俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。 作:萩月輝夜
第一試合から五日が経過して全ブロックで第二試合が行われる。
俺と綺凛ちゃんの次の試合は今日メインドームで試合が行われ天霧達はサブドームでの試合だ。
控え室から出てドームへ向かいステージへゲートを潜ると実況席からもう既に聞きなれた解説役の声が響き渡る。
『さぁーて!いよいよ
『一回戦は名護選手だけの文字通りまさに”独壇場”だったっスけど、二回戦はどうなるっスかねー。単体で勝ち抜くことが難しいのがこの
相手を引き込ませる話し方に感心していると対戦相手が向こうから現れた瞬間に観客席からの応援が大きくなった気がする。
その方向を見ると少女の二人組のペアでその校章は冀望の象徴たる名もなき女神《偶像》。
このアスタリスクに存在する唯一の女子高であるクインヴェール女学院の選手のようだ。
両者ともに顔貌は整っており片方がツインテール、ポニーテールの髪型をしており愛想の良い笑顔を振り撒く。
(クインヴェールは戦闘よりも芸能活動に重点を置いてるみたいだが…中々に鍛えられているみたいだな。)
ツインテールの少女は双剣型の煌式武装でポニーテールの少女は槍型の煌式武装を手に持っている。
可憐な見た目とは裏腹に体内の星辰力の精度は安定している。
『アスタリスクに置ける最弱の学園はどこだ?』という質問をされたのならば全員が満場一致で答えるのが『クインヴェール女学院』と答えるだろうがそれは総合優勝を経験した数、という方が良いだろう。
しかし、それは総合優勝という結果を踏まえた”弱い”で”人気がない”ということにはならない。
それに
実際に
さて今回の作戦はというと…。
「お義兄さん。今回の試合は私が前に出ても良いですか?」
「んじゃ今回俺は楽させてもらうよ。こいつの調整で少し寝てないのもあったからな。」
「もう…ダメですよお義兄さん。ちゃんと睡眠を取らないと…。」
その視線には俺の手元に注がれている発動体の姿があった。
「悪い悪い…それに祭りにはサプライズが必要でしょ?目立ちなくなったが参加できない沙々宮のお願いでもあるしね。」
「くすっ…お優しいですお義兄さんは。気にしないでください。逆にお義兄さんの活躍が見たいので良いと思いますよ?」
小さく微笑まれなんだか恥ずかしくなってしまった。
「…んじゃ頼むよ。」
「はいっ。」
同時に胸の校章が光輝き試合開始の機械音声が鳴り響く。
綺凛が腰の鞘から《千羽切》の鯉口を切った。それを確認し俺は後ろに下がり発動体の手をそのまま空いている手をスラックスのポケットに突っ込んで待機する。
綺麗は一歩飛びで相手の間合いに踏み込む。
『おーっと!?今回は名護選手ではなく刀藤選手が動いたっ!!一回戦とは異なります!』
相手の選手達は蜂也が来ると予想はしていたのだろう。
不意を突かれる形となったがすぐさま動きだし迎え撃つ形で斬撃と突きを放つがあまりにも遅すぎた。
綺凛は難なく回避し相手の間合いに潜り込むようにしてその勢いのまま下段から胸元を切り上げる。
ツインテールの少女はその一閃に反応できずに胸に着けた《偶像》の校章が綺麗に真っ二つに断ち切られ硬質なステージの床へと転がる。
機械音声が鳴り響きツインテールの少女の敗北は確定しへたり込んだ。
間髪入れずにペアのポニーテールの少女も槍術を嗜んでいるのか鋭い突きを浴びせてくる。
流石のクインヴェールの選手も顔は狙うのはご法度らしくもっぱら胴体や手足だ。
「……」
攻撃の”隙”を冷静に探しだしそれを見つけ出す。
(見切りました。)
鋭い攻撃の連続であったがその攻撃は綺凛には当たらない。武器でいなすことはなく体の最小の動きで回避する。
ペアである蜂也の攻撃であれば一撃貰っていたかもしれないがこの速度は温すぎた。
校章を狙った一撃を千羽切の横薙で払い飛ばした。
「くっ!?」
弾き飛ばされるとは思っていなかった相手選手は急いで突いた槍先を戻そうと動くが遅い。
弾いた刀を素早く上段に持ってきて振り下ろす。
次の瞬間には校章が割られ地面に落下した。
項垂れる選手に申し訳なる気持ちになるが勝負だと割りきって千羽切を納刀し背を向けると機械音声が勝者を告げる。
「
初戦と同じく一撃で相手を倒してしまい実況者席と観客席は沸いた。
『は、はやぁい!流石は星導館学園の序列一位!一瞬の攻防を制したのは刀藤選手!あっという間の決着だぁ!!これまた一方的な試合展開です!この二人のペアの底が見えません!本来
『いや、タッグの作戦を隠す、というのは非常に有効な戦術っスよ?過去に前例が全くない、というわけではありません。このペアは情報だけを読み取ると両者共に近接型の選手です。この作戦を立案したのは名護選手でしょうか?彼は恐らく何らかの策を講じていると思われますがまだまだその手は見せないぞ、と企んでいるように思えるっス。』
『この二人を止められる選手はいるのでしょうか!二人の快進撃を期待したい所です!』
解説を聞いていると今回出番のなかった《グラム》から苦言が来た。
『些か不本意だが沙々宮殿の為だ。…致し方あるまい。』
次の試合もお留守番な。
『なぬっ!?』
こうして俺たちは無事に二回戦を突破した。
戻ってきた綺凛ちゃんと共にステージを捌けて会見会場へと向かうことになる。
報道機関の質問が面倒だったがこういうところも点数に響くらしいのでそれなりにおざなりにならないように気をつけて発言をした。
◆ ◆ ◆
試合が終わり控え室に戻ってきたのだが綺凛ちゃんがそわそわしておりしきりに自分の制服の匂いを嗅いでいたのは汗をかいていたからだろう申し訳なさそうに俺にシャワーを浴びさせてほしい、と告げてきたときには
「俺の事は気にしなくても良いから控え室のシャワーを使っておいでよ。俺は控え室の外で待ってるからさ。」
相手は中学生…年頃の女の子であり異性を気にする年頃で俺がいるとゆっくりシャワーを浴びれないだろうという配慮だったのだが…。
「だ、大丈夫です!お義兄さんがわざわざ外に出る必要はないので控え室のソファーで待っていてください!」
手を取られ引き留められてしまった。
「いやいや…男がいたらゆっくり出来ないでしょうが…。」
そう言って諦めさせようとするがふるふると首を振って否定された。
「学園の報道系クラブとかがまだ外にいるかもしれません。外にいるのを見られたら『あのペアは仲が悪い』なんて偏向報道されちゃうかもしれないので…だから大丈夫です。」
「だけどなぁ…。」
困ったような表情を浮かべると逆に綺凛ちゃんが悲しい表情をしていた。
…いや俺がしたい場面なんだが?
とどめの一撃を貰ってしまった。
「お義兄さんじゃなきゃこんなこと言わない…です。」
「わかった…俺は少し仮眠してるから。」
義妹にそんなことをお願い?されて結局シャワーを使用中に控え室のソファーで一眠りすることにした。
◆
「お義兄さんが剣以外に武器を使えると知ったら驚くんでしょうね…やっぱり凄いです。」
シャワールームで生まれたままの姿になり先程の試合での汗を洗い流す綺麗。
十代の若々しいその肌は降り注ぐ水流を弾く。
汗を洗い流すその肢体は中学生とは思えない早熟した肉体であり特に胸部部分と臀部はクローディアに匹敵するほどに魅力的な色気を放っていた。
「この試合でお義兄さんは全力を出していない…そもそも全力を出せる相手がいないのでは?」
開催当日の試合でもほんの少しの星辰力の解放であれ程の迄の速度を叩きだし”校章を二枚抜き”するという離れ業をやって見せたのだ。
観客や実況者達が沸き立ち「未だ何かを隠し持っているのでは?」と疑うのも無理はないだろう。
「実際にペアを組むことになってお義兄さんの力を見せていただきましたが…剣技だけなら私に分がありますけどそれ以外の能力を使われちゃったら勝てるビジョンが見えないです。」
ペアを組む上で蜂也の力を目の当たりにした綺凛は開いた口が塞がらないとはこの事か、と身をもって知ることになったのだから。
それに『封印されていた純星煌式武装』と完全適合できた、というのも納得ができる。
剣から”選んだ”のではなく剣の担い手に”選ばれた”といった方が良いだろうか?
少なくとも『
只の力が強いだけでなく百戦錬磨の戦士のように頭が回るのだから綺凛がそう思うのも無理はない。
「お義兄さんは色々な女性に好かれていますよね…誰にでも…って訳じゃないけどその姿を見るのは何だか…複雑です。」
綺凛と初めてあった時も隣にはクローディアが居たしそしてこの間の初戦突破の時にあの世界の歌姫…『
「わたしはお義兄さんをどう思っているんでしょうか…?」
熱いシャワーを浴びながら思考に耽るがその答えは出てこず少し長いシャワー時間になっていたことにハッとなって気がつき上がることに決めた。
しかし。
「あ、あれ?下着がない……はっ!お、お義兄さんがいるテーブルの側に替えの下着が入ったバックを置いてきちゃった…!」
やはりというかそこは綺凛”お約束”をかましてしまっていた。
ここにあるのは先程シャワーを浴びる前に身に付けていた下着類で汗を含んでしまっているので身に付けたくはないしかといって素肌にストッキングは問題だった。
「お義兄さんお昼寝してるって言ってたし…今出ていっても問題ないですよね…。」
そう言って体にタオルを巻いて髪が濡れたままシャワールームを出る。
「…………。」
気密扉がプシュッ、と開きビクッとしてしまう綺凛だったが恐る恐る控え室を覗くとそこには備え付けられたソファーに仰向けで寝転び昼寝をしている蜂也の姿とテーブルの上に置かれたパッキングされた下着が入った袋が置かれていた。
「うう…やっぱりシャワーを浴びるのに意識が集中してて忘れてました…。」
綺凛は戦闘になると人が変わるのか、というくらいに物事に対する集中度が違ってくる。
そこがかわいいと蜂也なら言うだろうが今の彼女に知るよしはない。
「い、急いで下着を取りに行かないと…でもお義兄さんを起こさないようにしなきゃ…。」
剣術の足運びで足音は完全になくなり物音立てずに目標まで向かう。
「………。」
寝息を立てている蜂也の隣を通り抜けるときの綺凛の心臓は緊張で爆発しそうなほどに鼓動を速めており今すぐにでも走って取りに向かいたいところだが物音を立てれば蜂也が起きてしまう、そんな確証があった。
「(ゆっくりゆっくり…着いた。)……。」
パッキングされた袋を手にした綺凛は一安心して踵を返してシャワールームの更衣室へ再び音を消して足運びをするが現実というのはそう簡単に行かないのだ。
テーブルに置かれた蜂也の端末が震える。
「ひゃあっ!」
ビックリしてしまった綺凛は思わず短い悲鳴だったが挙げてしまった。
同時に固いテーブル上で振動し着信音がなっている端末の音に気がついた蜂也は目蓋を開けて目を擦った。
起き上がったことに動揺した綺凛は足がそのテーブルに引っ掛かってしまいこれまた運命の悪戯か。
長いタオルを巻いただけでほとんど裸に近い姿の綺凛が近くのソファーに倒れ込んだ。
「…ん?誰からだ?ってぐおおおっ!?」
胸の当たりに衝撃が遅い思わず悶絶をしてしまう蜂也。
「一体何が……って…へ?」
その衝撃の正体を探るべく視線を下へ向ける蜂也の視界に飛び込んできたのは…。
「あいたたた…え?」
視線に先にいたのは髪が未だに濡れたままでバスタオルが取れ掛かっている綺凛の姿がそこにあった。
構図的には蜂也を綺凛が情熱的に襲っているようにも見える。
「き、綺凛ちゃん?」
声をかけられて今自分がどんな格好をしているのかを理解してしまってシャワー上がりの顔色は更に紅くなる。
「お、お義兄さん!?こ、これはその…着替えをここに置いていたのに気がついてその…あっ、ごめんなさい!今すぐ退きますからっ!」
すぐさま蜂也から動こうとするが巻いているバスタオルが取れ掛かっていたのを見つけてしまった蜂也はゆっくり動くように指示をするのだが…。
「き、綺凛ちゃん急に動いたら危ないって!…あ。」
パサリ、と白い布が蜂也の腹の上に落ちた。
「すぐに退きますからっ」
「ちょっ!綺凛ちゃん前、前!」
「直ぐに……へっ?」
「おわっ!」
綺凛は胸部分で巻き付けていたタオルの締め付けが随分と軽くなったな、と他人事のように思って下を見ると白い布が蜂也の腹の上に落ちていることに気がついて恐る恐る視線を蜂也の方へ向けると顔を紅くし掌で顔を隠し片方の手で指を指す。
なぜそんなことをしているのだろうと疑問に思い自分が今どんな状態にあるのかを理解するに然程時間は要らなかった。
指を指された方向に視線を向けると生まれたままの姿で情熱的に蜂也を求めているような姿でありタオルが外れた瞬間に蜂也の脳裏に自らの豊満なモノが実り先がピンク色に色づく果実を記憶に刻んでしまったと。
「~~~~~~~!!!」
声にならない悲鳴が防音機能がある控え室に響き渡りその後半泣きになってしまった綺凛を慰めるのに時間を費やした。
それは綾斗が来るまで続いたという。
『これが所謂”ToLoveる”という奴かな主よ。』
『はっ倒すぞ手前ぇ…』
蜂也は《グラム》にガチギレしていたが先程の綺凛の姿は妙に艶っぽく忘れようにも忘れることはできなかった。
◆ ◆ ◆
天霧達の試合も秒で終わったらしくこちらに合流をして昼食を取っていた。
天霧はリースフェルトが作ったらしいサンドイッチをいただいており俺は”さっきの出来事”の罪滅ぼし、と言う訳ではないが控え室にあった調理台があったのでお昼ごはんを作る。
食材は冷蔵庫にぶちこんでいたのでそれを利用する。
今日の昼食は自家製のミートソースにパスタを茹でキャベツをカットし鉄板で炒めた焼きパスタを提供したところ綺凛ちゃんはにこにこと笑って完食してくれたので許されたと思いたいが若干頬を紅く染めているのを見逃さなかった。
食事をしている最中に控え室に備え付けられたモニターを付けてチャンネルを回すと一つ気になる試合を見つけた。
それにリースフェルトが反応していた。
「そうか…こいつらの試合も今日だったな。」
画面に映るのは巌のような男、レスター・マクフェイルだった。
「対戦相手は…なる程一筋縄じゃ行かなさそうな相手だ。」
そしてそれに対峙しているのはレヴォルフ黒学院序列三位、巨大な鎌
◆ ◆ ◆
結果としてレスター達はウルサイス姉妹に敗北した。
目を見張るのはその手に持った純星煌式武装だろう。
試合が終了し控え室ではリースフェルトから始まって感想が述べられた。
「『
「『
「うーん…純粋に接近戦ってことならまぁ…それに『
映像を見て考え事をしていた。
「…(資料では見ていたが『
『どうした主よ。』
《グラム》に話しかけ対策できるか確認をしておいた。
『お前ならあの武装に対抗できるか?』
『無論だ。言ったであろう?「我は最強の破壊力を誇る『
間髪いれずに返答をしてくれたこいつに頼もしささえ覚えたが油断はできない。
『お前がそう言うならそうなんだろうな…だが俺もあの加重を自在に動き回れる自信はないが…卑怯だが『重力制御』をさせて貰おう。』
『本当に対戦する相手が可哀想になるレベルだぞ主よ。』
『試合の世界に卑怯もらっきょうもないんでな。自分で言っておいて何だがこれは俺の”能力”だ。』
もし当たる…というか当たるのは確定だろうし対策をしておくのは遅くはない。
「お義兄さん?どうしました?」
綺凛ちゃんに声を掛けられたことでハッとして反応する。
一応天霧達の会話は聞こえていたのでそれについて回答する。
「……っとすまん少し考え事をしていた。…そうだな天霧の場合はこないだも言ったが”条件が整わない”ときついだろうが行けるだろう。それに補給元になっている妹を潰せば長期戦は出来ずに干からびる…があまりそれはしたくないんだろう?」
俺がそう告げると天霧と綺凛ちゃんが苦笑いで頷いた。リースフェルトも似たような感覚か。
「まぁ試合だからな”正々堂々”といえば聞こえが良いが真っ正面から倒せないならそれも立派な”作戦”だぞ。それで負けたら言い訳も立たんしな。」
「あ、いやそう言うのじゃ…。」
天霧は女性には手を出せなさそうな雰囲気あるからな…一応補足はしておく。
「まぁウルサイスも妹が狙われてるのも折り込み済みだろ。本戦では予戦で見せたことのない技を繰り出してくるだろうからな。」
俺がそう言うと全員が頷いていた。
(恐らく俺たちと天霧が本戦で当たるんだろうな…そう簡単にやられてくれる相手じゃなさそうだしな。)
画面に後ろ姿が映るウルサイス姉妹を見ながらそう思ったのだ。
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