俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。 作:萩月輝夜
別作品とかに投稿してたりしたので遅れました。申し訳ない。
やっとこさ準決勝終了します。
次ぐらいで《鳳凰星武祭》が終わりかな…かなと。
それではどうぞー。
時間はアルディが本来の姿になる前まで遡る。
「仕方がありませんね…貴方の指示でこれを使うのは非常に不愉快ではありますが。」
綺凛ちゃんと戦闘をしていたリムシィは離脱しアルディと合流した。
俺と綺凛ちゃんも合流する。
「すみませんお義兄さん…いやグラムさん?」
「普段通りで構わぬよ綺凛殿…さて。」
対面には2機が揃い会話をしているが警戒を解いてはいない。
「むっ?随分とボロボロであるなリムシィ。」
アルディの隣に飛翔しホバリングしているリムシィ。
しかし綺凛ちゃんと戦っていたリムシィであったがその躯に備え付けられていた筈の背面のユニットは片方が切り落とされ腕に装着していた武装は斬り落とされ見るも無惨な姿になっており現にホバリングも少しふらついている。
正に”満身創痍”と言うのが正しいだろう。
これは綺凛ちゃんに随分とボロボロにされたのが見て取れる。
アナウンスされていたので分かってはいたが綺凛ちゃんに飛行魔法をエンチャントしておいて正解だったと俺は思った。
それに俺が教えた《遠雷遥》もぶっつけ本番だったがうまく使えてくれたようだ。
「それを言うなら此方の台詞ですアルディ。そちらも随分と《戦士王》に可愛がられたようですね。」
お互いの損耗具合を見てそう判断したのだろう。
アルディは楽しそうに笑い出す。
「ふはははっ!お互いに満身創痍と言うやつだな!…だがここで出し惜しみをすれば我輩達は負けるであろうな。そう演算結果…いや”勘”と言うやつだ。」
アルディの瞳が鋭く輝いた。
その問いにリムシィはため息を付いたわけではないが変わらない表情で不承不承と言った感じに了承した。
「…癪ではありますが貴方の意見を受け入れましょう。その前に…時間稼ぎを。」
そういって半壊している大型の銃型煌式武装を此方に向けて発射してきた。
恐らくはそのための準備であろうアルディの言っていた”アレ”と言うのが気になるが今は回避を選択するしかない。
綺凛ちゃんにアイコンタクトで今からすることを伝えると前衛と後衛で分かれる。
俺が後衛で綺凛ちゃんが前衛だ。
互いに走り回り弾丸を刀と複数展開した光輪が切り裂いていく。
『なんと名護選手と刀藤選手が光弾を切り裂いていきます!本来なら凄まじいスピードで当てることさえ不可能な筈なのに被弾せずに切り裂いていきます!もうなんなんでしょうねこのペアは!?』
いや、そんなこと言われても…と思ったがリムシィは無事な別の銃型煌式武装を取りだし威力の低い攻撃に取られ過ぎていたようでチャージが完了した大砲を発射していた。
「ルインシャレフ…
空間が歪みそうになるほどの爆発的なエネルギーが銃口に集まる。
「紗夜殿借りるぞ!」
俺はここで綺凛ちゃんと入れ替わった祭に片手に沙々宮から借り受けた銃を取り出しておりチャージは既に完了している。
言葉を借りるならこうか。
「ー発射!」
「貫く!」
リムシィの片腕に臨界していた光の奔流と俺のヴァルデンボルトの圧縮された重光弾が放たれ中間地点で拮抗する…と思われた。
「なっ!?」
しかし俺が放った弾丸の方が強いのかリムシィが放った閃光は飲み込まれ迫る。
それを見たリムシィは回避を選択するが遅い。
このままでは飲み込まれる…筈だった。
「ーーっ!」
次の瞬間にステージは閃光に包まれ大爆発が起こりその衝撃に観客席から悲鳴が上がり爆炎と爆風が収まりその中心地に苦悶の表情を浮かべ片膝を付いていた。
両手に持っている装備はひしゃげて破壊され使い物にならないだろう。
(ちっ…借りてたこいつもお釈迦だな…すまん沙々宮。)
しかし、役目を終えた借りていた大砲は粉々に砕けて使い物にならない。
これではマナダイトも砕けてしまっている事だろうと貸してくれた沙々宮に謝罪する。
持っていた発動体を投げ捨て再び《壊劫の魔剣》を励起させる。
バチり、と紫電が飛び散り正面に向き直るとリムシィの半身を守るように薄い光の壁が揺らめいていた。
直撃した筈の攻撃で無事だったことに綺凛ちゃんが反応を見せる。
「あれは…」
「成る程な。アルディ殿の障壁か。」
「ふはははっ!間一髪である!準備は整った!いくぞっぉぉぉぉ!」
「…相変わらず煩いですね…行きますよ。」
「そらこい!」
「させませんっ!」
そう告げるとリムシィの装備が外れアルディ上空に飛び上がりビーコンによって誘導され躯に装着されていく。
不味い、と思った綺凛ちゃんが宙に浮くリムシィに攻撃を仕掛ける。
「カミラ・パレード、
振り抜かれた一刀が校章を切り裂く。
リムシィの校章が破壊されたが発せられた音声はカミラの物なのは代理出場しているからである。
「ここまでですか…ですが…!」
校章は破壊されたが目的は達成できたと満足げな表情を浮かべるリムシィ。
その答えはすぐ現れた。
リムシィから飛翔しアルディから発せられた誘導のビーコンがパーツと合わさり上空からステージを粉砕しながら着地し煙が舞い上がる。
その隙間か躯の分割装甲部分よりマナダイトの青白い光が漏れ出す。
煙が晴れた瞬間にその隙間より眼光が俺達を射貫きその姿が露となる。
「が、合体した……!?」
「……!?これは…『博士お前…。』む、主…?」
唖然とする綺凛と《グラム》。そして震える俺達に対して誇らしげに言い放った。
「ふははははは!これぞ我輩の真の姿である!」
第二ラウンドを告げる威容が姿を現す。
だがその前に一言言わせてほしい。
『博士…あんた最高だよ!』
『そこなのか主よ…。』
◆ ◆ ◆
同時間、アルルカント・アカデミー生徒会専用観戦ブース。
生徒会用の観戦ブースだったがそこは今二人の少女が居るだけで寂しいものだった。
「あーやっぱりあの機能を使わないといけない程追い詰められちったかー。まぁそう簡単に星導館のあの二人…特に《戦士王》を押さえるのは難しいよね。」
「…そしてその機能も万全ではない、と来たか…。現にユニットが破損し出力は素体に比べればかなり向上しているが…本当に大丈夫なんだろうな。」
エルネスタは椅子に胡座を掻いて座り隣に座るカミラは苦い顔を浮かべている。
「シミュレーションじゃ問題はでなかったんだから大丈夫だって。それを言うならカミラのルインシャレフが力負けしちゃったからでしょー?」
「そ、それは…」
痛いところを突かれ狼狽えるカミラ。
「まぁまぁそれに《疾風刃雷》がまさかの飛び道具を使えるようになってるとはねー。このエルネスタの目を持ってしても見抜けなかったなかったわー。…だからこそ勝つためにはアレは仕方なし!じゃないかな?」
「はぁ…。」
この上なく嬉しそうに瞳をキラキラさせているエルネスタにカミラは大きく溜め息を吐いた。
「わからないな。何故この状況で笑っていられるんだお前は…状況は決して明るくはない。有利とも言いづらいのに何故お前はそんなに嬉しそうなんだ?」
「だってだって~あの子達ってばビックリするぐらいの凄まじいスピードで成長してるんだもん。いやーあたしの予想なんて完全に越えちゃってるわよ。凄すぎるー」
椅子の上でバタバタさせながら楽しそうに言う。
「この上でアレを制御しきったらどうなっちゃうかなー。それにここまで短期間であの子達を感情豊かにしてくれた二人…特に”蜂也君”には感謝しかないかなー?」
窓ガラスの向こう側に居る蜂也に対しエルネスタは嬉しそうな表情を浮かべていた。
◆ ◆ ◆
合体したせいか先程まで対峙していたときよりも重量感…厳つく堅牢な姿へと変わった。
しかし、先程までユニットの一部であったリムシィの大口径の煌式武装と背面の大型ユニットは破損し欠損してはいるが脅威には変わりない。
《瞳》越しにではあるが出力が通常時に比べれば5倍弱に増えていた。
「さぁ、どうであるか!威容を増し、貫禄を深めた我輩のこの姿は!」
アルディが自慢げに胸を張る。
「威容が増したのは分かるが…貫禄はないぞ。」
「貫禄は年を重ねて出るものなので…」
「む、そうだったか。また我輩は学習したぞ。」
その事に俺達が突っ込むと腕を組みうんうんと頷いていたアルディは物分かりが良いのかも知れない…?
それはさておき出力が増えたと言うことはその分障壁の強度も上がると言うわけで
綺凛ちゃんの持つ通常の武装や煌式武装では流石に歯が立たないだろうな…
「ふはははは!何処からでも掛かってくるがよい!遠慮は要らぬ!」
アルディは手にしたハンマーを軽々と振り回し石突を地面に突き刺すとそれだけで地面がえぐれ陥没する。
その場面を見た綺凛ちゃんは刀を手に警戒を最大にする。
どうやらそれは言葉にしなくとも俺のパートナーは汲み取ってくれたらしく助かる。
その反応に俺は頷いてどう行動したものかと思案しているとふとアルディの隣にいるリムシィが視界に入った。
「………///」
俺の視界に入ったリムシィは試合開始の時のままのメタリックなボディースーツなのだがアルディに装備を譲渡したせいで特に下半身部分が寂しいことになっており表情は変わりないのだが少し頬に朱が入って手持ちぶさたそうに手を前でモジモジさせていた。
『む、主よ。リムシィ殿の事なのだがアレは…』
《壊劫の魔剣》もどうやら気がついたらしく俺に告げる。
『ああ。どうやら普通の女の子よろしく…やっぱり恥ずかしいんだろうな…仕方ねぇ…。』
『うむ。その方が良いだろう。(主の事だあの四次元ポケット的なアレから躯を覆う衣服を…)』
その脳内会議を終えてアルディが動き出す前にグラムから俺へ変わる。
「ちょっとタイムだ。アルディ。」
「む?どうしたと言うのだ?」
疑問に思うのは仕方ないがこれは俺が試合に集中できなくなってしまう。
タイム、と言ってアルディ達の場所へ近づく。もちろん装備は一旦ホルダーに仕舞う。
その行動に観客達は頭に「?」を浮かべており実況席もだった。
『おっとー?名護選手一体どうしたと言うのでしょうか?試合は星導館側が有利で進んでいたのですが突如としての中断です!名護選手はアルディ選手…いやリムシィ選手に近づき傍に立っていますね?』
「…なんでしょうか名護蜂也。今は試合中です…ってこれは…。」
表情の変わらない機械的な対応だったが《瞳》を持つ俺には数ミリの表情筋の変化と頬の朱が入っているのを見逃す訳がなかった。
俺は取り敢えず何も言わず着ている制服の上着を投げ渡す。
咄嗟にキャッチしたリムシィは抱き締めるように俺が投げ渡した制服の上着と俺へ視線が行ったり来たりしている。
「いやアルディに装備渡したから随分と薄着になってるだろお前さん…それにお前さん擬形体と言っても女性だし其処んところ…まぁあるだろうし取り敢えず着とけ。な?……ってまぁそれだけなんだが要らないなら投げ捨てとけ…って」
「……///あ、ありがとう御座います名護蜂也。で、ですが此れを借りだとは思いませんので。」
「お、おう…あと危ないから端にいてくれよな?」
「はい、名護蜂也…。」
「お、おう…(ん……?なんかよそよそしさなくなったか?)」
『!?……はぁ………?』
脳内に《壊劫の魔剣》のツッコミ…というか呆れ声が響いた。
『主よ…本当に刺されるぞ…?』
『はぁ…?なに言ってんだお前は…。』
『知らんぞ主…クローディア女史に《パン=ドラ》で刺されても本当に知らんぞ…?』
理不尽な俺の純星煌式武装に対して疑問符を浮かべるしかなかった。
◆ ◆ ◆
戻ってきた俺に綺凛ちゃんは尊敬するようなちょっと拗ねたような表情を浮かべていたがまぁ普段通りの表情で出迎えてくれた。
リムシィに制服の上着を渡したので黒のワイシャツだけになっている。
腕捲りをして準備を終えると待機しているアルディに声を掛ける。
「もう良いのか?名護蜂也。」
俺から《グラム》へと入れ替わり《壊劫の魔剣》を再び励起させる。
「ああ。時間を取らせたなアルディ殿。」
「今の我輩には全く皆目検討もつかないものだが貴殿の行動は今の装備を失ったリムシィに必要なものだったのだろう。敵であるのに相手の事を気遣うとは…敵ながら天晴れであるな。」
そうアルディに言われたが微妙に異なるラインの回答だったので苦笑いで返すとアルディは武器を構える。
それと同時に俺と綺凛ちゃんも武器を構える。
互いに武器を構えて動き出す様子はない。
「……。」「(さてどう動くか…)」
しかし、その均衡を破り動き出したのはアルディからだった。
「ぬぅん!」
気合いの入った一撃は地面にクレーターを作る勢いで放たれた。
その攻撃を俺達は回避した後綺凛ちゃんが一足先に飛び込みアルディへ斬りかかる。
「む、お主から来るか刀藤綺凛。だがそれも良し!」
その言葉と同時にハンマーを《千羽切》の逆袈裟で受け流しそのまま突きへ繋げ”連鶴”の流れへと至る。
アルディの反応速度は確かに上がっているようでその攻撃に対応していた。
それでも尚”連鶴”の攻撃からは逃れることは出来ない。
ハンマーと障壁を使い攻撃を捌いているアルディ。その声色は嬉しそうにも聞こえる。
「ううむ、やはり星導館の序列一位…素晴らしい技量だ刀藤綺凛………だがしかぁし!」
アルディが気合いの入った叫び声を上げると機体の各所から青白い光が噴出する。
綺凛ちゃんは構わず攻撃を続け上段からの攻撃を受け止めたハンマーをそのまま上へと弾き飛ばし綺凛ちゃん事吹き飛ばす。
「っ!?」
鍛練を積んでいる今年で十三歳になったとはいえ《星脈世代》で膂力も非常に優れたものを持っておりその斬撃の一撃は非常に重く並みの《星脈世代》であれば余程の力が有ったとしても防ぎきるのが精一杯である筈なのにそれを身体事吹き飛ばすことは尋常ではない。ましてや人間ではすることすら不可能でありそれを機械の躯を持つアルディだからこそ出来る芸当だろう。
「ふはははっ!まだまだぁ!!」
更に吹き飛ばされた綺凛ちゃんに対してアルディは追撃を仕掛ける。
《千羽切》にて受け流そうとしたもののの吹き飛ばされた直後、つまりは着地がうまく行っていない状態で体勢が悪くハンマーの質量とその速度を相殺するには時間が足りなかった。
真横より振り抜かれたハンマーが綺凛ちゃんを襲う、がそうは行かない。
俺は綺凛ちゃんとアルディの攻撃に割って入り横からのハンマーの一撃に対して《壊劫の魔剣》の腹で受け止める。
その瞬間に大気が震えるような音が響いた。
吹き飛ばされる事なくその攻撃を片手で受け止めた。
「グラムさんっ!」
そう呼び掛けられ
「当方がいることを忘れて貰っては困るな?……行くぞっ!!」
受け止めたハンマーを逆袈裟で弾き返し流れるような動きで”連鶴”へ至り連続攻撃を仕掛ける。
しかし先程の合体により性能が上がっているのは間違い無いようでハンマーを傷つけるだけで切り裂くことは出来ず防御障壁も破壊することは出来るがその刃が機体に届くまでには至らなかった。
『固すぎるな!』
『出力が上がってる…お前無しでやりあうのは無理じゃないかこれ?』
脳内で俺と《グラム》の作戦会議が起こる。
『これでは通常武器しか持たない綺凛殿は辛いか?』
確かに俺と《壊劫の魔剣》でこの状況を作り出しているので辛いかもしれん。
『だが、一人で勝てる相手でもないだろ…無理はさせられん。不意をついて貰う。』
『仕方があるまい。』
『二人同時の《遠雷遥》なら流石にあの障壁もぶち破れんだろ。』
『む?”アレ”は使用しないのか?』
『アレは本当に通用しないときに使うもんだ。…”切り札”を切るにはまだ早すぎる。』
脳内での会議を終えて後ろにいる綺凛ちゃんへアイコンタクトを向けると分かってくれたようで《千羽切》を構え直し飛び込む。
「ふはははっ!やはりお主達は我輩にとって好敵手!相手にとって不足無しである!」
《千羽切》と《壊劫の魔剣》による”連鶴”による連続攻撃で体勢を崩し防御障壁を破壊し徐々に後ろへ押し込み突き
による攻撃で吹き飛ばす。
それを確認し互いの星辰力が剣先へと充填されていく。
距離が空いたのを確認し俺と綺凛ちゃんの同時攻撃がアルディへ向かった。
「遠雷遥…!」「春雷遥っ!」
黄金色と蒼色の閃光がアルディへ到達する。
「やはり来たか…!ぬぅん!!!」
その攻撃は着弾しステージ上では砂煙が舞い上がる。
攻撃を受けたアルディの姿は見えない。
「やりましたか…?」
「綺凛殿…それは前振りという奴だぞ…!」『綺凛ちゃんそれはフラグだから…!』
その時だった。
「ウォルニール・ハンマー発射である!」
「なっ…!?」「やはりか!」
煙を消し飛ばし巨大なハンマーの頭部分が高速射出されて俺達へ迫る。
「くっ………!?…きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
「綺凛殿!」『ちぃ!やはりか!』
俺より前にいた綺凛ちゃんが回避よりも迎撃の方が早いと判断したのか《春雷遥》を発動するも溜めが不十分だったせいか青閃光はハンマーの頭部分を砕く事なく粉砕されその衝撃は綺凛ちゃんを襲った。
その衝撃は凄まじく綺凛ちゃんが防御壁へ叩きつけられる。
「かはっ……!?」
「ふむ、まさか凌がれるとは思ってもいなかったが…二度目は…ぬぉっ!?」
射出されたハンマーを再形成し二射目を繰り出そうとするアルディへ《フラッシュエッジ》を複数展開し牽制する。
壁へ叩きつけられた綺凛ちゃんの元へ急ぐ。
「綺凛殿!」
慌てて駆け寄り抱き起こそうとすると吐血した。
巻き上げられた破片の当たりどころが悪かったのか骨が折れて臓器を傷つけているようであった。
「ぐ、グラムさん…私は大丈夫です……かはっ…!」
「喋るな…キズに触る。」
今は《フラッシュエッジ》での牽制を行いアルディは攻撃に移れない。
今のうちに《瞳》で状態を確認する。
(肋骨を損傷…内蔵部に損傷…軽微で命に別状はなし…脚部の腫れを確認…折れてはいない…だがこの状態では戦闘は無理だな。)
『
これはルールに乗っ取った試合であり”殺し合い”ではない。
(流石にそれは卑怯だよな…)
正々堂々、と言うつもりはないがな。心情的にそれはしたくなかった。
俺は綺凛ちゃんを抱き抱えアルディからの投射射線上から離れた位置へ移動する。
壁際にもたれ掛けさせる。
「グラムさん…ごめんなさい。止めきれずに…。」
「いや、無理しないでくれ綺凛ちゃん。」
「お義兄さん…。」
「こっからは俺が何とかするからここで休んでいてくれ…気絶しないでくれってのは鬼かも知れんが…。」
「ふふっ…けほっ…大丈夫です。それじゃここで休ませて貰いますお義兄さん…御武運を…。」
「ああ。ゆっくり休んでいてくれ。」
綺凛ちゃんを後方に下げて歩み出す。
前方では展開していた《フラッシュエッジ》を対面できる距離にまで俺が移動すると破壊し終えて最後の一つは掴み握り潰していた。
此方の姿を視認したアルディはハンマーを構え俺も《壊劫の魔剣》を励起させ構えた。
「すまぬな。相方を下がらせるために少々時間を掛けさせて貰った。」
「構わぬ。我輩のペアであるリムシィにも気に掛けてくれたお主だからこそだ。…正直先程の光輪は厄介であったがな。」
「これで一対一…それでは第二幕と行こうか。」
《壊劫の魔剣》が唸りを上げて紫電を弾く。
「行くぞっ!《戦士王》!!」
ハンマーを装備したアルディが猛スピードで突っ込んできてその一撃を見舞う。
両手でもった《壊劫の魔剣》で防ぎそれを起点して攻防が開始された。
◆ ◆ ◆
強い。
今のアルディを言い表すならこの言葉が正しいだろう。
「ふははははっ!どうしたであるか名護蜂也!」
俺はアルディのハンマーを紙一重で回避しながら機体めがけ《壊劫の魔剣》を振り抜く。
がそれは強固な防壁に阻まれ貫通はするとも機体の装甲面を浅く切り裂くのみで決定打を与えられない。
「ちぃっ」
体を守る防御壁とは別に独立した防御壁が出現して俺を吹き飛ばし宙を浮いて隙を現した所にハンマーの横薙攻撃をしてくる。
その攻撃を《グラム》の大剣の腹で受け止め上段へ吹き飛ばし胴体を無防備にする。
その隙を突いてリチャージした《遠雷遥》を胴体目掛けて放つ。
「(固すぎんだろっ!)ぬぅん!!」
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!まだまだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
獣のような咆哮をあげるアルディ。
装甲へ亀裂が入り青白い光を放つ。
放った《遠雷遥》の雷光がアルディへ殺到し障壁を破壊しながらその後ろにある胴体へ直撃…することなく再度展開された障壁を破壊することは出来ずに機体へ煤を着ける程度に留まってしまっている。
「『(合体したお陰で出力と障壁の再展開が早くなってるな。)』いくらなんでも固すぎではないか?面倒な…!」
《遠雷遥》を防ぎ体勢を戻したアルディのハンマーの攻撃と障壁から逃れるためにその場から移動しながら俺と《グラム》は同意見を述べていた。
どうも合体したのが本来の姿…アルディがメインユニットでリムシィがその補助ユニット…もとい暴走しないよ卯にするための制御ユニットの役割をはたしていたんだろな。
でなければ俺と《グラム》で障壁を破れない、何てことにはならないはずだからな。
こりゃ綺凛ちゃんには悪いけど”技術”はあっても”火力”がない相手には全く持って歯が立たない相手だろう。
「『これが本来のアルディの姿なんだろう…リミッター全開ってか?』我と撃ち合うことが出来る…と言うと」
ああ。アルディに使用されているコア…間違いなく《ウルム=マナダイト》だろう。
《グラム》と打ち合うことが出来るのは恐らく完全に制御をしきったか。
通常マナダイトの色は”緑”。
アルディが持つマナダイト、いやウルム=マナダイトの色が”青”色なのだろう。
それが機体の隙間…俺との打ち合いと装甲が抉られたりしたためかその部分から青白い光が漏れ出ている。
ハンマーヘッドを射出するアルディ。
気合いの入った一撃だったがそれを食らうほど俺も間抜けではないので回避を選択する。
回避をした部分は大きく抉られ爆発を起こす。
直撃を食らいたくない一撃だ。
「ふははははっ!これが我輩の力…マスターとリムシィが制御したのも頷ける…しかぁし!まだまだ行くのである!」
アルディは戻ってきたハンマーの頭を再び柄と連結し射出する。
連射出来んのかそれ…。
『どうする主?このままではジリ貧になるぞ?…』
射出されたハンマーの頭部が迫るなかグラムは俺へ問いかける。
…今の《壊劫の魔剣》で障壁と攻撃を捌ききれない、となれば”あれ”を切るしかないだろう。
正直あんまし使いたくなかったが…まぁ相手も”切り札”を使ってるなら此方も”秘策”を使わせて貰おう。
準備は整った。
俺たちは動き出す。
「『行くぞ?』応っ!!」
俺と《グラム》はその攻撃を対応するために”その場に立ち止まった”。
その行動に流石のアルディも驚いたようで。
「!?…だがこれで終わりである!ウォルニールハンマー発射ぁぁぁぁ!!!」
迫り来るハンマーの回転攻撃に対して切っ先を突きつけるように突き出す。
瞬間、《壊劫の魔剣》の黄金色の刀身が血の色のように紅く染まり破壊した。
「なっ!?…しかぁし!!」
驚くアルディであったが直ぐ様に攻撃体勢に移行しハンマーの頭を呼び出す。
両断されたハンマーは背面へ飛び後方で爆発を起こし俺は前方に《壊劫の魔剣》を宙に浮かせるように左手で重力制御の魔法を発動して固定し足を止めて深く腰を落とし利き腕へ引く。
そして俺はぼそり、呟く。
『絶技用意…。』
宙に固定された
『四色を統べる魔剣よ……!』
踏みしめる利き足がアルルカントの校章を踏み砕き身体から星辰力が漲り黄金色のオーラが吹き出す。
『その身で破壊を巻き起こせ…っ!!』
迫るアルディの一撃。
それに動じず破滅の一撃を発動させる為引いた利き腕を宙に浮いた『
『
回転しながら凄まじい爆音を巻き上げながら射出された《壊劫の魔剣》は紫電を撒き散らしながらアルディの射出した《ウォルニール・ハンマー》のハンマーヘッドをバターのように溶かし貫通する。
「なんと……っ!?」
直ぐ様前面に複数の防御障壁を展開する、がしかし触れた瞬間に障壁がガラスを突き割るような音が響き渡り無力化された攻撃が迫る。
直ぐ様射出したハンマーヘッドを再構築し最後の障壁をぶち破った《壊劫の魔剣》を迎え撃つためにそれを下段から弾くように振りかぶる。
『これで決めるぞ《グラム》!』「応っ!」
投擲した《壊劫の魔剣》に対して俺は《自己加速術式》を発動させて到達しその柄を握りアルディに弾かれる前に上段から叩き込む。
端から見たらかなり後方にいたのに一瞬で到達して剣を振り下ろしているのだから瞬間移動しているようも見えるだろうがな。
「ぬぅぅぅぅぅぅぅん!そうは、させんのであるっ!!」
アルディの身体から放たれる青白い光がより一段と輝きを増す。
しかしその輝きを掻き消すが如く黄金色の輝きが光を放った。
「我流影技…『二煉神威』…っ!」
アルディのハンマーが《壊劫の魔剣》の刀身に触れるよりも早く俺は柄を手に取り振り抜いた。
自己加速術式を二度掛けて振られたことすら知覚できない斬って返す刃の”超神速の斬撃を二度喰らわせる”という《連鶴》の技術を応用した斬撃術。
一撃はアルディの《ウォルニールハンマー》のヘッドと柄を切り裂き防壁を破壊する。
二撃目は校章目掛け袈裟掛けの斬撃を見舞う。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
二撃目の斬撃は校章に到達し咄嗟に展開した防御障壁は飴細工のように砕かれ校章ごと上半身を斜めに切り落とされた。
両断された胴体とハンマーが爆発した凄まじい轟音がステージに響き渡り砂煙が舞い上がる。
勝利を確信したのは決着を告げる機械音声と綺凛ちゃんのが俺の名前を呼ぶ声だけだった。
「お義兄さん…っ。」
「エルネスタ・キューネ、
「試合終了!勝者、名護蜂也&刀藤綺凛!!!!」
会場がしんと静まるなかで両断されたアルディの人間よりも人間らしい笑い声が響いた。
「ふははははははははははははははっ!!!!いや完敗だ!文句無しの完敗である!!ふはははははっ!」
俺は倒れているアルディに向けて歩き出し膝を着いた。
「お前その様子で良く笑ってられるな…いや強かったよお前さん。」
「うむ。よもやこの姿形になろうと思わなかったが…ふははは!」
満足そうな笑い声をあげるアルディに反応するようにステージの観客席から爆発的な歓声が響き渡った。
そして決勝は星導館学園同士の戦いに決まった。
感想&お気に入り登録&高評価お待ちしてます。