改造スライムと転生スライム   作:黒井政人

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 3連休忙しくて結局投稿が水曜日になってしまった。悲しい



牙狼族と名付け

 

 ゴブリンから牙狼族討伐を頼まれたのに、チートスライム兄妹にほとんど仕事を取られてしまったため、俺の出番はなく、二人の行動を横からただ見ていただけである。サポートしかしないとは一体……

 だからと言って何もしない訳にはいかないため、ゴブリン達に周りの警戒及び牙狼族の動向を調査するように命じることにした。

 それなのに、キョウムときたら……

 

 

「斥候ならオレの配下共を使えよ。例え殺されても魂はオレの中に戻ってくるから損害はゼロだぜ」

「キョウムがこっちに来たのは俺と同時期だろ? それなのに配下なんているのか?」

「オレ……というよりあの方(マスター)の幹部は故郷の技術の一部を使って、契約した相手を使役する力を持ってるからな。それにたとえ殺されても契約の解除さえしなければいつまでも使役できるから、かなりの数を派遣出来るし、一匹一匹が……」

「OK分かった。気遣いありがと、でも大丈夫だから出さなくていいぞ」

 

 

 ゴブリン達が近くにいるから所々ぼかされているが、そのことは一旦置いといて。

 こいつの辞書に自重という言葉は存在しないのだろうか。

 なにやら不穏な空気を感じとった俺は、半ば、キョウムの説明を遮るように声を出した。

 これ以上俺の仕事を取らないでくれ。このままじゃ、キョウムやユメに頼りっきりのダメ人間ならぬダメスライムになってしまうだろ!

 

 キャンプファイヤーを作り牙狼族を待っている間に、斥候達は戻って来た。持ち帰ってきた情報によると牙狼族はこちらの方向に直進しているようだ。

 まあこっちもキョウムやユメのおかげで準備は万端なのでいつ来ても問題ないけどな。

 

 

 

 それから数刻が過ぎ、綺麗な満月が顔をのぞかせた頃、牙狼族はやって来た。情報通り百匹近くいるが、あまり危機感を感じられない。洞窟内で襲ってきた魔物の方が格段に強かったと思うし、キョウムやユメが居るからだろう。

 牙狼族が立ち止まったのを見て、俺も一歩前に出る。

 

 

「よーし! そこで止まれ。このまま引き返すなら何もしない。さっさと立ち去るがいい!」

 

 

 俺は偉そうにそう言ったが牙狼族は気にせず柵に突っ込んでくる。

 だがしかし、周りを一切確認せずに突っ込むのは愚策でしかない。

 

 ドンッ‼ という音が聞こえると共に地面から岩の柱が出現し、牙狼族の一匹が串刺しにされていた。うわっグッロ。正直言って怖すぎるな。

 俺には『大賢者』がいるため、たとえ罠魔法があっても気づくのだが、ただのゴブリンや牙狼族じゃ気づかないだろう。現に今も数匹牙狼族が突っ込んで来るが、キョウムの『巨岩針(ジバルンバ)』が体を貫いたり、運良く柵まで来れた者も俺が張っておいた『鋼糸』やゴブリン達の攻撃で死んでいく。

 

 俺が用意していた罠も上手く発動しており、戦況は完全にこちらが有利となっていた。

勝敗は戦う前から決まっているという言葉が、正に今の現状を指し示す言葉である。

 

 自分達の不利を悟ったのか、今度は牙狼族のボスが俺めがけて突っ込んで来た。既にキョウムが仕掛けた罠の位置は仲間のおかげで見破られていたし、お仲間の血で俺の張った『鋼糸』も場所が把握されているため、回避するのは簡単だろう。俺の目の前までそのボスは接近し、俺を仕留めるべく跳躍する。

 

 ゴブリン達が「リムル様‼」と悲痛な声を上げているが心配することは何もない。

 俺が用意していた罠はなにも『鋼糸』だけではないのだから。

 

 

「甘いな」

「!!」

 

 

 跳躍して空中に身を置いてしまった牙狼族のボスは俺の張った『粘糸』で簡単に捕らえられた。敵を殺すだけが罠ではない。こうして動きを止めるだけでも十分に有用なのだ。

 

 

 牙狼族のボスはグルル! と唸って俺を睨んでいるものの、一切身動きが取れていない。

 ようやく試すことができる。せっかく洞窟内で習得したのに、チートスライム兄妹のせいで一度も実戦投入できていないこの技を!

 

 

「くらえ!『水刃』!」

 

 

 溜めこんでいた水は刃となって発射され、一分のずれもなく敵の頭を刎ね飛した。

 牙狼族のボスが死んだことを確認してから『粘糸』を解き、ドサッという音がその場に響く。そして俺は牙狼族に向けて宣言する。

 

 

「聞け、牙狼族よ! お前たちのボスは死んだ! お前等に選択させてやる。服従か、死か!」

 

 

 あ、しまった。ノリで服従か死って言ってしまったけど、刺し違える勢いで全員が攻めて来たら面倒だな。いや、そうなったらそうなったで、キョウムたちが皆殺しにしてくれるだろうが、俺は別に牙狼族の滅亡を望んでいるわけではないので、出来る事なら逃げてくれた方がありがたい。

 

 しかし、牙狼族に動きはない。やっぱりさっきの発言がまずかったのかな。それとも統率者を失ったせいか? 仕方ない。少し助け舟をだしてやるか。

 死んだボスを捕食して、牙狼族のスキルを獲得すると同時に『捕食者』の『擬態』を使って牙狼族へと変身する。初めて使ったが、思った以上に完成度が高くて内心驚いたのは内緒だ。

 

 

「クックック、仕方ないな。今回だけは見逃してやる。我に従えぬというならばこの地より去ることを許そう」

 

 

 さっきと言ってることがかなり違っている気がするが、『威圧』も込みで喋っているのでかなり威厳があるように見えるはずだ。これならばビビッて逃げてくれるはず……

 と思っていたが、俺の期待はいい意味で裏切られた。

 

 

「我等一同、貴方様に従います」

 

 

 額に星のマークがある狼が服従の宣言をすると同時に、一斉に平伏された。こうしてゴブリン村の戦いは終結したのだった。

 

 

 

 さて、戦いは終わったのでゴブリンや牙狼族に全員休むように命令する。後始末の方が大変だが、それは明日取り掛かることにしよう。夏休みの宿題なんかもそうだが、明日出来る事は明日するのだ。

 そう思って、俺も一休み――寝る必要なんて全くないけど――しようとしたがそれを遮る者がいた。今回の戦いの陰の立役者、キョウムとユメが話しかけてきたのである。

 

 

「リムル、お疲れ」

「お疲れ様~」

 

 

 二人はそんな軽い口調で、俺に労いの言葉をかけてくる。

 ぶっちゃけキョウムの罠が凄すぎたのに加えて、ユメの回復魔法で俺が作った回復薬もお披露目できなかったので、俺の出番なんて最後以外なかったのだ。であるからこそ、俺も「二人ともありがとな」と言ったのだが……

 

 

「「?」」

 

 

 二人ともスライムなので分かりにくいが、なんとなく首を傾げたような気配を感じた。まるで「ワタシなにかやっちゃいました?」「何のことだ?」と言わんばかりに。

 その様子に少し驚いた俺は二人の功績を説明するように言葉を投げかける。

 

 

「いやいや、二人も大活躍だっただろ。負傷していたゴブリンを魔法一つで回復させたり、牙狼族を一撃で仕留められる罠を仕掛けたりさ」

「え? そのこと?」

「いやいや、あんなくらいじゃ活躍にはならないぜ」

 

 

 ユメは納得しつつ疑問符を浮かべ、キョウムは本当に大したことはしていないという感じでそう言った。

 え? と思った俺を尻目に二人は更に言葉を重ねる。

 

 

「ワタシ達がやったことはリムルにだってできることだったから、ワタシ達はいてもいなくても結果は変わらなかったと思うよ」

「そうだな。それに、もしリムルがいなくてオレ達だけで旅をしていたらゴブリンからの頼みなんて引き受けてないし、例え引き受けたとしても牙狼族を見つけた時点で皆殺しにしていたからな。それをあんな風に事態を綺麗に収めるだけでも充分凄いことだぜ」

 

 

 時々、物騒な言葉が出てきているがそれは聞かなかったことにして。

 そうか、こいつらからしてみれば俺の行動は最善を選んでいるようなものなのか。俺はただ頼まれごとに弱くて、その上、村長の涙に絆されてこの選択をとっていただけなんだが……二人から見たら俺のやっていることは相当すごいことらしい。

 

 ユメの言い分も確かにその通りだろう。この二人がいなくても回復薬を提供することはできたし、罠に関しても狼達の反応を見る限り、『鋼糸』だけで事足りていたのかもしれない。

 

 だが、そんなタラればの話ではなく、こいつらが活躍してくれたのはれっきとした事実なのだ。俺は素直にそのことについて感謝を言いたいだけなのである。

 

 

「だとしてもだ。お前たちがやったことは凄く助かっている。それに仮定の話だけを考えるんじゃなくて大事なのは今だろ? だったら謙遜せずに堂々としてればいいじゃないか」

 

 

 ユメに関しては元から堂々としている気がするがそれはこの際置いておこう。

 俺が本音を語ると二人はすぐには反応しなかったが、三十秒くらい経った後、ユメがポツリと。

 

 

「不思議なスライム」

 

 

 と呟いた。うん、その言葉、こいつらに絶対に言われたくない。

 そう思っていたのだが、ユメが人型になり穏やかな表情を浮かべたままこちらに近づいてきたので、俺は押し黙ってしまう。

 そのまま俺が居た切り株のすぐそばに腰を下ろすと、俺の体を優しく抱き寄せ、頭を撫で始めた?!

 

 

「嬉しいでしょ?」

 

 

 そう言いながら俺の頭(スライムだから頭がどこか分からないけど)を撫でるユメの表情は嬉しそうではあるがどこか悲しそうな雰囲気が漂っていた。

 

 

「リムル、悪いが今はユメの好きにさせてやってくれ」

 

 

 キョウムが申し訳なさそうに俺にそう言ってきた。なにやら俺の言葉でこうなってしまったようなので、今回の戦いのご褒美だと思って受け入れるとしよう。

 

 

 

 

 

 日が上り始めゴブリン達が起き始めた頃、ユメはようやく俺から離れ、スライムの姿に戻ってしまった。さっきの事には触れて欲しくないみたいなので、現実的な問題に目を向けるとしよう。柵を作るためにゴブリンの家を壊したし、牙狼族の世話も考えないといけないし、やることがいっぱいなのだ。

 とりあえずゴブリンと牙狼族を整列させた。

 

 

「えーと、君たちはこれからペアとなって一緒に過ごして貰う事になります」

 

 

 反応を見る限り反対の奴はいなさそうだ。

 しかしやっぱり名前がないのは不便だな。

 

 

「村長、お前等を呼ぶのに不便だ。名前を付けようと思うが、いいか?」

「よ、宜しいの……ですか?」

「おう。問題ないなら、名前を付けようと思う」

 

 

 村長が恐る恐るといった感じで俺に確認してきたが俺はすぐに了承した。すると、キョウムとユメを除く全員が歓声を上げた。なんだ? 名前が欲しいなら自分達で付ければいいだろうに。

 

 

「キョウム、ユメ、お前たちも名付けに手伝ってくれ」

「……オレらはセンスが壊滅的だから無理」

「頑張って!」

 

 

 断られた。まあいいか。普段からこいつらには世話になってるし、これぐらいなら俺がやってしまおう。そう思った俺は村長にリグルド、村長の息子にリグル、その他ゴブタ、ゴブチ、とどんどんゴブリンに名付けていき、ゴブリン達の名付けを終えた。

 ゴブリン百匹に名付けを終えたタイミングでユメが心配そうな感じで「大丈夫なの?」と聞いてきたため、「大丈夫、大丈夫」と答える。確かに大変だが、手伝って欲しい程じゃないからな。

 

 

 続けて、牙狼族の一匹、額に星のマークがある奴にランガと名付けた瞬間……脱力感と強烈な眠気に襲われ、意識が遠のいていく。

 一体……何が……?

 

 

《告、体内魔素が一定値を割り込みました。低位活動状態(スリープモード)に移行します。尚、完全回復の予想時刻は三日後です》

 

 

 なんと、名付けには魔素を消費してしまうらしい。もしかして魔物にとっては常識だったのか? なんで二人は教えてくれなかったん………

 

 

『大丈夫?』

『大丈夫、大丈夫』

 

 

 めっちゃ適当に返事してたわ。というかこのスライム兄妹、こうなること分かってて名付けに参加しなかったのか! クッソ、念のために名付けに関することを聞いておくんだった。

 

 そう思いながら俺は低位活動状態(スリープモード)に突入するのだった。

 

 

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 

 

 あれ? リムルが寝ちゃった。仕方ないワタシがお世話してあげよう。

 にしてもやっぱり名付けは魔素を使っちゃうのか。確認できてよかった。ヴェルドラからこの世界での情報をいろいろ聞き出した時に、名付けと呼ばれる行動にも説明を受けたんだけど………

 

 

『名付けとは、名付け主が配下に力を与える行為であり、人間で言うところの親子以上に強い絆で結ばれることなのだ』

『へ~、名前を付けるだけで強くなるんだったら凄くお得だね。もしこの世界でワタシにも配下が出来たらやってみようかな~』

『やらぬ方が身のためだぞ。名付けの際に使用した魔素は戻ってくる保証はないし、高位の者に名付けする際はそれ相応の魔素を奪われ、最悪死に至るのでな』

『うわ、怖!』

 

 

 そんな会話をして、ワタシ達は名付けに参加しないことを決意した。元々マスターに止められていたからね。

 その判断はリムルの状態を見ても正解だったと思う。ちなみに、リムルが名付けをするのを止めなかった理由は、今回は下位ランクであるゴブリンや牙狼族の名付けなので、多分大丈夫だろうという思いと、実際にどうなるか見てみたかったからなのだ。

 

 

「お兄ちゃん、リムルが起きるまでワタシがお世話していい?」

「問題ない。しっかり守れよ?」

「うん!」

 

 

 リムルが突然眠ったことでリグルドたちが慌てていたが、お兄ちゃんから許可を取ったワタシが人型になり、リムルを抱きしめながらそれを手で制した。

 

 

「ユメ様………そのお姿は………」

 

 

 リグルドがまるで神を見るような目で私を見ているが、それは軽くスルーする。

 

 

「みんなが心配をする必要はないよ。ちょっと名付けで魔素を使って寝込んでるだけだと思うから」

「しかし………我々のせいで………リムル様は………」

「リムルは優しいから、ちょっと無理してでもみんなに名前をあげたかったんだと思うよ。だから、みんなが心配する必要はない」

 

 

 リムル様…‼ といった感じでゴブリン達は感極まったようで、涙ぐむ者までいる

 多分、あの様子だと名付けという行為そのものを知らなかっただけだと思うけどね。友達であるリムルの印象を上げるには、こういう言い方の方が良いだろう。

 

 

「それでは我々でこの村の………警備を………………ッ!?」

 

 

 立ち上がろうとしたリグルが突然フラッとよろめき、その勢いのまま倒れてしまった。他のみんなも強力な眠気に襲われているようで、既に半数以上が眠っていた。どうしたんだろう?

 

 まず、敵からの攻撃というのはワタシやお兄ちゃんがいる限り有り得ない……はず。

 他に考えられる可能性はリムルから力を与えられたことによって、その力に見合うように肉体を再構築して、種族的進化が促される場合かな。ワタシは長い間種族進化の場面に立ち会ってないからイマイチ分からないけど、この世界にも『世界の言葉』というものがあるみたいだし、それぐらいの強制力があっても不思議じゃない。

 

 

「みんなは寝ていたらいいよ。この村はワタシ達が守るから」

 

 

 進化の眠りに就きそうなみんなを起こしておくのは忍びないからね。そう言うとワタシとお兄ちゃん以外の全員が眠りに落ちた。その異様な光景を見ながら、ワタシはリムルの頭を撫で始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言えばリムルとマスターは似ている。

 

 ……優しいところや少しだけ抜けているところ。

 

 ……配下思いでお人好しな雰囲気。

 

 ……頑張ろうとするところ。

 

 

 

『俺と一緒に来る気はないか?』

 

 

 

『俺と友達にならないか?』

 

 

 

「どうした? 不気味な笑みを浮かべて? 気持ち悪いぞ」

「うわー、酷! サラッとワタシを侮辱しないでよ!」

 

 

 お兄ちゃんがかなり失礼な事を言ってきたけどいつも通り対応する。

 もしかしてリムルなら………いや、過度に期待するのは止めておこう。

 でも……どこかで期待を寄せてしまう不思議なスライムだよね……リムルって。

 

 

 

 

 

 






 キョウムやユメが協力しましたが牙狼族やゴブリン達の数は変わっていません。

 またユメやキョウムはヴェルドラから名付けについての説明を受けましたが止めるつもりはサラサラありません。ヴェルドラが「上位存在への名付けは命に関わる」みたいな事を言ってますが二人の中では、上位存在=自分より強い、という考え方です。本編で名付け前の状態でリムルより強いキャラはいないはず(グレーなのはいるけど)なので、止めません。


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