リムルがオレ達の方を交互に見ながら質問が来た。

 

 

「百匹の牙狼族か…………キョウム、ユメ勝てるか?」

「むしろそれぐらいならリムル一人で勝てると思うぞ?」

「うん、楽勝だと思う。なんなら洞窟内の魔物の方が強そうだよね」

 

 

 さっき見た感じ、あの狼達の一匹一匹はCランク程度だし、まったく脅威に感じない。ゴブリンたちからしたら強いかもしれないが、リムルからすれば有象無象の集団だろう。

 オレ達の答えに満足したのか、リムルは改めてゴブリン達に向き直る。

 

 

「そうか、村長、一つ確認したい。俺たちがこの村を助けるなら、その見返りはなんだ?お前たちは、俺たちに何を差し出せる?」

 

 

 リムルは既にどうするか決めているようだが、建て前を作る上でも村長達にそう問いかけた。

 オレとユメだけなら断っていただろうし、マスター同様、リムルも随分とお人好しみたいだな。

 

 

「我々の忠誠を捧げます! 我等に守護をお与えください、さすれば、我等は貴方様達に忠誠を誓いましょう‼」

 

 

 そんなもの貰っても嬉しくはないが、ここは友達の意見を尊重するとしよう。

 ゴブリン達のその言葉を聞いたリムルは宣言する。

 

 

 

「いいだろう。その願い、聞き届けよう!」

 

 

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 

 

 ゴブリンの村長からの頼みを聞いた俺は切り株の上でどっしりと構える。

 さてどうしよう。成り行きでこの村の守護者になったけど何かした方がいいのか?ぶっちゃけ、キョウムやユメが居るから牙狼族が来るまで待っていればいいだけな気がするんだけど……

 そんな事を考えていた俺にキョウムから告げられた言葉。

 

 

「あ、今回の牙狼族戦、オレとユメはサポートはするけど戦いそのものには参加しないぞ」

「へ?」

 

 

 思わず変な声が出てしまった。

 洞窟内ではあんなに率先して襲ってきた魔物を皆殺しにしていたのに、どういう心変わりだ?

 とりあえず、理由を聞いてみる。

 

 

「いや、洞窟内では全ての魔物をオレ達が討伐してたが、今回の戦いはリムルにとって丁度いい実戦の機会だからな。実際、リムルでも勝てそうな相手だし」

「うんうん。せっかくリムルがたくさん技を取得していたのに、ワタシ達の魔法が通じるかの実験をしたいっていう理由で殲滅しちゃったからね。ごめんねリムル」

 

 

 キョウムは興味津々といった様子で、ユメは申し訳なさそうにそう答えた。

 こいつら一応、俺に配慮してくれてたんだな。それならば、今回は俺が頑張ることにするか。頼りっきりは良くないしな。

 

 

「まあ、安心しろよ。無いとは思うがもし万が一にもピンチになったら助けてやるから」

「そうだね。絶対に無いとは思うけど、助けが必要になったら」

「ワオオオオオン」

 

 

 ユメの発言に被せるように、かなり遠くから狼の遠吠えが聞こえてきた。

 その遠吠えを聞いたユメは、はぁ~とため息をつくような雰囲気を出す。

 

 

「やっぱり、牙狼族はワタシが殺っちゃおうかな~」

「お前手のひら返し早すぎるだろ! 俺に任せるんじゃなかったのか!」

「いや、たかだか犬如きがワタシの発言を遮るなんて許されることじゃないんだよ」

「思考が過激すぎる!」

 

 

 こいつ人間形態の見た目は結構可愛らしい女の子だったけど、かなり危険な奴なのかも……

いや、今までの発言の内容から考えたら子供っぽいだけか。

 その後、ご立腹だったユメをキョウムが窘めたことでユメの機嫌がなんとか治った。そして二人はすぐにどこか遠くを見るような仕草をして、俺へと報告してきた。

 

 

「どうやら牙狼族は今夜中にでもこの村に来るようだぜ」

 

 

 俺からすれば「そうか」で終わるのだが、この言葉を聞いてゴブリン達は恐慌状態に陥りかけた。

 あ、そういえば俺達が牙狼族を倒すことこいつらには言っていなかったな。村長に頼まれた時、その場には赤いバンダナを付けたゴブリン以外にゴブリンはいなかったし。

 仕方ない。ここはとりあえず、激励することにしよう。

 

 

「みんな聞いてくれ、怯える(ビビる)必要はない。今から倒す相手だしな。最善を尽くす、その事だけを考えろ!」

 

 

 俺が偉そうにそう言うと、ゴブリン達から恐怖の感情が消え去り、歓声が沸き上がった。

 思った事を口に出しただけなのだが、効果はあったようだ。

 

 

「リムルもそんなに気にするな、たとえ狼が千匹いたとしても問題なく勝てるからな」

「うんうん、いざとなったらワタシが牙狼族を皆殺……じゃなくて、リムルを守るから気楽にね」

「ユメ、ほぼ誤魔化せてないぞ」

 

 

 まあこいつらの強さは本物だから安心できるんだけど。

 俺がこの世界に転生して来て初めての友達であるヴェルドラ。そのヴェルドラが認める程なのだし、洞窟内で放っていた魔法も凄まじかった。……ここだけの話、人の姿を取れるのは凄く羨ましいが、そこはこの際置いておく。

 

 

「ああ、この戦、絶対勝つぞ!」

 

 

 

 

 

 夜になるまでまだかなりの時間があるため、今やれることはやってしまおう。

 ということで、村長に怪我人達がいるテントに案内してもらった。そこには十数匹のゴブリンが倒れ伏しており、その中には今にも息絶えそうな者もいた。ここは俺が洞窟内でひたすら喰いまくっていたヒポクテ草から作った回復薬の出番だな。

 と、思っていたのだが……

 

 

回復(ホイミ)

 

 

 ユメが魔法を使うと、重傷だったゴブリン達の傷がすぐに塞がり、回復薬の出番がなくなっていた。もう何でもありだな。

 その様子を見ていた村長は「流石はユメ様、蘇生の力をお持ちとは」と呟いていたが、ユメは

アハハ!と声を出して笑いながらその言葉を否定する。

 

 

「確かにワタシ達は、魂さえあれば対象を蘇らせる魔法も使えるけど、今使ったのはただ肉体に働きかけて回復させただけだから、多分リムルでも出来ると思うよ」

 

 

 そんなことを平然と述べるユメに無茶言うなよという言葉が出かかった。

 そりゃ使えるなら使ってみたいけど、別世界の魔法がそんな簡単に使える訳……

 

 

《告。「回復(ホイミ)」の解析及び習得に成功しました》

 

 

 …………

『大賢者』マジパないわ。俺はまだまだ『大賢者』の事を侮っていたようである。

 ユメは魔法陣等も一切出さずに魔法を行使していたので、本当に解析できたのか? と思ったが『大賢者』の報告によると、ユメがこのテント内にいる者全てに魔法を施したことで、俺もその魔法の対象となり、『捕食者』の『解析』が有効だったとのこと。完全に偶然らしい。

 というかもしかして、キョウム達が洞窟内で使っていた魔法も使えちゃったり?!

 

 

《解。『解析』を実行すれば習得は可能です。常時『解析』を実行しますか? YES/NO?》

 

 

 勿論YESだ! 頼りにしてるぜ『大賢者』!

 

 

《了》

 

 

 

 

 

 大賢者に魔法習得をお願いしてウキウキ気分になりながら次の仕事に取り掛かる。

 俺たちはこの村に柵を張ることにした。ないとは思うが、裏から攻められてゴブリンが死ぬのも嫌だからな。柵を作り終えたとキョウムから報告を受け、俺の糸で補強及び罠を仕掛ける。

 更にキョウム達にも罠をお願いした。サポートはするって言っていたし、これくらいなら、やってくれるだろう。

 

 

巨岩針(ジバルンバ)

 

 

 キョウムが無詠唱で唱えると、柵の外側にオレンジ色の魔法陣がいくつか現れたと思ったら、すぐにそれは見えなくなる。不発か? と思ったが『大賢者』からの説明を受けて理解した。確かに罠魔法としては最適だな。

 

 

「あれ? 消えちゃったすよ? 不発っすか?」

 

 

 俺が『大賢者』から解説を受けている時に団子鼻のゴブリンがそう呟いた。

 そして、その魔法陣があったところに近づき魔法陣の縁部分に足を踏み入れようとして……

 

 

「バカ‼ 戻れ‼」

「へ?」

 

 

 俺がすぐさま引き返すように言った瞬間、魔法陣が光り輝き、ドンッ‼ という音と共に地面から鋭く尖った岩が生えてきた。危ない、間一髪だった。俺がもう少し声を出すのが遅かったらあのゴブリンは重症、もしくは死んでいたかもしれない。殺傷力高すぎだろ。

 

 

「威力は十分だろ?」

「あ、ああ……」

 

 

 俺はキョウムの魔法に戦慄しながら、力なくそう答えた。これ、俺の罠が意味をなさないんじゃないか? それどころか俺の出番がやってくるのかさえ分からない。

 サポートしかしないと言っておきながら充分すぎる程の活躍。頼りになるなと思う反面、キョウムやユメとは絶対に敵対しないと心に深く刻んだのであった。

 

 

 

 





「というかキョウム、もしお前の魔法であのゴブリンが死んだらどうするつもりだったんだ?」
「その時はすぐに蘇らせていたぜ。回復魔法はさっきユメが見せてたと思うけど復活魔法も使えるからな」
「ええ……」


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