俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。 作:萩月輝夜
ユリスが襲撃を受けたことに関して俺とクローディアは隠れて護衛?することになったのだが…。
「あ?天霧とリースフェルトが放課後学園内を案内するって?」
「ええ。そうらしいですわ。デートでしょうか?」
「恐らく違うと思うが…こっちに来て日が浅いからな。地理を知りたいんだろう…まぁ、でも初日から女の子、ましてやお姫様を墜とすとかイケメンか…滅びればいいのに。」
此処にはいない天霧に対して呪詛をぶつけるようにしていたのだが…
「蜂也がそれを言いますか?」
「?どういう意味だ。え、クローディアも俺には呪われて欲しいって思ってるのか?」
「はぁ…たまにわざと言っているのではと思うのですが本当に言ってるんですのね。まぁ蜂也ですから仕方がないですが。」
「別に蜂也は悪口じゃねぇからな?」
その事を告げるとため息をつかれた。なんでよ。
「まぁいいか。今日の業務はこれで終わりにして尾行でもしますか…。」
俺は立ち上がり今日分の仕事を終わらせて立ち上がる。
…しかし報酬がないのに何故俺は働いているのだろう。
やだ!八幡ったら社畜なのね!となりそうだが俺は不労所得で生活する準備があるのでボランティアだと思えばいいか。
まぁ赤の他人からの感謝などミリ単位で要らないが。
ぎゅっ。
「…?なにやってんだお前。」
そんなことを思っていたらクローディアが俺の腕に自分の腕を絡み付かせて来ていた。
「なにとは?見て分かりませんか?」
「いや、その行動について教えて欲しいんだけど。」
「ユリス達の尾行というのですから私たちのこれからの行動も立派なデートと言えませんか?」
「いや尾行だろ。」
「さぁ、蜂也私達も行きましょう。」
「聞いちゃいねぇし…はぁ…。それよか天霧に書類渡さなくていいのか?」
「おや、危うくわすれるところでした。」
天霧に渡す《純星煌式武装》の適合率試験に関する書類(凡そ十ページ)をクローディアは手にもって再び俺の腕を絡ませてきた。
俺は諦めてクローディアに左腕を巻き取られつつ生徒会室から学園内へ向かうのだったが道中で俺を嫉妬と怨恨の籠った視線が俺を射貫いた。
「くっそ…見せつけるように…」
「パルパルパルパル…」
「なんか別作品の奴がおるぞ。ってだれだよ。」
「《千見の盟主》と《戦士王》のペアかぁ…お似合いだよね~。」
(早く教室つかねぇかな。)
(ふふっ…お似合いですか…。)
一方で《戦士王》と《千見の盟主》は考えていることは違うようだった。
◆
化粧室で身だしなみを整えたユリスは自分の教室へ戻ると既に放課後であったため人の数は数名しか残っておらず今日学内を案内する、という話になっていた綾斗の隣には幼馴染みといった同じクラスの沙々宮紗夜が雑談をしていたのを確認した。
「(むぅ…なにか落ち着かない。)…。」
数年振りに再開した幼馴染み、ということもあって会話に花が咲くのは当然なのだがユリスは何故だか落ち着かなかった。
教室の入り口で息を整えて意を決して教室に入る。
「あー、こほん。準備はいいか?」
「ああ、ユリス。よろしく頼むね。」
案内されることを紗夜に綾斗が告げると眉を寄せて「自分が案内をする」と言い出したのだった。
どちらが案内するか、で揉めているところにとある人物が教室にやってきた。
「お、いたいた…ってなにこれ?修羅場か?」
「両手に花ですわね天霧君。巻き込まれるのはいやですのでさっさと用件を済ませてしまいましょう。副会長?」
生徒会長のクローディアと副会長の蜂也が訪れてこの出来事に対して苦言を呈した。
しかも腕を絡ませた状態で。
「ええと、クローディアさんと副会長はどうしてこの教室へ?と、言うかなんで腕を絡ませて…」
「お、お前達は人目も憚らずに…!は、ハレンチだぞ!」
顔を若干赤くしているユリスにクローディアはちょっかいを掛けていた。
「お子さまのユリスには刺激が強かったかもしれませんね?蜂也。」
「あ?俺に振るなよ。それと…天霧気にするな。ああ、天霧へ手渡すものがあってな。ほれ。」
「これは…?」
手渡された書類凡そ十ページのファイルを渡されて綾斗は首を傾げた。
「先日クローディアが言っていたと思うが純星煌式武装の選定及び適合率試験を行うからその書類に目を通しておいてくれ。注意事項もあるから忘れずにな。問題が無ければ此処でサインをくれ。」
「あ、その事か。」
綾斗は手渡された書類に目を通すと細かい時でびっしりと記入されている。
「とりあえず流しでいいから適当に目を通してサインくれ。」
「預かっているとはいえ統合企業財体の資産ですからね。まぁ形式上の物なのでお気になさらず、蜂也の言う通りさら~っと流してしまって結構です。適合さえしてしまえば使用権はその本人となりますので。」
「クローディアの言う通り適合しちまえばこっちのもんだからな。」
おおよそその学園の長とその副長が言うのはどうなのだろうかと思ったが彼、彼女達が言うのなら問題は無いのだろうと重要なところだけを読んでサインをする。
「クローディアさんと副会長って仲がいいですよね?恋人同士なんですか?さっきもこの教室に入ってくるときに腕を絡ませてはいってきていたので。」
「おや、天霧君は面白いことを言いますね?その通りです。」
「え?やっぱりそう、」
だったんですね、と言い掛けた綾斗の言葉を遮ったのは蜂也でその表情は本当に嫌そうな表情を浮かべていた。
「んな訳有るか。…こいつと俺は赤の他人だぞ。そもそもにおいて俺とそんな噂になったらクローディアが可哀想だわ。」
「私は噂になってもいいのですが…。」
「いや、お前が困るだろ…。」
「むぅ…。」
「ははは…。」
綾斗が苦笑しているとユリスは聞こえない声でクローディアに向けてコメントした。
それに綾斗が反応する。
「クローディアよ…哀れだな。」
「副会長って意外と鈍感、なのかな。」
「かもしれぬ…じゃなくてほぼそうだろう。」
「…うん、頑張ってくださいクローディアさん。」
「気を落とすなよ、クローディア…。」
「ありがとうございます天霧君、ユリス。」
蜂也達が会話しているときに突然声が聞こえてきた。
どうやら隣にいた水色髪の少女が口を開いたようで表情が乏しいように感じられた。
蜂也はそれを見て久しく会っていない知り合いを思い出す。
少女が綾斗に話しかけている。
「綾斗。」
「どうしたの紗夜。」
「この人だれ?」
クローディアと蜂也の方向を指差している。
「え、紗夜はクローディアさんのこと知らないの?」
「クローディアの事は知っている。知らないのはそこにいる男の子。」
どうやら蜂也の事を指差していたようで頭を掻いていた。
「まぁ、数日だけ授業に出てただけだし知らないのは…というか沙々宮お前いっつも寝てただろうが。まぁ俺は生徒会役員特権と学科プログラム免除受けてるから授業に出なくても良いしな。」
「なにその羨ましい特権。どこで受けられるの?」
「全教科満点の三年分の範囲を合格できるならな。」
「う…だったら布団に埋まっていた方がいい。」
「分かるぞそれ。布団は友達だもんな。」
「副会長は話が分かる人。」
「なんならずっと寝ていたいまであるからな。」
「綾斗。副会長はいい人。私沙々宮紗夜。宜しく。」
「名護蜂也だ。宜しくな。呼び方はどっちでもいいぞ。」
「うん、分かった蜂也。」
「ははは…副会長余り紗夜に変なこと吹き込まないでくださいよ。」
困ったような表情を浮かべる。
蜂也は悪いとは思っておらず言葉を続ける。
「まぁ、俺の場合はこいつを一人にさせないようにするためなんだけどな…。」
蜂也の視線はクローディアに向いており当の本人は赤面している。
「あれ?急に惚気話を聞かされてる?」
「あ?どこが。惚気なわけねぇだろ。」
「…クローディア応援してる。」
「ありがとうございます沙々宮さん。」
唐突の応援宣言に蜂也は首を傾げるしかなかった。
「まぁとりあえず…うん必須場所に記入されてるな。邪魔したな。」
「お邪魔しました天霧君達。」
そういってその場から立ち去る振りをして教室の外の扉に隠れた。
「それじゃ尾行と行きますか…。」
「どうやって…あ。あれを使うんですね。」
「そういうことだ。」
蜂也が右腕につけたブレスレット型CADを起動させて光学迷彩と認識阻害の魔法を二重展開し姿が見えるのはお互いだけだ。
外からは一切見えていない。
直ぐ様教室から綾斗と紗夜、ユリスが出てきて学園内の案内をするようだった。
どうやら結局二人で案内するようだ。
その後を気づかれない距離から追跡し護衛が開始された。
◆
遠目で綾斗を案内する二人の姿を見ていた。
クラブ棟、委員会センター、食堂へと案内をしていたのだが紗夜が全くといっていいほど案内に役立ってなかった。
「アイツもしかして方向音痴なんじゃねぇの?」
「まさかそんな、」
はずが、と言う準備をしていたのだが会話の最中に「私、方向音痴だから」と言う言葉を聞いて蜂也は
「なんでついて行ったんだよ沙々宮。」
一方ではクローディアはそのやり取りをニコニコしてみていた。
「あら、いいではないですか。年頃の女の子が気になる男の子を他の女の子に手柄を奪われたくないと思うのは当然ですよ?」
「いや、知らんし…。」
そんな会話をしていると休憩をするのか中庭の噴水のあるベンチへユリス達は座り天霧は自販機へと走る。
「そこからなら中等部が近いんだけどな…。」
「おや?蜂也は詳しいですね。」
「まぁ、綺凛ちゃんに連れられて行ったことがあるぐらいだけどな。」
「そうですか…ふ~ん…。」
「…動き出したか。」
「え?」
蜂也はクローディアがウザい絡みをしてくると思いそちらに意識を割くようしようと思ったがザバり、と噴水の方から似つかわしくない水音が響くと同時に前方にて会話をしていたであろうユリスと紗夜が左右に跳んだ。
跳んだ同時に座っていたベンチに光の矢が打ち込まれる。
いつから潜んでいたのか噴水から黒づくめのフードを被った襲撃者が上半身を水面に出していた。
手には煌式武装のクロスボウ型が握られている。
「名探偵コ○ンの犯人かよ…。」
「止めに入らなくていいのですか蜂也。」
動かないまま静観を決め込む蜂也に疑問を覚えたクローディアは問いかけるが視線を今起こっている争いに向けながら答えた。
「いや、今のユリスなら余裕だろ。本当に危なくなったら手を貸すが…今は襲撃者の正体を探りたい。」
「なるほど…。ですがそれだとユリスが撒き餌のようでは…?」
「まぁ、言い方が悪いがそんな感じだ。」
「まぁ、悪い人。」
クローディアはわざとらしく口を押さえた。
「これも一つの策だ。」
目の前ではユリスが襲撃者と応戦するために星辰力を震わせて攻撃を仕掛けるがそれは叶わなかった。
「あら、もう一人いらっしゃったようですね。」
クローディアはさして驚いてはいないようだった。
目の前の光景にはユリスの攻撃を防ぎ…きれずに吹っ飛ばされている先の襲撃者、仲間なのだろうが斧型の煌式武装を盾にしていたようだったが叶わなかったようだ。
襲撃者二人の人相を見て考察する。
「(一人はずんぐりしててもう一人は2M近いな…。まるでマクフェイルとその取り巻き…いや早計、か。)」
そんなことを一人で考えていると爆発音が鳴り響く。
その正体は紗夜が身の丈以上の擲弾銃、所謂グレネードランチャーをずんぐりとした襲撃者にぶち当てていた。
「すごい威力ですね。」
「
つんざくような轟音を響かせて噴水を木っ端微塵に粉砕、玉砕、大喝采していた。
わずかに残った基底部分から間欠泉のように水が吹き上がりエリスと紗夜を濡らしている。
「正体は分かりましたか?」
クローディアは蜂也を見て聞いてきた。
「…人間でないのは確かだな。」
蜂也の《瞳》が金色に輝いておりエリス達を襲った襲撃者達のステータスを確認していた。
「…それでその根拠は?」
「血が通っていないし、人間と違って動きへのラグが少なすぎる。恐らくはマクフェイル達に背格好を似せた擬形体って言われる奴だろう。それに…」
「それに…?」
「普通の人間なら気絶してるだろあれ。」
そういって崩れた噴水の瓦礫の中から黒ずくめの襲撃者達は立ち上がり素早く森の中へと立ち去ろうとしていた。
しかし蜂也の前でそれは悪手であった。
「まぁただでは逃がさんけど。」
そういって蜂也はブレスレット型のCADを起動させて詠唱破棄による光波振動系統《フラッシュエッジ》を発動させてずんぐりした襲撃者の腕部分を切り落とす勢いで放つがタイミングが少し遅かったのか肩部分を切り裂くだけにとどまった。
「…!!」
地面に襲撃者の着用しているマントの一部分と肩のパーツを落下させていくが森の中へと消え去ってしまった。
「ちっ…逃げられたか。」
「ただで帰すよりマシではありません?」
蜂也の行動をクローディアなりにフォローしていた。
「まぁ、とりあえず風紀委員に仕事をさせるか…ったく沙々宮め盛大に壊してくれやがって。」
目の前では濡れ鼠になったユリスと紗夜を見て薄い夏服を着用している二名の透けた姿を目撃して赤面する綾斗の姿がありラブコメ展開が繰り広げられていた。
◆ ◆ ◆
翌日。壊された噴水の修復依頼を業者に頼み、仕事が一段落したときに襲撃者からふんだくった証拠品を精査していた。
「こいつはアルルカント製、みたいだな。」
机の上には昨日の襲撃者の一部…擬形体のパーツがおかれていた。
アルルカントで作られた、と言うことしか分かっておらず蜂也の持つ《消失》も生きている人間にしか使えない為パーツだけではその効果は発揮出来なかった。
「記憶を遡れば最後に命令を下した奴を特定できるんだが…無い物ねだりは出来ないか。…ん?」
生徒会室の扉が開く。
「蜂也、首尾は?」
「お義兄さん、お疲れさまです。」
クローディアと綺凛が入室してきた。
「ああ、クローディア、綺凛ちゃん。…ダメだな、情報が少なすぎる。アルルカント製、ってだけだな。」
「他学園の名前が出るってことは内通者がいると言うことでしょうか…?」
綺凛が予測し蜂也に問いかける。
「恐らくな。金で雇われたか、自分の実力を他学園に売り込むためかどっちかだな。それも複数犯じゃなくて一人だろう。」
「その根拠は?」
クローディアは嬉しそうに蜂也に問いかけている。
「背格好はマクフェイル達にそっくりだったが現に襲撃者達は擬形体であることは確定してるしそれに…」
「「それに…?」」
同時に疑問を投げかけ首をかしげる。
蜂也は発動体を掲げる。
「《
◆
その後、適合率試験を受けに生徒会室を訪れた綾斗を三人で出迎える形となった。
「昨日は大変だったようですね天霧君。」
「災難だなお前も。」
「初日から大変でしたね天霧先輩。」
ユリスが襲われた…と言うのは知っていたがあたかも今日初めて知ったのような態度を取っている。
既にネットニュースにも挙げられており知らない方がきついのだろうがそこはうまく合わせることにした。
犯人確保のために学園内の風紀委員が活動しているがあくまでもそれは生徒間の取り締まりであり正規の捜査機関はあることにはある。
しかし余り学園内に受け入れたくないと言うのが実情だ。
《
学園側が許可しないかぎり入園は認められていない。
…大体こういう学園物に関しては『臭いものには蓋をしたい』と言うものがあるからだ。
そもそもクローディアが蜂也の経歴にも余り触れてほしくない為招き入れることはしないだろうが。
その事を聞いて綾斗が問いかける。
「痛くもない腹を探られるのは嫌だってことか。」
「探られると嫌だから渋っているんだろうが…そもそも招き入れる権限は俺たちにはない。まぁ幸いにリースフェルトは序列五位の人間だしな逆に襲撃者がかわいそうになるレベルだし。」
「お義兄さん、それは言いすぎなのでは…。」
「ははは…。」
「まぁ、それとこれとは話が別ですね。私としても今回の件は看過できません。そこで天霧君にはご相談が、」
クローディアが言葉を告げようとしたところ生徒会室のドアが荒々しくノックされた。
「そういやもう一組適合試験を受けに来る奴がいたっけ。」
「…と、ごめんなさい今日は天霧君以外にも来客があることを忘れていました。この続きは後程。」
クローディアが執務机の端末を操作すると生徒会室の扉が開く。
訪れた人物と綾斗は互いに顔を見合わせて揃って驚いていた。
「おや、天霧君とマクフェイル君達は既に顔見知りでしたか…では早速装備局へと向かいましょう。時間は有限ですからね。」
レスターがこの場にいる綾斗に言いたそうだったがその視線を遮るように蜂也が割って入るとバツが悪そうに視線をそらした。
自己紹介は不要だと言うことに気がついたクローディアは早速適合率試験を受ける会場へ移動するように催促をすると全員が装備局へと向かうのだった。
◆
《
『はてさて…我はどのくらい眠りに就いていたか…分からぬな。』
『たかだが十年そこらだろうが…もう実家が恋しくなったか?』
『む…そういうわけでは無いが同胞が狭苦しい場所にいることを考えるとな。』
『頼むから反乱は起こさないでくれよ?俺がお前をぶっ壊さなきゃならなくなる。』
『安心せよ主。主のような優良物件を手放したりはせぬ。』
『嬉しくねぇ…』
女の子に言われれば動揺していただろうがやたらと厳格な声で話しかけられているのでそんな感情は起こらないが。
脳内に語りかけてきた《
「蜂也?」
「お義兄さん?」
脳内で《
「ん?ああ悪い、少し考え事をな。してどうなった?」
「今から先にマクフェイル君の適合率試験です。…おや《
純星煌式武装が格納されているユニットから発動体がせりだしレスターが意気揚々と適合試験を開始しようとしていた。
「あれって天霧の姉が使っていたって言う武装か?」
「ええ、触れれば溶け、刺せば大地は坩堝と化さん。と伝えられている強力な
「《
綺凛ちゃんが《
「あれが姉さんが使っていたかもしれない《
隣にいる天霧はレスターの手元にある発動体を凝視していた。
「さぁて、いくぜぇ…。」
レスターが発動体を起動させると柄が再構築されていく。
かなりの大型で俺の煌式武装と良い勝負かもしれない。
しかし名前の《
俺はその姿をみて眉をひそめると
『
わかるのか?てかセレスタって…。
『セル=ベレスタだから縮めてセレスタだが…。ああ、
幼い…とはこいつらにも人間と同じように生まれた順番があるのか…?
『無論だ。因にだが我が一番年上になる。』
そうだったのか。
『む…
なに?
隣にいる天霧の表情は一瞬しか見えなかったが何かに見入られ戦慄を覚えているような表情を一瞬浮かべていたが計測準備が出来たことを放送で聞くと戻っていた。
それを受けてレスターが発動体を握り気合いの咆哮を挙げて星辰力を爆発的に発露させているが
スピーカーから発動率が告げられるが無情であった。
『適合率三十三パーセントです。』
スピーカーの声にレスターの顔色が変わり発動体の柄を握りつぶさんとするほどの力を全身から滾らせるが次の瞬間にはレスターは
まるで羽虫を無邪気に潰し殺す幼児のようであった。
「拒絶されてしまいましたね。」
『拒絶されたな。』
脳内の
その言葉を聞いて天霧は聞き返す。
「
「ええ、と言ってもコミュニケーションが取れる代物ではないですが。」
『我はコミュニケーションが取れるぞ。』
何でそこでお前はマウントを取ろうとするんだよ…。
済まないクローディア、今絶賛会話してるぞ
吹き飛ばされたレスターは諦めずにどんな原理で浮いているか…と思いきや万応素を見えない足場にして浮いているようで
「ああいうがむしゃらな姿勢は嫌いではありませんが…強引では口説き落とせない相手のようです。」
「
『綺凛殿は良い子であるな…我は泣きそうだ。』
良い子であるのは同意するが、お前俺以外に使われて大丈夫なのか?
『綺凛殿であれば使われてもよいが…』
まじかよ。
まぁ、綺凛ちゃんに使われるなら良いけどよ。
目の前ではマクフェイルが押さえ込もうとしているが何度やっても弾き飛ばされてしまう。
「くそがぁ!何でだ!何で従わねぇ!」
適合率は下がる一方で苛立ちを隠そうともしないマクフェイルに
「ぐっ…!!」
『適正値マイナスに移行!これ以上は危険です!待避してください!』
「あら、本格的に機嫌を損ねてしまったようですね…どうします蜂也。」
「はわわ…怒っているように見えます!」
気流操作をして外気からの熱をシャットアウトして俺たちには快適な気温で保たれている。
『た、対象は完全に暴走してしまっています!至急退避願います!』
更にスピーカーから焦りの声が聞こえる。
『対象の熱量が急速に増大中!』
その瞬間
『やれやれ…我が儘な奴め…。主よ分からせてやってくれ。』
何で俺が…まぁ良いかクローディアと綺凛ちゃんに怪我されても困るしな。
ほれ起動しろや。
《
狙われているのは天霧だったが俺にも興味の対象が移っているのか俺も見られているような感じがして
黄金色の刀身に紫電が迸る。
『…!』
その瞬間
視線が本格的にその意識が天霧へ向けられる。
その行動に
『我がいることに気が付いて「やばい
天霧すまないが犠牲になってくれ…。
視線を向けると天霧は溜め息をつく。
「はぁ…仕方がないか」
天霧は切っ先を見据え星辰力を集中させている。
次の瞬間襲いかかってきていた。
猛烈な速度で迫り来る切っ先を間一髪でかわし柄を握ろうとしたが急な方向転換をして天霧の胴を薙いだ。
しかし、天霧を傷つけることは出来ずに制服を切り裂いただけに終わった。
「天霧先輩!」
「あらあら、随分とじゃじゃ馬ですね。」
「天霧、大丈夫か?」
間の抜けた問いかけをすると天霧が少し慌てたような反応をする。
「副会長見てないで助けてもらえます?」
「いや、俺その
「ええっ!?」
そんなことを言いつつもしっかりと攻撃を回避してすり抜ける黒炉の魔剣の柄をすれ違い様に握る。
「あっつ!」
ジュッ、と肉が焼ける音がアリーナに響き天霧の声が響いた。
しかしそれでも天霧は手を離さずそのまま黒炉の魔剣を地面に突き刺した。
「しつこくされるのは嫌いなんだ。キミと同じでね。大人しくしてくれよっ…!!」
その途端室内の温度が嘘のように熱気が掻き消されてた。
その姿に
『む…どうやら
え、なにそのヤンデレこわ…。
『
前所有者ってことは…天霧の姉が使っていたってことか?
『ああ、
なるほどな…しかしそれを天霧に伝えるべきなんだろうか?
『いや、今は伝えない方がよいだろうな。主が我と会話できることを聞かされたら頭のおかしい奴認定されてしまうぞ。』
お前が言うのかよ…。
『時期尚早ということだ。いずれ分かることだろうしな。』
視線を天霧に向けると
俺とクローディアはパチパチと手を叩く。
「やるな天霧。」
「お見事です天霧君。ーそれで適合率は?」
装備局の職員は俺の時とは違い少しだけ反応に遅れたが答えてくれた。
『適合率は九十七パーセントです。』
「結構。」
クローディアは満足に頷いてから、マクフェイルに視線を向ける。
「残念ですが異議がありませんね?」
マクフェイルは信じられないと言った表情を浮かべていたが悔しそうに唇を結んで地面に拳を叩きつけた。
こうして
◆
付近にあった治療室に天霧をぶちこんで治療をしていた。
俺の隣にはクローディアと綺凛ちゃんが座り対面には天霧がいる。
治癒魔法を使い軽度の火傷を治療する。
「これで治療は終わりだ。」
「ありがとうございます副会長…すごいや、まるで魔法みたいに火傷がなくなった。」
「まぁ、俺は少し特殊だからな。不調があるなら言ってくれ。その程度ならすぐに治してやる。」
「はは…ありがとうございます。それにしても俺が本当に使っても良いんですか?」
その事を天霧が問いかけるとクローディアが答えてくれた。
「適合率が九十七パーセントを弾き出している人に文句は出ませんよ。それともその子では不服ですか?」
「いや、姉さんが使っていたかもしれない剣なんだから、俺も気になっているのはたしかなんだけど、ね…。」
「もしかしてマクフェイルの事を気にしているのか?だとしたらそれはあいつに対する冒涜だな。」
「え?」
「おや?」
驚く天霧に意外と思ったクローディアがこちらを見る。
視線をこっちにぶつけないでくんない?怖いんだけど。
「この都市では本質は『競争と闘争』だ。友情努力愛情の某少年誌の三大元素を否定する気は無いが『他者より強く、他者より先へ』を地で行くこの場所で認められたのなら素直に受け取っておくべきだぞ。」
「レスターもそう思ってくれていると良いんだけどね。」
「天霧先輩はマクフェイル先輩となにかあったのですか?」
困ったようにいう天霧へ綺凛ちゃんが問いかける。
「うーん、正確には俺じゃなくてユリスがね…。」
先日の一連を俺たちは見ていたのだが説明をしてくれた。
「まぁ、マクフェイルがリースフェルトに執着しているのは見ていて分かるな。」
「俺が恨まれるのは良いんですけど…ユリスがそれに巻き込まれるのは避けたいと言うか…。」
「天霧は先日の襲撃がマクフェイルによるものだと考えているのか?」
聞いてみただけだったのだが天霧は苦笑いで答えた。
「そうは言ってないですよ。確かにユリスを襲撃したのはレスター位の大男だったそうだけどそれだけで犯人扱いは可哀想ですよ。」
「それだけ証拠…犯人像に近いということだ。ユリスに敗北し穏やかじゃねぇ感情をぶつけている。そうは考えられないか?」
俺の意見を天霧に話すと自分の意見を話してくれた。
「だからこそ違うと思うんです。レスターはただユリスに勝ちたいと思っているだけで恨んでいる、というよりも自分の力を認めさせたいとそう思うんです。それこそ闇討ちなんてしたら自分のプライドが傷つく…なんて思っているんじゃないかと。」
「ほーん…それで天霧はどうしてリースフェルトに迷惑を掛けてしまうと思ったんだ?」
「襲撃者はかなり慎重にユリスを狙っているようなので…当然といえば当然ですけどユリスは強いですから、正攻法で戦えば失敗する可能性が高いですけど目の前の戦闘となれば集中せざるを得ないでしょうし。」
「格好の狙い目だな。」
「俺との決闘や紗夜との決闘の時もそうでしたけど始めようか、と言うところを襲撃をされたようなので…そうなって万が一にレスターを刺激して戦うことになったら危険だなって。」
その事を聞いて俺は天霧の見る目が変わった。
飄々としてはいるがその洞察力は元より持っているものらしい。
「へぇ…よく見ているな。クローディア。」
「どうしました蜂也?…ええ。彼ならば適任でしょうね。」
突然呼ばれたクローディアは疑問を浮かべているが俺が言いたいことが分かったのだろう頷いた。
「?一体何の話でしょうか?」
頭に疑問符を浮かべる天霧に俺は姿勢を正し向かい合う。
音が漏れ聞こえないように遮音フィールドの起動式を展開し魔法を発動させる。
「天霧綾斗、当方は星導館学園副生徒会長として依頼する。」
面倒くさがりな雰囲気から一変し高潔な戦士のような雰囲気を現した俺に天霧は当てられるようにその姿勢を正す。
突如変化したその雰囲気に二人も驚いている。
「蜂也?」
「お義兄さん?」
「…っ!」
「貴殿を当学園の生徒であるユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトの護衛を依頼したい。」
「なぜ俺なのでしょうか…それこそ副会長が護衛をすれば…。」
「当方は手が離せぬのででな…それに犯人は当校の生徒だ。それも外部の依頼を受けているだろう。」
「いや、でもそんなこと…。」
「無論そんなことはあってはならぬ。星武憲章でも禁じられていることは言うまでもない。」
「ええ。ですが過去にも幾度と無く事例があり、必要ならばその程度の事はやって見せるのがこの都市の学園というものなのですよ。」
クローディアが説明すると天霧は眉をひそめていた。
まぁ当然だろう。
年中陰謀術数が渦巻くこの都市では金や人が動いているからな。
統合企業財体や特務機関を説明してやろうと思ったがややこしくなるので要点だけを話す。
「まぁ難しい政治の話しは置いておくとして…それに貴殿はリースフェルト殿が我らを除き心を許しているようだし、それに貴殿の実力ならば襲撃者も問題ではあるまい。それに貴殿の禁獄の力は一時的に封じられているようだしな。」
「…っ!どうして副会長がその事を知っているんですか!?」
知らない筈の情報を告げられて驚く天霧は思わず立ち上がりそうになるが俺の威圧感に当てられて座ったままだ。
「貴殿が困惑するのも無理はないがまぁ、当方の能力だということにしておいてくれ。」
そういって俺はメガネ越しの瞳を指差した。
瞳の色を分かりやすくするために黒から金色に変化させた。
それを見た天霧は驚愕していたがただならぬモノを感じ取ったのか苦笑していた。
「ははっ…副会長には敵いそうにないですね…。まさか俺の
「我は良いのだが…んん当方はその呼び名を好まない。今まで通りで頼む。それで依頼は受けてくれるかな?」
そういってやると天霧は考えたあとに答えを出してくれた。
「…副会長。俺は…。」
◆ ◆ ◆
夜になって場所は変わり女子寮個室のクローディアの部屋に連れ込まれ?て今日の出来事を話す。
なぜか隣にいるクローディアはまたしてもバスローブ姿だ。
「蜂也。」
溢れそうな二つの果実を押し付けてくるが平常運転なので対して慌てもしなくなっている俺はおかしくなっているのだろうか?
まぁそれはおいておくとして短く告げられた俺の名前からその意味を読み取りクローディアに回答する。
「ああ。天霧なら大丈夫だろう。」
今日の適合率試験の場で俺が天霧へリースフェルトの依頼をお願いしていたのだが少し考えて回答をしてくれた。
『俺は…俺が出来ることをこの学園でしないといけないと、そう思うのでユリスの護衛、やらせていただきます。』
『そうか、貴殿ならば下手人と遭遇することになるであろう。しかしそうであったとしても心配はしていない。頼むぞ。』
その言葉を交わし天霧は試験場を出ていった。
「彼が蜂也のお願いを聞いてくれて助かりました。これで不安要素は取り除かれたわけですが…。」
「まだ犯人が見つかっていないだろう。それに今回の下手人はうちのページ・ワンを負傷させて試合に出れないようにしているみたいだからな…」
「襲われた生徒達は捜査に非協力的ですし、それに怪我が治ったら自分の手で仕留めたい、と考える子も多いですからね。」
「まぁこの都市の性質を考えれば当然、か。」
「風紀委員には最重要容疑者としてマクフェイル君とランディ・フック君を調べるようにと依頼しています。その二名はその時間のアリバイがないようですので。」
「もう一人いた取り巻きのヒョロガリはどうしたんだ?」
「ええサイラス・ノーマン君に関してはルームメイトからの完璧なアリバイがありますね。その時間は勉強していたと証拠が出ています。」
火サスもビックリな完璧なアリバイに頭を悩ませる。
普通ならばな。
「クローディア。ノーマンは
「『物体操作』ですが特筆した力ではないです。序列入りもしていませんよ?」
物体操作、擬形体、襲撃者、取り巻き…。
「下手人が分かった気がするな。」
「え?もう分かったんですか?」
クローディアに驚かれ更に密着されている。
「まだ確信には至っていないな。本人から『その言葉』を聞かないといけないし。それに天霧のあの目はまだ迷っている奴の目だ。目標を与えてやったほうが強くなるだろ。」
犯人の目星は付いていているが確証もないほど無闇に突っ込むのは俺の主義に反する。
仕留めるときは一撃で、逃げ場を完全に断った状態でなければ。
「お厳しいですわね蜂也。」
「優しいって言ってくれない?」
「それより蜂也」
「どうした?」
「先程天霧君との会話中に雰囲気が変わっていましたがあれは一体…。」
クローディアは先程の会話で口調が変わっていたことに対して突っ込んできた。
俺は発動体を握りクローディアの目の前で持ち上げ説明した。
「
「それが《
不安そうな表情を浮かべるクローディアを見て俺は慌てて説明する。
「あ、ああそうなんだが実は代償と言う代償じゃなくてな…口調が変わるだけで実害はないんだ。『人格汚染』があったんだが俺が力でねじ伏せたろ?一応それだけで済んでるんだが…。」
「本当に大丈夫なんですか蜂也…?」
「大丈夫だって…それに口調が変わって威厳がある方が良いだろ。姫様に仕える武人みたいでな。」
冗談で言うと薄く笑みを浮かべて更に密着してくる心なしかクローディアの表情が紅い気がする。
「蜂也のその戦士善とした口調も好きですけど普段の口調の方が好きですよ?」
「何をバカなことをいってるんだか…。さて、そろそろ寝に帰るわ。天霧に今後の動向を報告してくれって頼んでたしな。」
立ち上がろうとするためにクローディアを離そうとするがそれを押し止めるように俺に向かってしなだれてきた。
「おい!」
「今日は一緒に居てくれませんか?」
「酔ってるのか?」
「…」
俺がベットに押し倒されてクローディアが潤んだ瞳で見つめている。
バスローブも緩く纏っているのでずり落ちている。さすがにどこがとは言わないが先端が見えそうになっており目をそらしてしまう。上を見れば先端が、下に目をやれば面積の少ないショーツが目に入ってしまうため必然的にクローディアの潤んだ瞳を見なければならない。
この場で逃げだそうものなら明日以降のクローディアの機嫌がどうなってしまうか分からないため俺は内心呆れつつはだけそうなバスローブを整えてやり隣に座らせて頭を撫でてやる。
「あっ…んふ…。」
気持ち良さそうに目を細めるクローディアに思わずイケない気持ちになり掛けたが目の前にいるのは甘えに来ている妹だと言い聞かせた。
「はぁ…一緒に横になるくらいなら寝るまで付き合ってやるよ。ったくしょうがねぇ妹だな。お前は。」
「別に求めてくれても良いですのに…。」
「なんかいったか?」
「いいえ、別に何も言っていません。」
甘えられるのは嫌いではないが流石に度が過ぎているとは思うのだ…。
素直にベットに横になるクローディアが眠りにつくまでその横顔を見続けるというある種のご褒美を貰うことになった。
「すぅ…。」
眠りについたクローディアの穏やかな眠り顔を確認して俺は認識阻害を使い部屋から出る。
「あまりうちのクローディアを困らせないでくれよ犯人さんよ。」
『やれやれ…我が主は女誑しであるな。』
不意に見上げた夜空は不気味なほど綺麗な満月であった。