俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。   作:萩月輝夜

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唐突に投稿するよ。


ジーニアスガール(自堕落開発大好き美少女)

星導館学園内部で起こった序列入りしていた生徒の襲撃の犯人は一人の男子生徒であることが判明したが行方知らずとなっていた。

 

下手人の行方が知らずとなっていたがそれだけでアスタリスクに住む生徒達の話題は別の物へ変化する。

”人の噂も七十五日?”とあるようにすっかりと冷めてしまっていた。そんな事件が起こってから数ヵ月が経過したある日の事。

 

月一で行われるアスタリスクにある生徒会長がホテルの最上階に集い会議を行う『六花園会議』が行われる。

会議が終了し戻ってきたクローディアはいつものような表情ではあるが気疲れしている。

 

戻ってきたクローディアと共にティーカップとマッ缶に口を付けつつ今日あった会議の内容をほぼ俺たちの専用室になっている生徒会室で会話をしていた。

 

「…先の一件でアルルカントと我が星導館で煌式武装(ルークス)の共同開発をすることになるので出向していただく事になりました。」

 

「まぁ…そうなるわな。」

 

「それに開発費も本来であれば資金七割出資だったのですが二割だけで済みそうです。これも蜂也が裏で手を引いていた生徒の名前を明かしてくれたお陰ですね。」

 

「あれだけだったんだが…良く向こうの生徒会長と学園が認めたな。」

 

「情報を全部潰しきることは出来ませんので痛いところを突けばチョチョイですよ。」

 

クローディアは指で俺を優しくつついてくる。

やめい。

妙にこそばゆいのでやめさせるために白魚のような指を優しく握ると妙に嬉しそうだった。

 

「それと少し、今回の鳳凰星武祭(フェネクス)は少し面白いことになりそうです。」

 

「どういう事だ?」

 

「人工知能を搭載した煌式武装を参戦する生徒の装備として出場させるそうです。」

 

その言葉に俺の興味は惹かれていた。

 

「…つまり人の形をしてるってことか?」

 

その言葉に俺は大きく反応しクローディアが頷いた。

 

「ええ、蜂也が求めていたものかもしれませんね。」

 

「んで…その作成者は分かってるのか?」

 

「”出場する”と言うことだけですので制作者は…。」

 

「そうか…まぁある種の重要機密だろうし、まぁその事は置いておくとして。んで?その出向者は誰よ?(まさか前回の事件で黒幕だったエルネスタ・キューネじゃないだろうな…?)」

 

期待はしてはいなかったがそう答えられると肩透かしを食らった気分になるがクローディアに言っても無駄なので気を取り直し聞いてみると別の意味で驚いた。

 

「件のエルネスタ・キューネですよ。」

 

「は?」

 

俺が間の抜けた声を出すと訪問者を告げる音声が門扉を警備している警備員から連絡が入る。

 

「おや、どうやら到着したようですね。迎えに行きましょう。」

 

「あ?誰をだ?」

 

「エルネスタ・キューネ、をですよ。」

 

「てか、今日かよ…。」

 

あきれた表情を浮かべる俺に付き添うように笑顔のクローディアと共に生徒会室から客人を迎えに正面へ向かった。

 

◆ ◆ ◆

 

「ようこそ、我が星導館学園へ。」

 

笑顔でクローディアが出迎えると星導館に訪れた二人の美少女を出迎える。

 

「いやーどうもどうもー。わざわざ会長と噂になっている《戦士王》が出迎えてくれるとは~いやいや今日はいい日かも知れないよ?カミラ。」

 

一人はアルルカントの制服を着用しておりカミラ、と呼ばれた人物とは違い白衣を着用している。

ぴょんぴょんと跳び跳ねており胸の部分も奔放さを醸し出し自由さを表している

純真無垢に天真爛漫、と言う言葉がこれほど似合う人物もいないだろう。

脳裏にちらつく少女の姉の顔がちらつく。

 

「(…陽乃さんとは違うな。マジものの天然物だな。この子)」

 

先の襲撃に手を貸したのも自分の技術向上のためなのだろうか。

悪意は感じられなかった。

 

「ああ、もう、あまりはしゃぐんじゃないエルネスタ。頼むから人様の学園で迷惑を掛けないでくれ。」

 

カミラと呼ばれた人物はクローディアに負けず劣らずのプロポーションを持ち主でそれでいて良く引き締まった体躯を持ち切れ長の目と生真面目そうに結ばれた口元が冷たい印象を与える。

 

不意に彼女を観察しようと《瞳》を向けるとそこには驚愕の情報を示していた。

 

(義肢…か。確かにこの世界では擬形体が普及しているからまるで生身と同じように見えるのはすごいな…。だがじろじろと見るのは失礼だな。)

 

身体の半分が義肢…擬形体によるもので補っているのが見て取れた。

 

そう思い視線を切り上げると屈託のない笑みを浮かべたエルネスタが俺の目の前、と言うか眼前まで近づいてきていた。

 

「おやおや~?」

 

「…なんすか?」

 

「お、口調もちがうし試合の時と目の色がちがうんだぁ~。うんうん更にいわく付きの純星煌式武装(オーガルクス)の《壊劫の魔剣(ベルヴェルク・グラム)》を扱う『戦士王(きみ)』が気になっちゃって眠れなくなりそうだよ~!」

 

何故知っている…と思ったが野良試合や公式戦を見れば分かることかと。

満面な笑みで勘違いしてしまいそうなことを俺へ語り掛けてくるがその実「お前のデータをとらせろ」といっているに他ならない為俺は苦笑せざるを得なかったがそれは渡りに船だった。

が、突如として《グラム》が乗り移った。

 

俺の身体を乗っ取った《グラム》が近づいていたエルネスタの手を優しく握る。

 

「ふぇ?」

 

「当方に相対する用意ありだキューネ殿。貴女が望むのならば幾らでもお相手しよう。」

 

「あの…ええと///」

 

「貴女”達”が準備している”例の作品”…とやらに興味があるのでな。」

 

「!?」

 

「!?…へぇ何処まで知っているのかな?」

 

二人の反応が変わった。

乗り移った(グラム)がカマを掛けると反応があったが取り敢えずは様子を見ることにした。

 

「すまないが…企業秘密だ。」

 

入れ替わり蒼窮色に変わった瞳で真摯な対応でエルネスタの目を覗き込む。

すると彼女の反応は先ほどの天真爛漫さはまるで違い年頃の女の子になっており山の天気のように変わっていた。

しかし俺が”例の”というとその表情は興味を引いたようだったが…。

成程成程……っておい勝手に乗り移るんじゃないよ!その光景をグラムが乗り移った姿(八幡)を見ている俺がおり脳内で言い争う。

 

『おいバカグラム!何を勝手に乗り移ってやがんだお前は…。』

 

『主が婦人の手を取らぬからだろう?…というよりも主のためにカマを掛けようと思ったのだが…』

 

『アホか!なんでクローディアの前でやるんだよ!』

 

脳内会話を行っているとクローディアが話しかけてくる。

何時もより声色が冷たい気がしたのは気のせいではないな。

 

「蜂也?わたしがいる前で浮気ですか?」

 

ほら見ろ。案の定(グラム)の肩を優しく…ちょっと強めにがっしりと掴んでいた。

 

『ふむ…これは我には手に追えないな…頼んだぞ主。』

 

責任を有無をあっさりと俺に投げやがった。

この純星煌式武装(グラム)壊して良いか?この野郎…!!!

 

「『てめっ!この野郎っ!!』いや、今のは『壊刧の魔剣(ベルヴェルク・グラム)』が勝手に…てか浮気って…俺はお前の夫じゃないんだけど?」

 

「そうですか…女性を口説くのは《グラム》のせい、と…。」

 

事実を語っているのだが目の前のクローディアは笑顔だが俺には分かる「ちょっと怒ってって泣きそう」になっていることだ。

どうしたもんか…と思っているとエルネスタ達、もといカミラの咳払いが聞こえた。

 

「んんっ!すまないが痴話喧嘩は後で行ってくれないか?本題と契約書類の記入を行いたいのが…。」

 

「ほぉ~ん…これが『人格憑依』かぁ…。」

 

カミラは呆れながら契約の催促と面白いものを見たとエルネスタはその顔に悪い笑みを張り付けていた。

これは完璧にからかわれるな、と性悪純星煌武装(グラム)を恨みながら生徒会室へ向かおうとしたがエルネスタが引き留める。

 

「ちょ~っと待った!副会長さんや?今日は”あたしの擬形体を倒した”っていう生徒は今日出席してるのかな?」

 

聞く奴がいればぎょっとするが俺とクローディアはその事について知っているのでそうでもなかったがカミラは頭を抱えていた。

 

「天霧の事か?クローディアそういや彼奴はトレーニングルームだったな」

 

「ええ。彼らは今日もトレーニングをしている筈です。」

 

俺たちの会話を聞いたエルネスタは満面の笑みを聞いてこう言った。

 

「その少年に会いたいんだけど…良いかな?良いよね?」

 

俺とクローディアは顔を見合わせて苦笑しもう一人の同行者は頭を抱えていた。

 

◆ ◆ ◆

 

「お前らな…貸し出してるだけでお前らの持ち物じゃないの分かってる?特にそこの青、赤、黒髪の生徒。」

 

「「「うぐっ…。」」」

 

エルネスタ達を連れて星導館学園地下のトレーニングルームに足を運ぶと特殊合金製の壁がぶち破られていたことに俺とクローディアの仕事が増えることが確定したのでイヤミも含め悪態を付いた。

図星だったのかバカ三人組は言葉に詰まるようだった。

 

「こ、これは訓練中の不慮の事故だ。好き好んで壊したわけじゃない。」

 

「…まぁ分かってんなら良いが壊すのはやめろよ?」

 

「無論だ。」

 

(副会長って結構ユリスに甘いよね…。)

 

(蜂也はリースフェルトには甘い…。)

 

「なんか言ったか?」

 

「「いえ、なにも」」

 

二人から変な視線を感じたが気のせいだったらしい。

壁の穴越しにエルネスタ達が顔を見せるが当然というか天霧は「誰?」という表情を浮かべていたがそれ以外の生徒達…というかエリス達はまるで敵を見るような鋭い視線を向けているがクローディアは意にも介さず何時も通りの調子に二人の出向者の紹介を行った。

天霧は「なるほど…」と直近の事件で”アルルカントの擬形体と戦闘を行った”手前納得していたが何故その学園の生徒がここにいるのかを理解していなかったのでクローディアが説明をした。

 

「今度我が星導館学園が共同で新型の煌式武装の開発をすることになりましたので此方にいらっしゃるパレードさんはその計画の責任者なのですよ今日は正式な契約を結ぶためにいらっしゃった、ということです。」

 

「どうも。」

 

「共同開発…ふん、そういうことか。」

 

ユリスは状況を把握したのか吐き捨てるように呟くがユリス以外は理解していないらしい。

天霧が問いかけるとユリスが説明をしてくれた。

その返答に絶句する天霧達の視線が俺とクローディアに突き刺さるが俺は動かずクローディアは表情を崩さずに

 

「なんの事でしょうか?」

 

その態度にユリスは「呆れた」といった表情だったが何故その”アルルカントの生徒がこのトレーニングルームにいるのか”ということが聞きたかったらしい。

それに答えてやるか、と俺が動こうとした次の瞬間にエルネスタが動いていた。爆弾発言と共に。

 

「はいは~い!それはあたしがみたいっていったからで~す!いや~是非とも拝んでみたくってさぁ~”あたしが用意した人形ちゃん達を全部ぶったぎってくれた”剣士くんに会いたくなっちゃって。」

 

その発言に天霧達は呆然としていた”自分が黒幕です”と公表しているようなものなのでそれで良いのかと俺は思ったがエルネスタはこの状況を楽しんでいると、そう思った。

 

そんなユリス達を尻目に言うだけ言って場を乱した後に契約の締結を行うために俺たちは分かれ生徒会室へ向かい新型の煌式武装開発を結んだのだった。

 

契約の締結が終了し一応は来てもらっている二人を正門まで送り届けることにしたのだが最後の最後にエルネスタが俺の近くまで近寄り息が掛かりそうな位まで接近しこう言った。

 

「天霧くんのデータも魅力的だけど…あたしは名護くんのデータが欲しいかな~?」

 

返す言葉は一つしかない。

 

「取れるもんならな。」

 

「そっかーわたしたち鳳凰星武祭(フェネクス)に出るから当たると良いねー。」

 

そう告げるとにははっ、と笑ってカミラと共に正門からアルルカントへの道を歩き始めるのだった。

その後ろ姿を見て俺は思った。

これから鳳凰星武祭(フェネクス)開始前に絶対何か仕掛けてくんだろうなーと若干の面倒を感じつつ振り返ると腕の自由が聞かない。

おや?これは?

 

「めんどくさっ…ってクローディア?なんで腕を絡ませているんでしょうか?」

 

「……全く浮気性なんですからわたしの蜂也は…ダメですよ?わたしがいるのに。」

 

振り返るとそこには何故か少し頬を膨らませているのがちょっと似合っていないクローディアが腕を絡ませている。

取り敢えず今この腕に絡んでいる少女の機嫌を取る方法を模索した。

 

◆ ◆ ◆

 

「いやはや…喰えない男だな星導館の副生徒会長は。噂以上の男だったようだ。」

 

契約を無事終わらせて星導館学園の正門から出てきたカミラ普段は掻かない冷や汗と動揺を浮かべて前を歩くエルネスタへ言葉を掛ける。

 

「いやはや~やっぱり面白い人だね《戦士王》って。今回の鳳凰星武祭(フェニックス)、一番の障害は《戦士王》のペアかもね~。だからこそ今回の共同開発の契約の時に無理矢理付いてきたのさー。それに人形ちゃん達をぶったぎった剣士くんに会いたかったしね。」

 

カミラは出不精なエルネスタが出てきたのはそのためだったのかとこの時理解した。

それにエルネスタが一番の障害だという人物に対しても納得ができた。

封印処理が施されその詳細が不明な純星煌式武装《オーガルクス》・『壊刧の魔剣(ベルヴェルク=グラム)』、それにこのアスタリスクで完全適合者として彗星の速さで序列一位まで上り詰めたが直ぐ様序列三位へ収まった名護蜂也(戦士王)だったが公式戦に未だに出ていないので実力は未知数…だが手に入れた学園内公式序列戦ではその地位を狙い仕掛けてくるものがいるがどれも体術のみで退けていた。その黄金色の刃を振るったのは上位陣のみであり歯牙にもかけないその実力は本物、と言って良いだろう。

 

同じく先の襲撃事件で内通者のパペットを破壊している綾斗のステータスと黒炉の魔剣の能力は序列上位の能力を誇ってはいる。

 

「確かに万全を期すなら《戦士王》のデータは欲しいが…天霧綾斗といったか…それで人形達のデータは十分ではないのか?黒炉の魔剣と彼のステータスは十分すぎるほどだと思うが。」

 

「うーんそうなんだけど彼のデータだけじゃ簡単に負けそうな気がする…というか負ける。だからこそ《戦士王》の戦闘データが欲しいなぁ…。うん。欲しい。後なにか隠してる気がするんだよねー。」

 

一人でうんうん頷くエルネスタに声を掛けた。

 

「おいおい…また何か仕掛けるつもりか?」

 

「うーん。悩ましいところよねー。調整中の人形ちゃん達を出すわけには行かないし他学園(よそ)へ手を回している暇もない…サイラスくんが今居ないしなー………ん?そうか…そうかそうか。その手があったね。」

 

「何か思い付いたようだな。」

 

カミラが水を向けるとエルネスタは満足そうな笑みを浮かべていた。

 

「ここのところ《超人派》が失敗続きじゃん?そろそろ汚名挽回のチャンスを挙げようと思ってさ。」

 

「それをいうなら『汚名返上』か『名誉挽回』だ。」

 

「あははーそうともいうね。」

 

「つまり連中を焚き付けるわけか。」

 

「ひひひ。一石二鳥を狙ってみるのも悪くないと思わない?」

 

悪巧みをする親友にカミラは苦笑を浮かばざる得なかった。

 

◆ ◆ ◆

 

鳳凰星武祭(フェニクス)もそろそろ開催まで日時が近づいてきており俺と綺凛ちゃんは早朝の訓練を行っていた。

相も変わらず今年で中一に上がった綺凛ちゃんの体を当てられてうーん…大きくなったなぁ…とお兄ちゃんとして嬉しいと思ってしまうのだが俺の中の男が視線誘導されてしまう…が義妹をそんな目では見ては行けないと俺の悲しい男の性を押さえ込む。

しかし…準備運動を二人組で行うのもやっこいのが俺の背中に当たっているので意識せざる得ないのだ。

 

「あのさ…綺凛ちゃん。」

 

「はい?」

 

「二人組の柔軟体操やめない?」

 

「だ、だめです!入念な準備はどの武道でも必須です!それに二人組の方が柔軟運動をしやすいですよ?」

 

「いやそうなんだけどさ…綺凛ちゃんも年頃の女の子じゃん?俺みたいな高校生男子と一緒に柔軟運動をするのはどうかと思うのよね?…それにさ…その…」

 

「?」

 

一体なんだ?というような疑問の表情を浮かべている綺凛に思わず苦笑を浮かべてしまうがこれも可愛い義妹を思っての発言なのだと心を鬼にして告げた。

 

「柔軟運動の際に綺凛ちゃんの立派なモノが…当たってるんだよね…。」

 

「…?…?…~~~~~~~!!!はぅ………!!!」

 

綺凛ちゃんのその立派な部分を顔を覆いながら軽く指で指し示すとようやく理解したのか両腕でクロスして地べたにぺたりと座り込んでしまった。

若干の涙目になっているのは羞恥の感情か屈辱の感情か分からないが前者だと信じたい。

俺、中学生の子を辱しめたって星猟隊に捕まりたくないんだけどなぁ…。

 

「うん…ごめん。」

 

何故か謝らなければならないと思いしゃがんで頭を下げる。

ぶたれても仕方がないと思ったがいつまでたっても綺凛ちゃんからの拳は飛んでこなかった。

声を掛けられて顔を上がると恥ずかしそうな表情を浮かべながらはにかんだ笑みを含んでいた。

 

「頭を上げてくださいお義兄さん。その…恥ずかしかったけど綺凛は気にしてないです…?そのお義兄さんになら、その…。」

 

どうやら許してくれるらしい。こんなデリカシーのない発言を許してくれる綺凛ちゃんはマジ天使でしたね。

…なんか最後にボソボソ呟いてたみたいだったけどなんだったんだろうか?

 

「そういって貰えるとその…助かるよ。それじゃあ今度から二人で行う柔軟体操は…」

 

「そ、それはだめです!二人で行う柔軟体操は行います!絶対です!」

 

頑なに訓練で柔軟体操を行うと宣言した綺凛ちゃんの立派なものがぽよん、と再び弾み諦めざる得なかった。

 

柔軟運動(やっぱり二人組で行った。)を行い何時も通りの剣の修練を行い今日は綺凛ちゃんから二本先制することができた。

何時もの海浜公園のベンチで休憩を終えて学園に戻ろうと思ったが辺りが先程よりも霧が濃い…というか霧が濃すぎる。

どこぞの霧の出る静かな岡の町かよと内心で突っ込んだ。

 

「霧濃くない?」

 

「そうですね…早朝よりも濃いですね。そろそろ初夏も近いというのにこの霧の量は凄いです。」

 

「確かに異常だな…ってここは学戦都市だしな。こう言うことも有るだろうよ。そろそろ帰ろう。まだ肌寒いから風邪を引いたら大変だ。」

 

冗談で手を差し伸べると綺凛ちゃんは少し嬉しそうな表情を浮かべて俺の手を取って立ち上がる。

 

「……!、はいですお義兄さん。」

 

俺は綺凛ちゃんの手を取って歩き出した。

 

◆ ◆ ◆

 

アルルカント・アカデミーの研究地下棟ブロックの一角、成績上位の生徒しか立ち入りを許されていないこの区画をカミラは固い足音を響かせ急ぎ足で目的地へ向かう。

目的地に到着したカミラは校章のチェックと生体認証の二重ロックを解除して更に部屋のパスワードを解いて入室する。部屋はモニターの明かりだけが照らしており当然外の明かりを取り込む窓はない。

 

「《超人派》の連中が動き出したぞ。エルネスタ。…ん?エルネスタ?寝てるのか?」

 

声を掛けて反応がなかったので再び呼び掛けるが反応がない。

室内に入るとかなり特徴的なアイマスクを着用し毛布に包まれた少女が寝転がっていた。

その事に気がついたカミラは呆れながらため息を一つ、毛布を剥ぎ取った。

 

「んにゃっ!?」

 

「…おはようエルネスタ。」

 

「…いや寝てないから寝てない。ちょーっと目を瞑って考え事をしてただけだから。」

 

「ほほう?ではわたしがここに来た理由をいえるか?」

 

「囃し立てた《超人派》が動き出したんでしょ?」

 

その返答にカミラは思わず驚いてしまったが幸いにして部屋の明かりのせいで表情までは読み取れなかったようだ。

エルネスタは猫のように伸びていた。

 

「んんっ~!ふぅ…あたしは寝ているときでも神経が研ぎ澄まされているだー。」

 

「既に状況は開始されている。うかうかしていると見逃してしまうぞ?」

 

「ほいほい、分かってるってーあいよー。」

 

エルネスタが素早くキーボードを操作するとたくさん出ていた液晶のウィンドウが閉じて大画面に切り替わる。

そこに表示された画面にエルネスタは首を傾げた。

 

「ありゃ?《戦士王》以外にも誰かいるの?」

 

「聞いて驚け。星導館の序列一位、《疾風刃雷》だ。」

 

これには流石に驚いたようで目を丸くする。

 

「ほっほー。それはそれは。」

 

「それが分かった上で仕掛けるつもりなのかー。そりゃまた気合いが入ってるねー。」

 

「連中も本気ということだ。」

 

カミラもその状況を見るために空いている椅子を引き寄せ腰を掛けこれから起こる出来事に二人して注視することになった。

 

◆ ◆ ◆

 

学園に戻るために俺は綺凛ちゃんの手を取って歩いていると背後から”なにかが接近してきている”のに気がついた。

木の後ろや建造物の背後に隠れている。まるで監視されているようだ。

隣にいる綺凛ちゃんはまだ気がついていない。

ふむ、そうなれば少し強引だが突っ走るか。

俺は綺凛ちゃんの手を取って抱き抱える。所謂”お姫様だっこ”の形になる。

当然反応が出るわけで…。

 

「はぅ!?お、お義兄さんっ!?一体何をするです?!」

 

です?!ってその反応本当に可愛いよな。ってそうじゃなかった。

 

「ちょっとごめんよ綺凛ちゃん…少し飛ばす!」

 

「えっ?ひゃぁあああああっ!??」

 

()(かか)え俺は自己加速術式を発動し監視網を抜け出す。

普通車の最高速度に匹敵する速さで海浜公園を爆走する。

 

「「「「!!!!!」」」」

 

すると俺たちが動き出すと物陰から人間…ではなく翼のない竜…ワイバーンのでき損ないのような者達が現れ此方へ追い付こうとするが追い付けない。

てっきり俺たちの序列狙いの生徒かと思ったが違ったらしい、とその考えに至ったときに昨日有ったエルネスタ・キューネ(ジーニアスガール)のあの何も考えていないようで計算高い才女の姿を思いだし内心で舌打ちをする。

しかし、このような生体兵器を使うのだろうか?と移動中にそんなことを考えていたものだから綺凛ちゃんに声を掛けられるまで気を取られてしまった。

自動車なら携帯弄ってるぐらいヤバイ。一発でアウト。

 

「お義兄さんっ、前、前!」

 

「…え?ってうぉぉぉぉぉっ!!?」

 

眼前には『工事中です。ご迷惑をお掛けいたします』の看板とバリケードが立て掛けられておりそれを視認した俺は加速の勢いのままその向こう側へ飛び越える。

 

大穴を越えて俺が着地をすると同時に影から飛び出てきた五匹の竜が火炎弾を放つ。それは俺たちを狙ったものではなく”地面めがけて狙った”ものだ。

着弾と同時に俺が今いる地面にぴしり、と嫌な音が耳に届く。

次の瞬間に進むべき道路が破壊されぽっかりと奈落へ続くような大穴が広がった。

俺と綺凛ちゃんは声にならない悲鳴を上げて奈落へと落ちていった。

 

「~~~~~~~~ッ!!」

 

綺凛ちゃんを抱き抱えたままなので必然的に落下速度は大きくなり衝撃が体を突き抜ける。

どうやらこの学戦都市を浮かせるためのバラストタンクエリアの水に着水したようだ。

重力制御を行い水中から顔を出す。

 

「ぶはっ!!……けっほ……っでっか…てか広いなここ。まるで仮○ライダー555(ファイズ)の最終話の場面みたいだな…って綺凛ちゃん!?」

 

俺の腕の中にいた筈の綺凛ちゃんが投げ出されており少し離れたところで水面がぱしゃぱしゃと水飛沫を上げている。

あの状態は…まさか泳げないのか!?

 

「綺凛ちゃん!」

 

急いで側まで向かうと俺にしがみついてきた。

 

「ご、ごめんなさい…です。わ、わたし…泳げなくて…。」

 

「ごめんな綺凛ちゃん。あの包囲網から逃げようと思ったんだけどまさか落ちるとはなぁ…。」

 

「い、いえ気にしないでくださいお義兄さん。」

 

「取り敢えず…陸に上がろうか。」

 

「え?どうやってです?」

 

ここはアスタリスクの地下であり現状ここに有るのはアスタリスクを支えるシャフトと広がる水しかない。

”ならば陸地を作ればいい”。そういうことだ。

 

「綺凛ちゃんちょっと俺に捕まっててね…よし。」

 

「は、はい…ひゃっ!」

 

水中に浮力で浮いている綺凛ちゃんが俺の首に腕を回して密着する。

…その密着で柔らかいものが俺に当たっているのは気にしないことにした。

これこそ魔法師の本領発揮だろう。

防水加工され手首に装着されたブレスレット型CADを起動させ加重魔法を発動させ水中に有る人間の浮力を弄り水面へと浮き上がる。

 

「わぁ…浮いてます…!」

 

本来ならば人一人分の重さが俺に掛かる筈なのだが魔法を使用している為関係が失くなっている。

続けて光振動系統『フラッシュエッジ(光輪)』を二重詠唱で肥大化させて近くのシャフトを斜めに切り取った。

公共物を壊すのは忍びないが緊急事態なので許してほしい。

周囲に金属が切り裂かれる音が響き陸地を作ったのを確認した俺はそのまま浮遊し着陸し首にしがみついていた綺凛ちゃんを降ろそうと考えたがそうも行かないらしい。

なにかが近づいてきているのを察知した俺は水中に向かって重力爆散(グラビティ・ブラスト)を叩き込む。

突然の事に綺凛ちゃんも驚いていたが俺も驚いた。

 

巨大な首長の竜が此方に襲いかかってきたのだ。

その光景に若干の目眩を覚えつつ素早く浮遊し先程作った足場へ退避すると水から顔を出している竜は此方の様子を伺っている。

攻撃を受けて…直撃だったが即死ではないらしく再生している。破壊した断面からゼリー状のものが見えており生物じゃないことが分かる。

どうも此方が竜のテリトリーに近づかないと攻撃を仕掛けてこない性分らしい。

獣の割にはずいぶんと慎重な性格だと鼻で笑った。

そんなことよりも今のこの状態…綺凛ちゃんがしがみついているのを解除して服を乾かさなければならない。

…互いに体操着を着用し服が透けてしまっており特に夏Verの体操着なので水で濡れその下に着用している綺凛ちゃんの可愛らしい下着と立派なものの輪郭がくっきりと現れ俺の体に当たっているのだ。

再びその事を指摘するとその顔の熱さで衣服が乾いてしまうんじゃないかと錯覚を覚えるほどに湯気が出ていた(気がする)。

が、しかし俺は魔法師なので服の水分を蒸発し乾燥させる魔法も使えるので綺凛ちゃんには少し前を隠して貰い俺が魔法を使うと直ぐ様乾き風邪を引くことはなくなった。

裸で背合わせを期待した諸君残念だったな。

 

「本当にお義兄さんは凄いです…!」

 

と満面の笑みで俺を誉めてくれる綺凛ちゃんは本当に天使だと思いました。マル。

服も乾かし取り敢えずはこの場所からの脱出を行おうと思ったのだが水中には竜…というか先程の怪物たちと一緒の敵がいるので加重魔法で一気に地上まで飛び上がる策は少しリスキーだった。

 

それにこの場面を恐らくだがどっかの部署を囃し立てたエルネスタがこれを見ている可能性もあるのでどうしたもんかと思ったが正攻法で行こうと決めた。

”余計な手出しをしよう”と思わせたくなくなるような行動を決意した。

 

「さて…こっから出るために水にいる竜退治しますかね…《グラム》。」

 

『心得た。…竜退治と行こう。』

 

腰から発動体を引き抜き星辰力を流し込むと刀身が形成され派手に黄金色の紫電が迸る。

俺の行動に敵対行動と察知したのか竜が水面から首を出す。

水の下に隠れているが図体的にはもっと巨体なんだろう。

そんなことはお構いなしにと何時もの構えで壊刧の魔剣(ベルヴェルク・グラム)に星辰力を注ぎ込む。

流星闘技(メテオアーツ)ー。

…ではなく、異なる単純に”只の技”だ。

 

「…吹っ飛べ。」

 

チャージが完了し突きのの要領で前方に押し出すと刀身から音速の弾丸が飛翔する。

迸る紫電を加重系統の魔法で収束し打ち出す通称刀藤流派”我流影技”『遠雷遥』。

平たく言えば刀身に迸る紫電を溜め込んで単純に打ち出した”|超電磁砲『レールガン』”のようなものだ。

本能的な恐怖を覚えたのか竜は踵を返すがもう遅い。

その体躯に『遠雷遥』は直撃し木っ端微塵に弾け飛んだのだった。

 

「…凄い。」

 

背後から綺凛ちゃんの声が聞こえていたがそのまま上空の先程落ちてきた穴を見上げた。

この状況を見ている筈であろう人物に向けての警告だ。

 

振り向き綺凛ちゃんに手を差し伸べる。

 

「んじゃ、帰ろっか。」

 

「…はいです!お義兄さん。」

 

何事もなかったかのようにこの場をあとにすることにする。

鳳凰星武祭(フェネクス)開催まで一週間を切っていたのだった。

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