俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。 作:萩月輝夜
フローラを使い俺達の準決勝進出を阻止しようとした人物の思惑を砕いた俺達は無事に監禁場所からの脱出に成功し準決勝へ向かうステージへ向かうべく控え室から出る。
「んじゃまぁ…そろそろ行くとしますか…綺凛ちゃん。」
「…はい、お義兄さん。」
俺が声を掛けると綺凛ちゃんが反応し手元に置いていた《千羽切》を手に持ち立ち上がった。
「お二人とも…頑張ってください。」
クローディアに声を掛けられ見送られる。
他の三人が不安な表情を浮かべているのにこいつだけは自信満々な表情を浮かべているのが印象的だった。
まぁ、負ける気はさらさら無いが。
「……」
薄暗い通路を二人並んで進むが会話がない。…まぁ当然と言えば当然か。
ふと表情が固くなっている綺凛ちゃんへ声を掛けた。
既にクローディア達とのやり取りを終えてステージへ向かっている。
「緊張してる?」
無言からの突然の声掛けに驚いたようだ。
声が少し上ずっている。
「え、あ、はい…その…」
「?」
頭に疑問符を浮かべていると突然頭を下げられてしまった。
「わたしがここまでこれたのも自分の意思で父を…助け出せる道を探すことが出来たのはこれも全部お義兄さんのお陰です。」
頭を下げる綺凛ちゃんの肩に手を置いて頭を上げさせる。
「いいや。ここまで来たのは選び戦ってきたから歩めた順路だよ。俺はその道案内をしたに過ぎないし。」
「でもその道はお兄さんが選んでくれたものであって…。」
「あのな…その手段を取ったのは綺凛ちゃんだ。…それにまだ準決勝の前だからどっちが勝つか何てのはまだ分からない。仮に感謝の言葉をくれるってのなら勝ってからにしてくれるか?」
「…はいっ。お義兄さん。」
そう告げる綺凛ちゃんの表情は和らいでいた。
「緊張は解れたみたいだな…行くとしますか。」
「あ、ま、待ってください!」
そうして会話もそこそこに控え室から出てステージへ続く道を歩く。
ステージへ続く通路を綺凛ちゃんが追いかけるように俺の後に続く。
入場口が見えてきたところで二つの人影が視界に入る。
逆光になっているため顔はよく見えなかったがその輪郭から想像するに二人の女性だろう。
それは俺がよく知る人物達だったからだ。
「やぁやぁ《戦士王》ひっさしびり~」
一人は白衣にポニーテールに胸元が自由になっているエルネスタ・キューネが明るく話しかけてくる。
隣にいるカミラ・パレードが此方にチラリとエルネスタに目線を向けていた。
まるで”手短にしろ”と言わんばかりだ。
しかし、時間もないのも事実ではある。
「久々だな博士。調子はどうだ?」
「いやいやー好調ですよー?うん、随分と程度の低いリーグに入れられて腕の立つ相手がいなくて未だにアルディが決めた”一分間なにもしない”ってのを破られなくて観客達からそろそろブーイングが飛んできそうでこわいんだよねー。」
「自業自得だろ…そもそも擬形体にステージの防御機構を縮小化して組み込むのが無謀だろそれ。貫通できる奴いないんじゃないか?」
「…ほほう?やっぱり気がついていたのかい?」
その表情が一瞬不敵な笑みへと変わるのを見逃さなかった。
「まぁ俺も技術者の端くれ…アルディとリムシィはいい意味で機械っぽくないな。」
「へぇ…君は彼らをそう言う風に思ってるんだ。」
「まぁな。それに博士とは少し話してみたいことがあったからこの試合が終わったら見て欲しい開発してるものがあるんだが…。」
「え、なになに一体どんなものかなー?」
意外…というような表情を浮かべていたが特段おかしな事ではないと俺は思っている。
俺が今開発している《自立稼働兵器》、その事を告げようと思ったが長身の女性…というかカミラがこちらに近づき割って入り俺が沙々宮から預かった武装について”少し誤解していた”ということを告げられたがすぐ直後に沙々宮に告げた言葉を撤回する気はない、と好戦的なことを言われた。
流石に俺にじゃなくこの武器の持ち主に言われたことだが癪にさわるので完膚なきまでに”認めざる得ない状況”に持っていこうと今決意した。
「それはこの武器の本来の持ち主に言え…と言いたいが今俺が使ってるから俺が答えるわ。”そっちこそ首洗って待ってろ”ってな。」
踵を返すカミラが一瞬ピクリと反応を見せたが止まること無く奥の通路へと歩みを進めていた。
残ったエルネスタはいつものようにニハハ、と笑っていた。
「《戦士王》もいうねー!それじゃうちの子達をよろしく頼んだよー!君との戦闘データはきっと貴重なものだからわたしもたのしみなのさー!楽しんでね二人とも!あ、それと《戦士王》がいっていた”見せたいもの”って言うのも気になるから試合が終わったらおしえてねー!」
そう言って子供のように大きく手を振って早足で通路の奥へと消えていた。
「まるで嵐のような奴だったな…」
「はい…試合前に少し疲れちゃいました。」
苦笑いを浮かべる綺凛ちゃんに向き直り声を掛ける。
「行こう、綺凛ちゃん…絶対に勝利しようぜ。」
「はいっ!」
「あ、その前に作戦なんだけど…。」
「はい……え。そんなことも出来るです?」
俺の提案した作戦に目を丸くして驚いているがあの博士ならやりかねないので俺がウルサイス姉妹戦時に使用した”魔法”と”とある技”を作戦に組み込むことにした。
技の方は口頭で伝えただけだったが直ぐ様に使用できそうな雰囲気だったのでやはり綺凛ちゃんは出来た子だと再認した。
綺凛ちゃんが対峙する選手は獲物的にも不利になる場合があるのでそこは確実な勝利と奇襲性を持たせるために必要なことだった。
その事を踏まえ作戦内容を伝える。
「……なるほどです。わかりました。タイミングはお義兄さんにお任せして私は……相手します。」
「OK。それで行こう。」
「はいっ。」
◆ ◆ ◆
『はいはい皆様お待たせしましたーっ!シリウスドーム実況役の梁瀬ミーナと解説役のチャムさんです!。』
『どうもッス。』
『えーと言うわけで
実況と解説の子達ってミーナとチャムって名前だったんだな…なんて事を思いながらステージの定位置に付くと反対方向から同じタイミングで1機と1人が定位置に付いた。
解説は続いていた。
『「一分間手を出さない」という宣言を今日まで全ての試合でやってのけた話ッスからねー。今日の見所としては名護・刀藤選手ペアがアルディ選手の絶対防御…つまりは”最硬の盾”を破れるかがまず一つ目の焦点になるッスねー。それに今回アルディ選手達が戦うのは名護選手…彼が持つ
まぁ実際にアルディが使用する防御…光の壁がいつの間にかネットで”絶対防御”という呼び名が広まったらしい。
まぁその名に恥じず今のところの試合でアルディは傷一つ付けられていないのだ。
だからこその”絶対防御”…だが《壊劫の魔剣》は破壊の概念を持っているので俺が本気で星辰力を込めると打ち破れるだろうが…。
そんなこんなでやっぱりアルディは大声をあげた。
「ふはははは!ようやく相合みえることが出来たぞ名護蜂也!我輩はこの時を待ち望んでいたのである!」
やっぱり感情豊かだよなぁ、と感心していると話は未だ続くようだ。
「貴君等のことは常々マスターより聞かされていた。我輩達により良い経験を与えてくれる好敵手だと!それ故に我輩は期待している!」
「よく喋るな本当に…。」
アルディがまたしても喋り掛けようとしていたがアルディの頭部が少し揺れ金属がぶつかる音が聞こえたがそれは隣にいるリムシィがアルディに対して拳銃型の煌式武装で撃っていたからだ。
「…試合前だというのにお喋りが過ぎますよこの木偶の坊が。良いですか?あなたは只でさえ図体がでかく燃費の悪いのですからそのくらい自重しなさい。それが出来ないなら自爆しなさい。」
反論しようとするアルディを脅すように手に大きな銃型の煌式武装を展開しその口を閉じた。
リムシィが此方に向き直り口を開く。
「この木偶の坊の言うように私どもはマスターより貴殿方の聞かされておりましたので不本意ですがこの隣にいる木偶の坊と同じです。今までトーナメントで対戦してきた選手達のように直ぐにやられないようにお願いします。」
丁寧な口調だが何処か刺があるのはそれも愛嬌、ということにしておこう。
やはり当然ながらアルディのあの誓約が告げられた。
「聞くがよい!今回も貴君等に一分間の猶予をやろう。我輩達はその間、決して貴君等に攻撃を行うことはない。存分に仕掛けてくるがよい!」
その自信満々に言い放つその台詞は人間以上に慢心、いや自信があるのだろう。
とても人間のように見えた。
隣にいるリムシィは表情は薄いが若干広角が下がっているのが見てとれて内心では呆れているんだろうな、と感じてしまい余計に人間臭く感じた。
その宣言を受けとり俺は隣にいるパートナーへ視線を投げると了解した、と頷いた。
「了解…んじゃ手筈作戦通りに。」
「はいっ。」
俺の言葉に頷き綺凛ちゃんは《千波切》の鯉口を切り俺はホルダーから沙々宮から渡された銃型の煌式武装と《壊劫の魔剣》の発動体を取り出し起動させ星辰力に反応し万応素による刃が形成され紫電が飛び散る。
何時ものように俺が《グラム》へ憑依し入れ替わる。
そこからは何時ものような口上とパフォーマンスを行い会場を沸かす。
それから程無くして準決勝試合開始を校章が告げた。
「《
試合開始のブザーが未だ残響として残っているときにその当然対策されているであろう”絶対防御”とやらを打ち破ろうと動き出した。
その傲岸不遜な態度を崩す一撃を与える。
「……はっ!!」
構えた《壊劫の魔剣》を振り抜きステージ上で爆音と閃光が轟いた。
当然ながらAIによる自動判断による防御機能が発動するだろうがそれが仇になることを俺は知っている。
回避を選択しなければならない場面で自分で誓約を課したアルディとそれに巻き込まれたリムシィは動くことは出来ない。
腕を前で組んで微動だにしない。
「ふむ、やはり名護蜂也…貴殿とその攻撃が来ると思っておったぞ…だがお主のその技は我輩には通じぬ!」
しかし、アルディとリムシィは動かない、と宣誓していた場所から動かざるをえなかった。
何故なら直撃した場合破壊された可能性があるからだ。
俺が放った『影技・遠雷遥』を当然対策をしているだろうが前試合やバラストタンクエリアで見せた…というか後者は監視していただろうから”あえて出力を落としていた”のだから。
星辰力を少しばかり込め放たれる雷撃が一回り太さを増す。
その時だった。
「ふははは!無駄であ、」
ピシリ、と何かのひび割れる音が聞こえたものには聞こえただろう。
「っ!今すぐ避けなさいアル」
その音に反応できたリムシィが声を荒げ切る前に目の前に展開されていた絶対防御が砕け散る。
それ同時に《壊劫の魔剣》に二射目の速射《遠雷遥》をチャージし速射する。
それは絶対防御が砕かれたことへの反応か、それとも反応しなければやられるとの判断だったかはわからないがアルディはハンマー型の煌式武装を出現させると激突し甲高い金属音が響き渡る。
体格差は当然アルディの方が有るのだが奇襲を掛けた俺は敢えて涼しい顔で《壊劫の魔剣》でその攻撃を防ぎ弾く。
「むぅ…っ!」
その弾いた隙を見逃すことはなく校章を狙った一撃だったが寸でのところで回避されてしまい胸部部分を浅く切り裂く程度にとどまり後方へと下がる。
アルディが一分間の縛りを課していたがその時間は1分に満たない”三十秒”であり動いてしまったことへの唸りか俺に攻撃を防がれ一度も傷つけられなかった胴体へダメージを受けたことなのかはわからないが悔しがっているのは見てとれた。
『おっとー!?アルディ選手から攻撃を仕掛けたぁ!時間はアルディ選手が宣言した1分から半分の時間の三十秒です!未だ1分は経過しておりません!そして今まさに”絶対防御”が打ち破られた瞬間です!』
その瞬間に観客席が多いに沸き立つ。
「ふははははっ!流石である名護蜂也!やはりマスターが認めただけの男だけはあるな!よもや我輩の防御を貫通させて傷を付けるとは!」
「此方の台詞だアルディ殿…結構本気で放った筈なのだが…ふっ、次はその校章を切り裂こう。」
いつもの構えを取り踏み出すと同時にアルディも手にしたハンマーを構え駆け出す。
「来い、名護蜂也!」
互いの獲物がぶつかり合いそうになるがここには俺だけでなくそれぞれにもう1人づついる事をお互いに忘れてはいない。
「綺凛殿!」
「わたしも居ることを忘れては困ります。」
俺の背後で準備していた綺凛ちゃんは《千羽切》でアルディに切りかかるがリムシィのもつ手を変形させた大型の煌式武装の弾丸が襲いかかるが手にした武装で切り裂き俺とのすれ違いざまに空いている片手で綺凛ちゃんと《千羽切》を対象とした複数の魔法を発動し入れ替わる。
アルディの目の前には振り下ろしたハンマーをいなすように受け止め日本刀で弾く綺凛ちゃんと追撃を仕掛けようとした銃による射撃を連続展開した《フラッシュエッジ》で全て対消滅させ立つ俺の姿があった。
切っ先をアルディとリムシィに向けるように構え俺と綺凛ちゃんの声が重なる。
「「本気で」「来るがいい」「来なさい」」
◆ ◆ ◆
一発の当たれば一撃で相手をこれまでの試合で伸してきた銃撃を只の日本刀で切り裂いて土煙が舞い上がり互いの姿を消していた。
「…成る程、流石に星導館学園序列一位の事だけはありますね刀藤綺凛…ですがその地位は名護蜂也の方が相応しいのではないですか?」
序列一位にありながら手に持つ獲物は純星煌式武装ではなく只の日本刀…名護蜂也のように《魔術師》でもない目の前に辛辣な言葉を投げ掛ける。
煙が晴れ一定の距離を取って銃を構えているリムシィが正眼の構えを取ったままの綺凛へ話しかける。
どちらとも互いの獲物を構えたままなのは当然であった。
綺凛は苦笑いを浮かべていたが。
「それはわたしも常々思っていますけど、ね……参ります!」
リムシィからの感想にむっとすることなく逆に納得しているような素振りを見せる綺凛だったが土煙が晴れて視界が良好となり直ぐ様駆け出す。
それと同時にリムシィが手に持つ巨大な銃型の煌式武装で攻撃を仕掛けてくるが綺凛の持つ《千羽切》の流れる剣閃により全て切り落とされその距離を縮められていた。
擬形体であるため表情は人間に近いがはっきりと現れることは無いが苛立っているようにも思えた。
迫り来る弾丸を連撃で押さえていた綺凛は流れるような連続攻撃に”突き”を入れた。
「なに…っ!」
リムシィは目の前にいる綺凛の星辰力の活性化を関知し状況で危険、だと判断し手にしていた銃型煌式武装を手放しその場からの回避を選択した。
次の瞬間に青色の閃光がリムシィのいた場所と銃型煌式武装を飲み込み破壊した。
しかし完全には避けきれなかったのか腕部分の装甲が閃光により破損してしまっていた。
その光景を見て問いかける。
「…なんですか今の攻撃は。我々のデータにない…それは名護蜂也の。」
突きを放った綺凛の《千羽切》からは視覚化された星辰力の青い稲妻がパチリ、と音を立てている。
「ええ。此はお義兄さんに教わった技です。又の名を『影技・春雷遥』…まぁわたし版の『遠雷遥』ですかね。宗家の人間が我流技を使うのは可笑しな話ですが…ね。」
再び正眼の構えに戻り完全にリムシィの虚を突いた形になる。
綺凛の回答に何時も通りの無感情さを現しながら反応した。
「どうやら先程の問いかけは不適切でしたね。撤回させていただきます。刀藤綺凛。しかし…なぜわたしは貴女の攻撃を避けきれなかったのでしょうか。」
そのままの表情で謝罪の言葉を掛けているが言葉とは裏腹に高圧的である。
しかしそれは機械ゆえの感情を出力する部分が未熟なのかもしれないと綺凛は判断した。
構えを解くことなく語った。
「それは貴女が機械であるからです。」
「どう言うことでしょう?」
理解できない、と言わんばかりに少し首を傾げるリムシィ。
「まぁ…簡単に言い表すのなら…」
綺凛はハッキリと言いきった。
「リムシィさん…いやあなた達には自分達が優秀であると自負し相手を下に見る傾向と…圧倒的に戦闘経験値が足りていないからです。」
正眼の構えのまま綺凛は駆け出しそれに対応するようにリムシィも新たに武装を呼び出し射撃する。
「なるほど…よくわかりました。確かに今までわたしたちと比べ程度の低い選手達と戦ってきたことからの驕り…なのかもしれませんね刀藤綺凛。マスターより与えられた命とこの装備を破壊された屈辱を味わうことも出来るのも一重にマスターが人格と感情を与えてくださった故…成る程これが”悔しい”と言う感情ですか…その思い確かに心に刻みました。ならばその感情を教えた貴女には…」
射撃をしながら背面にある大型ユニットが起動し高音を響かせながら緑色の粒子が膨れ上がり勢いよく飛翔した。
「ならばこそ全力でお相手するまでです。刀藤綺凛。」
『おおっとー!?リムシィ選手が飛んだぁーっ!飛びました!』
『背中のあれは飛行ユニットだったんッスねー。飛行能力を使える《魔女》や《魔術師》は居ますけど試合で十全に使えるか、と言われれば難しいでしょうね?十分に訓練を積まなければ扱いも出来ないッスから…っと言いたいところですが現にリムシィ選手はまるで鳥のようにステージを縦横無尽に駆け巡っています。』
「……っ!」
空中でのリムシィの動きは正に”水を得た魚”状態であり自由自在に飛び回り綺凛は斉射される光弾を刀と身体技能を最大限に発揮し潜り抜けるが当然の事ながら攻撃は当たらない。
遠距離攻撃の『春雷遥』も足を止めなくては発動できないため宙に浮かび飛び回るリムシィを捉えることは不可能に近かった。
が、しかし。
「厄介ですね…飛び回れると言うことは。」
光弾の嵐を《連鶴》で切り裂き宙に浮かぶリムシィを見上げる綺凛の表情は絶望ではなく不敵な笑みを浮かべていた。
「諦めましたか?…では終わりです。」
立ち止まった所を見たリムシィは銃型煌式武装を構え大砲のような一撃を綺凛目掛け発射した。
当たれば一撃で意識消失まで持っていかれるその攻撃に対して綺凛の取った行動それはリムシィからしてみれば不可解な行動だった。
「…!」
綺凛は迫り来る光弾に突っ込むように武器を構えて突撃したからだ。
「はっ!」
当然ながら綺凛は攻撃に巻き込まれステージの地面が抉れ瓦礫が飛ぶ。
その爆心地地点に綺凛の姿は無かった。
「居ない…?彼女は何処へ……っ!」
その事を認識した瞬間に背面の大型ユニットの片側が破壊されリムシィはその姿勢制御を保つことに精一杯になる。
「なっ…!」
背後を振り向くと宙に浮かぶ綺凛が刀を振り下ろし大型ユニットの飛行モジュールの片側を切り裂いていた。
更に舞い上がる瓦礫に器用に着地し”あの突きのポーズ”を構えていたのを見逃すことは無かった。
「『春雷遥』」
その剣先より放たれた星辰力を凝集した青い閃光を万全な状態な大型ユニットであれば回避できただろうが今はそれは叶わない事を判断し咄嗟にリムシィは装備していた堅牢な銃型煌式武装を盾にする。
その瞬間に凄まじい爆発音がステージに響き渡った。
◆ ◆ ◆
「はっ!」
「ぬぅん!」
俺の《壊劫の魔剣》とアルディのハンマー型の煌式武装が激突するが此方の方の弾性が高いため砕かれることなく押し込む。
突きを起点とした連続攻撃…『連鶴』を叩き込む。
「ぬぉっ!?」
しかし、そう簡単に攻撃を通さないぞとアルディがハンマーを用いて跳ね上げ此方の攻撃を防ぐがそれだけでは終わらないと俺は巨体ゆえの死角となる脇部分へ潜り込み逆袈裟からの連続攻撃を叩き込むが障壁が発動するものの出力を割増しした《壊劫の魔剣》の黄金色の剣閃が障壁を切り裂きその巨体に確実な傷を付けていく。
だがそれで終わる筈もなく流れるように斬撃が叩き込まれ魔法による光輪が絶え間なく浴びせられアルディはその光輪を障壁で防がざるえない状態になっていた。
障壁の防御無視する《壊劫の魔剣》に校章を狙う正確な《光輪》の連携にアルディは翻弄されていた。
片方に気を取られれば魔剣による攻撃で機能不全に陥り光輪を疎かにすれば校章が切り裂かれてしまう。
二者択一を選ばされている状況の攻防に息を飲む観客席と実況席も大盛り上がりであった。
『此方では名護選手のものすごい連続攻撃が続いております!更に更にぃ!《魔術師》としての能力を解放しあのアルディ選手が反撃することが出来ないのか防戦一方、辛うじて防いでいる状況が続いています!』
『名護選手は刀藤選手を直系の弟子としているようで刀藤流剣術を納めているらしいッスけど…ここまで見事な”連鶴”は師匠である刀藤選手にも引けを取らないほど見事なものッスねー。』
『当然である。この他にも主が”とっておき”を持っていることを…』
試合の最中に脳内で《グラム》が解説席にいる実況を聞いて自慢げにしていた。
『余計なこと言ってないで試合に集中しろやこのポンコツ……来るぞ。』
脳内での会話を繰り広げつつ繋ぎ手の型を組み合わせ、途切れない連続攻撃をアルディの発生させる障壁を切り裂きながら叩き込みその巨体に傷跡を刻み込む。
教わった当初は連続でも五つの型を繋げるだけで精一杯であったがこの鳳凰星武祭開催前には息が続く限り連続した攻撃を叩き込むことに成功していた。
しかし、目の前の機械の巨体を持つ選手は豪快な笑い声を上げている。
「ふはははは!恐ろしい程の剣の冴えであるな!名護蜂也!我輩が機械であるゆえか一切の容赦がない…《戦士王》のその二つ名に恥じぬ業前よ!我輩が反撃の糸口を見出だすことも出来ずに追い込まれるとは!」
障壁を切り裂きながらも紙一重で
「だが良いぞ!良いぞぉ!これが高揚と言うものか!堪らんな!貴公も分かるであろう?その一太刀、一太刀を凌ぐごとに我輩は成長し進化していることを!素晴らしい!貴公は最高の師である!」
「そうか…ならばこれは避けきれるか?」
袈裟懸けから逆袈裟への抉るような突きを繰り出し《遠雷遥》を繰り出し予測をしていたのだろうがその出力ゆえに突き出したハンマーがの一部が溶解しアルディの脚部部分の装甲を焼いて行く。
俺は意識消失を狙った一撃だった筈だが学習をしているのか仕留めきれなかった。
『主よ。アルディ殿は人間の選手よりも厄介だぞ?』
『ああ。流石は博士が産み出した傑作かもしれんな…そろそろ不意を突けなくなるかも知れん。』
『ならば…!』
『正面から斬るぞ。』
『応っ!』
一度見た技を学習しその場で対応出来るのは人間では出来ない機械ならばこその柔軟さは驚異だった。
そのうち俺が振るう繋ぎ手も対策されてしまうだろう。
「だがしかぁし!、いかに破格のデータを収集しているとは言えここうも一方的なものは少々面白くないものがあるものだっ!」
アルディはそういうと無理矢理にその質量差がある体をぶつけ俺を跳ね飛ばしてきた。
それには俺も咄嗟のことで対応できず少し後ろへ押し込まれる。
「くっ!」
その瞬間にハンマーを大きく振りかぶる。
が俺は既に体勢を整え《壊劫の魔剣》で”連鶴”を発動し振り下ろされるハンマーを受け流すことはせずに出力任せに弾き飛ばし横へ回り込み振り下ろした瞬間の隙は大きいものだ。
いくら精密な動きを出来る機械といえどもこの攻撃は回避出来ないだろう。
「はぁっ!!」
校章を狙える位置にいた俺はアルディの校章目掛け《壊劫の魔剣》を振り下ろす。
「それは不味いな!…だが良いぞ!存分に参られよ!」
「なっ…正気か!?」
その一撃を避けるのではなくアルディは自らの頭部を差し出し校章を守るために受け止めた。
手にした純星煌式武装は容易に金属を切り裂けるほどの威力があるが咄嗟にアルディは受け止めると決めた頭部に障壁を多重展開していたようでその一撃を受け止めていた。
しかし腐っても《壊劫の魔剣》は純星煌式武装、完全に受け止める、と言うことは出来ず頭部に大きな傷跡を残しダメージがあったのか少しよろけて回避するために頭を振って俺を後方へ押し飛ばした。
「まさか頭で受け止めるとは…人間には出来ない機械の身体だからこその防御方法であるな。」
距離を取って普段の構えに戻りそのような行動を取ったアルディに称賛…と言うよりも呆れた声を掛けると豪快に笑っていた。
まさかこの形で《壊劫の魔剣》の一撃を防がれるとは思っても見なかったからだ。
「ふははははっ!確かに人の身であれば今の一撃で勝敗は付いていたであろうな!だが我輩の身体は機械!頭部も一つのユニットに過ぎず故障すれば交換してしまえば問題はない!貴公は我輩に人間の常識を当て嵌めていたようであったな!」
「当方も返す言葉がないな…人間と言う生身の身体の常識を当て嵌めてしまっていたようだ。」
この目の前の自立稼働兵器は水を吸うスポンジのように俺との戦闘経験を吸収している。
長期戦になれば此方が不利になるかもしれないと俺の脳内の片隅で警鐘をならしていていたのを苦笑し手に持つ発動体の柄を握りしめた。
『主よ、次で決めねば面倒なことになりそうだ…”あれ”を出すか?』
『ああ。そろそろ良いかもしれん…てか厄介だなアルディ。』
『それには同意見であるが…ふっ。』
『どうした?楽しくなったか?』
『肯定しよう』
『んじゃまぁ…行くぞ。』
「さて、我輩もよいデータを頂戴した礼をしなければな。」
眼前にいる斬り付けられた部分を確かめるように撫でるアルディ。
そこは前頭部部分…眉間に近い部分に右から斜めに真っ直ぐな傷跡が走っている。
「礼…?『礼…?』」
訝しげに俺も聞き返してしまったがアルディは胸を張ってこう言い放った。
「ふっふっふ…さぁリムシィ、今こそ”アレ”を発揮する時である!!!」
そう自信満々に言い放った次の瞬間に眩い閃光が迸り思わず俺達は直前までの行動をキャンセルされ目を覆う。
閃光が収まると同時に物音が響き渡り確認するために俺と綺凛ちゃんは手を外し目を疑った。
「なんだと…?」「どう言うことです…!?」
ソコには装甲が外れ薄手になったリムシィとその外装と強化ユニットを装備したアルディが立っていたのだった。
「さぁ!ここからが本番である!」