俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。   作:萩月輝夜

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やっとこさ決勝戦終了…!
まぁあと一話でようやっと五巻までの範囲が終わるんですがね。




覇凰決戦(頂を目指す者達)

「綺凛ちゃん準備は良い?」

 

「はい。大丈夫です。」

 

その場で綺凛へ手渡すために《壊劫の魔剣》を調整する。

刀身は拵のサイズに刃の厚みは薄刃の如くとあり得ない速度で星辰力を通じて最適化させていく。

数度のトライ&エラーを繰り返しながら形となった大剣から太刀のサイズへ変化した《壊劫の魔剣》を握る。

 

「…やっぱり俺だと少し小さすぎるな。」

 

形の変わり心なしか重量も減ったような感じがした武装をしみじみそう思いながら綺凛へ手渡す蜂也。

その大切な武装を綺凛が受け取った。

最終的な調整は綺凛が行い最終的な大きさは”打刀”の大きさに収まった。

心身の異常がないことと武器の違和感のないことを確認した後に認数度振るって刀藤流剣術を繰り出すと《千羽斬》を使っていたときと同じ…いやそれ以上の技の洗練さが出ていた。

まるで水を得た魚のようだと。

 

「凄いです…。これが純星煌式武装…!」

 

嬉しそうな綺凛を見た蜂也。

 

「そろそろ大丈夫そう?」

 

「はい…行けます。」

 

「んじゃまぁ…驚かせるとしますかね。」

 

その言葉を貰い認識阻害の魔法を解除すると視覚に入り気がついた観客と綾斗達が驚きの表情を浮かべていた。

注目を浴びている綺凛は普段ならおどおどしてしまうかもしれないが今は試合中のためそんなことは起こっていない。

 

その光景を見て蜂也は《壊劫の魔剣》に作戦に移れることに少しだけ感謝した。

 

「綺凛ちゃんは天霧の相手を…俺はリースフェルトを相手する。」

 

「分かりました…御武運を。」

 

《壊劫の魔剣》を正眼の構えで突撃する綺凛を見送った蜂也はジャケットにサイドホルスターから拳銃…ではなく特化型CAD(ガルム)を取り出す。

 

「こっからは得意な闘いかたで行かせて貰うとするかね…。」

 

特化型CADから放たれる魔法が綾斗とユリスに牙を向いた。

 

◆ ◆ ◆

 

「参ります!」

 

《壊劫の魔剣》を手に綾斗へ向かう綺凛。

獲物が変わったことに動揺していた当の本人である綾斗は直ぐ様疑問を後回しにして《黒炉の魔剣》をもって対峙する。

 

蜂也と綺凛。

観客席と実況席の二人、そして綾斗とユリスは動揺とその意外性に度肝を抜かざるを得なかった。

《壊劫の魔剣》は本来の持ち主である蜂也が”完全適合者”であり”いわく付きの魔剣”というのが世の中の総評であるのでそれをパートナーである少女が手にしているのがあり得ない話だった。

武器の交換は禁止事項ではないが使い慣れていない武器を交換するのは自殺行為…の筈だ。

 

『おおっとー!?刀藤選手が《壊劫の魔剣》を装備しています!これはいったいどういうことなんでしょうか!?チャムさん!?』

 

『武器の交換は禁止はされていないので問題はないですが…それでも使い慣れ親しんだ武器を使うのがセオリーな筈ですが…そもそも先ほどまで名護選手が使用していた際よりもサイズが押さえ気味…大剣から日本刀サイズにまでダウンサイズしてるッス…先ほど後ろに下がった際のあの短時間に調整したと考えると名護選手の星辰力の制御能力は六花随一かもしれないッスね。』

 

蜂也の驚異的な星辰力の調整技能を聞いてミーナが「ええ…?」みたいな表情を上げていたが素早く実況に戻る。

 

『気を取り直しまして……そもそもどうして名護選手は自らの壊劫の魔剣(純星煌式武装)を刀藤選手へ渡したんでしょうか?』

 

『恐らくですけど名護選手と刀藤選手。そして天霧選手とリースフェルト選手の戦闘スタイルは似ていますからね。恐らくですけど剣の腕では名護選手は天霧選手に一歩及ばない、とそう思っていたからではないッスかね?逆に刀藤選手は『刀藤流剣術』の使い手…クロスレンジの闘いにおいては名護選手は自分よりも上だからだろうと《壊劫の魔剣》を渡す…なんて奇策を提案したのかも知れないッスね。』

 

『なるほど…!刀藤選手が今現在使用しているのは煌式武装ではなく通常の日本刀ですからね。天霧選手が用いるのは『純星煌式武装(黒炉の魔剣)』ですから理に叶っています!…がそれってかなり博打なのでは?あの《壊劫の魔剣》って手にしたものを廃人…もしは病院送りにしてきた危険な純星煌式武装なんですよね?』

 

『ええ。どんなカラクリなのかは分かりませんが…それは今回に至っては成功して現に刀藤選手と天霧選手が互いに純星煌式武装で斬り結んでいる…これは名護選手の作戦勝ちかもしれないッスねー。』

 

後ろで実況席に座り熱弁するミーナとシャム。

その解説を聞きながら目の前で繰り広げられる剣撃の応酬を観客席は立ち上がらんばかりの興奮でみていた。

 

先に仕掛けたのは綺凛。

一足飛びで間合いを詰めて閃光のような速度で袈裟懸けの斬撃を見舞う。

綾斗はそれに対応するように袈裟上げで対応しそれをはね除ける。

これが普通の日本刀や煌式武装ならば《黒炉の魔剣》で刀身を両断していただろうが今綺凛が装備しているのは同じ純星煌式武装だ。

 

(これが純星煌式武装…凄まじい威力です…!)

 

手に持ちその威力を見せつけられた綺凛は素直に感動していた。

軽さは同じだがその剛性は比べ物にならない。

千羽切(愛刀)であれば打ち合う前に両断されていたに違いないだろうが今は違う。

 

(一気に行きます!)

 

鋭い打ち込みを咄嗟に返した綾斗だったが《壊劫の魔剣》によってブーストされているのか鍔競り合いになった場合

辛うじて勝てるレベルまでに到達していた。

 

「っ!?」

 

跳ね返した刃が直ぐ様に空中で弧を描いて逆袈裟で斬り下ろして来た。

直ぐ様それを対処する綾斗は握る《黒炉の魔剣》を強く握りしめ弾き綺凛の胴体を狙うがそれよりも先に《壊劫の魔剣》の切っ先が右小手を狙っていたことに気がついて綾斗は腕を引いた。

が、その瞬間に綺凛は右足を踏み込み胴目掛け横一文字に斬りかかる。

これは回避しきれないと判断した綾斗は決意する。

 

「天霧辰明流剣術中伝、”十昆薊”(とびあざみ)

 

体ごと剣を大きく回転させて薙ぎ払い、さらに剣を逆手に持ち替え、もう一回転薙ぎ払いの二連撃を叩き込まれ斬撃の軌道が逸らされる。

 

「…!」

 

追撃を仕掛けようとする綾斗だったが綺凛は素早くその弾かれた反動を生かして今度が袈裟懸けで綾斗を狙う。

追い込まれ誘導されていると自覚した。

 

(このまま行っても防戦一方…ならばやるしかないよね…!)

 

袈裟懸けを弾き後ろに後退するのではなく踏み込む綾斗。

死地に活路を見出だすために黄金色の刃の前に身体を晒す。

 

(なっ…!?自ら隙を作るために《壊劫の魔剣》に身体を晒すのですか!?)

 

その行動に流石の綺凛も内心で驚いていた。

脇腹を見せた綾斗の行動に思考を止めそうになった綺凛だったが相手がお膳立てしているのを見逃すほど日和見主義ではなく父親の解放が掛かっているのだ。

黄金色の刀身が綾斗の脇腹を抉るが手応えが鋼を突いたような感触が武器越しに伝わってくる。

同時に綾斗は自身の脇腹に灼熱の鉄棒が押し当てられているような激痛が走るが構いもしないといった感じに綺凛の校章目掛け刃を振り下ろす。

 

(死地に活路を見出だす気ですか…!やりますね天霧先輩…!)

 

その一撃を綺凛は身体を捻る。

その際に前髪の数本が切り落とされ銀髪がパラリ、と地面に落ちるが回避されてしまった。

反応速度に綾斗は改めて驚きつつも返された刃を《黒炉の魔剣》で受け止めその反動を生かして大きく後ろへ跳躍した。

 

「くぅ…危なかった…。」

 

咄嗟に星辰力を爆発させて脇腹付近に集中させたからか痛みはあるものの後一歩間違っていたら戦闘不能になっていたかもしれなかった。

そもそも生身で純星煌式武装

一方で今回初めて剣を合わせた綺凛も心底感嘆するような表情を浮かべていた。

剣を構えながら綾斗を見る。

 

「…流石は天霧先輩。驚きました。まさか状況の打開に自ら死地に飛び込むとは思いませんでした。」

 

「星辰力の量は副会長に負けてないからね。」

 

とは言え何度も使える手ではない為今回限りの緊急回避にすぎない。

どれだけ星辰力が有ったとしても相手の太刀筋似合わせて相殺するように防御に回せば尽きてしまう。

それに攻撃に合わせるタイミングがシビアすぎるため綺凛相手では現実的ではなかった。

 

「それに…”連鶴”から逃れられたのはお義兄さんに続いて二人目です。」

 

「なるほど…これが噂に聞く”連鶴”か…。体験できて最高だよ。」

 

「お褒めにいただき光栄です天霧先輩。ですがわたしよりもお義兄さんの方が使い手としては素晴らしいとおもいますので。」

 

綺凛の刀藤流は綾斗の天霧辰明流の規模に比べると世界に広く門下生を持っている。

もっともその奥義の域まで達している刀藤流の使い手が今対峙している綺凛と蜂也だけなのだが…。

 

「刀藤流には四十九に及ぶ繋ぎの型がありますがそれらを組み合わせることで完全なる連続攻撃を成す技…それが”連鶴”です。」

 

円月を描くように切っ先を下にして腰を軽く落とし脇構えに取る。

綺凛の気迫に呼応するように刀身から紫電が迸る。

 

「”連鶴”に果てなし…それにお義兄さんから大切な武器を預けられていますので…次で仕留めます!」

 

一対一の闘いにおいては刀藤流の方が綾斗の天霧辰明流よりも優れているといえるだろう。

現にこの試合では相性でいえば不利なのは綾斗だ。

 

ーしかしー。

 

「それじゃあこっちも天霧辰明流の全力で答えさせて貰おうかな。」

 

綾斗はそう言って星辰力を高め《黒炉の魔剣》を正眼の構えで駆け出した。

 

◆ ◆ ◆

 

「咲き誇れ!『九輪の舞焔花(プリムローズ)』!!」

 

ユリスの言霊に呼応して魔方陣が展開し九つの火炎球がそれぞれバラバラの軌道を描き蜂也へ襲いかかる。

普通の選手ならば回避を選択したり武装を展開したりするのだが…。

 

「すげー速度だなこりゃ。」

 

蜂也は歩きだし片手の銃を正面に構え引き金を引く。

次の瞬間には蜂也へ到達する予定だった火炎球は描き消されてしまった。

蜂也の無系統魔法《闘技解体(アーツデモリッション)》だ。

 

「!?」

 

「呆けてんじゃねーぞ…リースフェルト!」

 

もう片手に持った銃を正面に掲げると黒い弾丸…というよりも対物ライフル弾のような大口径の弾丸がマシンガンの速度の如くがユリスへ襲いかかる。

それは蜂也が得意とする加重系統魔法『重力弾(グラビティ・バレット)』だ。

 

「咲き誇れ!『隔絶の赤傘花《レッドクラウン》』…!!くううっ!?」

 

目の前に出した赤楯に重力の塊が激突し衝撃がユリスに伝わるが破壊はされていない。

防ぎきれる、そう判断したユリスだったが相手が悪かった。

 

「その程度の防壁で俺の魔法を防げるとおもうなよ?」

 

ズガガガガッ!と抉り取るような音が響き渡る。

咄嗟に出した防御用の技で《重力弾》を防ぐに成功するが次の瞬間に《隔絶の赤傘花(レッドクラウン)》にヒビが入り突風が吹き荒れる。

引き金を引き銃口からフラッシュが数度煌めくとその衝撃は連続で楯越しにユリスに伝わり次第に赤楯にヒビが入る。

遂には砕け散ってしまう。

 

「くっ…これだけの威力のものを連続で…不味い破られる…!咲き誇れ!『赤熱の灼斬花(リビングストンデイジー)!!』

 

反射的に炎の戦輪を顕現させ蜂也へ襲いかかるように仕向けるが片手の銃口が閃光を放つと次々と掻き消されていく。

その光景を見てユリスは困惑した。

 

(バカな…!『赤熱の灼斬花(リビングストンデイジー)』が掻き消されている…っ!)

 

詠唱込みの技で数も最初に比べればその倍…”二十”。

その数を展開しているのに関わらず涼しい顔で捌ききる蜂也に戦慄さえ覚えた。

 

(そもそも…技を使うのに詠唱をしていない…!)

 

《魔術師》や《魔女》は言霊を通じたりイメージすることで自分の中にある”属性”を呼び覚まし写世に出すのであり

それを行わない場合威力は極端に低下する。

星脈世代が世に生まれてから先人の知識、前提が有るからこそユリスやシルヴィアのような《魔女》はイメージし詠唱するのだ。

だが蜂也はその前提を崩して詠唱を破棄して続けざまに攻撃を仕掛けてきているのはユリスとしては「あり得ないだろうそれは!」と叫びたかった。

 

蜂也は詠唱せずに引き金を引いて《フラッシュエッジ》の光輪を複数展開しユリスへと向かう。

凄まじいスピードで展開される魔法に対応するためには詠唱せずに展開すべきなのだろうがそれでは威力の有る蜂也の魔法には対応できないので苦肉の策であった。

まだ蜂也の技が処理しきれない数でないのが救いだった。

 

…そもそもにおいてユリスの《技》と蜂也の《技》では根本的に発生方法が違うためわざわざ口に出して行使する必要はない。

イメージし具現化するのは《魔法師》の”嘘を現実にする”というのには似通っているが…。

そんなことを知る筈もないのでユリスは今目の前にいる蜂也を相手しなくてはならないのだが。

 

炎と光の輪がぶつかり合い黒弾を回避するユリス。

 

「くぅぅぅっ…!!かはっ…!」

 

しかし全てを避けきれないため数発貰ってしまい苦悶の表情を浮かべながら動き次なる手に対する対応策を施す。

相手を出来ているのはユリスのフィジカルもあるのだが…と今は追撃と言わんばかりに詠唱した。

 

「咲き誇れ!『鋭槍の白炎花(ロンギフローラム)』!!」

 

青白い色の炎の槍が蜂也目掛け飛翔する。

しかし、その炎のテッポウユリは蜂也には届かない。

片手に翳した銃口が煌めくと炎の槍は消火されたように掻き消される。

次の瞬間には空間に現れたつららのような銃撃がユリスを襲う。

 

「これもダメかっ…!くっ…『重波の焔鳳花(ラナンキュロス)』」

 

防御用の魔法を投射し自身の周りに炎の波をいくつも現れ、身を守る。が炎の障壁にぶつかる前に氷柱が霧散した次の瞬間に身体が重く感じた。

ユリスの周りには白い霧が立ち込めており炎が燃えているにも関わらず寒さを覚えた。

息苦しさを覚えるユリスはその原因に行き当たり愕然とした。

 

(息がしづらい…白い湯気……これはドライアイスかっ!?まさか先ほどの氷柱は二酸化炭素…それでわたしの技を掻き消したのかっ!)

 

蜂也が放った技は放出系統魔法《ドライ・ミーティア》、それは蜂也…八幡の姉である七草真由美が得意とする二酸化炭素を転用する得意技だ。

 

放った《ドライ・ミーティア》の数は多数、炎の障壁にぶつかる前に分解しドライアイスから二酸化炭素を星脈世代と言えど覆う程の二酸化炭素を周りに展開…と言うか重力での気流操作をされているので覆われているので現に炎の燃え盛りは弱まりユリスの足はぐらついていた。

 

「まさかこんな搦め手を…」

 

「お前が準決勝で聖ガラードワースの鎧着てた選手に炎をぶつけて蒸らしてただろ?それを見て思い付いてたんだけど。」

 

蜂也はゆっくりとユリスに近づきながら思い付いた戦法を説明する。

酸欠で回らない頭を必死に回しながら蜂也を見つめるユリスはさながら近づく足音は死神が近づいて来ているようにさえ思えた。

 

(身体に力が…入らんっ…!このままでは…!)

 

しまいにはユリスを守っていた炎の障壁は消え去ってしまった。

守るものは無くなり無防備にその身体を晒すユリス。

遂に数歩踏み出せば近寄られる距離にまで蜂也の接近を許してしまった。

 

「終わりだ。俺が教えた集応法もまぁ…生かしきれていたかもな。」

 

蜂也がユリスの意識を刈り取るために単一魔法である《エアブリット》を発動としたその時だった。

 

「(い、ま、だっ…!)咲き、誇れ…っ!『栄裂の炎爪華(グロリオーサ)』!!」

 

「なっ!?」

 

設置タイプの魔法。

それは先程の魔法の打ち合いの際にユリスが保険として仕掛けていた魔法だった。

地面から巨大な炎の牙を5本、噴出し蜂也を仕留めるために起動した。

さながら反逆の牙が蜂也へ突き立てられる。

 

(今だっ!)

 

爆発しその衝撃でユリスは離れることに成功し距離を取るために後ろへ『極楽鳥の燈翼(ストレリーティア)』で

炎の翼を生み出し、空を駆けて飛翔する。

 

「…綾斗!」

 

後退するユリスの目に入ったのは《壊劫の魔剣》を巧みに操り押されている綾斗の姿が。

飛翔しながら牽制のためにかなりの速度で接近し《『九輪の舞焔花(プリムローズ)』》を発動させ割って入り綾斗を抱き抱え後退する二人。

着地を決めるがそう簡単に《疾風刃雷》の追撃を逃れられなかった。

 

「逃がしません…《影技・春雷遥》っ。」

 

腕を引くように構え星辰力を剣先に纏わせチャージが完了したところで前方に突き出し放出された青白い星辰力の奔流が二人に襲いかかる。

それに気がついたのユリスでレイピアを回すように構える。

防御よりも攻撃で相殺することを選んだユリスが放った技が綺凛の技に激突する。

 

 

「くっ…咲き…誇れ!『呑竜の咬焔花(アンテリナム・マジェス)』!!!…くぅぅぅぅ……きゃぁぁぁっ!!」

 

息も絶え絶えに詠唱し巨大な炎の竜が顕現し放たれた青い閃光へ向かって行く。

出すタイミングが遅かったのかユリス達の眼前で爆発し技を相殺することは出来たが衝撃までは相殺することは出来ずに悲鳴を上げて吹き飛ばされる。

 

「ユリスっ!!」

 

その直前に綾斗はユリスの抱き抱え背中を向けて衝撃から逃れるように行動をした。

衝撃は綾斗達の後ろに有る防御壁がその場所を除いて壊れるくらいには威力があった。

 

暴風が鳴り止み抱き抱えたユリスに声を掛ける綾斗。

 

「ユリスっ」

 

「だ、大丈夫だ…まさかあの技が止められるとはな…。」

 

その反応を見て安心する綾斗はユリスを立たせた。

 

「まだ行ける?僕一人で刀藤さんを相手取るのは結構きついからさ…。」

 

「それを言うならわたしも綺凛を相手取るのは無理だぞ?」

 

お互いがお互いを立たせ正面にいる綺凛を見据えている。

しかし。

 

「なっ…!?」

 

「…本当に規格外だね。」

 

二人は少し呆れるしか無かった。

その視線の先にいたのは。

 

「大丈夫でしたかお義兄さん?」

 

「ああ。大丈夫。少し制服が焦げちまったけど…まぁ大丈夫大丈夫。」

 

綺凛の隣に立ち制服の一部が焦げてしまってはいるがどこも負傷していない蜂也の姿があった。

仕切り直しだと言わんばかりに互いが武器を構え激突した。

 

◆ ◆ ◆

 

闘いは最終局面に向かっていた。

ほぼ乱戦であった。

 

綾斗は《黒炉の魔剣》を構え綺凛への間合いを詰める。

迎え撃つ綺凛も《壊劫の魔剣》の切っ先を煌めかせ応戦する、がそこへユリスの炎の戦輪が襲いかかる。

しかし蜂也の光輪が相殺し綾斗へ襲いかかる。

そこを潜り抜けても今度は綺凛に綾斗の刃は蜂也が発生させた重力壁が出現し切り裂くに至らず今度は綺凛の刃はユリスの炎の障壁に阻まれるという千日手になっていた。

 

たった一太刀、届けば良いのに互いの校章を切り裂けず火花を散らす。

 

「おおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

「はああああああああああああっ!!」

 

烈迫する剣激に周囲に飛び散った破片が舞い散り砂煙を上げる。

何十という打ち合いをしているにも関わらず互いに決定打を与えられていない。

しかし、状況は変化した。

 

「ちっ…!」

 

蜂也が持っていた銃をユリスが炎の戦輪で切り裂いたのだ。

これにより魔法による援護が出来なくなり攻防の有利が出来た綾斗達は攻勢を仕掛ける。

ユリスが《アスペラ・スピーナ(レイピア型煌式武装)》で虚空に魔方陣を描き、巨大な竜が姿を現す。

不十分な詠唱ではなく全力での攻撃だ。

 

「咲き誇れ!『呑竜の咬焔花(アンテリナム・マジェス)』!!」

 

二度目の焔の竜は舞い上がり上空より綺凛を襲った。

後ろに下がろうとする綺凛。しかしそのタイミングで綾斗はギリギリまで引き付け距離を離さないようにして仕掛けた。

 

「天霧辰明流剣術中伝、”陸屠蜂(りくとばち)”」

 

霞に構えを取ってからの六連撃の突き技。

このタイミングではユリスの技か綾斗の追撃かで片方の技に対応するしかなく逃げ場はない。

 

ー筈だったー。

 

「俺をいること忘れてねぇかな?」

 

「!?」

「!?」

 

やけに通る声が綾斗達の耳に入る。

炎の竜は後方からの光の奔流に飲み込まれ六連撃は綺凛に届かず無力化されてしまった。

 

炎の竜が吹き飛ばされたその衝撃で吹き飛ばされながらも体勢を整える着地した綾斗のもとにユリスが駆け寄る。

 

「大丈夫か綾斗!」

 

「ああ。僕は大丈夫だけど…これは…ちょっと参っちゃうな。」

 

「あれで倒せてないのはちょっと異常だぞ…?」

 

綾斗はそう言って正面を見ると綺凛の後ろに立つ蜂也が何処からか取り出した銃型煌式武装がスパークしていた。

スパークした武装を放り投げて銃のような物を装備し直している。

 

「しかし…蜂也の《魔術師》としての能力は異常だ…詠唱無しであれ程の威力の技を繰り出せるとは…。一体なんなのだあれは…。」

 

そう呟くユリスに綾斗は思考を巡らせ一つの答えに至った。

 

「ユリス。副会長が持っているあの銃は煌星武装ではなくて魔法の発動を補助する道具、だったりしないかな。」

 

「なんだと?」

 

「もっと早く気づくべきだったんだ。僕はあまり《魔術師》や《魔女》についてあまり詳しくないけど”魔法”はイメージが大切だからそれを言葉にしないと十全な威力や複雑な魔法は発揮できない筈だ。それこそ副会長が使う魔法が何よりも複雑すぎる。」

 

光輪や重力制御に二酸化炭素をドライアイスへ変換し射出…。

そこでユリスも同じ思いに至ったのか愕然とした表情を浮かべている。

 

「まさか蜂也の魔法は”起動式”…科学的に起こしてあの銃で補助して発動させている…バカな!あれ程の規模の事象の変更を行っていれば脳がパンクするだろう?」

 

「それが副会長が出来てしまう…本当の実力なのかも知れないね。」

 

事象改変を起こすほどの魔法を”式”に置き換え脳内で処理しそれを銃型の道具で処理を行っている…その事を理解しユリスはつくづく蜂也が規格外であることを理解した。

 

「手に持つ道具…まるでおとぎ話の魔法使いが使う”ホウキ”のようだな。」

 

「獲物を持っていないのにあれだけの戦闘能力は本当に参っちゃうねあれは…。」

 

所持している《壊劫の魔剣》は現在綺凛が所持しており戦闘力は半減している…筈だったがそれを補ってあまりある《魔術師》としての能力を発揮し綾斗とユリスを追い詰めていることに愕然としていた。

その事に気がつき苦い顔を浮かべる二人だったが負けるわけには行かないと手に持つ獲物を握りしめる。

 

「そろそろ決着をつけようじゃねーか。」

 

そう告げる蜂也は手に持つ銃を構え引き金を引く。

銃口のマズルフラッシュが見えた瞬間に冷気を帯びた弾丸が投射された。

 

威力はそれほどでもないものの如何せん数が多いため小回りの効かない《黒炉の魔剣》では対応がしづらい。

その隙をついて綺凛が攻撃を仕掛ける。

 

「参ります!」

 

鋭く速い連撃は綾斗の精神を削るには十分すぎた。

徐々にではあるが押され始める綾斗。

 

(くっ…副会長が使っていたときの大きさならまだしも刀藤さんが使っている日本刀の大きさでは対処しづらい…!)

 

今はその速度に対応するのに手一杯だ。

 

(このままじゃ押し切られる…!)

 

「綾斗!」

 

と、鋭い声が綾斗の耳を打つ。

直ぐ様その意図を感じ取った綾斗は横薙の斬撃を《黒炉の魔剣》の腹で受け止めその勢いで後ろに飛ぶ。

 

「綻べ、『大輪の爆耀華(ラフレシア)』!!」

 

ユリスが《アスペラ・スピーナ(レイピア型煌式武装)》を振り下ろし蜂也の足元に魔法陣が浮かび上がりその瞬間に蜂也の目の前にとてつもない炎の華が顕現し、膨れ上がった。

 

ーしかしー。

 

「………。」

 

この会場に居る誰もが聞き取れないほどの声量で左手を翳し魔法の起動式が展開する。

 

その結果、吹き荒れる筈の焔で埋め尽くされる筈だった炎燐は氷の結晶へと変化しその炎の花弁はその形のまま氷の花弁へと変化し砕け散る。

 

落ちる氷の花弁へ変化したその背後から銃を構える姿が見え銃口から光が焚かれた。

驚愕するユリスを尻目に蜂也は片手の銃の引き金を引いて先程の炎の障壁を砕け散らせた攻撃を連続で発動した。

綾斗達がいる付近を中心として加重系統魔法《重力爆散(グラビティ・ブラスト)》が放たれる。

 

「ー!」

 

その衝撃は凄まじくクラスター爆弾のような攻撃範囲にユリスの悲鳴を飲み込み轟音に掻き消された。

ユリスと共に塵のように吹き飛ばされた綾斗は意識を手放しそうになったが全身を駆け巡る痛みに意識を強制覚醒させて意識消失判定になら無いように食い縛った。

 

「ぐぅ…!はぁ…っ!ユ、リス…。」

 

倒れ伏していた綾斗は立ち上がり状況を確認すると自分達がいた場所が瓦礫の山と化しておりよくこれで無事だったなと逆に感心してしまった。

制服は所々ボロボロになってしまっているが校章は無事だった。

その状況を作り出した蜂也は綺凛のもとに駆け寄り後ろへ後退している。

追撃の心配はないようで安心した。

 

「綾斗、無事か…?」

 

か細い声に反応し後ろを振り向くと今の綾斗と同じくらいに制服がボロボロになっているユリスの姿があった。

急ぎ駆け寄るが綾斗も先程のダメージが蓄積しているのか動きが鈍いが崩れ落ちそうなユリスを抱き止める。

 

「ユリス!」

 

「はぁ…はぁ…大丈夫、と言いたいところだが…流石に厳しい…な。」

 

綾斗に抱き起こされているユリスはぐったりしたまま苦笑を浮かべている。

 

「正直…どう思う?勝てると思うか?」

 

その問いかけに綾斗はすぐに回答を出せなかった。

 

「正直…かなりきつい…かな。」

 

「まだ、二人は健在…か。」

 

この状況を作り出した蜂也はほぼ損耗無しで戦闘が出来る状況に有り綺凛も殆ど損耗はない。

片方どちらかを倒せていれば可能性はあっただろうが…今はその可能性はゼロに等しい。

勝てるとしたら蜂也を戦闘不能にするしかない。

 

「あとは僕次第…かな。速度で上回れないと副会長には勝てない。」

 

「速度か…。」

 

その言葉を聞いてユリスは綾斗の持つ《黒炉の魔剣》に手を伸ばす。

ジュっ!と肉が焼ける音が響きあまりの熱さにユリスは苦悶の表情を浮かべ綾斗は慌てた。

 

「ユリス、何を!」

 

「ぐぅ……!流石に触れさせてはくれないか…綾斗。星辰力を注ぎ込めお前がイメージする使いやすい形を想像しながらな。わたしが調整する。」

 

「…わかった。」

 

蜂也に、この試合に勝つための方法を二人で編み出していた。

《黒炉の魔剣》が収斂されて洗練されていく。

 

「…出来たぞこれがお前の、天霧綾斗の《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》だ。」

 

「…了解だ、ユリス。僕は最後まで諦めない。君の願いを叶えるためにね。」

 

「ふふっ…そうか…すまないが…あとは頼む。」

 

パタリと綾斗の腕のなかで気絶するユリス。当然ながら意識消失判定が下った。

 

「ユリス=アレクシア・フォン・リースフェル、意識消失(コモンアンシャスネス)

 

綾斗は意識を失ったユリスを優しく横たわらせ《黒炉の魔剣》を一振し振り向いて歩き出した。

 

◆ ◆ ◆

 

「綺凛ちゃん調子は?」

 

「大丈夫です。行けま……っ!」

 

「おっと…」

 

グラリ、とふらつき倒れそうになる所を俺は抱き止める。

 

(予想以上に星辰力を喰われていたな…流石は純星煌式武装って言ったところか?)

 

《瞳》で綺凛ちゃんの状態を確認すると星辰力が底を突きそうになるまで消費されていた。

無意識に放出をしていたのかも知れないがこれ以上戦闘は出来ない。

ちょうど良いと言えば丁度良いのかも知れない。

 

こっちは万全な俺がいる。

向こうはユリスがダメージを受けて綾斗になにかを託しているように見えたが…うん分からんが向こうは天霧も手負いだ。

しかし楽観視するならば簡単な試合かもしれないけど手負いの相手ほど危険なものは無いと俺の経験上の勘が告げていた。

 

「…綺凛ちゃんは下がっててくれるか?」

 

「わたしはまだ闘えます!…うっ…」

 

「星辰力を《壊劫の魔剣》に吸われ過ぎたんだ…ほらふらついてるし…ごめんな俺の調整が不完全で。」

 

「そんなこと…わたし…準決勝でもお義兄さんのお役に立ててないです…。」

 

しょんぼりする綺凛ちゃんの頭を撫でる。

 

「そんなこと無いよ。綺凛ちゃんが居てくれたことで今有利に進んでる。」

 

「お義兄さん…。」

 

「だからしょげる必要はないよ。ね?」

 

そう告げて手を翳し近くに刺さっていた《壊劫の魔剣》を加重系統魔法で引き寄せ発動体を握ると何時もの大剣の刀身が現れる。

脳内に《グラム》が話しかけてきた。

 

(待ちわびたぞ主。)

 

(悪かったな。)

 

(まぁ綺凛殿は我を扱うには…まぁ及第点であったな。悪くはなかったが。)

 

中々に辛辣な評価だが十分に調整していない純星煌式武装を扱っていたのは十分な成果だと思うが。

 

(そうかい…相手は手負いだが厄介だぞ?)

 

(相手にとって不足はない…行くぞ主!)

 

(…ああ。)

 

「んじゃ綺凛ちゃん。ここで休んでて?行ってくる。」

 

「はい、お義兄…さん。」

 

「刀藤綺凛、意識消失(コモンアンシャスネス)

 

壁に持たれ掛けさせると我慢していたのか意識を失ってしまった。

俺は綺凛ちゃんを優しく横たわらせた後にくるりと振り返り発動体に星辰力を注ぎ込むと励起しバチり、と紫電が飛び散る。

ステージの中央へ向かうと天霧も同じタイミングでこちらへ向かっていた。

 

「?」

 

その手に持っていた《黒炉の魔剣》はダウンサイズし大きさは綺凛ちゃんが先程使っていた《壊劫の魔剣》より少し大きいくらいの日本刀のサイズへ変化していた。

 

(調整……?ああ。リースフェルトが協力したのか。)

 

黒炉の魔剣からは赤い螺旋が巻き付いている。恐らくはリースフェルトが手伝い小型化させたのだろう。

 

(うむ。恐らくはリースフェルト嬢の力を借りて天霧殿に合わせた刀身に変化させたようだ。セレスタもやる気十分なようだ。)

 

(負けてくれるなよ?)

 

(無論である。)

 

近づいてきているのを確認し脳内での会話を中断する。

 

「お待たせしました副会長。」

 

「いや、こっちも待たせた。しっかしまぁ…お互いボロボロだな。」

 

「ええ。」

 

俺と天霧の制服は所々穴が空いたり煤けていたりしている。

満身創痍、とはまさにこの事だろうか。

互いに歩きだし間合いに入った瞬間に烈迫した気合いがステージ中央で激突する。

 

「おおおおおおおおおおおおっ!!!」

「はあああああああああああっ!!!」

 

互いに純星煌式武装の刀身が触れた瞬間に火花を散らす。

 

(さっきよりも速えなおい…!)

 

先程まで俺と剣を合わせていた時よりも剣速が恐ろしく速い。

気を抜けば両断されてしまうのはこちらだと。

ならばと。

 

(卑怯とは言ってくれるなよ…天霧…!)

 

発動体を握る手を通し《壊劫の魔剣》に対して加重系統魔法を付与し速度と威力を底上げする。

その瞬間に天霧が苦悶の表情を浮かべる。

速度と威力、上回ることが出来たようだ。

 

威力と速度はこちらが勝っている状態で天霧は一発でも貰ったら終了。

剣速は速くなっているが体力は落ちており目に見えて隙があるのがわかった。

…仕掛けるタイミングはここだった。

 

案の定俺が予測したタイミングで校章を狙い鋭い突きを繰り出す。

が、その刀身を弾き飛ばすように上段へ上げ返す刃で振り下ろし天霧の校章を狙う。

 

「ーーーーーーっ!!」

 

が、その前に身体を捻り制服を切り裂くだけに留まり《壊劫の魔剣》が地面に激突しその付近に瓦礫が舞う。

その舞い上がった瓦礫が天霧の姿を隠してしまい悪手であった。

 

(何処に行った……っ!…上かっ!?)

 

天霧は遥か上空、瓦礫を使って空へと駆け巡っていた。

気がついたときには俺の背後に回っていた。

俺の背筋を焼くような威圧感が迫り今このタイミングでは迎撃が間に合わない、と俺の本能が告げていた。

 

(やられる……………?!…だが、綺凛ちゃんのため負けられねぇ…!)

 

次の瞬間に俺の意思に反応してくれたのかこのタイミングで『賢者の瞳(ワイズマン・サイト)』発動し両目が黄金色に輝く。

 

脳裏に映るは”俺が天霧に懐に潜り込まれ円を描きながら斬撃を繰り出し校章を破壊され敗北する未来”の映像が脳内に叩き込まれた。

これを回避するにはどうすれば良いのかの道筋を構築する。

 

(これしかねぇ…か!)

 

構築した必勝パターンを掴むため直ぐ様行動する。

その場から身体を捻り《壊劫の魔剣》を逆手に持ち変え切り上げる。

 

「なっ……!?くっ…!!」

 

俺の校章を切り裂こうとした斬撃を振り上げた《壊劫の魔剣》によって軌道を変えられて回避せしめた俺に天霧は驚いていたようだがその隙を逃すわけに行かないとその状態で腰を深く落とし利き手に持ち変え構える。

 

「魔剣完了…ってな。」

 

詠唱は特に必要ない。

今は《グラム》が憑依しているわけでもないので。

《壊劫の魔剣》に俺の魔法力が星辰力に変換されて注ぎ込まれた次の瞬間には大剣に纏わり付く雷が黄金色から赤色化した稲妻へと変化する。

回避され着地した天霧は利き足を踏ん張りこちらへ武器の質量を使い回転し俺の懐へ入り込もうとするが俺の方が速かった。

 

「天霧辰明流剣術奥伝、ー”修羅月(しゅらづき)”!!」

 

天霧がこちらを捉え旋回し半月を描くような剣閃を煌めかせる。

其よりも早く利き足を踏み込むと同時にステージ上に描かれた不尭の象徴たる”赤蓮”が砕け散る。

それを合図として俺は気合いの籠った一撃を放った。

叫ぶのは心の中にしておく。

まぁ…《グラム》の台詞を借りるのならば…。

 

壊劫の魔剣(ベルヴェルク=グラム)ッ!!』

 

万物を破壊する必殺の一撃が叩き込まれた。

 

「あああああああああっらぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

こちらへ飛び込んできた天霧が持つ《黒炉の魔剣》に描かれる紫と緋色の螺旋の斬撃を俺の《壊劫の魔剣》が確実に捉え黄金色と赤色した稲妻の斬撃は発していたであろう技を破壊しながら天霧の胸部分を目掛け横一閃で薙ぎ払う。

 

「はあああああああっ!!!!」

「はあああああああっ!!!!」

 

互いの技が交差した瞬間に凄まじい衝撃と破裂音がステージに響き天霧はその技の反動で荒れた大地へと転がっていく。

 

俺はと言うと結構辛い。どのくらい辛いかと言うと立ってるのが辛い。

しかし天霧の技の影響を受けたが少しふらつくも膝を着くことはせずに立ったままだ。

正直俺の刃が天霧に届いたのか、それとも天霧の刃が俺に届いたのかはわからない。

ここで校章を確認するのは野暮と言うものかもしれない。

しかし、確かめる術は直ぐ様俺達の耳に入ってきた。

 

『天霧綾斗、校章破損(バッチザブロークン)

「試合終了!勝者名護蜂也&刀藤綺凛!!!!」

 

パチパチ…パチパチパチパチパチパチ…!!!ワァァァァァァァァ…!!!!

 

会場は静まり返るが一人の拍手を皮切りにそれは大瀑布のような衝撃へと変わり歓声が大歓声へと変化した。

 

『つ、ついに!遂に決着!凄まじい激戦の末、この鳳凰星武祭(フェニクス)決勝戦を制したのは星導館学園の名護選手と刀藤選手です!』

 

『いやー素晴らしい試合でした。決勝にふさわしい引き込まれる試合展開でしたッス!今一度この素晴らしい試合を見せてくだった両選手へ大きな拍手を!』

 

拍手喝采雨あられとはまさにこういうことなんだろうが…なんだろうなれないなこれ…。

とりあえず倒れている天霧に近づき手を伸ばすと呆けた顔をされたが直ぐ様「参りました」というあっけからんな表情を浮かべて手を握り返された。

これで払い飛ばされたらどうしようかと思ったがそんなことをするやつじゃなくて助かった。

満身創痍の天霧を立ち上がらせて一息着いたあと慣れないファンサをして手を振ると黄色い悲鳴も聞こえて来て困惑したが…ひとまず優勝した、と言う実感だけは沸いてきたのだった。

 

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