俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。   作:萩月輝夜

16 / 52
祝評価バーがついに四本に…ありがとうございます!

感想&高評価&お気に入り登録宜しくお願いします。



吸血暴姫(シスコン痴女系美少女)と優しき妹

鳳凰星武祭(フェニクス)は七日目に突入し予選会も最終回となった。

 

同時に胸の校章が光輝き試合開始の機械音声が鳴り響く。

今回は綺凛ちゃんが一歩下がり俺は前に出て発動体に星辰力を流し込むと武装が形成されると同時に俺は相手選手を倒すために動き出す。

その手に展開された武装を見て観客と解説達がどよめいた。

俺より大きいか、それとも同じくらいの身の丈の銃身を持つ大砲のような煌式武装。

 

『おーっと!?名護選手の武装が一回戦目の時とは異なりますっ!銃型の煌式武装を持ち出したっ!代名詞である壊劫の魔剣(ベルヴェルク=グラム)は今回使用されないのでしょうかーっ!?』

 

『些か不本意だが沙々宮殿の為だ。致し方あるまい。』

 

喋るんじゃねーよ気が散る。

 

『む…最近我の扱いが雑ではないか?』

 

反論する《グラム》を無視して目の前の戦闘に集中する。

 

『これは驚いたっスねー。基本的に複数の武器の持ち込みは禁止はされいないっスけど選手各自は得意な武器が決まっているので持ち込みは同系統のモノが多いんスけど名護選手は武器の種類に関わらず満遍なく使えてしまうんスかねー?』

 

そんな解説の言う通り俺は一応全ての武器を扱うことが出来るので今回沙々宮から預かった銃型の煌式武装を使わせてもらっている。

俺もどっちかといえば本来はスタイル的には遠距離だ。

…まぁこの武装射撃する前にに少ーし時間が掛かってしまう、という難点はあるものの威力は折り紙付きであり星脈世代の星辰力が低いものが当たれば気絶判定に持っていけるほどに威力が高い。

 

対戦する相手選手も俺の武装が大剣だと聞いていたのだろう。

最初は驚いていたが二名が此方に突貫してくるが遅い。

相手の武装は剣型の煌式武装と星辰力の威力を存分に発揮できる拳…『星仙術』と呼ばれる技を使用する生徒でありその校章は『黄龍』…界龍第七学院と呼ばれるアジア系っぽい学院の選手達と闘っている。

彼らは序列外の生徒だが星辰力の制御は目を見張るものがある。

通常の銃型武装ならば切り捨てられてしまうがそこは俺の星辰力とこの銃の機構であるマナダイト直列三連結という荒業で出力を獲得しており硬度で言うならグラムにも引けを取ることはない。

 

実際に刃と拳を銃型の煌式武装で受け止めたあとにパリィし体勢を崩す。

普段と同じく刀藤流剣術を使用し対戦相手の武装を吹き飛ばすと同時に搭載されているマナダイトが青白い光を収束した。

 

無防備になった胴体に銃口を向けて発射した。

 

「吹っ飛びな。」

 

爆発と衝撃波が会場を支配し対戦相手が吹き飛びその余波でステージ端まで勢い良く悲鳴を上げて吹っ飛んで行った

 

両選手はステージの壁に叩きつけらて弾丸の威力と衝撃で校章が砕け散ると同時に意識を失った。

 

試合終了(エンドオブバトル)!勝者、名護蜂也&刀藤綺凛ペア!」

 

こうして俺と綺凛ちゃんは本戦出場が確定した。

 

◆ ◆ ◆

 

本戦抽選会はお馴染みのシリウスドームで行われた。

 

「しっかしだだっ広いなここはよ…。」

 

ステージに近い、しかし一般の観客席からは隔離された専用のブース席に俺とクローディアは座っていた。

しかしここには俺たち以外の生徒の姿はなくほぼ貸しきり状態になっていた。

 

「ふふっ。ここは星導館生徒会専用ブースですから人が来ませんよ?」

 

そう言って何時ものように俺の隣に陣取るクローディアはこれまた何時ものように腕に自分の腕を絡み付かせてくる。

クローディアの双丘が形が変わってしまうぐらいに密着していた。

 

「いや、何で俺の腕に巻き付いてくるんだよ…てか近い。」

 

俺がそう指摘するとクローディアは拗ねたような表情を浮かべて更に密着、腕ではなく身体事…殆ど抱きついているような状態だ。

 

「…こうして蜂也と二人きりになれたのは随分と久しぶりですから。寂しかったんですよ?」

 

「お前なぁ…。」

 

豊満で柔らかいものが腕ではなく身体に当たっている。

 

「ここのところわたしは働き詰めでその期間はペアである綺凛さんとイチャイチャして…何故かいつの間にかクインヴェールの生徒会長と仲良くなっていますし?…わたしは悲しくなってしまいますよ?」

 

「いやいや…別に俺と綺凛ちゃんはそんな関係じゃなくて義兄妹だしシルヴィアに至っては面白そうだから俺にちょっかい掛けてきてるだけだっつーの。そもそも悲しい…って俺とお前はそんな関係じゃないだろ。そもそもなんで俺にそんなことを言ってくるんだ?」

 

「それは…内緒です♪」

 

「おいおい…。」

 

”わたしの蜂也”だとか”浮気ですか”等完全に恋人のような発言をしてくるクローディアに突っ込んだ質問をすると何時ものような笑みを見せてはぐらかされた。

 

一度こいつの好感度を《瞳》の力を使って覗いたことがあったのだが好感度は最大で俺に対する”悪意”もなく”親密”の方がある。

俺にはそれが分からない。なぜこいつがこんなにも俺への”好意”を抱いているのか。

しかし、嫌な気はしないと言うのが実情であって…。

 

「蜂也?綺凛さんにしたようにまた撫でてくれますか?」

 

「お前な…ここ俺たちしかいないからって気を抜きすぎだろ」

 

ここには俺たちしかいないが誰が入ってくるかも分からない外の施設だし目の前はガラス張りで目の良い奴ならこっちが如何わしい事をしていればバレてしまうだろうしな。

しかしクローディアは首を縦には振らなかった。

 

「働き詰めだったのですからこのくらいの褒章があってもバチは当たらないと思いますよ?」

 

さぁ、と言わんばかりにぐいぐいと身体を近づけ頭を俺の眼前に持ってくる

 

「…はいはい。」

 

こういうところで意外にこいつは頑固である。

甘い魅惑的なクローディア本人の匂いが俺の鼻腔を突く。

仕方がないと諦め手を翳しクローディアの頭頂部に置こうとしたその瞬間に静寂を1本の着信が破った。

 

「っ…はい名護です。」

 

着信を取ると困ったような八の字眉をしているであろう綺凛ちゃんの声が聞こえた。

 

『あ、あの…お義兄さん。突然ごめんなさい…。』

 

「どうしたの?」

 

綺凛ちゃんは明らかに慌てていた。

どうも不測の事態が発生したようであった。

綺凛ちゃんはおろおろした様子で話を続ける。

 

『ええと、実は今日紗夜さんと一緒に商業エリアにお買い物に来ていたのですが…い、いつの間にか紗夜さんの姿が見えなくなっていて…』

 

「沙々宮か…天霧達には連絡がついていないのか?」

 

奴の事なら天霧に聞けばよいのだが…。

 

『それがマナーモードにしているのか繋がらなくて…そこでお義兄さんに連絡を取ったのですが…。』

 

「成る程な。」

 

『そ、それで紗夜さんの端末に連絡を取ったら『迷子になった』と自信満々に言われてしまって…ど、どうしたら良いですか…!』

 

パニックになる寸前だったので俺は綺凛ちゃんへ優しく声を掛けた。

 

「分かった。じゃあそっちに今から行くから綺凛ちゃんが今居る場所を教えてくれないか?合流して一緒に探そう。」

 

『は、はい!ありがとうございますお義兄さん!ええと今居る場所はですね…』

 

今居る現在地を聞かされその場所で合流をしようと決めて一度通話を切り端末を仕舞って動き出そうとすると別の問題が発生していた。

 

ーむすっ、つーん…ー

 

クローディアがむすっとした膨れっ面でそっぽを向いてしまっていた。

 

「お、おいクローディア?」

 

「…折角の久々で二人っきりになれたと言うのに。」

 

普段の余裕のある女性のような雰囲気から一転しいじけてしまった子供のようで非常に愛らしいと思ったが状況が状況なので弁明している暇はない。

 

「わたし…本当に蜂也と一緒に居る時間を楽しみにしていたのに…。」

 

その発言に俺も思わず罪悪感を覚えてしまった。

流石の俺もクローディアのような少女にこんなことを言われて無視できるほど男子をやめてない。

この爆弾を放置したままなのは後々に大変なことになると俺の直感が告げておりひとまず合流を後回しにした。

 

「悪かったって…でも天霧が電話に出れないなら迷子の捜索をしなきゃならんだろ。それこそ再開発エリアにでも行ったら大変だ。」

 

謝罪をするがクローディアはプイッとそっぽを向いて「わたし怒っています!」と言わんばかりの動きを見せており取り付く島がない。

どうしたものか、と頭をフル回転させているとそっぽを向いていたクローディアが此方に向き直り顔を紅くして告げた。

 

「本当に…悪い、と思っていますか?」

 

「え?ああ。思ってる。」

 

そう告げるとクローディアは許す代わりの行動を要求してきた…がかなりの難易度だった。

 

「で、でしたら私を抱き締めて頬にキスして「愛している」と言ってくれましたら許します。」

 

「は…はぁ?何を言ってるんだお前は?」

 

困惑する俺に対してクローディアは少し不機嫌なままでまたしても膨れっ面の表情に戻りそっぽを向いてしまった。

どうしたものかと頭を抱えると《グラム》からの声が聞こえてきた。

 

『主よ…ここでクローディア女史の機嫌を直しておいた方が懸命だぞ。』

 

いや…抱き締めるのは百歩譲るとしてキスは…ないだろ。

 

『早くしないとクローディア女史の機嫌が更に悪くなっていくぞ?…提案を受け入れるべきではないか?』

 

そう言われ視線をクローディアに向けるとプリプリと怒っているのは続いたままでありこのままでは不味いと思った俺は致し方ないと内心でため息をついてクローディアの提案を飲むことにせざるを得なかった。

 

「…クローディア」

 

「…へ?」

 

そっぽを向いていたクローディアの肩を掴み此方に振り向かせた。

優しく引き寄せお馴染みに抱き締める形になる。

 

「は、蜂也?」

 

「お前がこうしたい、って言ったんだから苦情は受け付けないぞ。」

 

「…はい。その…よろしくお願いします。」

 

何故か依頼をされてしまっておりお前が望んだことだろうと突っ込みたくなったが一先ず置いておく。

目蓋を閉じてこれから行う行動に構えているクローディアは非常に愛らしかったがこれは非常に精神衛生上よろしくはない。

 

「……行くぞ。」

 

「……。」

 

俺はクローディアの耳元まで顔を近づける。

更にクローディアの芳しい匂いが鼻腔をつき頭がおかしくなってしまいそうだったがこれは”妹を宥めるための行動”だと自分に言い聞かせ俺の唇がクローディアの色白…だが紅く紅潮した頬へ口づけし肌と肌が濡れた音が響き甘い雰囲気がこのブースに広がる。

 

「ん…///」

 

すべすべしたクローディアの肌の質感が俺の唇に伝わる。

くすぐったいのか身を腕のなかで捩るクローディアに逃がすまいと追撃を掛ける。

 

「……ふぅ~。」

 

「ひぅ…///」

 

クローディアの耳に息を吹き掛け真っ赤になって俺の胸の中に撃沈した。

 

『まさか本当にやるとは…刺されても知らんぞ?』

 

お前がやれって言ったんじゃねーかよ!!

 

「蜂也……。」

 

クローディアはとろんとした表情で俺の腕のなかで甘えていたが一旦離れ捜索しに行くことを告げると先程とは違って笑顔で送り出してくれた。

「愛している」とは流石に言わなかったのでそこは文句を言われたが無視した。

つーかなんつうことさせてくれたんだこいつは…。

 

◆ ◆ ◆

 

「えーと…たしかこの辺りだったか?」

 

クローディアと数分程度だが抱き合っていたのだがようやく解放され綺凛ちゃんに教えられた場所で合流し辺りを捜索するが沙々宮の姿は見当たらず…端末に連絡を取った場所から推測した場所を絞り込んでいるのだが見つからない。

 

「取り合えず手分けして探そうか。」

 

「そうですね…。」

 

沙々宮には連絡を取ってその場所から動かないように指示を出しているので事態の悪化は防がれている…と信じたい。てか迷子になる確率高くねぇ?こうなったらアイツの足首にGPSでも付けておいた方が良いのだろうか?と犯罪者を執行猶予付きで釈放するような気分になったがそれはダメだろう。

まずは地図の見せ方を覚えてもらった方が良いのだろうか?

 

「暗くなる前に探すか…そっちは頼む。」

 

「はいっ。」

 

再開発エリアが近いこともあって観光客の数は少なく柄の悪い…というかレヴォルフの生徒が多い。

因縁をつけられる…というか俺を見るたびに逃げるような生徒が居るくらいで序列入りって便利なんだなと思った。

 

取り合えず近場の裏路地を見てみても探し人は見つからず数本巡ったが出てこない。

 

「はずれか…ここにも居ないとなると別の場所か?」

 

ここも外れか…と思い踵を返し戻ろうとすると声が聞こえた。

 

「ーーーーー。」

 

言い争うようなそんな会話が路地裏の奥からだ。

 

足を止めてその声の方向へ歩き出しながら耳を澄ます。

 

「やめ……さい…!放し……!」

 

若い女性…少女のような声が聞こえるがその内容は穏やかとは言いがたく言い争いをしているようだ。

その現場を見ることが出来る場所の付近まで近づき物陰から伺う。

女の子が一人にガラの悪い男達に囲まれていた。

その囲まれている少女をどこかで見たことがあったが思い出せない。

 

『おいおいあんまりワメいてくれるなよ。めんどくせーのは嫌いなんだ。』

 

『そうそう。恨むんならお前のねーちゃんを恨むんだな。』

 

『んー!!んんんー!!』

 

少女は口を押さえられてしまっている取り囲むガラの悪い男達。人数は五名程度だろうか?

俺は溜め息をつきながら腰のホルダーに収納している発動体を握る。

…と思ったがここで問題を起こすわけには行かないので身体技能で制圧することにした。

 

(グラム…でしゃばるなよ?)

 

(女性を複数人で取り囲むとは男の風上に置けぬ奴らよ…ここは我が…って…ん?主よ…そこは我を呼ぶ場面では?)

 

《グラム》との会話を切り上げ《縮地》を用いて俺は少女の身体に触れようとしていた男子生徒の腕を捻りあげる。

 

「な、なんだてめぇ…いででででっ!!…がくっ」

 

捻りあげた腕を軽く引っ張って近くにあった壁にCQCの要領でぶつけて無力化した。

存外にも反応がよく残りの男達はナイフ型の煌式武装を取りだし構える。

…うん。まんま鉄砲玉みたいだな。

 

「…。」

 

言葉は発ずに威圧感を出して逃げるように仕向けるが…。

 

「…っ、あぁん!?」

 

「と、突然割り込んでくるたぁふざけた兄ちゃんだなぁ!?」

 

俺の視線を向けるが男達を怯ませる…ことは出来たが逃げることはせずに武器を構える。

一触即発か…と思いきやガラの悪い男達の中の一人が俺を指差して叫んだ。

 

「ああっ!こ、こいつ《戦士王》じゃねーか!」

 

「《戦士王》…ってま、まさか星導館の第三位か!?」

 

一瞬男達の間に動揺が迸るのを俺は見逃さなかった。

不意をついて男達の間を常人には関知できないほどの速度で移動する自己加速魔法(クロック・アクセル)と同時に男達に重力波動をぶち当てていく。

 

「がぁ!?」

 

「ぐぉっ」

 

「ぐあっ!」

 

「ぎゃっ」

 

「…ったく男複数に女の子一人を囲むか普通…。」

 

「…がふっ」

 

少女を放すまいと手を伸ばすチンピラの腕を蹴っ飛ばし気絶させると裏路地は静かになった。

踵を反してその場から立ち去ろうとすると後ろから引っ張られる感じがして振り向くとさっきの少女が此方の制服の袖を引っ張っていた。

ん?何をしてるんだこの女の子は…厳つい生徒は伸したからここから逃げてほしいんだけど…。

そんなことを思っていると少女が口を開く。

 

「あ、あの…っ!」

 

「……?」

 

引き留められてしまいどうしようかと思案しているとふと此方を監視するような視線を感じ取った。

 

(この子の事を見ている…?なら何故さっきのタイミングで助けに入らなかった…?)

 

此方を伺う視線に対し少し考え事をしようとしたが中断された。

 

「いたぞ!…って見知らねぇ男も一緒だ!一緒にやっちまえ!」

 

俺が頭に疑問符を浮かべていると裏路地の反対側の入り口から怒号が聞こえた。

どうやら先程の伸した生徒達の仲間らしく俺の後ろにいる少女を狙っているようで俺も仲間判定されてしまった。

…面倒くさい。

 

「あっ…!」

 

「逃げるぞ。」

 

俺は少女の手を取って走り出す。

裏路地の物陰に隠れるがここは男達のホームでここの辺り一体の路地を知り尽くしているらしく鉢合わせをしてしまいそうになる、という状態に見舞われた。

だがそこは察知して入れ替わりで動いたので接触することはないのだが如何せん数が多い。

無勢に多勢とはこれの事だが律儀に付き合ってやる義理はない。

 

「ちょいと失礼。」

 

「え…?………っ!!」

 

断りを入れて少女を抱き抱え加重魔法による重力制御でふわり、と宙に浮いて飛翔する。

悲鳴をあげそうになっていたが状況が状況なので口を手で押さえていた。

近くにあった四階建て程度の商業ビルの屋上へと避難をする。

チラリとしたの路地に視線を向けると男達が此方を探しているが当然ながら見つかるわけもなく男達は暫くすると来た道へ戻っていった。

暫くはここに身を隠していた方が良さそうだ。

頭の回るやつなら”上”に逃げたと感づく者もいるだろうが大丈夫だろう。

幸いに隠れる場所は多いビルの屋上らしいからな。

一先ずは緊急とは言え女の子を抱き抱えてしまったので謝罪から入ろうと思う。

 

「本当にすまんかった。緊急事態とはいえ知らない男子に抱えられて飛ぶのは嫌だったよな。すまん。」

 

「へ?あ、ああ、はいっ、いえそんなことないです!危ないところを助けていただきありがとうございますっ」

 

少女を下ろして頭を下げると慌てている。

逆に深々とお辞儀をされてこっちがいたたまれない気分になった。

よくよくその少女を見てみるとこの辺りを根城にしているレヴォルフ黒学院の校章…『双剣』があったのだ。

 

「あのう…わたしの顔に何かついてますか?」

 

観察していたのがばれたのか質問されてしまった。

 

「え?ああいやレヴォルフの校章を付けているのになんで追われてたんだろうなって思っただけなんだが…」

 

「ええと…それは…あのそれよりどうしてわたしを助けてくれたんですか?星導館の方ですよね…?」

 

「ん?ああ…ちょっと知り合いが迷子になっててさ。そいつ結構な方向音痴で…んで場所を知らされて再開発エリアのこの付近…って教えられてこの場所を通りがかったら君が襲われているのを見て助けに入った…って訳なんだが。」

 

「そ、そうだったんですね…重ねてありがとうございますっ!」

 

「い、いやそこまで畏まらんでも…。」

 

「そう言うわけには行きませんよ!…あ、すみません少しおね、姉に連絡しても良いですか?心配してると思うので」

 

「あー。うん心配してると思うから連絡してくれ。あ、そうだ。」

 

「はい?なんでしょう…。」

 

首を傾げる少女に俺は質問した。

それよりも気になることがあったからだ。

 

「君を一度どっかで見たことが有るんだけど…何処でだっけ…。」

 

ナンパの常套句のような台詞を思わず言ってしまうと目の前の少女に微笑されてしまった。

む、いかんな。

少女は肉親に連絡を取っているのでここから立ち去ろうかと考えていると少女に「ここにいてください!」とジェスチャーで指示されてしまい動けなくなった。

 

通話が終わって俺も一応は名前を名乗ろうとした。

その時だった。

 

「おい、そこで何をしてやがる…!!」

 

鋭い声と共に猛烈な殺気が俺の背中へ叩きつけられ少女を軽く突き飛ばしその場から離れると同時に攻撃を受けた。

遠距離ではなく武器による直接攻撃だった。

屋上のコンクリートが飛び散るほどの威力が襲う。

 

「うおっ!?いきなり…ってはぁ?」

 

回避と同時に着地を決めて攻撃を仕掛けてきた方向へ視線を向けるとそこには『覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)』を振りかぶっていた痴女がいた。

 

「お姉ちゃん!」

 

「お姉ちゃん?……この痴女が?」

 

俺が指差してそう言うと痴女…というか少女の姉は顔を真っ赤にして激怒した。

というかこの少女とこの痴女は姉妹らしい。

 

「だ、誰が痴女だてめー!……まさかプリシラに手を出したんじゃねーだろうな?」

 

「そんな下着…って見せブラみたいなの付けてたらそう思うわ。てか、どうしてそうなるんだよ。俺はただこの子がチンピラに絡まれてた所を…」

 

「うるせぇ!なんであたし達と関係のない《戦士王》が助けてくれんだ?むしろ敵なんだから放っておくのが普通だろうが。」

 

状況を説明しようとしたがダメだ。聞く耳を持たないってのはこういうことなのか。

今こそGN粒子による対話がしたい。俺たちが…ガンダムだ!

 

なんてアホなことを思っていると痴女の瞳には明らかな敵対心が宿っている。説得するのは不可能に近い。

 

「ち、違うよお姉ちゃん!偶然通りがかった名護さんはわたしを助けてくれたんだって!」

 

ここで少女…もといプリシラの説得が入る。

 

「黙ってなプリシラ…何を企んでいやがるが知らねぇがプリシラに手を出したことを後悔させてやるぜ。」

 

そう吐き捨て手に持った『覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)』をゆらりと振り上げた。

じりじりと肌を焦がすような凶悪な威圧感は並みの人間ならビビってしまうだろう。

 

「はぁ…」

 

しかし俺は心底あきれる他なかった。

話の通用しない奴ほど面倒くさいものはいないと。

俺だけが告げるならまだしもその妹が「関係ない」と言っているのに聞く耳を持たない、というのは突発的な難聴にでも掛かっているのだろうかと疑いたくなるレベルだ。

かといって今は鳳凰星武祭(フェネクス)の最中で騒ぎを起こすわけには行かないので軽く切られてやろう、と思って武器を構えずにオートで『物質構成(マテリアライザー)』を発動させようとしたのだが…。

 

「お姉ちゃん?本気で名護さんを傷つけようと思ってるんじゃないよね?」

 

プリシラは俺と目の前の痴女の前に割って入り静かな怒りを湛えた瞳で射貫く。

その存在感は確かに小さいが確固たる意思がそこには存在していた。

 

その瞬間に痴女は『覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)』を待機状態に戻し慌てた様子で弁明し始めた。

どうやらここの姉妹も妹の方が強いらしい。

 

(何処も一緒…か…ふっ…。)

 

一気に緊張の波が止んだ。

まるで俺と小町のような関係だと思い少し親近感が沸いてしまった。

プリシラとその姉のやり取りが続きようやく終わりが見えたのか妹の方が姉の回答に満足して花のような笑みを見せて姉の方はというと一安心、といった表情か。

 

俺は踵を返してその場から立ち去ろうとしたが姉に引き留められた。

 

「ちょ、ちょっと待て!…あんたに聞きたいことが二つある。」

 

「お姉ちゃん?」

 

「ちょ、ちょっと質問するだけだって…。」

 

妹に不審な目で見られたじたじになる姉を尻目に俺は面倒くさそうな表情を浮かべることにした。

 

「あ?一体俺に何を聞きたいんだよ。」

 

「ちっ…って違うってプリシラ…んんっ!…ここの下で転がってた奴らはあんたがやったのかい?」

 

転がってる…ってのは俺がさっき伸した男達のことだろうか?

そこは素直に話した。

 

「ああ。ちょっとした野暮用でな…路地を通ろうとしたらちょうどプリシラさんがガラの悪い男に絡まれてたから軽く伸しておいたんだが…問題だったか?」

 

俺はメガネ越しに痴女…じゃなかった姉の紅い瞳を見つめると少し舌打ちをされて納得したようで次の質問が飛んできた。

 

「いいや…いい。それじゃあ二つ目だがあんたとプリシラの話じゃ”野暮用”といってたが何の用事があってこの再開発エリアに近い裏路地なんて通ったんだ?」

 

「あ?迷子の捜索だが…。」

 

「迷子…だぁ?」

 

「ああ。俺の同級生でドが付くほどの方向音痴が居てな…この間なんか市街地エリアに用事があっていたのに反対方向に居てな…探すのに苦労して今度からそいつが行動するときは足首にGPSでも付けておこうと思うくらいに」

 

「わ、分かった分かったから…そんな疲れた顔すんなよ。な?」

 

「これで分かってくれた?お姉ちゃん。」

 

何故かプリシラさんが得意そうに胸を張っていた。なぜにどや顔?

対する姉はバツが悪いと言わんばかりに頭を掻いていたがこればっかりは妹の言うことを信じないこいつが悪いとフォローするつもりは毛頭ないが。

大きく息を付いて肩を落としてぶっきらぼうに言い放った。

 

「ちっ…分かったよ。借りが出来ちまったな。」

 

それに対して俺はこう言い放った。

 

「こんなもん借りでもなんでもないだろ。恩着せがましい。たまたま俺が通りがかって助けただけだ。俺が助けなくともお前ならプリシラさんのピンチに駆けつけてただろ。」

 

俺は心底面倒くさそうに放った言葉にプリシラさんは笑みを浮かべ姉は苦笑していた。

 

「ディルクの野郎から聞いてた話と雰囲気全然違うなこいつ…てかそう言うわけには行かねぇんだよ。”これから戦うかも知れねぇ”奴に借りを作ったまんまはやりづらくってしょうがねぇ。」

 

「闘う?どういうこった。」

 

疑問を浮かべている俺とプリシラさんに呆れた表情の姉は端末を起動させ見えるように表示した。

映し出されたのはトーナメント表でそこには第四試合の対戦相手が表示されている。

 

「これは…。」

 

そこには俺と綺凛ちゃんの名前に対するのはプリシラさんとイレーネ・ウルサイスという女性の名前が記されていた。

俺はここでようやく思い出した。

プリシラさんを見たのは予選の映像であったこととレスターをボコり『覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)』を使用していた序列三位の選手を。

名前と端末を掲げる姉を交互に見て繋がった。

 

「お前…痴女…じゃなかった。イレーネ・ウルサイスか?」

 

「今ごろ気がついたのかよ名護蜂也っ!?…くっ、やりづれぇ…!あと!あたしは痴女じゃねぇ!!」

 

「はぁ?」

 

「お姉ちゃんどうしたの?」

 

俺の反応にウルサイスの突っ込みが屋上に響き渡っていた。

 

 




「所でその迷子とやらは大丈夫なのか?」

「あ。」

その後連絡が来て綺凛ちゃんと沙々宮が無事に合流できて一先ず解決できた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。