俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。 作:萩月輝夜
「お疲れさまです蜂也、綺凛さん。」
「お疲れさま蜂くんに刀藤さん!まさに一刀一撃だったね!」
「…なんで俺たちの控え室にお前らがいるわけ?犯人は…お前かクローディアよ。」
「はて…?何の事でしょうか?」
「はぅ…。」
勝利者インタビューを終えた俺たちを出迎えたのは無人の控え室…ではなく金と紫の長髪の美少女が笑みを浮かべて出迎えてくれた。
…どうしてクローディアとシルヴィアは表情で笑みを浮かべているのに視線でバチバチしているのだろうか。
視線が俺の隣にいる綺凛ちゃんへ向けると怖がってしまって俺の後ろに隠れた。
やめなさい。
因にだが会見では当たり障りの無い回答をしていたが関係の無い事まで聞かれた。
「好きな食べ物は?」とか…学校の自己紹介じゃねーんだがな…とりあえず「マッ缶」と答えたら女子アナらしき人物が苦笑いを浮かべていたのを俺は見逃さなかった。
貴女反マッ缶者ですね。お前も糖分まみれにしてやろうか。
女性関係について聞かれたがあれは本当に何だったんだ?てか俺の女性関係を聞いてどうするつもりなのか…。
コレガワカラナイ。
詰まりは会見を無事に終えて帰ってきたというわけだ。
綺凛ちゃんはたかれるフラッシュに疲れてしまっているのでこっそりと『
「いや~しかし大将。見事な初戦勝利だったな。おめっとさん。」
いつのまにか来ていた夜吹に、
「初戦突破おめでとうございます副会長。」
「まぁ蜂也なら勝つのは当然だと思っていたがまさか綺凛を温存していたとは思っても見なかったぞ。」
天霧の隣に当然ながらユリスが居て俺と綺凛ちゃんの試合を総評していた。
「ん。流石の蜂也。よゆーの勝利。」
天霧の更に隣にいる沙々宮が間の抜けた声で評価していた。
てかよ…
「お前ら全員なんで俺らの控え室にいるんですかね?まぁ関係の無いクローディア達はいいとしてユリスに天霧。お前らは俺と当たるかも知れんのに馴れ馴れしくしていて良いのか?」
俺がそう言うと全員が愛想笑い浮かべ名指しされた二人は苦笑していた。
図星じゃねーか。
リースフェルトと天霧も今日の試合を瞬殺しこちらに来ていたことが判明したのでひと安心した…と言うべきなんだろうが当然の結果だろう。
初戦の序列にも入っていない生徒に破れるようでは
今のところ天霧の《禁獄の力》はバレておらず客受けの良いパフォーマンスらしい。
確かに見た目は派手だしな。
その話を聞いていると
『我もそのようなパフォーマンスを行った方が良いのだろうか?』
『やめろ。目立ちたくねぇんだよ。てか封印されてる的な技あるのか?』
『無いな。』
無いんかい。
『それは所有者が作成する区分であるからな。我はそれを発動する端末よ。それに主は”必殺技”とやらは持っているのだろう?』
『有ることはあるが対人戦闘で使ったら『
…特に『
《四獣拳》の奥伝も並の人間に使ったら血煙になるしな…
『うーむ…。残念ではあるが仕方がない。』
これ以上俺のキャラクター性を濃くしないでくれ。
…まぁでも流星闘技と呼ばれる”必殺技”はあることはあるんだがな。使う機会があるかと言われれば微妙ではある。
そんなこんな雑談しながらクローディアの淹れてくれた紅茶やシルヴィアが作ってくれたクッキーを戴きながら試合を見る。
やはりというかこっちに来たばかりの時にクローディアに教えて貰ったことだが画面に映る少年少女達は秀麗の差は有れど全員が整っていたり、厳つかったり渋かったり…とまぁ美男美女であることに違いはない。
直近でレスター達の試合をみていたがそろそろ注目しているアルルカントの試合の時間に近づいてきた。
エルネスタとカミラの代理出場ということは十中八九”人形”だろう。
「夜吹、スクリーン変えてくんね?」
「あいよ大将。」
夜吹がスクリーンの画面を切り替えた先に映っていたのは案の定…想定していた形俺が理想とする自立稼働する二体の機械人形がステージ上に立っていたのだった。
◆ ◆ ◆
二体…いや”一機”と”一人”と言うべきだろうか?
一機は従来で流通している戦闘用擬形体なのだが一回り、二回りは大きくその身長は2メートルを有に越えており顔に当たる部分はスーパーロボットのような造形をしている。
でかい、ごつごつしてる、格好いい。
そしてもう一人は人形…と言うよりも殆ど人、と言った方が良い程に精巧に作られており人間の女性…少女に近い見た目で顔貌は整いすぎており表情の起伏が薄い人、と言っても通じるだろう。
その体躯は女性の象徴を遺憾なく現しメタリックな装甲とボディースーツを組み合わせたような先述した擬形体の堅牢なイメージとは異なり柔らかな印象を付ける。
クール、メカ娘…。
この一機と一人がどうやらエルネスタとカミラの代理出場選手、と言うことらしいがこれを言わせてほしい。
ーエルネスタ…お前
思わずガッツポーズしてしまいそうになるほど俺の趣味嗜好にマッチしていた。
そうだ、俺はこういう自立稼働可変型CADが作りたいんだよ!
…おっといかんいかん。思わず興奮して立ち上がり発狂し掛けそうになったがそれは心の中に留めておいて全員で画面を食い入るように見つめると実況席で解説が始まりこの二機の名前はでかいのが
追加の情報を解説している傍らで擬形体が注目されているのに苛立っている対戦相手の様子を抜いているカメラがチラリと映り完全にかっさらわれてるな、と少し憐れに思った。
それに拍車を掛けるようにアルディが対戦相手に向かって口を開く。その口調は機械とは思えないほど流暢でいて尊大な物言いだった。
それに全員が呆気に取られ特に対戦相手の方が強く感じていたかもしれない。
内容としては”自分を作成した制作者の威光を示すため貴様達には礎になって欲しい”。と言うものだった。
続く言葉は完全にケンカを売っているようにしか取られないだろう。
『よいか?貴様達には一分間の猶予をやろう。その間我輩は指1本とも動かさぬ。存分に攻撃を仕掛けてくるが良い。』
その言葉に対戦相手の額に青筋がはしり、目が据わっていた。
怒号と共に一歩を踏み出そうとするがアルディの側頭部に光弾が炸裂し装甲を叩く音がアリーナに響いて一歩遅れてアルディが撃たれた箇所を摩り自分に当ててきたその攻撃の主がいる方向に頭を回す。
『痛いではないかリムシィ!』
その言葉に返答したのは隣にいたリムシィが顔を動かさず手に持ったハンドガン型の
『黙りなさい。この愚図愚鈍で低能無知な考え無し。その行動がマスターの顔に泥を塗る、と言うことが分かりませんか?分からないなら今すぐメンテナンスに戻りなさい。…いやここで自爆しなさい。』
『そうは言うがなリムシィ。先程の宣言が我々、ひいてはマスターの優秀さを示すのにピッタリだと我輩は思うのだが?』
『確かにマスターの素晴らしさを伝える、と言うのには賛成です。その点は評価いたしましょう。』
『おお!分かってくれたかリムシィ!そうであろうそうであろう!…ところでリムシィ。』
『なんでしょうアルディ。』
『なら何故先程我輩を撃ったのだ?我輩の考えに同意してくれたのだろう?』
『ムカついたから撃っただけですが?』
無表情のままリムシィがキッパリと言いきる。
『うーむ…我輩の中で腑に落ちぬのだが…気にしても仕方がないな。』
アルディは再びリムシィに撃たれた部分を擦りながら正面を見据える。
その様子をみて溜め息をつくポーズを取り対戦相手に向き直る。
『さて。人間達よ。この愚図愚鈍で欠陥駄作の戯言とは言え一度口にしたことを撤回したとなればマスターの顔に泥を塗ることになりかねません。故に不本意ではありますが私も倣い一分間あなた達に対して攻撃を行わないことを約束しましょう。』
その言葉に相手の選手も怒りを通り越して呆れてしまい嘲るような笑いをしてしまっていた。
『さぁさぁ!何やらすごいことになってしまいましたがそろそろ時間です。注目の一戦、果たして勝利の栄光を手にするのはどちらのタッグが手にするのでしょうか!』
実況がそう告げると同時に校章が機械音声を発した。
『
◆ ◆ ◆
「完全に呑まれたな。…相手の技量。いや、”性能”が上だったか。」
勝者が決まったスクリーンの映像を見ながら告げると天霧を初めとしてリースフェルト、綺凛ちゃん、シルヴィア、夜吹が信じられないものを見たと言う表情を浮かべていた。
「しっかし、あの『
「そ、そうですね…。でもあの対戦相手の二人も十分な強敵だったと思います。」
優しい綺凛ちゃんは相手選手であった人物にフォローをいれる。
「いや、勝つだけならば先程の対戦相手程度蜂也が瞬殺していただろう。問題は…」
リースフェルトが少し言葉をマイルドにして綺凛ちゃんの発言を否定していたがそこで沙々宮が補足を入れた。
「リースフェルトの言うとおりで問題はソコじゃなくて…あの光の壁。あれは厄介。」
「どんなカラクリか知らんがモーリッツの能力を防ぎきったところを見ると並大抵の攻撃では突破できまい。」
面倒なことになったと頬杖を付くユリス。
一方で俺は画面に映る二機を《瞳》で観察する。
一番は実際に見るのが良いのだが俺は恐らくエルネスタに警戒されているだろうから近づくことは出来ないだろう。
大体のおおよそにはなるが生配信されている映像なら多少の情報を得ることは出来る。
あくまでも”予想の範疇”というなんともふわふわした結果になるのだが多少ズレはあったとしても情報は入るのだ。
「…あれ?副会長どうしたんですか?急に黙って。」
俺が静かになったのが気になったのか話しかけてきたので情報収集を一旦中止し情報を共有した。
「恐らくはさっきの障壁はステージで展開されているものを限定的に展開できるように改良したものだろうな。それに限定的な範囲に展開してるからかなり固いだろう。」
「え?蜂くんなんで分かるの?」
シルヴィアが驚いた表情で此方に質問してきた。
「ああ。天霧達には言ってたんだが俺の《瞳》はちょっと特殊でな…映像越しでも物体解析が出来るんだ。」
そう告げると訳を知らないシルヴィアや夜吹達は驚いていた。
「そ、それは本当か蜂也。」
信じられない…と言ったような表情を浮かべるリースフェルトに俺は頷いた。
一例を交えて説明した。
「ああ。なんだったらどうやってその障壁を発動させているのかも見当がつくぞ。おそらくはマナダイトを複数並列分配して稼働させている…とかだな。沙々宮の所有している銃型煌式武装の複数のマナダイトを直列発動のアプローチが違うみたいだな。」
「むぅ…」
俺がそう言うと少し面白くない、と言った表情を浮かべていた理由に思い当たる節があった。
鳳凰星武祭《フェネクス》の開始前にエルネスタとカミラが星導館に訪れた際に沙々宮の持っていた銃にカミラが噛みつき「失敗作だ」と言い放ちその銃の機構に誇りを持っていた沙々宮はその言葉を「取り消せ」と言ったが拒否され…と言ったところだ。
聞く話によるとその銃は父親が作ったものらしい。
そのやり取りを思い出した俺は慰めでもなんでもない本心を沙々宮に告げる。
「あと俺はロマンが好きでな…試作品、過剰出力…そんなコンセプトの武器が好きなんだよ。安定性を求めるのは日和見を決め込んでいる奴だ。ピーキー?大いに結構。」
俺がそう言うと沙々宮の機嫌が良くなった。
「…ん。蜂也は分かってる。…貴方が
『我は使いにくくはないぞ?相手が我を使いこなせないだけで。』
うん。お前がしゃべるとややこしくなるから黙ってような?
『
「話は逸れたがマナダイトを複数搭載し起動させたその方法で限定的ではあるが強固な障壁を展開しているんだろう。モーリッツの能力は確かに強力だったが打ち破るには足りなかった。…だが意外にもそれに対応できるかも知れないぞ?俺と天霧ならな。」
「え、僕が?」
名指しされて視線が天霧へ集まるがいきなり名を呼ばれたことで困惑していたがお前の武器の特性を鑑みれば分かると思うがな。
「ああ。俺の
…それに俺の場合は
「あはは…」
「蜂也…。」
一応は配慮して天霧の”あの力”についてはぼかして説明するとリースフェルト達は申し訳なさそうな表情を浮かべていたがここには部外者が数名いるのだから当然といえば当然なのだが…。
「それにエルネスタ達も俺たちが決勝に上がってくるのを予測していない筈は無いから俺達用の対策を講じてる筈だ。…それが何なのかは分からんけど。」
「なるほどねぇ…流石は大将だ。そんじゃ俺は勝利者インタビューに潜り込んでくるかね。」
「あれは報道機関限定…ってお前潜り込む気か。」
「へへっ。そこをどうにかするのが一流のジャーナリストってもんさ。」
「お前忍者か。」
「…まぁ見てなって大将。」
何故か一瞬だけだが動揺していたのを見たがそれを指摘する前に控え室から軽やかな足取り出ていった。
情報収集の成果を期待せずに待つことにした。
少ししてから沙々宮へ父親からの連絡が入り武器を用意した、と言われたが沙々宮は予選会に参加することが出来ていなかった。
参加を決意させたのは言うまでもなくカミラ達のせいなのだが…予備枠で登録するも敢えなく断念せざる得なかった。
沙々宮は自分の父親が作った武装をカミラ達に否定されたことに怒りを示していたが予備枠が使えないのでそれは叶わない。
俺はふと妙案を思い出した。
「沙々宮。少し提案があるんだが…。」
「?…………。うん蜂也なら使いこなせるかもしれない。お願いしても良い?」
「ああ。任せろ。調整はこっちでやるから。」
「分かった。」
俺の提案に驚きはしたものの”渡りに船だと”言わんばかりに納得してくれた。
そう言って沙々宮は関税に”あるもの”を取りに向かうことにした。
知り合いの気持ちを晴らしてやるのも副会長としての務めだと柄にもなくそんなことを思うのだった。
◆ ◆ ◆
「やぁやぁ二人ともごっ苦労さーん!ナイスパフォーマンスだったよ!」
会見場へ向かうアルディとリムシィを出迎えたのはエルネスタだった。
その表情は満面の笑みといっても差し支えがない。
「恐れ入りますマスター。」
「ふははは!このくらいは当然ですな!…ぬおっ!?」
恭しくエルネスタからの労いの言葉に反応しお辞儀をするリムシィと豪快に笑い飛ばすアルディ。
その行動アルゴリズムから見ても”違う機体”であると見て取れる。
それはマスターに対する姿勢もことなってくるわけであり偉そうな態度を取る相方にリムシィは鋭い足払いを掛けて転倒させ足払いを掛けた片足をアルディの背中においた。
「マスターに対するその態度は何ですか?恥を知りなさい。」
「痛いではないかリムシィ!…貴様本気であるな?」
「当然です。マスターに無礼を働く輩に遠慮する必要など無いので。」
リムシィの声は感情の薄いトーンの低い声色ではあったがそこには確かに”怒り”を感じとることが出来たのだ。
その反応を見てエルネスタは「うんうん」と頷き満足していた。
彼女が作りたかったのは機械でありながら感情を持ち表現をすることが出来る”別種の生命体”である機械を産み出したかったのだ。
この二機、二名は既に理想系に近しいモノだった。
「まぁまぁ~。そのくらいにしておいてあげなよリムシィ~。アルディだって別に悪気があってやった訳じゃないしさーそれより早く会場に向かわないとカミラにおこられちゃうよー?」
「…マスターがそう仰有るのでしたら。」
不承不承、と言ったような様子でリムシィがアルディから退いていた。
自立行動も完璧、順調すぎるぐらい順調だ。
けしかけた《超人派》の連中は警備隊に目をつけられており暫くは下手な動きは出来ない。
環境の方にも懸念はない。
エルネスタは内心でほくそ笑んでいると立ち上がったアルディに質問された。
「時にマスター質問が。」
「ん?どうしたの?」
「我輩とリムシィ…出力に差が無い筈なのに何故抗うことが出来ないのでしょうか?」
「あー、それはしょうがないのさ。世界の構図と同じで女ありきの世の中なのさ。んで、君たちもその宿命からは逃げられない、って訳なのさ」
その発言にアルディは少し考え意見を述べた。
「つまりは我輩が男性型である以上は女性型に逆らえない、と?」
「そーなるねぇー。」
「…些か納得に欠ける回答ですがマスターが言うのであれば仕方がありませんな。」
(まぁそんな訳ないんだけどね…アルディがリムシィに逆らえないのはリムシィをセーフティーに設定してるからなんだけどねー。”そうじゃないと危険”なのさ。)
「確かに
とリムシィがエルネスタの言葉を検索してくれたようでフォローをしてくれた。
ここは乗っかることを選択した。
「まぁ、史上最強と名高い
そう言いながらエルネスタは表情を引き締めた。
星導館の少年もレヴォルフの少女も確かに厄介な相手で障害になるほどの実力者でありその他にもちらほらと厄介な選手が多かったが最大の障壁はやはり。
(…少年と同じ学園に所属している《戦士王》だろうねー。)
容易にアルディとリムシィが敗北するとは思えないが不安材料が多すぎた。
…彼は本当の実力を見せていないという事だ。
初戦も純星煌式武装を発動させ踏み込むと同時に振るうだけで相手選手を倒してしまっていた。しかも最小の星辰力の発動でだ。更にバラストエリアで見せたあの攻撃…《超人派》が作った最高傑作を子供のブロックの城を容易く破壊する気安さで壊していた姿は未だに脳裏に焼き付いていたほどに強烈だった。
「適当にかち合ってくれるのが助かるんだけどなー。…叶いそうもないけどねー。」
エルネスタは小さな希望を浮かべて天井を見上げたが叶わぬ願いだ。と苦笑した。
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