『底辺V-tuber』と『よく訓練されたリスナー達』VS『ステータスを持ち帰れるVRMMO』(再投稿) 作:不知火勇翔
僕の名前は『内野 沙耶』。『サヤ.ch』にて色々なやってみた動画やらをアップしている底辺V-tuberである。
今日は『ワイのカバンの中がダンジョンだった件w』という企画で、無計画に突っ込みすぎてゴミ箱と化した僕のリュックに手を突っ込んで漁っている。
ちなみに、カメラを僕の手元に向けているため何が発掘されたかは視聴者に分かる状態である。
お、TEN○A出てきた。
コメント欄
〈TE○GAじゃねぇか・・・・〉
〈うわー・・・・〉
〈衛星面どうなってんだよ・・・・〉
〈あれじゃね?買ったけど怖くて使わずに放置してたとか〉
〈普通ないだろ・・・・〉
〈買ったなら使うだろ〉
1つのコメントが『長時間流れない』ため会話が成立しているコメント欄を横目に、僕はソレが出てきた理由を、思い出しながら解説した。
「これはアレだね。ふざけて買って、使うつもりもなかったから学校に持ってって、んで同級生のカバンにぶち込んでやったやつだね確か」
コメント欄
〈何やってんだよ・・・・(絶句)〉
〈そいつは泣いて良い〉
〈wwww〉
「いやー、あの時は本当に面白かったなぁ。アイツさ、バックにブツが入ってるのに気づいた瞬間、猛烈な勢いでバックを閉めてね。普通家に無かったら『あんな顔』はしないだろうから、その時点で家にあることが確定じゃん?しかもソイツ、急にあたふたし出して、カバンを持ち上げて下ろしてを3回ぐらい繰り返して、顔は青ざめてるし口をパクパクさせたしたり、本当に大変そうだったんだよねー(暗黒微笑)」
コメント欄
〈ブツw〉
〈やったぜ☆〉
〈wwww〉
〈鬼畜の所行〉
〈けっこう見てみたいかもw〉
隠すにしてもブツは結構かさばるし匂いも気にしないといけないとかで、本当に大変そうだったなー。
「じゃ、どんどんいくよ」
またリュックを漁っていくと、今度は何かの紙切れが僕の手に当たった。その紙切れをリュックから引っこ抜くと、それは何かのレシートだった。
クシャクシャになったソレを開くと、そこには小麦粉1kgと書いてあった。
それで思い出したのは、小学校での一幕。
「あー、ほら、けっこう昔に空気砲が流行ったでしょ?あの空気砲から出てくる白煙を小麦粉で代用しようかなと思って試したヤツだね」
コメント欄
〈え、マジでやったの?〉
〈大惨事の予感が・・・・〉
〈今じゃフードロスとかでダメなやつだな〉
〈今も昔も食品をオフザケに使うのはダメだろ定期〉
「まー小学生の時だったからね。んでさ、モノは試しにソレを人に向けて撃ったんだけどね」
コメント欄
〈やらかさない日は無いのかな?〉
〈www〉
〈普通人には向けないだろ・・・〉
〈サヤ「ちょっと空気砲いくぞ」友人「え、は、はぁ!?」〉
「押すな押すなと言われた火災報知器を躊躇なく押すのが僕だからね。結果で言えば、もうホント大惨事ってかんじで。空気砲くらった人もそうだけど、僕も粉まみれになって本当に色々と大変だし、掃除を考えたら頭痛くなったし、何より室内でやったからお互いクシャミが止まらなくってさー」
コメント欄
〈ただのバカで草〉
〈やる前に分かるだろ普通〉
〈その向けられたヤツは強く生きて欲しい・・・・〉
「だって考察とかせずに実験すると楽しいじゃん?ほら、有名な日本の気象学者も考察を立てずに実験結果から法則を紐解いていったっていうし・・・・」
そうやってコメント欄と談笑していると、底辺V-tuberな僕にスパチャが飛んできた。
コメント欄
50000円〈こ れ で VRゲーム買って下さい〉
「・・・・お、おろ?」
突然飛んで来た非常識なスパチャ(投げ銭)に、一瞬僕は言葉を失ってしまった。
ヨーツベにさっ引かれるのを分かった上での、5万円もの投げ銭。あまりに重すぎるスパチャに僕はどう返していいか分からず、変な声が出てしまった。
コメント欄
〈ORO〉
〈おろw〉
〈何だこのスパチャ〉
〈布教したいのかな?〉
〈ORO〉
〈一度は言ってみたいセリフではある〉
〈あれって結構昔のアニメだろ。お前いくつだよw〉
コメント欄が急に騒がしくなったが今はそれどころではない。
「VRゲームって言われてもなー。VRと配信はシナジーが薄いんだよねー。
棒を2つ持って頭に機械を付けて動き回るやつ(ビート○イバー)も、アレ重そうだしなぁ・・・。
まー、スパチャされたし、どれかは買うかな、スパチャされたし(2度目)」
あんまし気乗りはしないが、これでVRゲームを買わなかったら後が怖いので、僕は明日にでもVRゲームを買うことにした。
「VRって言っても、何のゲームかとか指定ある?」
コメント欄
〈VRMMOでお願いします。できれば『V戦』で〉
〈よりによって『V戦』かよ・・・・〉
〈あれかー〉
〈VRMMOな〉
〈たしか現実世界にステータスを持ち帰れるんだっけ?〉
〈そうそう〉
〈怪しさMAXなんだよなぁ〉
『V戦』、か。
☆☆
☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆
放課後、制服のまま家電量販店へと向かった僕はスパチャ代でVRMMOに必要な機材類一式を買った。
VRMMO自体は本当に毛ほども興味が無かったし最初は無視しようかなとも思ったが、(希少種レベルで)数が少ないウチのリスナーからのスパチャは流石に無碍にはできなかった。
さて。購入したはいいものの、こういうゲームには初期設定がある。特に僕はV-tuberなので声は本人のものじゃなければいけない。
なのでパソコンに入れておいた自分のボイスをVR機材にまずは覚え込ませなければならない。これが無かったら、プレイヤーのアバターから発せられる声は全くの別物になるみたいなので本当に必須な作業である。
バ美肉おじさんが自分の声を設定する時もこんなかんじなのかなー、っと思いながらパソコンをポチポチすること30分。
あらかた読み込みが終わった画面をちゃんと遠目で確認し、現場猫みたいに指差し確認ヨシッ、をしたら・・・。
いざ、VRMMOへ。
パソコンとヘッドギアなるVR機材を有線ケーブルで繋ぎ、ヘッドギアを頭に装着。パソコンで配信開始のボタンを押し、そのままベッドに寝転ぶ。
そして最後に、僕はヘッドギアの電源ボタンを押した。
特徴的な電子音とともにヘッドギアに映っていた映像が白に変わると、すぐに僕の意識は『何もない荒野』に放り出された。
コメント欄
〈は?〉
〈?〉
〈普通、メニュー画面に行くよな?〉
どこか分からない高原(VR空間)にいた僕の手元に『半透明な板』が出現した。見てみると、あまりにも見慣れたウチのチャンネルのコメント欄が映されており、ヘッドギアを起動と同時にちゃんと配信が始まっていたことに僕は一安心た。
機材の説明書には『不正防止のため起動と同時にゲームと配信を繋げます』とあったが、何の不正防止なのかピンとこなかったしVR空間に入ってからシステムが配信画面を設定するというのはどうにも不安だったのだが、杞憂だったようである。
配信開始の挨拶も兼ねてコメント欄をチェックしようとしたところ、何故かコメント欄がクエスチョンマークだらけになっていたため僕は首を傾げた。
「なに?何か変なことでもあるの?」
コメント欄
〈普通、まずはメニュー画面〉
〈メニュー画面が無い〉
〈なんならメニューボタンが無い〉
〈??〉
〈つまり?〉
〈やったことないから分からん。つまりどういうこと?〉
〈普通、どんなVRMMOにもメニューボタンが視界のどこかにはあるハズ。あと、仕様として配信を始めたときは必ずメニュー画面から始まるハズ。サヤには2つとも無い〉
〈メニュー画面じゃなくて待機場な。ビート○イバーの選曲画面みたいなやつだ〉
〈つまり?〉
〈?バグ?〉
〈知らね〉
よく分からないが、そういうことらしい。
ふ~ん?と思っていると、荒野の遠くから声が飛んできた。
「いやー、探したよサヤ君!」
天の声とでも言うのだろうか。『頭に響く声』が全方位から僕に対して浴びせられた。
思わず(配信中にも関わらず)顔をしかめてしまうと、声の主は僕の表情のことなんて気にしていないかのように自分の話を続けた。
「始めまして。『V戦』の総支配人でありながらこの世界の神でもある存在だよ。いやホントさ、数あるヘッドギアから君のを探し出してチュートリアルを封じ込めるのは本当に本当に大変だったんだからね!凄くない?自分」
コメント欄
〈???〉
〈これがこのゲームのオープニング?〉
〈いや違うだろ〉
〈ハッキング???〉
〈ハッキング・・・・・・?〉
「えっと、アナタはハッカーか何かですか?」
コメント欄にあった可能性を拾って本人に聞いてみると、声の主は明るい声で僕の疑問を否定してきた。
「違う違う。だから言ってるじゃん。この世界の神だって。まー信じられないのも仕方ないよね」
「・・・はぁ」
どうやら厄介な人に僕自身は目を付けられたようである。そういうのはお互いに時間の無駄なので本当に止めてもらいたいのだが。
「それでさ!今回僕が君を探し出して何故こんなことをしているのかというとね。君に『特別な力』をあげたいと思ったからなんだ!」
からなんだ!と言われても困るのだが?
「じゃあ早速あげるね。・・・はい。あげたよ。あとはキミ次第。頑張ってね、サヤ。期待してるよ」
何の脈絡も無く、言葉と同時に僕の視界が再び真っ白に染まった。
悲鳴をあげる暇すら無く真っ白の光は瞬時に消失し、気がつけば僕は近未来的な街の裏路地に立っていた。
コメント欄
〈??????〉
〈ワープとかもう何でもアリだな〉
〈ここどこだよ〉
〈旧独の市街地に似ているな〉
〈VRMMO内のどっかの帝国じゃねぇの?〉
〈画像検索で特定した。『type:学園』の中みたいだ〉
〈『type:学園』?〉
〈おしえろ下さい〉
〈サヤが始めた『V戦』ってのは基本的に『クラン』同士の戦争ごっこがメインテーマ〉
〈なんだけどさ、プレイヤーはどこのクランに所属するかは決められないシステムなんだよ〉
〈サヤは『type:学園』のクランにぶち込まれたってこと?〉
〈あ、これは通常運行なのね〉
〈いや、普通ログインをしたらまず『始まりの街』にアバターを置かれるハズ。少なくとも俺はそうだった〉
〈そうそう。そこでチュートリアルをやったよな。その後にクラン分け〉
〈説明がややこしすぎ。1ミリも分からなかったんだけど〉
どうやらチュートリアルをスキップしているみたいだ。本当に、面倒なことをしてくれたなあのハッカーは。本当に、本当に面倒なことを・・・(汗)
コメント欄
〈・・・それで、結局サヤのその格好は全員スルーと〉
〈よ く 言 っ た〉
〈誰かがツッコむのを待っていた〉
〈いやどういう格好だよ!!!〉
〈美少女で草〉
〈これがバ美肉ってやつ?〉
〈それはちょっと違う〉
本当に、良く言ってくれた。
さっきから気になっていたのだが、何故か僕のアバターはスカートを履いているようなのである。しかも海のように綺麗なチェック柄のやつ。羽織っている水色のブレザーもなかなかに凝った作りをしており、さっきから視界の端でチラチラ見えている水色の髪もどうやら僕の頭皮から生えているものらしく、はい。
「っすぅーーーーー」
V-tuber恒例のリアクションをとりながら、僕は空を仰いだ。
皆も想像して欲しい。突然女装させられ、その姿を身内のようなファンに晒されるという状況を。
「・・・ねぇ。今の僕の顔ってどんなかんじ?まさかとは思うけど、ゴリラフェイスじゃないよね?ゴリラフェイスなら軽く三回は死ねるんだけど」
某怪力V-tuberのコラ画像でゴリラ顔のものがあったが、もしあのハッカーが気紛れで僕をそんな風にしていた場合、多分僕は奴のケツにパイルバンカーをぶち込む決意をすると思うのだが。
コメント欄
〈鏡を探せ〉
〈安心しろちゃんと美少女だぞw〉
〈落差が激しすぎだろ〉
〈これはまた解釈一致〉
〈これで売り出せ(圧)〉
鏡、鏡か。どこか近くにトイレとかあったら良いんだけど。
周囲を見回すと、どうやら僕は近代ファンタジーの路地裏にいるらしく、今いる細い路地の先は大通りとなっていた。とりあえず歩いて路地裏から出ると、路地裏の外は新宿かと見間違うほどに人で溢れ返っていた。
全員が美男美女。耳の長い娘もいれば初めて見るようなムキムキマッチョもいて、あ~ここってVRMMOなんだな、と否応無しに思わされたが、それよりもまずは鏡だ。
コメント欄
〈人多くね?〉
〈全員プレイヤー?やっば〉
〈イベントか何かか?〉
〈ロードが誕生したんだってよ〉
〈ロード?〉
〈『V戦』ってのはクラン戦って言ってたろ?そのクランの王様ってのが『ロード』だな〉
〈そそ。運営側が抽選で決める公式チートでありクランの大将〉
〈そいつがHP全損したらクランの負けっていうクソルールの犠牲者〉
〈解説あざます〉
〈それがどうしてこんなお祭り騒ぎに?〉
〈ロードは何かしらの特権を持っているってのがモッパラの噂だ。詳しくはロードやってる配信者を見ろ。リンク張ったる〉
〈htttttpsss-uHoTube2222222205050505〉
〈さんくす〉
〈一応言っとくけどここはサヤ.chだからな?あんま余所の宣伝はすんなよ?〉
〈へいへい〉
〈今更だろ定期〉
〈身内ノリ凄すぎw〉
〈お?新参か?〉
〈ようこそ雑談部屋へ〉
人の波を掻き分けながらトイレを探したのだが、一向に見つからないんだが(半ギレ)。VRMMOでは基本的にトイレを必要としないのかもしれないが、1つも設置しないのはどうなのだろうか。
コメント欄
〈まだ鏡を探してるし・・・〉
〈えぇ・・・〉
〈頭使えよ〉
〈そこにショーウィンドがあるじゃろ?そこに写っているのは誰の姿じゃ?〉
ふぁ!?そうじゃんガラスじゃん!!!
僕は再び大通りに戻ってくると、そこにあった服屋のショーウィンド(よくデパートの外壁にあるガラス張りの展示)のガラスに飛びかかった。
そして絶望。
顔はまごうことなき美少女であったのだが、明らかに可愛い系な格好をした美少女が自分という『違和感』は僕の脳神経を強烈に揺さぶった。
「・・・え、は、え?」
「気に入ってくれたかな??」
受け入れられない現実に頭がフリーズしていたのだが、再び浴びせられた天の声で僕の意識は叩き起こされた。
「ちょ、これどういうこと!?女の子に成ってるんだけど!!誰も頼んで無いというかそもそも望んでないんだけど!!!」
「それが君の本来の姿だから仕方ないじゃないか」
「はぁ!?」
コメント欄
〈天の声(仮)は、周りの通行人には聞こえていないみたいだな〉
〈配信にはちゃんと乗っているという離れ業〉
〈ハッカーニキ、お疲れ様です!〉
〈サヤに、ようやくガワが!?〉
〈ありがとうございます!ありがとうございます!もう手書きはキツかったんです!〉
〈なんでや。小学生レベルの手書きイラストを画面端に貼り付けただけでV-tuberを名乗る下りは面白かっただろ〉
〈飽きたんだよ悪いかぁ!?〉
〈お前最古参じゃねぇだろ。昔は立ち絵じゃなくて写真だったことを知らないのか?〉
〈写真貼ってV-tuber名乗ってたん!?〉
〈しかも風景のやつ〉
〈ふぁ!?〉
〈人ですらないじゃん〉
〈V-tuberとは(哲学)〉
〈まーた身内ノリで草〉
〈全ては一向に流れないコメント欄が悪い〉
「ほら、君の所の視聴者には好評みたいだよ」
「それは、まぁ、良かったんだけどさ」
「あ、伝え忘れていたことなんだけどさ、ログアウトボタン消したから、ログアウトしたかったらチュートリアルをクリアしてもろて。・・・・・・合ってる?この使い方。僕ってあんまりV-tuberにはうといんだry」
「は、はぁぁああ!?!?」