俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。 作:萩月輝夜
一夜明けて。
「う、うぅん…。」
「(おかしい…何故クローディアが俺の横で尚且つ俺の膝を枕にしているんだ…。)」
一夜明け…というよりも一晩中クローディアが楽しそうに話を聞いてくるものだから当然ながら睡眠時間は削られた。
元の世界の事を話していたのでまともな睡眠をお互いに取れていない。いつの間にか寝てしまっていたらしい。
俺は自分で魔法を使用し睡眠の体感時間が長く感じる魔法を使っているので問題ない。
クローディアの部屋のソファーを借りて睡眠を取っていたのだが自分のベットで睡眠を取っていたクローディアがいつの間にか俺の隣に座り俺の膝を枕にしてスヤスヤ、と眠っていた。
その寝顔は非常に健やかであり悪夢は見ないようになっていたので良かったとは思うが…俺は無意識に膝に乗せているクローディアの頭を動かすことが出来ないので俺はなすがままにされていた。
(動けねぇ…)
俺の困惑も関係ないと言わんばかりに膝上の彼女は嬉しそうな笑みを浮かべ眠ったままだった。(その後彼女が起きた後少し顔を赤くして恥ずかしがっていた。…それならそんなことしないで欲しいんだが…)
眠気もバッチリ?取った俺はクローディアの案内で星導館学園高等部の生徒会室へ移動していた。
当然俺の今の服装は学外のものなので光学迷彩系の魔法を使って移動してきた。
「……それでは今日から蜂也には副会長になって貰います。」
部屋に入ると清掃の行き届いたおおよそ学生に宛がわれるには不相応な調度品が置かれており何処かの企業の社長室かと思った。
…っておいおい。
「ちょっと待て。体験入学って話じゃなかったのかよ。」
「そのつもりで蜂也にはいて貰うつもりだったのですが…蜂也には私の御付きの役職…副生徒会長として隣にいてくれた方がちょっかい掛けられずに済みますし。」
「《星武祭》に参加するんなら目立つも目立たないも無いだろ…。まぁ、変に他の生徒達に勘繰られなくて済む、か…?」
「そう言うことになりますね…と言うわけで蜂也。これを。」
そう言ってクローディアは座席から立ち上がり棚の上に置かれていた丁寧に畳まれ新品の衣服を俺に手渡してきた。
「これは?」
「星導館学園の指定制服です。どうぞ。」
「おお、サンキュ。…あのさ。」
「はい?なんですか?」
クローディアは手に持ったビニールを持つ俺を見て首をかしげている。
「着替えたいんだけど…部屋から出てくれない?」
「私は気にしませんけど?」
「俺が気にするから出てくんない?」
「私は気にしませんよ?」
「お前は少しは気にしろ」
「あんッ♪」
そう言ってクローディアは押し出し会長室から閉め出す。
さて…着替えるとするか。
◆ ◆ ◆
「…クローディア。着替え終わったからもう大丈夫だぞ。」
着替えが終わり部屋の外にいるクローディアを呼ぶと「はい」と返事が返ってきた次の瞬間には部屋のドアが開いており制服に着替え終わった俺の制服姿を見て言葉を掛けた。
「非常に良くお似合いですよ。蜂也。サイズもぴったりですね。」
「そうか?なんかコスプレしてるみたいでこそばゆいんだけど…。」
「着なれているような感じがしますが…。」
「そうか?偶々だろ。」
白を基調とした上着でデザインは普通の公立高校じゃ見かけないどっちかと言えばヒロイックな部類のいわばライトノベルの主人公陣営が着用するデザインだった。
下は普通のスラックス…ちょいとタイト目に作られているのだろうか、足に纏わりつくような感じだが不快感はない。
が、少し息苦しいので第二ボタンまで外しブレザーの正面を全て開ける…うん、中学時代の格好みたいになったが良いか。
しかし…中のワイシャツが黒なのね…。今通っている学校の制服がカッチリしすぎているからか。
一先ず着替えを終えて肩を回しているとクローディアは此方を見て嬉しそうにしている。
そんなに入学者が増えるのがいいのか…生徒会長ってのも大変だな。
「あっ、蜂也。これを左胸に付けてください。」
俺の姿を見て嬉しそうな表情を浮かべていたが次の瞬間には思い出したかのように俺に近づきクローディアが着用しているブレザーのポケットから板状の六角形のナニかを取り出した。
「なんだこれ?」
「アスタリスクにいる生徒はこれを付けるんです。」
「ああ、決闘の受諾とかもこれで行うんだっけか…。」
手渡された板状の物体は星導館学園が記された六角形の校章であった。
決闘とはなんとも物騒だな、と思ったが此処では《冒頭の十二人》なるために必要ないわば儀式のようなモノらしい。
決闘と聞けば血で血を争う戦い…を想像するかも知れないがアスタリスクでは戦いはあくまで『エンターテイメント』であるため《
「付けて差し上げますね、蜂也。」
「いや、自分でつけるからいい。渡してくれよ。」
「付けて差し上げますね、蜂也。」
「いや、だから。俺が自分で…」
「付けて差し上げますね、蜂也。」
手に持った校章をクローディアが俺が自分で付けるというとまるで壊れたラジオのように同じことを繰り返し若干の恐怖を覚えた。何処のレクイエムだ。
だって笑顔のまま同じことを繰り返してるんだぞ?怖いに決まってる。
一瞬の脳裏に姉さん(ヤンデレの姿)が思い浮かびブルッと震えそうになった。
こういう時は下手に抵抗せず受け入れる方が無駄な被害を受けずに済むもんだ。
「付けて差し上げ…」
「分かった、もう分かったから…お願いします。」
「失礼しますね。あ、座ってください蜂也。」
「ちょ!お前…何してんだよ。」
観念してクローディアから校章を付けてもらうことにしたのだが、その付け方に問題があった。
普通に正面に立ち、腕を伸ばして取り付ければ良いだけなのにクローディアは座っている俺の眼前に立ち膝の上に股がるようにして校章を着けてきた。
「うーん…着けづらいですね…。」
クローディアが呼吸をする度に俺の眼前に広がる二つの果実が揺れていて非常に目のやり場に困っていた。
「お前…わざとやってるだろ。」
「ふふっ…どうしました?」
「いいから早く着けてくれ。」
「むぅ…。」
俺の反応が面白くなかったのか少しむくれたが直ぐ様いつもの表情に戻り校章を取り付け終わった。
いやこんなに早くつけられるならさっきの手間取り無駄でしたよね?
「はい、これで大丈夫ですよ。」
「釈然としねぇけど…ありがとな。」
俺に左胸には星導館学園の校章である不撓の象徴たる赤い蓮の花「赤蓮」がそこにはあった。
「それでは蜂也、向かいましょうか?」
「向かうって何処にだ?」
「あなたが配属される教室にですよ。」
「はぁ?」
◆ ◆ ◆
「あー、と言うわけで。突如今日からこの星導館学園に転校?してきた名護蜂也だ。お前ら適当に仲良くしろよ?」
なんともまぁ、教師にあるまじきなんとも雑な紹介だと思った。
しかし、突如としてPD(パーソナルデータ)がポッと現れ、この星導館学園への転入が決まったとなれば教師陣は怪しむだろうが俺が作り出したPDは疑い様の無い内容なので首を傾げただろう。
クローディアが特待生で捩じ込みあの短い時間で上手くやったのだろう。その手腕は流石と言いようがない。
教卓の前に立つと座席の方からヒソヒソと…特に女子生徒の声が聞こえてきた。
悪意があるのなら直ぐにでも感じ取れるのが俺の特徴なのだが、それが一切感じられない。
どちらかと言えば好奇の視線に晒されているのが俺には理解ができなかった。
教室を見回すとクローディアの言っていた事は確かだな、と納得した。
男女共に整った顔立ちで顔面偏差値が60は越えているだろうなと言うことは間違いなく、これは映像映えしそうだなと納得した。
特に右から二列目後ろから三席目の現実ではあり得なさそうなストロベリーブロンドと言うのだろうか?桃色が強い金髪が特徴的で周りと壁を作っていそうな美少女と眠りこけている青み掛かった黒髪セミロングの美少女が目に入ったが多分、と言うか確実に話すことはないだろうとすく様に意識を全体に向けた。
隣に立つ教師が持っているブツがおおよそヤンキー漫画でしか見たことがない年季の入った釘バットを一瞥して気になったが「早くしろ」と視線で促してきたので自己紹介する。
「名護蜂也です。よろしく?」
「なんで疑問系なんだよお前…。」
あまりにも素っ気ない自己紹介にクラスメイトが転けそうになったが、期待に答えてやる義理はないし仲良くする気もない。
そんな俺を見るクラスメイトの視線は様々だった。
興味津々なもの、無関心、探るようなもの、警戒しているもの。
悪意の視線がないだけまだましだと思うのは俺が毒されているからだろうか。
教師に言われ適当な空いている席に着席する。
奇しくもそこはラノベ主人公が座る窓際最後尾の席だった。
此処は「やれやれ」と言うべきなんだろうか…。
◆ ◆ ◆
翌日、女子寮付近の外の自販機にて販売されていたマッ缶を煽っているとクローディアから端末へ呼び出しが入った。
「早朝にごめんなさい、蜂也。貴方が使用する《純星煌式武装》の適合率試験を行いたいと思います。それでなんですが生徒会室に来ていただけませんか?」
「分かった。直ぐに行く。」
その話を聞いて俺は《純星煌式武装》の貸与は《冒頭の十二人》にならなければ無理なのでは?と思ったが此処で一人考えるだけ無駄であることを悟った俺は生徒会室へと向かった。
生徒会室へ到着すると笑顔でクローディアが迎え入れてくれた。
その笑顔は無理をして作っているのではなく心からの笑顔だった。
何故その表情を俺に向けているのか分からなかったが。
「クローディア、一つ聞きたいんだが…」
「はい?なんでしょうか。」
「なんで俺が《純星煌式武装》の適合率試験を俺が受けられるんだ?一般生徒だろ。」
「ああ、その事ですか…適合率試験に関しては一般の生徒でも受けることができますよ?使えるかは別問題ですけれど。」
どうやら俺の文章の読み取りが間違っていたようで《冒頭の十二人》や《在名祭祀書》でなければ触れることすら許されていなかったわけではないようだ。
「なるほどな…しかし俺に適合してくれる装備があるかね…。《純星煌式武装》ってのは意識みたいなもんがあるんだろ?」
無意識に卑屈になる俺を見てクローディアはきっぱりと否定した。
「大丈夫ですよ。蜂也に使いこなせない武装はありません。」
お前を信じている、と言わんばかりの期待の目が俺に向けられているのは非常に心苦しいものがあるが…まぁ、やるだけやってみるか。
「それでは装備局へ参りましょうか?」
「ああ、頼むよ。」
こうして俺はクローディアに連れられて装備局フロアへと進む。
近代的な内装に清掃が行き届いた清潔な通路を通りすぎるとエレベーターへ到着した。
クローディアに案内されてさらに地中へと潜っていくとそこは地下なのにやたらと広いトレーニングルームのような空間だった。
片方の壁には六角形があしらわれた模様がびっしりと敷き詰められており反対側はガラスになっており白衣を来た男女が世話しなく動き回っていた。
見た目から見ても学生ではないようなので装備局の人員なのだろう。
早朝から申し訳無い気分にさせられた。
「それで?どういう手順で純星煌式武装の貸し出しされるんだ?」
「手順としては簡単ですよ?希望する純星煌式武装を選んでいただき適合率試験を受けて適合率八十パーセントを越えればそれが貸与されます。本当であれば序列入りしているか特待生入学している生徒でないと使用の権利が降りません。」
「八十パーセント…中々な高適合でないと扱えない。それに特待生か序列入り、か。」
「はい。蜂也は一応二枠あるうちの特待生の一枠を使って転入してることにしてますので適合率試験に合格できれば使用出来る土壌は整っています。」
「そうかい…。」
「褒めても良いんですよ?」
「ありがとな…。」
俺は目の前にいるこの美少女の手際のよさに再確認すると同時に感服するしかなかった。
一連の流れを聞かされて星導館学園に現存する《純星煌式武装》のリスト一覧を見せてもらっていた。
話によると此処にある数は二十二。
銃に剣、斧に…なんだこれ盾か?とカタログを見ているとクローディアからこの数はアスタリスクの中でもトップクラスの総数らしい、のだが…。
「これだけ数が揃っているのに当校は近年のシーズンで最下位が続いているんですよね」
「こんだけあるのにか?」
「ええ…嘆かわしいことですが」
「…お、おう…」
若干クローディアの黒い部分が見えた気がしたが気のせいと言うことにしておこう。
リストの一覧を見るとどうやら刀や剣と言った近接武装が多いようでその手の武装に限っては俺はずぶの素人になるので拳銃型でも使わせてもらおうかと次のカタログページへ飛ぼうとした瞬間に目についたモノがあった。
「ん?」
カタログページの最後のページ、その最後の行が空白になっていたのだが二度見するとその純星煌式武装の名前を示していた。
『両手剣型
禍々しいその赤黒く表記された純星煌式武装がその存在感を示しており俺は無性に惹かれた。
「なぁ、クローディア。こいつは?」
「どうしました蜂也…ああ。
選択できない?【封印処理】とクローディアは入っているが俺の目の前にあるカタログページには【解除中】と出ている。どう言うことだ?
「…どうしてだ?」
”封印”というその理由を聞いたら壮絶だった。
「…
「なにその…
「しかし可笑しいですね…本来なら《壊劫の魔剣》がこの一覧に出ないようにされているのですが…は、蜂也何を…!?」
「いや、こいつにさせてくれ。」
惹かれるものを感じた…いや正確には”こいつに呼ばれた”気がした。『俺の手を取れ』、と。
「ッ!?どうして封印処理中の『
俺がこれ以外を選択する気がないのを理解したのか呆れたような、心配した表情で承認する。
そもそもこいつは適合しないものが触れても起動すらしないらしい。
「分かった。」
俺が
模様に見えた六角形の模様は武器を収容するコンテナの役割を果たしていたようだった。
見た感じは通常の煌式武装と何ら変わらないモノだが異様な威圧感をこのシンプルな見た目から感じた。
中央のコアは緑色ではなく黄色…と言うよりも金色に近い色だった。
俺は臆することなくその発動体を握ると柄が形成されていく。
先ほどディスプレイで見たものよりも大型になっておりサイオン…もとい万応素を込めると刀身が形成される。
しかし、その刀身はやはり画像で見たものとは違い小剣サイズではなく両手剣…いや大剣サイズであった。
『…計測準備整いました。どうぞ始めてください。』
スピーカーから困惑した職員の声が聞こえたので一旦無視して柄を握り目を閉じる。
力を込めたその瞬間。
全身電気が迸るように激痛が駆け巡った。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!!!!」
絶叫が木霊する。
全部に濁点がつくような悲鳴を挙げて手に持った純星煌式武装を地面に突き刺し
思わず《物質構成》が発動するレベルの痛みが全身を駆け抜ける。
例えるのならば全身の骨をハンマーで砕かれそして鋭い刃物で身体中ズタズタに切り裂かれ傷口に塩水をぶっかけられたような、そんな感じだ。
「!?蜂也!?大丈夫ですか!?…っ蜂也!今すぐ手を放してください!!」
突如絶叫を上げて
『現在適合率マイナス値です!このままでは危険です!』
スピーカーの声にクローディアは焦りを見せる。
俺は握る柄から…と言うよりも
正直気絶してしまいそうな痛みに無理矢理に《物質構成》を多用し耐え抜く。もう少しだ。
「蜂也…!?私の声が聞こえていないんですか?」
「ッッッッ~~!!!ちょ、ちょっと、黙って、てくれ…ッ!!」
こいつにはクローディアが教えてくれた『意思のようなものが存在する』という話しは本当だったと冷静に分析している自分自身に笑いそうになったがこのままでは埒が空かないので
「おおおおおおおおおおッ、」
「蜂也!?一体何を…!?」
次の瞬間。
クローディアは驚いただろう。
何故なら
「らぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
「は、蜂也…?」
空気が弾ける音、同時に金属と金属が擦りぶつかり合う音がハウリングする。
それこそクローディアが肩を抱いて震えていた。
そして今まで感じたことなど無いであろう濃密な殺気が部屋全体を包み込む。
空気が凍った。
物理的な温度ではなく、背筋を凍らせる心情的なプレッシャーが襲いかかった。
『……!!!』
「言うこと聞け」
メガネ越しに《瞳》を黄金色に輝かせながら逆らえばお前をこのまま握り砕くぞ、と言わんばかりの殺気をぶつけ
チラリと手に持った純星煌式武装を見やる。
そこには純星煌式武装の発生器から生成された刀身はかなり大型であり先ほどまで一般的な大剣であったが今は所々に刺々しい突起が規則正しく並び色も無色であったが黄金色のまるで稲妻のような色をした美しい大剣が俺の手に握られていた。
パチリ、と紫電が迸る
「こいつが
突如のことで空間が静まり返っていたが俺が起動に成功させたことでクローディア始めとした人員達がハッとして動き始めた。
「大丈夫なんですか蜂也!?」
飛びかからんとしようとしているクローディアを空いている手で制した。
「おう…めっちゃ疲れたけどなんとか起動させたぜ。」
そういって持ち上げる。驚くことに見た目以上に軽い。程よい重量が手に収まっている。
先ほどまでの様子が嘘のように暴れる様子も見えなかった。どうやら無事に手懐けることが出来たようだ。
「…………。」
その様子を見てクローディアは俺の目と武装を見て何故か感極まっている表情を浮かべている。
「…ふふっ、本当に貴方は規格外ですね。でも…お見事です。適合率は?」
が、すぐに表情が切り替わる。
こちらを見たまま装備局の人員へ問いかけていた。
恐らく自分達に問いかけられているものでないと思ったのだろう、一瞬の空白が出来た後にハッとして報告をしてくれた。
『ひゃ、百パーセント、完全適合です…あり得ない…。』
「大変結構。」
クローディアは満足そうに頷いた。
「蜂也、その武装の使用権はあなたに譲渡されました。」
「ああ。この跳ねっ返りをどうにか使いこなさないとな…。」
『……!…………。』
「ん…?」
「…どうかされましたか…?」
そう言って《
大丈夫だと言ったのだがクローディアが俺を心配して治療をしてくれたのだが適合係数がマイナス値に移行してからの完全適合は史上初だったとあとからクローディアから聞かされて俺は「うげぇ…」となったが何故か彼女は誇らしげだった。
あとやたらと俺に密着して治療をしていたので「それ包帯巻きにくくねぇ?」と突っ込むと不服そうにしていたのは何故だったのだ。
「蜂也、お話したいことがありますのでお時間よろしいですか?」
「別にいいけど…ここじゃダメなのか?」
俺がそう告げるとクローディアは瑞々しい唇に人差し指を立てて「シーっと」のポーズ取っていた。
「ここは《アスタリスク》ですよ?蜂也。日本のことわざで『壁に耳あり障子に目あり』です。」
◆ ◆ ◆
《アスタリスク》にて生活する生徒は所属する学校において寮が設けられておりそこに住むのだが今のところ俺には部屋がない。
寮生活ということもあり一部屋二名で構成されるのだがその相方に追い出された、という意味ではなくそもそもにおいて部屋がないのだ。
じゃあ一体何処に住んでいるのか?となると…。
「うぉッ!?……クローディア何してんだ…」
部屋に足を踏み入れると背後から抱きつかれた。背中に柔らかいものがぶち当たって困る。
「本当に………心配したんですからね?」
若干の涙声のクローディアに対して俺は困惑を示すしかなかった。
「…悪かったよ。まさかあんなことになるなんて思わなかったんだ」
あって未だ1日しか経過していないというのに此処まで親身にしてくるのは不気味だった…のだがこいつのこの行動に”裏”は無いようなのが困った。
なので俺は素直に謝罪するしかない。
暫くしてクローディアは部屋の奥へ消え一人になった俺は宛がわれたベッドに倒れ込み発動体をホルダーから抜いて上に掲げる。
「”意思”があるねぇ…あの時、お前は俺に何を告げようとしていた?」
「?、どうしました蜂也。」
そう発動体に問いかけているとクローディアが部屋の奥から出てきた、出てきたのだが…
「いや、男がいるのに…その格好で寛ぐなよ。」
「ふふっ、自分の部屋なのですから寛ぐのは当然ですよ?」
会話しているクローディアは、お風呂あがりだったのだろう湯気を待とって身に付けているものといえば真っ白なバスローブだけだった。
…お前は平成初期のトレンディードラマの女優か、と突っ込みたくなったが似合いすぎていてしかも、軽く巻かれているので胸元が飛び出してしまいそうになり肌を伝う水滴が瑞々しい肌で弾いていた。
バスローブのスリットから上気した肌が彼女の色気を増していた。
「蜂也、こちらへ。」
彼女に誘導されるがままにベットに腰掛ける。
「ああ…ってなんで俺の横に座るんだよ。」
「別によいではありませんか?減るものでもありませんし。」
減るんだよなぁ…青少年的ななにかがな。何て事を言うとからかわれることが確定してしまうので口をつぐんだ。
「そうかい…それで?なんで呼び出したんだ?部屋割りがきまったとか?」
そう、俺は現在この学園の生徒会長であるクローディアの部屋の一室を借りている状態なのだ。
その事を告げるとクローディアは不思議そうな表情を浮かべていた。
それだとクローディアの部屋に行くときに自警団にバレるんじゃね?と思うだろうがそれは認識阻害の魔法を掛けて入退室しているので今のところは問題はないのだが…。
「部屋割りはないですよ?蜂也は私の部屋で一緒に過ごすのは不満ですか?」
「年頃の男女が一緒の部屋にいちゃいかんだろ…。」
「私は構いませんのに…っとそうではありませんでした。蜂也のお時間をいただいたのは近々特待生の枠を使った転入生が我が学園へ入学してくるのです。」
「そういう話だったのな…んで?どんな奴よ?」
「こちらの少年ですわ。」
そう言って端末に今度転入してくる少年のPDが表示されていた。
至って普通…まぁ何というか飄々としている少年、歳も俺と同じように見えた。
経歴も至って普通で何処かの武術大会で優勝した、とか飛び抜けて頭がいい。という特徴的なものは無く特筆するものとして挙げるのであれば『天霧辰明流』と呼ばれる古流剣術と膨大な星辰力が目を引くぐらいだろうか。
こんな一見するとただの少年を貴重な特待生枠で編入させるとは思えないのでなにか考えがあって行ったのだがよくわからなかった。
期待するような表情でこちらをみやるが俺にはさっぱりだったので「降参のポーズ」を取ると不満げな表情を浮かべ思い出したかのように聞いてきた。
「むぅ…そういえばですが蜂也には『望み』はあるのですか?私もこの学園の生徒同様に『望み』があって此処にいるのです。どうですか?」
「『望み』ねぇ…。」
俺が今一番欲しいモノ…今のところの欲しいものはないが取り合えず向こうの世界には戻りたいが向こうへ戻るサイオンが貯まっていない…というよりもこちらの《万応素》を変換しているのだが質が違うのかなかなか貯まってくれていない。
現在の魔法も《万応素》を変換して使用しているのだがそちらは問題なく使えているのだ。
これは一体どうしたことかと頭を抱えそうになったが考えていても仕方がない。
実際に貯まっているしな。
あ、そういや向こうの世界で開発途中の人の形…というよりも柔軟さを求めようとして絶賛挫折中の可変型CADを完成させたいとは思うが。
あと動力源な。そのくらいか?
『望み』と聞いたクローディアは蜂也が神妙な顔をしているのを興味深そうに見ていたのだがハッとした。
彼は事故があってこの世界に飛ばされたことを思い出し元の世界に帰りたいのではと感じ取ってしまいクローディアは胸が締め付けられた。
彼に自分の元を去って欲しくないと無意識に想ってしまったクローディアは蜂也に質問した。
「…蜂也は元の世界に帰りたいですか?」
「あ?どうした突然…まぁ、そりゃ帰りたいけど二、三日で貯まって帰れるなら苦労はしねぇよ。今んところはな」
蜂也がそう告げると安心したような表情を見せた。
「そうですか」
「望みと言えば『ウルム=マナダイト』が欲しいくらいか、それとアルルカントのパペットの資料ぐらいか。」
「何故その二つを…?」
向こうの世界で研究していることを伝えるとクローディアは「後者は何とかなるかもしれません」と発言した。
「それと蜂也には《
その事をクローディアが告げると本当に嫌そうな顔をしていた。
「いや、序列外でも《星武祭》には出れるんだろ?変に目立つ必要はないだろ。」
「私のお付きということになってるんですからそんな人物が序列外というのは外聞がよろしくないですし、もし仮に無銘のまま勝ち上がっていくと逆に目立ちますよ?そうですね、序列三位ぐらいにはなってください。」
さらっと恐ろしいことを言っているクローディアに頭痛を覚えたが、短い期間で分かったこの少女は人に無理難題を押し付けるのが好きらしい。
流石に出来ない人間に無理難題を押し付ける趣味はないようだが。
ふと、制服の腰につけている煌式武装のホルスターに入っている《
「無茶いうなよ。ぶっつけ本番か…やるしかないわな。」
後日、天霧綾斗となる少年が入学してくるらしいので俺は副会長としてクローディアの仕事を手伝い適当な奴に勝負を吹っ掛けて《
そんなことを思いつつ夜も更けてきていたので、又もクローディアの部屋のソファーをベットにして寝に入ろうとすると「私のベットで一緒に寝ますか?」と聞いてきたので「しねぇよ。」と一蹴して直ぐ様寝には入ると不満げな視線が向けられたが俺は無視することにして眠りについた。
◆ ◆ ◆
「フラグ回収早すぎだろ…」
そんな直ぐに見つかるわけないだろ…と思ったが直ぐに見つかった。
翌日、俺はクローディアの命令でたまたま見つけた病的なまでに細い男、星導館学園序列三位の《
どうやらこの男、クローディアが序列外の人間を自分のお付きとして置いているのが気になったらしく向こうから勝負を吹っ掛けてきたがどう見ても○物依存者のような痩せ方と瞳を輝かせ俺に勝負を仕掛けてきたのだ。
持っている純星煌式武装からは危険な雰囲気を漂わせている。
勝負する流れになりオニールは「彼女に相応しい舞台で勝負をしよう」と言い出し、いつのまにかクローディアが手配した毎月行われる序列戦で使用されるアリーナで勝負をすることになった。
どうしてこうなった…。