フロムゲー×他作品クロスオーバー短編集   作:メリケンです。

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焼き鳥食べてる時に思い付いたネタ。読み返してないので誤字脱字に整合性がまぁ酷い。


(ダクソ+エルデンリング+ブラボ)×ダンまち

 白き壁聳え立つ摩天楼、バベル。その地上30階大広間にて、3ヶ月に1度の"神会(デナトゥス)"が行われる。

 

 地上に降りたる神々。全知無能ながらその性質は変わらぬ、とばかりに、滑稽で無秩序。渾沌に塗れ何よりも自由。

 天界で名を馳せた彼らは地に降りて尚神であり、人の常識の枠に収まらない。面白おかしく、しかし次の瞬間神妙に判断を下す。力持つ者とは、かく有るべしと。

 

 しかし、その日だけは、何もかもが違った。

 

 本来であれば神々の内1柱が司会進行役を請負い、互いに情報交換をした後に"ランクアップ"を果たした冒険者の『二つ名』を決める。これは、特に大きな力を持つファミリアの主神にとっての最大の娯楽だ。自身の抱える冒険者に素敵な二つ名を付けるも良し、或いは力のないファミリアの冒険者に馬鹿げた二つ名を付けるも良し。

 

 故に"神会(デナトゥス)"は、悶絶と嘲笑、堪え切れない拍手の音が絶えることが無い。

 

 今回も、司会進行役を務めたヘファイストスの手腕の元、情報交換から二つ名決めまでを恙無く終わらせることが出来た。

 

 ───誰も、一笑もしないままに。

 

 "神会(デナトゥス)"に参加している誰もが、必要最低限の発言しかせず、どころか冷や汗をかいたまま震えて声を出せずにいた神まで。

 常であればはち切れんばかりの笑い声で大広間が満たされる二つ名決めですら、何の捻りもない無難な二つ名で即決した。

 

「ほ、他に何かある?」

 

 ヘファイストスの言葉は尻すぼみで、少しだけ震えていた。

 その声に同調するように、殆どの神が首を横に振る。息苦しい今回の"神会(デナトゥス)"、出来ることなら早く解放されたかったのだ。その思いだけは、普段いがみ合っている神でさえ一致した。早く、早く。

 

 だが、遂に"それ"は動き出した。

 

 "神会(デナトゥス)"の始まりから今まで、微動だにしなかった1柱が、とうとうその口を開いたのだ。

 

「つまらんな」

 

 たった一言。

 

 それだけの言葉に込められた思いは、神の心臓を鷲掴んだ。

 

 冷や汗が止まらぬ。鼓動が速くなる。

 

 さもありなん。

 内より燃え盛る炎にて身を焼かれ続ける爛れた巨躯の鎧───神を殺す神、その神威には、神の血が濃い程に抗い難い恐怖を与える。

 

 ソウル・ファミリア、その主神。

 

「つまらぬ。つまらんよ。ダンジョン攻略とは名ばかりの、愚かな行為だ」

 

 口のあたり、僅かに開いた鎧の隙間から炎が噴き出した。どうやら溜息を吐いたようだった。

 

 神を殺す神とは、良く言ったもの。

 実際この神は過去に、"戦争遊戯(ウォーゲーム)"をけしかけた幾神かを文字通り殺している。

 

 天界への送還さえ認めず、その存在を抹消させる。

 

 この神自身、自身がそうであるというのに神嫌いを自称している。つまり、この場で少しでも機嫌を損ねれば憎悪の矛先が容易に向けられ、あっさりと貫かれるだろう。

 

 よりにもよって冒険者を参加させられない"神会(デナトゥス)"だ。"神の力"を行使出来ない無能にとって、身を守る術など持ち合わせている筈がない。

 

 ソウル・ファミリア発足以降、"神会(デナトゥス)"に参加すらしなかったそれは、オラリオの神々にとって恐怖の対象でしかなかった。

 

「とは言うがな、貴公」

 

 ただし、反論する1柱が。

 

「ダンジョンとは、普通の冒険者にとって娯楽ではない。また、挑む子らを想う神も心を消耗しているのだ。このような息抜きもあって良いと、私は思うよ」

 

 威圧的な神殺しの声より幾分か柔らかく、しかし有無を言わせぬ力強さがある。

 

 此方もまた一癖ある神───否、王である。

 華美かつ機能性を損なわない鎧に身を包み、黄金に輝く剣を携える姿は圧倒的の一言。ヒューマン程の背丈であるにも関わらず、その存在感は神殺しと並んでも劣ることがない。

 

 主神が神威を持つだけの石のなれ果てでしかないため、主神の全ての権能を代行する伴侶。

 

 エルデ・ファミリア、その王。

 

 神を従える、神たる王。

 

 先の発言のように黄金の王は、労うという感情がある程に穏やかな感情を持ち合わせている。神殺しか王か、と問われたならば、まず間違いなく王を選ぶだろう。

 

 とはいえそれは、神殺しよりマシという認識だ。黄金の王もまた、関わりたくないファミリアTOP3を堂々と飾る事実を神々は忘れていない。

 

「エルデの王、誉れ高き褪せ人よ。或いは神に隷属する愚者よ。ならばこの惨状をどう形容する?いつまで地上に神がいることを許容しなければならない」

「何度も言うぞ、神殺しの神よ。或いは神に染まり切れぬ人の末座の者よ。彼らにとって戦いとは娯楽ではない。如何に蝸牛の歩みとて、進み続ける彼等には嘲りではなく称賛を贈るべきである」

 

 神殺しの語気は段々と荒くなる。対し黄金の王の言葉は凪いだままであった。

 

「下らん。ならば未知に怯え続ける方が有意義であろうよ。定命の者が挑むべき試練ではない。ましてや神共の力を使ってまで果たすなど言語道断。試練というならば、人の力のみで挑むべきである」

「それについては否定しない。しかしこのオラリオでは、神ですら1つの命だ。ならば私は許容しよう。1つの試練に挑む多種多様な命の祝福。素晴らしいではないか。少なくとも、貴公の趣味嗜好で決められることではない」

「不敬。人々の灯火たる私に、そのような言葉を投げかけるか」

「貴公が神嫌いであるように。私も火が嫌いなのだよ」

 

 神殺しと黄金の王はどちらも譲らず、殺気に満ちた舌戦を繰り広げる。ヒートアップする度に、神殺しの内側から漏れ出る炎の熱量が増し、黄金の王の剣から零れる粒子が何かを形作ろうと蠢く。

 

 一触即発の空気に、他の神々は最早瞬きすら出来ずにいる。動けば殺されると本能が理解し、流れる汗すら無視して傍観に徹した。

 特に、2柱の両隣の神は白目を剥いて泡を吹いている、ような気が。恐怖のあまり気絶しかけているようだ。

 

 ただ気配を極限まで薄くしようと勤める神々と、今にも殺し合いを始めそうな神殺しと黄金の王。すわオラリオ滅亡か、と想いが満場一致した──────その時。

 

「あっははははははははははは!」

 

 嘲笑が、響く。

 

「Oh, Magnificent!よくもまぁ、下らぬ口論が出来るものだよ!」

 

 口論をしていた2柱よりも大きな声は、大広間を漂っていた静寂をいとも簡単に切り裂いた。

 

 途端に神殺しと黄金の王は口を閉じた。

 先程の舌戦があっさりと終幕。

 代わりとばかりに、互いにぶつけていた殺気を嘲笑の主へと一気に注いだ。

 

「く、くくく!あぁ失礼。しかし何とも、思考の次元が低い会話だ。失笑物。お許しになって?」

 

 男とも女とも、老人か幼児かの区別もつかぬ声色。

 

「貴公らの言葉は素晴らしい。素晴らしいとも。だが、だがである。正直どうでもいい。神が地上にいるべきか否か、或いは人間がどうにかしてダンジョンに挑むべきか否か、うん、どうでもいい。時間の無駄だとも」

 

 クスクスと笑う声やら、呆れたような溜息やら、怒るような歯軋りやら、つまらなそうな舌打ちやら。それらが音として一気に聞こえたのか、それとも順番に聞こえたのか、残念ながら分からない。

 

 否、そもそも、大広間にいる誰もがかの者の姿を正しく認識出来ていなかった。

 

 そこにいるのは分かる。輪郭も分かる。だがどうしたって、次の瞬間にはその理解が瓦解する。

 

 これこそ、神殺しと黄金の王2柱に並ぶ、関わりたくないファミリアTOP3の主神であった。

 

「言葉には責任を持て、冒涜者。どうやら始まりの火の熱を忘れたと見える」

「命を弄ぶ冒涜者よ。数多の狼藉に加え、更に罪を重ねるか」

「ふは、この私に責任を問うか。罪を問うか。まったくもって下らんなぁ」

 

 不定にして不形。

 かつて超次元暗黒より飛来したと豪語するイカれた思考の持ち主。

 

 ムーンプレゼンス・ファミリア、その主神。

 

 故もわからぬ、冒涜の神である。

 

「つまらん下らんどうでもいい。そんな私でも思うところはある。あるのだぞ」

 

 それはきっと、火に油を注ぐ行為でしかなかった。

 

 冒涜神は渾沌を好む。場を引っ掻き回して敵も味方も無茶苦茶に冒涜することを好む。

 ───その性質は天界にいた頃のロキと似ているが、かの1柱は細い目をかっ開いて即座に否定するだろう。

 

 ともかく、空気を乱して蹂躙し、冒し、喰らい尽くす様は、恐怖の対象である2柱とは違い嫌悪を助長させる。

 

 更に冒涜神は、神を喰らう神としても名を馳せていた。それこそオラリオにバベルが建てられるよりずっと前、地上に残された力の弱い神を喰らっていたとの噂もある。

 

 そんな神がこのような格好の機会を逃す筈もなく、周囲の制止の小声さえ押し退けて高らかに謳った。

 

「つまらん、とは言うが。それはつまり平和である。平和であるからつまらないのだ。いいかね?」

 

 過度な負荷により、円卓がミシリと悲鳴を上げた。

 

「まったく、まったく。如何ともし難い毒のようなもの。我らはつまり、毒の味に飽きてしまったのだよ」

 

 明らかな挑発。神々の緊張は最高潮に達した。

 元々神に対して攻撃的な神殺しと、口論によって冷静な思考を失っている黄金の王。見え透いた挑発に乗らない筈もなく、その殺意が衝動的に身体を動かそうとするだろう。

 

「同意しよう」

「同じく」

 

 今度こそ終わった───と思いきや。

 

 神々の予想に反し、神殺しと黄金の王の苛烈さはすっかりなりを潜めてしまった。殺気は萎み、言葉の端には理性がはっきりと感じ取れる。

 

 冒涜神は、言葉のみで場を治めてしまった。

 

 意外な展開に呆気にとられていると、気を良くした冒涜神はニンマリと笑いながら弁舌を振るった。

 

「平和であることは良きこと。貴公らもきっとそう思うだろう。だが矢張り、退屈極まりない。平和とは即ち退屈なのである。どんな毒もいずれ無害となるように、ね」

「ふむ、私は概ね理解した。神殺しの神よ。貴公は?」

「うむ、うむ。成程。名案である」

 

 どうやら、他の神々には察し切れない何かが神殺しと黄金の王を納得させたらしい。

 

 恐怖と嫌悪、それから焦燥が、疑問へと変わった瞬間。見計らったかのように3柱が同時に口を開いた。

 

『"戦争遊戯(ウォーゲーム)"』

 

 ───ヒュ、と誰かが息を呑んだ。

 

「そう、"戦争遊戯(ウォーゲーム)"だ。結局我らは、それしか能がないのだから!」

 

 嘲りを含んだ声が響き、思考停止をした神々の耳にすんなりと馴染む。冒涜神の、耳触りだけは心地好いそれが、じわじわと恐怖を想起させた。

 だが、もう、止まらぬ。熱の籠った演説は、制止の意思さえ抑え込んだ。

 

「さて薪の王。並びに褪せ人。提案だ。"戦争遊戯(ウォーゲーム)"をしようか」

 

 軽薄ささえ感じるその言葉に、褪せ人と呼ばれた黄金の王はやはり気軽に返答した。

 

「良かろう。我ら黄金の軍勢は、その提案を受諾する」

「素晴らしい答えだ」

 

 続いて、頬杖をついていた神殺しも、喜色を滲ませながら返答した。

 

「我らも承認しよう。加えて戦場も此方の拠点を貸し出そうか」

「おお、其れは有難い。面倒だからオラリオの街中で済ませようと」

「其れだけは絶対に許さん」

「ごめんて」

 

 さて、と冒涜神は立ち上がった。立ち上がったように見えた。少なくとも、神々はそう認識した。

 

「開催は7日後、場所はソウル・ファミリアの拠点たる"火継ぎの祭祀場"!」

 

 それはまるで舞台の上。誰もが冒涜神に釘付けになり、その一挙手一投足から目を逸らせずにいた。

 

「勝利条件は特になし。互いに満足するまで存分に殺し合おう!」

 

 余りにも軽い宣言に目眩すら覚える。

 呼吸をするより簡単に、殺し合いを謳うなど。

 

「参加ファミリアは、私のとこと、ソウル・ファミリアと、エルデ・ファミリアの3つ。因みに他は?いないか?いないのか」

「無理だろう」

「無理だな」

「意外と息ぴったりだな貴公ら。いやそうではなく。こほん。僭越ながら私が火蓋を切らせてもらうぞ」

 

 最早、引き金は引かれた。

 悍ましい夢想は現実となり、後世まで語り継がれる惨状を齎した。

 

 

「今ここに"戦争遊戯(ウォーゲーム)"───名付けて、『我ら、地獄より(フロム ヘル)』の開催を、宣言する!!」

 

 

 やがてそれは、追随を許さない絶望となり。

 

 殺し合いは当初の予定から数ヶ月も延長し行われ、死者を多数排出。参加ファミリアのみの損害に留まれど、他ファミリアやオラリオ住人に精神的なダメージを与え。

 ギルドからの厳命すら一蹴して更に期間を延長。彼らは本能の儘に殺し、殺し、殺し、殺し尽くした。

 

 そして開催から約半年後、エルデ・ファミリア所属の冒険者が放った「蟹喰いてぇ」という一言で呆気なく終了。参加ファミリアの冒険者は誰一人欠けることなく(・・・・・・・・・・)、次々と日常へ戻っていった。

 

 この"戦争遊戯(ウォーゲーム)"は、後に「マジクソゲー」「黄昏より酷ぇや」「地獄でしかねぇ」「寧ろ地獄の方が楽園まである」という神々の評価の元、『終末深淵(フロム ヘル)』の名と共にオラリオの悪夢として語られることとなった。

 

 

     ◇

 

 

 『終末深淵(フロム ヘル)』から数年後。

 

 白亜の壁が護る祭壇───火継ぎの祭祀場。

 

 この場所自体が巨大な炉であり、中央の篝火と、蝋燭の分け火のみが明かりとなっている。

 冒険者は壁にある無数の洞窟を居住区とし、各々が好きなように過ごしている。増築すら自由であり、その広さは主神ですら正確に把握していない。

 

 オラリオで関わりたくないファミリアTOP3の1つ、ソウル・ファミリア、その拠点の全容である。

 

 そして今、篝火を囲むように、3つの影がドカリと座り込んだ。

 

「こほん。えー、さて。『我ら、地獄より(フロム ヘル)』から数年経ち、お互いの頭も冷えただろうということで」

 

 冒涜神の老若男女の区別さえつかぬ不思議な声が響き、続いて黄金の王が咳払いを1つ。最後に神殺しが篝火に自身の骨を投げ入れ、溜息を吐く。

 

 そして。

 

「狩人本気でありがとう感謝する」

「も~、緊張して威圧的になるのやめた方がいいぜ。褪せ人は?」

「大反省。私も2年振りの"神会(デナトゥス)"で緊張して…」

 

 美しい正座を決め込み、神殺しが冒涜神に頭を下げる。

 やれやれと半ば呆れながら冒涜神は黄金の王を見ると、彼もまた居心地が悪そうに肩を縮こませた。

 

「緊張で頭が真っ白になって喧嘩って、まるで幼子のようではないか。私が道化を演じなければあの場で殺し合っていただろう」

「本当に済まない。褪せ人にも謝罪を。言って良いことと悪いことがあった」

「此方こそ。貴公の価値観を考慮出来なかった私もまた悪者である。済まなかった」

「うんうん、それもまたどうでもいいことだがな。それはそれとして、神共皆殺しのような惨状にならなくて良かったぜ。おや、薪の王、それは?」

 

 神殺しが脇に置いていた物を掲げる。

 

「少し前にデーモンスレイヤーがこの世界に来て、置いていった酒だ。とても質が良い」

 

 そう言い、神殺しは3つのジョッキに均等に酒を注いだ。

 受け取って速攻自分の血を入れた冒涜神から目を逸らしつつ、謝罪の言葉と共にジョッキを掲げた。

 

「私の蛮行を寛大な心で許してくれた褪せ人に謝罪を。私の不甲斐なさを尻拭いしてくれた狩人に謝意を。では」

「かんぱーい」

「乾杯」

 

 ジョッキをぶつけ合い、一気に口内へ流し込む。どうやって鎧の隙間から液体を流し込んでいるのか甚だ疑問であるが、残念ながら些事の範疇である。

 

「ぷは。薪の王と褪せ人、次からは"神会(デナトゥス)"に参加する前に練習だ。また緊張して喧嘩になったら面倒だ」

「有難い。しかし、私はもう参加するつもりはない。緊張する以前に神が多すぎて憎悪が湧き上がる」

「神共が貴公に齎した苦痛を考えれば、致し方ないこと。寧ろ、真っ先に神共を殺さなかったことに驚愕を禁じ得ない。因みに私は年に1度のペースで参加することを考えている」

「幾ら憎しとはいえ、オラリオに住まう人々の支えになっていることも事実。神は殺すが、世を乱したい訳ではない」

 

 神殺しは再び酒を煽った。既に味覚など焼け落ちている筈だが、旧い友人が置いていった酒は魂そのものに訴えかけるような美味さ。かなり特殊な酒なのだろうが、彼の心遣いが身に染みる。

 

「さて各自、己の眷属は皆復帰したかね。此方は始まりの火で焼かれたマレニアが少しばかり不調のままだが、如何か」

「原罪の探求者が『消化不良だ』と言ってダンジョンに行ったっきり数年帰ってきていない」

「ああ、あのファーナム装備の。戦闘狂め。私のとこは特に問題ない、が、ただでさえ地に堕ちていた私への信頼が限界突破した。悲しい」

 

 冒涜神は当時、『我ら、地獄より(フロム ヘル)』の開催を眷属に話したところ、デュラという上級冒険者に"溜めパイル"なるものを顔面にぶち込まれた。

 

 オラリオの歴史を揺るがす程の大事件、『終末深淵(フロム ヘル)』。

 

 "神会(デナトゥス)"に初参加した神殺しが、緊張と神への殺意で頭が真っ白になり。

 他の神々にその事実を気付かれないうちに軌道修正をしようと、黄金の王が遠回しに諫め。

 最終的に喧嘩をおっ始めた2柱を、身体を張って冒涜神が止め。

 …その流れで、ついでにストレス発散のための殺し合いを始めた。

 

 提案した冒涜神にとっては自身の道化ぶりを印象づけ、かつストレス発散にもなりと良い事づくめの損のないものだったが、それが旧友の助けとなったならば溜めパイルもごく安いものである。

 

 しかし眷属はそうもいかない。

 ムーンプレゼンス・ファミリア所属の冒険者は所有スキルの残忍さに反比例して平和主義者が比較的多い。

 故に此度の"戦争遊戯(ウォーゲーム)"で、一時はファミリア解散寸前まで内乱が勃発。それが漸く治まったため、こうして3柱の、労いという名の反省会を開催したのである。

 

「全ては我が不徳の致すところによるもの。改めて謝罪を」

「薪の王、私にも原因がある。此方こそ詫びを」

「ええい、互いに謝り倒すのをやめんか。神共に威厳を見せつけた、ついでにストレス発散が出来た、これでいいだろうに」

 

 反省のあまり下げた頭が地に着きそうな神殺しと黄金の王。冒涜神がそれを止め、デーモンスレイヤーからの酒を継ぎ足し、飲む。

 

 30分程それを繰り返していると、ふと黄金の王が話題を転換させた。

 

「そういえば、最近星の巡りが妙である。あの動き方は異常だ。何か強い意志が介入している」

「ほぉ、つまり?」

 

 問いながら、酒が空になったことを確かめた神殺しが酒瓶を自らの炎で燃やした。硝子が蒸発する程の熱量が一気に集中し、あっという間にその姿を消失させた。

 

「近々、星の動きを乱す者がオラリオに訪れる」

「我が内なる瞳も同じ答えを導いた。貴公の星見は相も変わらず素晴らしい」

 

 黄金の王に同調するように、冒涜神がニタリと嘲笑った。

 

「姿は分かるかね?情報が少なすぎて私は分からん」

「星見だけでは限界がある。だが…星の動きから、あの廃教会に拠点を置く筈だ」

「廃教会というと、ヘスティア神か。ということはあの神の眷属になるか」

 

 ヘスティアは炉を司る神。

 炉に深い想い入れのある神殺しにとって、真っ先に殺してしまいたい神候補の1柱であった。

 反対に黄金の王にとって、自らの眷属とそれなりに友好的な関係を築いているため、他の神々よりその神柄を信頼していた。

 

「貴公の殺意は置いといて。星の動きを乱す者、か。退屈しなさそうで何より。人形ちゃんに報告しよ」

「うむ、うむ。ヘスティア神であれば悪いようには転ばんだろう」

「む、妙案を閃いた」

「また唐突な。何かね、薪の王?」

 

 さて、その妙案。

 本来辿るべき物語をしっちゃかめっちゃかに掻き乱し、神々を顔面蒼白にさせ、オラリオに『終末深淵(フロム ヘル)』以上の混乱を引き起こし───篝火を囲む3柱にとって忘れられない喜劇になることを。

 

 この時は、誰も知らなかったのである。

 

 

     ◇

 

 

 オラリオには、関わりたくないファミリアTOP3というものが存在する。

 

 

 1つ目は、ソウル・ファミリア。

 

 所属する冒険者の数は全ファミリアでもトップクラス。戦闘員は誰もが実力者で、各々が嘘みたいな伝説級の逸話を持っている。

 だが同時に、苛烈な戦法をとることでも有名だ。

 単独行動は当たり前。裏切りも当たり前。獲物の横取りも当たり前。己の嗜好のためなら"怪物の宴(モンスターパーティ)"さえ意図的に起こし、他の冒険者すら巻き添えにする。

 

 戦い、殺し、己の魂を満たすため。

 

 ただそれだけに重きを置くソウル・ファミリアの冒険者は、ダンジョン内で見かけると疫病神扱いされる程に嫌われている。

 勿論そのような冒険者ばかりではないが、ごく少数派のために、ソウル・ファミリアの印象はあまりにも宜しくない。

 

 そしてその主神たる、常に燃えている爛れた鎧。

 神に異常なまでの憎悪を抱き、視界に入ることさえ許さぬ徹底ぶり。

 神を殺す、神。

 

 このファミリアに喧嘩を売り、崩壊したファミリアは幾つもある。それら全てが裏で"闇派閥(イヴィルス)"に所属していたことが判明したために罪には問われていないが、かの主神は喧嘩をふっかけたファミリアの主神を見せしめのように殺している。

 

 残忍で冷酷。不可能であった完全な神殺しさえ成し遂げてしまう主神と、彼が所属を認めた冒険者たち。

 

 周囲からその存在を語ることさえ憚られる、異常者の集まりであるファミリアだ。

 

 

 2つ目は、エルデ・ファミリア。

 

 主神が石のなれ果てになってしまったために、その権能は伴侶たる王が行使している。

 つまりその王が、実質的なファミリアの主神だ。

 

 威圧的ではあるが、どんな立場の者であっても態度を変えずに接し、生命を司る者としてあらゆる命を祝福する。

 故に眷属も人格者が多く、パーティを組む際はエルデ・ファミリアの冒険者がいると完璧とまで言われている。

 

 生命への価値観についての決定的な欠陥がなければ、オラリオで最も素晴らしいファミリアとして名声を得ていただろう。

 

 生命を司る故か、王はあらゆる命に対して平等である。これは、貴族だろうが一般人だろうが、魔物だろうが神であろうが、同じ価値のものとしてしか見ないということだ。

 そのためか、必要と断じたならばあらゆる命を見殺しにする。あまりにも価値を平等に見ているためか、罪を犯した己の眷属に対してまで断頭を命じる程の徹底ぶり。

 指導者としては完璧であるが、あまりの人情のなさに誰もが彼を恐れていた。

 

 ここで重要なのは、王は神ではないということだ。

 あくまで神の権能を行使しているだけの人間でしかない。

 

 だが彼は、人の身で、何柱もの神を打ち倒した。

 力こそ王の故。その証拠に、エルデ・ファミリアには眷属として神が所属している。戦い、降伏し、軍門に下ったのだ。

 

 神さえ従える、王。

 

 オラリオで、神々から最も嫌われているファミリアだ。

 

 

 3つ目は、ムーンプレゼンス・ファミリア。

 

 最も異質であり、最も悍ましいファミリアである。

 

 その主神は特異な神性を有している。どの神話系統にも当てはまらず、深淵から這い上がって来たかのような不快感を与える。このファミリアは、一時期は"闇派閥(イヴィルス)"への関与さえ疑われる程に異端だった。

 

 主神の姿を正しく知る者はいない。主神の声を正しく知る者はいない。

 その異常なまでの認識阻害は、眷属にすら当てはまる。彼らでさえ、己の眷属主神を正しく認識していないのだ。

 

 そして何より、血が好きだという。

 

 血に対する執着があり、ことある事に血を求める傾向にある。

 そのイカれた偏執は眷属にも受け継がれており、血を浴びることで興奮状態へと移行し、一時的なステータス上昇という恩恵を得ることが出来るのだ。

 

 ただしこの恩恵は、理性を大幅に奪うというデメリットも存在する。

 レベルが低ければ低い程、それは抗い難い破壊衝動へと変貌する。己を強く律しなければ、血を求め続ける飢えた獣へと成り果ててしまう。

 

 そのためか、ムーンプレゼンス・ファミリアに所属する冒険者はレベルの平均値がどのファミリアよりも高い。また本能を押さえ付ける術に長けているからか、悍ましいスキルを所有するにも関わらず人格者が圧倒的割合を占める。

 

 とはいえ、ハイリスクの恩恵を強制的に与えられ獣に成り果てることを恐れてか、所属を希望する冒険者は殆どいない。

 

 主神の獲物は人間や魔物だけではない。神々ですら、その対象だ。

 神を喰らう、神。

 

 かの神にとって眷属とはつまり、血を集めるための端末でしかない。

 

 あらゆるものから遠ざけられる特異性を持つ異端の主神が、娯楽のためだけに率いるファミリアだ。

 

 

 目の前の神によってその話を聞かされたベル・クラネルは、悪寒が走り思わず自身を抱き締めた。

 オラリオを訪れる前から耳に入ってきた、あらゆるファミリアの英雄譚。それらとはかけ離れた現実に、自身の理想は間違っていたのではないかと疑う思考が浮かんだからだ。

 

「とはいえ、関わらない方がいいのはこの3つだけ。あ、でもエルデ・ファミリアの子には良くして貰ってるから大丈夫だ」

 

 とある廃教会の地下。ヘスティアが、これから自身の眷属になる者に懇切丁寧にオラリオの説明をする。しかしヘスティアも新参者であり、詳しくは知らない。まぁこれから学べば良いだろうという楽観的思考の元、彼女は心からの笑顔を振り撒いた。

 

「さて!改めて自己紹介だ。僕はヘスティア、炉を司る女神さ」

「ぼ、僕はベル・クラネルです!」

 

 ベルは、出来る限りの大きな声を出した。気弱な姿を見せて「やっぱ眷属にするのやーめた」と愛想を尽かされないようにするために。未だ少年の域を出ない彼の健気さに、ヘスティアは益々顔を綻ばせた。

 

「うんうん!元気なことは良い事だ。それで、君は(・・・・・・)?」

 

 ヘスティアの視線はベルのすぐ横に流れた。

 

 お世辞にも裕福とは言えない身なりではあるが、全身を覆うプレートアーマーは時代錯誤ながらも良品と一目で分かるものだ。

 ベルとは違い既に青年の域に到達しているだろうその男は、ゆっくりとした動作で兜を取った。想像より精悍な顔付きで、燃え残った灰のような髪の色が特徴的だ。

 

 やがて、静かに口を開く。

 

「私は───」

 

 それは。

 

「───名は、無い。ただ、火の無い灰(アッシェン ワン)と呼ばれている」

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

・王たちの化身(神殺し)

 ソウル・ファミリア主神。

 薪の王たちの集合体だが、ベースとなる人格はダクソ無印の薪の王。神は嫌いだが人類の発展のために始まりの火へと飛び込んだ。

 軽度のコミュ障。

 

・原罪の探求者(戦闘狂)

 ソウル・ファミリア所属の冒険者。

 薪の王になる資格があるにも関わらず永遠の放浪を選んだダクソ2の不死人。

 自他共に認める戦闘狂で、暇さえあればダンジョンに潜っている。強い。

 ほねのこぶし。

 

・火の無い灰(素性:騎士)

 元ソウル・ファミリア所属の冒険者。

 件の妙案により、星の動きを乱す者であるベル・クラネルを近くで観察するためにヘスティア・ファミリアに所属することに。

 無自覚惚れさせ主人公気質。ベルの夢が危ない。

 

・デーモンスレイヤー(酒好き)

 楔として拡散する世界を繋ぎ止め続けている要人。と言いつつ好きに移動出来るため、世界を渡っては酒を集める暇人でもある。

 

・褪せ人(黄金の王)

 エルデ・ファミリア主神。

 完全律エンドを迎えた褪せ人。あらゆる事柄に対して平等であり公平。ただし親しい者の前ではかつての人間性をさらけ出す。

 普段は玉座に座ったまま動かず、静かに星見をしている。

 海老と蟹の話になると人が変わる。

 

・狩人(冒涜神)

 ムーンプレゼンス・ファミリア主神。

 上位者のこどもとなり、月の魔物に成り代わった狩人。血の遺志を大量に摂取しているためか姿と声と人格が1秒以内に切り替わる。

 眷属に物凄く嫌われている。

 

 

※それぞれのファミリアに所属した時に強制的に付与されるスキル

 

篝火に火を熾せ(ボンファイア リット)

 ソウル・ファミリア専用スキル。肉体が死んだ時、その魂が篝火に還り再度蘇る。

 

祝福の導き(ユア グレイス)

 エルデ・ファミリア専用スキル。死亡した時、肉体と魂全てが祝福に導かれ再構築される。

 

青ざめた血を求めよ(オールド ブラッド)

 ムーンプレゼンス・ファミリア専用スキル。死亡した時、その事実を夢のように霧散させ、灯りによって目覚めさせる。

 




ここまで考えて痛々しくなったので終わりです。お粗末。
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