俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。   作:萩月輝夜

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壊劫の魔剣(名護蜂也)』対『覇潰の血鎌(イレーネ・ウルサイス)

懐かしい夢だ。

 

酷く生活を生まれたときから強いられていた幼い時代。

妹がビルの崩壊によって『再生能力者(リジェネレイティブ)』で有ることが分かると血の繋がりしかない毒親たちは躊躇うことなく売り飛ばした。

貧しかったから、明日生きていけるのかも分からないほどに貧窮に迫っていた姉妹は売り飛ばされる前に逃げ出した。

逃げ切れるかも分からずに何日も何日も宛もなく走り続けた。

そうしないと大切な妹を失う、そう確信したからだ。

しかし、その幼い身体は星脈世代といえども限界を迎えてしまった。

 

「………。」

 

廃屋の隅にかばうように踞る少女とその妹の前に一人の男が現れ睨み付ける。

男はポケットから取り出したものを無造作に投げ捨てるよう転がした。それは発動体だった。

 

『使ってみろ。』

 

少女はその発動体を握ると紫色の刃が形成され成功。

その光景に男は満足していた。なぜか不機嫌そうにしているが。

 

『ふん、合格だ。…いいぜお前の望みを言ってみな。』

 

目の前の男が誰で、状況も、これは夢なのか現実なのかさえ分からない状況であったが自分の命よりも大切な妹を守るために彼女は悪魔と契約をした。

 

こうしてイレーネ・ウルサイスとその妹プリシラはその身柄を保証されて今を生きている。

今思えば支配される人物がディルク・エーベルヴァインになっただけだと今日までそう思った。

そのとき奴はこう言った。

 

『これだけは覚えておけ。お前を救ったのはレヴォルフじゃねぇ。この俺だ。それを肝に銘じて働け。いいな?』

 

言い方は気にくわないし見た目も最悪の豚野郎だと判断はできる。

しかしそんな醜悪な野郎だが”約束”を破ったことはない。

妹を取り戻す”チャンス”と”時間”を与えたのは紛れもなくこの男だった。

 

 

懐かしいモノをみて微睡みから覚醒する。

控え室にいる妹が此方を心配そうな表情で見てくるが「心配すんな」と一言告げてイレーネは『覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)』起動させた。

相手は《戦士王》と《疾風刃雷》だ。星導館の序列三位と一位の実力者だ。

だが心配は要らない、と自らを鼓舞した。

この《力》と《妹》がいれば闘っていける。

プリシラが心得たようで白い首筋を露にするとイレーネは抗えない吸血欲求によって妹の血を一分以上吸血していた。

その血に歓喜するように紫の凶刃が打ち震えている。

 

「ぁ…。」

 

プリシラのか細い悲鳴が聞こえた。

明らかに初期使用より代償の吸血時間が長くなっている気がするが文句は言っていられない。

それがこの力を使うという《代償》というのなら致し方ない犠牲だ。

妹をこの手に手繰り寄せるまではディルクから与えられた命令をこなすしかないのだから。

 

◆ ◆ ◆

 

翌日。

ウルサイス姉妹から食事に誘われた次の日で鳳凰星武祭(フェネクス)は第四回戦を迎えた当日。

プリシラさんに頼まれたことを実行するにはまずはウルサイスを伸さなければならないが初めから戦闘力皆無のプリシラさんを狙うことに忌避感を覚えていた為綺凛ちゃんに伝えた。

 

「綺凛ちゃんお願いがあるんだけどさ…。」

 

「?なんでしょうか?」

 

首を傾げる綺凛ちゃんは可愛い…じゃなくてステージへ向かう通路を歩きながらお願いをしていた。

 

「今回相手選手のプリシラさんは狙わないで貰える?恐らく姉のウルサイスを倒せば戦闘力皆無になって降参(リザイン)すると思うからさ。」

 

「分かりました。」

 

まぁそんなことを急に言い出したらそう言われるのは折り込み済みだ。

ってえ?すんなりと受け入れられてしまってビックリした。

 

「いや、綺凛ちゃんなんでとか思わないの?こんな唐突なお願いをさ。」

 

「確かにお義兄さんの人となりを知らなければ深く聞いてしまうかもしれませんけど単純な考えで作戦を立案や打ち合わせをするほどお義兄さんは短絡的じゃ有りませんから。何かわたしの思いもよらない考えがあるんでしょうから…それに信じています。お義兄さんは優しいですから…」

 

信じている、とさも当然のようにいう綺凛ちゃんに対して少しの不安を覚えてしまったがそこは納得することにした。

 

ステージの入口付近まで到着し立ち止まる。

 

「ありがとうな綺凛ちゃん。」

 

義妹の頭を撫でてやるといつもの反応を見せてくれた。

 

「はい、頑張りましょう!」

 

俺は頷いて綺凛ちゃんも釣られて頷く。

奈落のように暗い通路から光溢れるステージへ足を踏み入れた。

 

◆ ◆ ◆

 

『さぁー各会場でも白熱の試合が繰り広げられています今日、シリウスドームでのトリを飾るのは星導館学園の名護・刀藤ペアとレヴォルフ黒学院のウルサイス姉妹ペアです!ベスト十六に進むのはどちらのペアなのか!』

 

『これまた楽しみな一戦ッスねー。どちらも予選では並み居る相手を寄せ付けずに勝利してきたペア同士です。ここが分水嶺になると思うッス。』

 

解説達が熱い言葉を交わしており観客席も盛り上がっていた。

俺は天霧のようにリミットはないが流石に相手は序列三位で純星煌式武装の使い手だ。

 

「綺凛ちゃん。少し本気出すわ。」

 

「はい。存分に。」

 

綺凛ちゃんからの許しも出たことだし少し本気でやらせて貰おう。

相手は純星煌式武装の使い手だ。今までの闘い方では此方がやられてしまう可能性がある。

それに追い込まれている手負いの獣の方が手強いとうちの婆ちゃんも言っていたしな。

それにならって俺はホルダーから発動体を取り出して星辰力を込める。

 

(グラム。)

 

『何だ主よ。』

 

発動体を握りながら脳内で語り掛ける。

 

『お前が俺に憑依して闘ってくれ。』

 

『よいのか?』

 

(よいのか?…ってどっちの意味だ)

 

『その様な目立つような事をして良いのか?という意味だが。』

 

(…仕方がないだろ。相手の武装は純星煌式武装(オーガルクス)だ。使用者よりも武器の方が厄介だからな。ハッタリを利かせることが出来れば御の字だ。)

 

『成る程。』

 

(それに昨日プリシラさんが言っていたことを覚えてるか?)

 

昨日帰りがけにプリシラさんに言われた件を告げると《グラム》が頷いた。

 

『勿論だ。』

 

(『覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)』にお前のように感情とやらは宿ってるのか?…というよりなぜ血を代償にするんだ?)

 

問いかけると回答してくれた。

 

『ああ…奴の意識は存在する。奴が代償として求めるのは最初の所有者の血を吸う事から始まっているようだ…その味を覚えてしまった、ということだろう。』

 

『それって矯正…ってできるのか?』

 

『ふむ…普通なら無理であろう、と言いたいところだが我が破壊し主が復活させれば矯正も成功するのではないか?』

 

(……あ。)

 

《グラム》にそう提案されてハッとした。

確かに此方に転移した際にクローディアの《パン=ドラ》を破壊した際に『物質構成(マテリアライザー)』を使った際に弱点を消し去ってたことがあるのを忘れていた。

 

『…忘れていたな主。』

 

『ぶっこわすしか考えてなかったわ。』

 

『壊したら問題になるのではないのか?非常に不快ではあるが我々…統合企業財体の所有物であるゆえな。』

 

考え無しにぶっ壊したら後でお小言が飛んできそうだ。

ならばと《グラム》の提案を受け入れる。

 

『んじゃまぁ…その作戦で行くか。』

 

『では我が『覇潰の血鎌()』の相手をする。主はタイミングを見計らって使用してくれ。…プリシラ嬢との約束果たさねばな。』

 

『いくぞ。…さぁ大暴れしろ【壊劫の魔剣(ベルヴェルク=グラム)】!』

 

『応っ!』

 

瞳を閉じて切り替わる前に演出を入れ体内の星辰力を活性化させると呼応し万応素が光の粒子が舞い上がりステージ上は光の奔流に包まれる。さながらその姿は暴風を纏い従わせた《戦士》そのものだろう。

観客向けにはちょうど良いパフォーマンスなる。

実際に星辰力も前回までの試合に比べればかなり変化しているだろう。

 

俺とグラムが入れ替わりが終了し瞳の色が黒目から蒼窮色へ変化し星辰力が身体を巡りその瞬間光の奔流が弾け飛んだ。

告げ役者のように(グラム)が見栄を切った。声も普段のものとは違う。

 

此方(こちら)の戦闘態勢は万全である…来い。」

 

壊劫の魔剣(ベルヴェルク=グラム)』の柄を両手で持ち腰を浅く落とし袈裟斬りよりも突きをしやすい構えで準備する。

 

そのパフォーマンスに実況席に居る解説役がやはりというか反応していた。

 

『おーっと!ここで名護選手の星辰力が先の試合とは比べ物にならない程に倍増したーっ!?そして漸く【壊劫の魔剣】の封を解きましたっ!!先ほど名護選手の周りに先程光の奔流が吹き荒れた!ついに我々に本気を見せてくれる気になってくれたのでしょうか!?と言うよりもキャラが変わっているような気がいたしますっ!』

 

『恐らくそれは噂ですけど『壊劫の魔剣(ベルヴェルク=グラム)』が持つ代償…精神汚染の症状ではないかと思うッスー。ですが非常にその見た目の雰囲気に違わぬ威圧感を醸し出しています。今名護選手は人格が二つあるようなものですかね。完全に制御しきっているようです。同じ学園の天霧選手と同じ程派手ですがその星辰力の威圧感は少し劣る、いや同等かもしれないッスねー。非常に映像映えするパフォーマンスっス。』

 

ギャラリーが一斉に沸き立ち、歓声が飛び交う。

その光景を見せつけるようにしていた反対側の選手も当然反応していた。

 

「あれが名護だってのか…?」

 

肌で感じる星辰力は昨日マンションで一緒に夕食を食っていた奴とは思えないほど濃い濃度だ。

まるで抜き身の刃を肌に突きつけられているような鋭く精錬された星辰力が体に当たる。

覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)』を肩に担ぎ薄く笑うように睨み付けるがまるで蜂也の表情は変わらずに感情の起伏がないようにすら思える。

その姿を見て恐怖すら覚えてしまいそうだったが呑まれてたまるかと、不敵な笑みを浮かべる。

 

「(…へっ!あたしがびびってるってのか?冗談じゃねー。)それじゃ、こっちも全力で行かせて貰おうかね…!」

 

武器を構えイレーネが前衛でプリシラが後衛の形だ。

 

覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)』の紫色の刃が鈍色に不気味に輝き、対する『壊劫の魔剣(ベルヴェルク=グラム)』は黄金色の刀身を輝かせ普段よりも激し目に紫電を迸らせる。

蜂也とウルサイスの視線が交じり合う。

 

鳳凰星武祭(フェネクス)四回戦第十一試合、試合開始(バトルスタート)!!」

 

機械音声が試合開始を告げると同時に俺と綺凛ちゃんが動き出す。

ウルサイス達との試合では定石の動き方だ。

それは当然相手も織り込み済みな訳で…。

 

「ー五重壊(フィフス・ファネガ)!!」

 

数々の対戦相手を地に伏せてきた紫の重力球が俺と綺凛ちゃんに襲いかかるが対した問題ではない。

 

「はっ!」

 

襲いかかる重力球を直列になるように誘導し『|壊劫の魔剣《ベルヴェルク=グラム』で横一文字で切り裂きイレーネの元へ駆け抜け一太刀を浴びせるために切りかかる。

俺に容易く突破されるとは思わなかったのか驚いているようだ。

上段へ素早く持ってきてその勢いそのままに右斜め上段から斬り下ろす。

 

「…!?おおっと!」

 

イレーネがその一撃を『覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)』で受け止めると反発しあい火花が盛大に散った。

ぶつかり合う大鎌と大剣。

武器の特性だけでなくウルサイス本人の身体能力も合間って《壊劫の魔剣》の一撃を凌いでいる。

 

万物を破壊する、とされた『壊劫の魔剣(ベルヴェルク=グラム)』はその意味に違わずに同じ純星煌式武装(オーガルクス)の万応素で形成された刃に食い込むように押し斬っていく。

流石に不味いと思ったのかイレーネは引くような形で態勢を崩そうとするが織り込み済みだ。

体勢を崩される前に力任せに横薙ぎに振るい逆に体勢を崩されたイレーネは斬り返そうとするが此方の方が少し速く逆袈裟を見舞うが上手く体のライン取りをしていたのか体には当たらず制服の一部を切っただけに留まった。

逆に反撃と言わんばかりにイレーネの逆袈裟と横薙ぎに見舞われるが片手の逆手持ちに切り替え斬撃を大剣の腹で防御してイレーネの視界を覆った。

タイミングを確認し大剣の腹を縦にすると俺の背後から影が飛び込む。

 

「はぁっ!」

 

「なっ…!くっ…!」

 

同時に綺凛ちゃんは刀でいなすように同時に接近していた重力球にぶつけ相殺し駆けた所に飛び込み突きを放つ。

防御に回らざるを得なくなったイレーネは《覇潰の血鎌》を振るい純星煌式武装と純然たる日本刀が激突し火花が舞い散った。

綺凛ちゃんを質量差で押し込もうとした気配を察知した俺は刹那の時間であったが綺凛ちゃんとアイコンタクトをしてタイミングを見計らい直ぐ様入れ替わり今度は俺が《壊劫の魔剣》を叩きつけるとあまりの威力に回転が止まってしまう。

 

「なっ…!?」

 

当然ながらその隙を見逃すはずもなく(グラム)は振り下ろした武器を素早く逆袈裟で斬り上げる。

校章目掛けての攻撃だ。

 

「はっ!」

 

その攻撃を回避しようとしたイレーネは後方へバックステップを決めるが避けきれずにまたしても制服の一部とトレードマークのマフラーを切り裂かれ地面へ落ちた。

 

「ちっ…あたしがここまで圧されるか…!流石に星導館の上位序列二名相手に分がわる…っ!」

 

「はぁぁっ!」

 

更に回避したタイミング言葉を言い切る前に綺凛ちゃんの追撃が入り奥義《連鶴》がウルサイスを追い込んでいく。

 

「くぅ……がぁっ!!」

 

次第にステージの後方へ圧されていくイレーネだったがフィジカルでは負けていない。

しかし綺凛が《連鶴》を中断させて後ろへ一歩下がった。

 

「なん…っ!?」

 

攻撃が中断されて驚くが直ぐ様その行動の意味を理解する。

 

綺凛ちゃんが中断し一歩下がったタイミングで俺は《詠唱破棄》で『光振動系統魔法(フラッシュエッジ)』を多重展開してイレーネ目掛けて飛ばした。

 

その数は”十”

 

「切り裂いてやろう…行けッ!!」

 

牽制用の光の輪(八つ裂き光輪)は当たればダメージはないものの校章に当たれば確実に真っ二つになる。

ここで決まらないのがイレーネ・ウルサイスだ。

 

「ちぃ!『十重壊(ディエス・ファネガ)』!!」

 

先程の重力球…此方もその数は”十”でありイレーネの体の周りに展開されて狙った光刃が相殺されていく。

 

この攻防を見た実況席に居る解説者達は興奮…というか興奮している。

 

『ーな、何と言うことでしょうか!?これはのっけからすごい攻防です!名護選手と刀藤選手のコンビネーションも見事でしたがそれを凌いでいたウルサイス選手もこれまたすごい!』

 

『それにしても名護選手が先程使用した光のチャクラムのようなあの技…あれは『魔術師(ダンテ)』…名護選手は普通の星脈世代ではなく『魔術師(ダンテ)』だったと言うことだったッスかねー』

 

その解説に観客席が動揺と歓喜が入り交じった歓声が響き渡っていた。

 

『…なんと!ここで飛び入りの情報です!名護選手はやはり『魔術師(ダンテ)』であることが確定です!これはすごいことなんですよね!』

 

『はい。通常だと『魔術師(ダンテ)』であれば今手にしてる『純星煌式武装(オーガルクス)』と星辰力が干渉して発動させることすら出来ないはずですが名護選手は特別らしいッスねー。』

 

『《剣技》と《魔法》というまさに『戦士王』という星導館生徒会長の名付けた二つ名がここまで合うとは付けた本人もビックリでしょう!まさかの事実が判明しこの試合から目を話すことが出来なくなりましたーっ!!』

 

俺は苦笑いを浮かべて綺凛ちゃんは適度な距離をアイコンタクトで相談し次の攻撃に備えて構えている。

 

「ちっ…そのコンビネーション…厄介だぜ…それにあんた『魔術師(ダンテ)』だったのか?」

 

《壊劫の魔剣》を構えながら答えた。

 

「ああ。別段隠すような事でもなかったが…聞かれなかったからな。それよりもよくぞ当方と綺凛殿の攻撃を凌いだものだ…そろそろ”一人”では限界が近いであろうっ!」

 

そう言いきってステージを駆け抜けイレーネの元へ俺と綺凛ちゃんは付いてくるように強襲する。

 

「いいや…一人じゃねぇ…こいつはあたしとプリシラ二人の力だっ!!」

 

そう言うと《覇潰の血鎌》がカタカタと奮え、紫色の光が地面を伝う。

まるで嘲笑うかのように。

恐らく範囲指定の重力制御能力だろうが動いてしまえば問題はない。

回避し突っ込むようにイレーネの元へ向かう。

 

「ちっ!だがその程度であたし達と《覇潰の血鎌》を攻略したと思うなっ!」

 

そう言って《覇潰の血鎌》を奮うと先程の重力制御の比では無いほどの範囲を指定し発動していた。

紫色の光が地面を走る。

 

「『こいつはすげぇな…』『感心してる場合か主!』……っ!」

 

「お義兄さんっ!…くぅ…!」

 

「任されたっ!」

 

その範囲内に入ってしまった俺は体に掛かる重力に備えて《魔法》を発動した。

体に掛かるのは加重ではなく浮力、浮かせられた事に気がつき直ぐ様《重力制御》を行い地面に着陸し走り出す。

一方で綺凛ちゃんには《加重》が掛けられており同時展開した《重力制御》を発動し無力化した。

その光景に流石のイレーネも度肝を抜かれたようだ。

 

「なんだとっ!?」

 

「ぬんっ!」

 

《壊劫の魔剣》の一閃がウルサイスに叩きつけられるが辛うじて《覇潰の血鎌》で防ぐが明らかに先程までの脅力は無くなっており圧されていた。

 

「やぁっ!」

 

追撃と言わんばかりに綺凛ちゃんの連撃がイレーネを襲い防御を崩した。

 

「終わりだ。」

 

「ぐがっ!!」

 

《壊劫の魔剣》で横薙で払うと耐えきれず後ろへ大きく吹き飛ばされステージの壁へと叩きつけられた。

間髪入れずに《フラッシュエッジ》を展開し投擲し直撃を狙うのだが。

 

「ー重獄葦《オレアガ・ペサード》」

 

砂煙舞うステージの一角に紫色の壁…いや牢獄といった方が正しいだろうか?強固な防壁が展開されており《フラッシュエッジ》はその牢獄を破壊できず粉々に砕け散った。

 

「ーほう。当方の攻撃を敢えて受けてプリシラ殿が居る後方へ下がり補給するつもりだったのか。」

 

牢獄…安全地帯に居るウルサイスに問いかけると薄く笑い行きも絶え絶えだった。

 

「…はんっ!バカ言ってんじゃねーよこっちは燃料切れだっつーの…動けないなら相手から運んで貰うしかない、って考えたら合理的だろ?マジで死にかけたが…」

 

そう言って見せつけるようにプリシラさんの白い首筋に牙を突き立て吸血している。

完全に補給完了だろうか?先程の輝きを失っていた《覇潰の血鎌》は輝きを取り戻していた。

 

「…仕切り直しか。」

 

《壊劫の魔剣》を何時ものような構えをして呟くと近くに来ていた綺凛ちゃん。

 

「お義兄さん。」

 

「ああ。”次”でそろそろ決める。」

 

「分かりました。」

 

そう短く告げると綺凛ちゃんも汲み取ったのか《千羽切》を構える。

そろそろ終わりにすることにしよう。

 

「よぉ…待たせたな。それじゃあ第二ラウンドと行こうか。」

 

口を拭い《覇王の血鎌》を構えるウルサイス。その背後には血を抜かれてぐったりと倒れているプリシラさんの姿が視界に入る。

此方に歩み出すウルサイスに手を伸ばしている。

 

「お姉…ちゃん…だめ…。」

 

いくら膨大な回復量を持つ再生能力者(リジェネレイティブ)と言えどあの疲労度は異常だ。

供給よりも消費のほうが上回っているのだろう。このままでは二人の命が危険に晒される。

《グラム》が話しかける。

 

『不味いぞ主。このままではイレーネ嬢の意識が《覇潰の血鎌》に乗っ取られるぞ。それにプリシラ嬢の体力も危険だ』

 

(俺たちが追い込み過ぎたか?…ならこの一撃で《覇潰の血鎌》を破壊すんぞ。)

 

『応っ!』

 

「綺凛殿…頼む。」

 

「分かりました…存分に。」

 

俺のやる気に反応したか《壊劫の魔剣》に迸る紫電の飛び散りが激しくなった。

構え《縮地》で一気に懐に飛び込む。

 

「『百葬重列(シエン・グエスティア)』!!」

 

ウルサイスが《覇潰の血鎌》を奮うと紫色の波動が走り…が此方の方が速いため意味をなさず綺凛ちゃんだけが足止めを喰らうことになる。

 

「……!」

 

ウルサイスの攻撃を回避し正確無比な質量のある突き、逆袈裟、袈裟懸け、横薙、円月を作るように上段幹竹割りの連続五連撃の未完成の『連鶴』がウルサイスを襲い掛かる。

ウルサイスは咄嗟に防御するが全てを防御し切れずに斬撃を喰らい大きく態勢を崩す。

 

「がぁっ!?…くっなめんぁ!…っ!!?がぁぁぁっぁぁぁぁ!!!?? 」

 

驚きと苦痛に見開かれるその赤く《覇潰の血鎌》に意識が飲まれた瞳。

ひどく虚ろだがその口から放たれた咆哮は抵抗の証なのか。

しかし機械判定で意識消失(コモンアンシャスネス)の判定を貰っていないと言うことはまだ意識がある、ということだ。

 

暴走した《覇潰の血鎌》がステージ全体に重力波を展開し体に尋常ならざる重さが掛かり地面が砕け散る。

 

「くっ…!」

 

「くぅっ…!!」

 

しかしこの程度の重力は何ともない。

《詠唱破棄》による《重力制御》を発動し平常時に戻し振り下ろされる大鎌の一撃を弾き飛ばす。

 

「そこだっ…!!」

 

タイミングが見えた俺は返す刃に紫電を迸らせ加重系統で収束させて狙いを定める。

ほんの一瞬の隙だが狙いは完璧だった。

利き足を踏ん張りアンカーのような働きをするとステージに描かれた《双剣》の校章が踏み砕かれる。

俺はチャージが完了した《壊劫の魔剣》に纏わせた紫電をアンダスローの要領、ゼロ距離で撃ち出した。

 

「『影技・遠雷遥』…っ!」

 

ウルサイスの持っていた《覇潰の血鎌》の本体…即ちウルム=マナダイトの部分を撃ち貫く。

 

「~~~~~~~~~!!!」

 

本体部分に激突した加速された黄金色の弾丸がその瞬間硝子が擦り合うような不快な音が響き渡った。

これが純星煌式武装(オーガルクス)の断末魔だと誰が気がつくことが出来よう?

凄まじい威力にステージ上では煙が舞い上がる。

”仕込み”をするには十分だ。

 

『主。完全に《覇潰の血鎌》は消滅した。煙が出ている今なら問題ないぞ。』

 

(ああ。)

 

そうして俺はジャケットの裏側に隠していた《CAD》を取りだし『物質構成(マテリアライザー)』を使用し”少し細工を行い”破壊前の発動体の状態に戻した。

 

悲鳴と煙が途切れると同時に万応素で形成された紫の刃は消滅し砕かれた地面には”完全に砕け散った純星煌式武装(オーガルクス)…《覇潰の血鎌》だったものが転がっていた。

 

一度は破壊されたのでそのお陰でウルサイスは意識を失い戦闘不能。

残っていたプリシラさんも緊張の糸が切れたのか意識を失った。

 

その瞬間に機械音声が決着を告げた。

 

「イレーネ・ウルサイス&プリシラ・ウルサイス、意識消失(コモンアンシャスネス)

 

「勝者!名護蜂也&刀藤綺凛ペア!!」

 

大歓声がステージを包み込みボルテージは最大に達した。

綺凛ちゃんが笑みを浮かべて此方に歩みを見せた。

何とかプリシラさんのお願いを聞き届けることが出来たと大きく息を吐いた。

…とりあえず試合が終わったしこれから医療院に担ぎ込まれるであろう姉妹に見舞いでも行くかと、そう思った。

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