俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。 作:萩月輝夜
なんでそんなことをするのかと言うと閉会式兼任の表彰式が行われるからだ。
今プロキオンステージの表彰台に立っているのは先程治療を受けて制服も新品の状態になった優勝者の俺と綺凛ちゃん、準優勝の天霧がおり逆にパートナーのリースフェルトは不在だ。
何故なら先程の試合で疲労困憊の星辰力切れで医療院に運ばれた。
だからここの表彰台には俺と綺凛ちゃん、天霧しか居ない。
まぁ綺凛ちゃんに至っては俺が《
だって優勝したんだから二人で表彰受けたいじゃん?一人なら難癖つけてフケていたかもしれない。
閉会式…なのだが観客席は先程の試合をみていた観客が隙間もないほどぎゅうぎゅうに詰められている。
試合をするわけでもないので見る必要が無いため観客席が埋まることは無い筈なのだがクローディアに聞いたところによると試合が盛り上がれば盛り上がるほど閉会式にやってくる観客が多くその年、どのくらい盛り上がったか、観客が満足したかの指標が分かるようになっているらしい。
「ーーーーーーーーーーーーー。」
壇上では運営委員長のマディアス・メサが今大会の総評を述べているが正直どうでも良い。
俺達じゃなくてどっちかと言うと試合を見る観客、いや顧客に向けての説明…株主総会みたいだな。
壇上には各学園の生徒会長が並び何となくそちらの方を見ているとその中の数名と目が合う。
「……♪」
一人は星導館学園…と言うかクローディアがこちらを見て本心から喜んでいるのだろう微笑みをこちらに向けている。一応これでクローディア…というか星導館の今シーズンのトップに躍り出ることは出来ただろう。
めちゃくちゃ点差数をつけたらしい。
(まぁ俺と天霧のワンツーフィニッシュだしな…総合点はもう負けないだろ。)
そんなことを思っていると知り合いその二になるクインヴェール女学園の生徒会長、シルヴィア・リューネハイムと目があった。
「……♪」
こちらも同じく目があって小さく微笑んで悪戯っぽくウインクを送ってきた。
その顔の良さと愛嬌から「俺本当にシルヴィと知り合いなの…?」と本気で疑いたくなったが彼女の視線が本当なのだと実感を沸かせた。
「~~~♪」
「……。」
知り合いその三である界龍第七学園の生徒会長、茫星露が俺と天霧をキラキラした目で見ている。
そのキラキラは非常に愛らしいと思うが…こいつの戦闘狂な部分を知っているため素直に喜べないんだが…。
対して聖ガラードワース学園の生徒会長は俺達を観察…というか直ぐ様興味深そうな視線へ変わったのでどうにもお眼鏡には叶ったらしい。
聖ガラードワースの生徒会長はあれだな。なんか隠してるな。たぶんだけど。
「……。」
視線を切って俺は別の人物へ視線を向ける。
俺の視線を受けた人物はこちらを睨むようにみていたが意図的に《瞳》と「お前のやったこと知ってるぞ?」という意味を視線をぶつけてやるとこちらには聞こえないであろう舌打ちと不満げな表情を浮かべていたが…。
今回のフローラ誘拐事件がディルクの仕業というわけ…というか絶対こいつの仕業だろおい。
こちらにはお前がやったという証拠が残ってるし何より下手人が生きたままこちらの手にあるからな…自白しないのなら《記憶読取》で片っ端から記憶吸出して出力してやる。
貴方を誘拐事件の犯人で訴えます!理由はもちろんお分かりですね?貴方がか弱い少女の誘拐を企て俺達の試合を邪魔して選手に悪影響を及ぼしたからです!覚悟の準備をしておいてください!近いうちにカチコミを掛けに行きます!尋問をします!俺との話し合いのテーブルに必ず着いて貰います!慰謝料の準備をしておいてください!貴方は犯罪者です!(まぁレヴォルフだし叩けば埃なんて幾らでも出てくるだろ。の意)星猟隊に捕まる覚悟をしておいてください!良いですね!
…っとイカンイカン。思わずワ○ップ○ョルノが出てしまったな。
と、まぁクローディアにフローラを助け出した時に警備隊に連絡しますか?と言われたがそれはしないように指示した。
どうも六花の上の連中とディルクが繋がっているように思えて証拠を出したところで「やはり見つからなかった。」としらばっくれられるのが見え透いているからな。
…まるで魔法師の師補十八家や十師族と癒着する企業、政府のようだ、と自嘲した。
こうなれば星猟隊の隊長は傑物らしいのでそういったものでは動かなさそうだが上の連中が私利私欲にまみれている連中なら甘い汁を吸うためにディルクを無罪放免にする可能性はあり得たので持ちうる手札は温存しておくことにしよう。
そんなことを考えていると観客へ向けた固い口調の説明は終了し表彰式が始まった。
マディアスに呼ばれ壇上へ上ると観客席から大きな拍手が巻き起こる。
準優勝から順番に表彰されその健闘と称えられた。
「まずは、天霧綾斗並びにここには不在だがユリス=アレクシア・フォン・リースフェルト両名の勇猛果敢な不屈の闘志とその意思、両名の健闘をここに称える。準優勝おめでとう。」
「ありがとうございます。委員長。」
マディアスの差し出した手と握手を交わす天霧。
そのつぎに大きなトロフィーを手渡される。
「そして、名護蜂也並びに刀藤綺凛両名の輝かしい栄光と不屈の闘志、輝かしい勝利をここに称える。優勝おめでとう。」
「…ありがとうございます。」
「お言葉感謝しますっ。」
マディアスが俺の手を握る。…結構強めに握ってきたなこのおっさん。
その後に綺凛ちゃんと握手した後にトロフィーが手渡されたが天霧よりもでかいトロフィーを渡されたが綺凛ちゃんと二人で受けとった。
トロフィーには
…こんなばかでかい六角形なんて見たこと無いんだが…なに?洋館の仕掛けを解くのに使うんかこれ?
「個人的に君…君たちの試合は実に興味深かく面白かったよ。是非とも来年度の《星武祭》で君達の活躍が見られることを楽しみにしているよ。」
「はい!」
「はい。」
マディアスが笑顔で頷いてそう告げたがなにか胡散臭いと思ってしまうのは俺の気のせいだろうか…?
がそれよりも催促されて前を向くように促され俺と綺凛ちゃんはトロフィーを持って前へ向き直る。
それに従い振り向くと六花に集まった各社取材陣がカメラを持って待機している。
隣に居る綺凛ちゃんに小声で話し掛けられた。
「お義兄さん、トロフィーを一緒に掲げましょう…。」
正直乗り気ではなかったが取材陣が居る手前とクローディアと運営委員長が居る前でやらない、という選択肢はとっくに潰されていた。
「分かった…。」
「さぁ!我々に無上の興奮と感動を与えてくれた彼らに、盛大な拍手を!」
マディアスの発言を合図に俺と綺凛ちゃんはトロフィーを一緒に掲げる。
次の瞬間に会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれ俺達はフラッシュを焚かれまくった。
優勝した実感よりも一先ずは”綺凛ちゃんのお願い事を叶えることが出来る”という安堵感の方が強かった。
とりあえず今はファンサでもするかと空いた片手で上にあげてぎこちなく手を振って慣れない笑顔を振り撒くことにした。
◆ ◆ ◆
「……。」
「…。」
控え室に続く通路を俺と綺凛ちゃんで歩くが会話はない。
当然だろうが表彰式の後にインタビューがあったりして精神的に困憊状態だから口を開きたくないのも分かる。
ふと隣を見るといつのまにか隣に居た綺凛ちゃんが後ろで立ち止まっているのに気がついた。
「綺凛ちゃん?」
声を掛けると気がついたのかハッとなり顔をあげる。
「は、はいっ。お義兄さん。」
「どうしたの?…ってまぁあれだけインタビューと写真撮りされたらつかれるわな…来年はぜってぇ受けねぇぞ…。」
そんなことを呟くと綺凛ちゃんが困ったような表情を浮かべていたが直ぐ様なんとも言えない顔色に変わる。
「そ、それは無理だと思うです…。あう……その…。」
「?」
「ええと…はい。やっぱり言います!」
意を決したのか綺凛ちゃんは俺は近づいてきた。はて?いったい何を俺に言うのだろうか?
まさか「嫌いです!」とか言われたらどうしようと思っていたが違った。
俺が眼前を見下ろす距離にまで近づいてきた綺凛ちゃんは同然ながら俺を見上げる形になる。
改めてみるとその顔立ちはやはり整っていてこちらが恥ずかしくなるくらいには近すぎる。
潤んだ紫かかった瞳から目が離せなくなっていた。
「ありがとうございます。お義兄さん。」
口から出たのは感謝の言葉で俺は呆気に取られてしまった。
「お義兄さんがいなければわたしはきっと…今回の《
「…。」
俺は黙って聞いて綺凛ちゃんを見つめていた。
「お義兄さんがいてくれたから…父を…お父さんを助け出すことが出来るようになります…だから…だから…」
感極まっているのか目尻から涙が溢れだしている。
そっと指を使い拭ってやると目を細めて笑顔を浮かべる。
次の瞬間。
「え、ちょ、綺凛ちゃん?」
「……ふぇっ…ぐずっ…ふぇぇぇぇっ…!!」
俺は綺凛ちゃんに抱きつかれてしまった。
両手は手持ちぶさたになったが両腕で綺凛ちゃんの抱き締め頭を撫でた。
「頑張ったね綺凛ちゃん。」
「…はい、お義兄さん。」
その声色は涙声だったが明らかな喜色が浮かんでいた。
俺は綺凛ちゃんが泣き止むまでそうしていた。
◆ ◆ ◆
時刻は変わってレヴォルフ黒学園
「……何のようだ《戦士王》にエンフィールド。俺は忙しいんだがな。」
しっかりとアポイントメントを取って俺達はレヴォルフの生徒会長室に来ていた。
隣に居るメガネを掛けた女子生徒がこの学園には似つかわしい性格であるようで俺達とディルクの雰囲気に怯えている。…がしっかりとコーヒーを出してくれるのには性格の良さが出ている。
…なんでこの子
「…今失礼なことを考えてなかったか?」
「いや?不機嫌そうな面してんなと思っただけだが?カルシウム足りてるか?」
「…手前ぇ。」
不機嫌そうな顔をさらに不機嫌そうにしているが…元々そういう顔なんだろうが。
と、この男と話すのは雑談をしに来たわけではない。
「まぁ俺もお前の不機嫌な顔見ながら茶をしばきに来た訳じゃないんでな…」
とおもむろにメガネをはずし《瞳》を露にすると室内の空気が変化した。
肌を刺すような濃密な殺気が広がる。
「…っ!?」
「な、にこれ…。」
悪いが俺も少し”オコ”なんでな…遠慮はしない。
この室内に居るメガネを掛けた少女…えーところなさんだっけか?悪いが俺はレヴォルフという学園自体に良い印象を持っていないので。
俺は人の名前を呼んだ。
「夜吹」
そう告げると夜吹がなにかを俵持ちして何処からか現れたことに正面の二人は驚いていた。
「あいよ、大将。」
「!?…てめぇは…《影星》の忍びか。」
「お、《悪辣の王》に知っていただいてるたぁ光栄だね。…それよりも大将。どうぞ。」
「……!」
そういって夜吹は肩に担いでいたなにかを地面に乱暴に下ろすとディルクの表情筋がピクリと動いた。
俺達の視線の先にあるのは全身を光の輪と拘束具によって動きを封じられたフローラ誘拐の実行犯《黒猫機関》の一人”ヴェルナー”だった。
そいつを視線に納めながら俺はディルクを《瞳》で射貫いた
「実は俺達準決勝の前にうちの知り合いの女の子が拐われてさ…時を同じくしてその実行犯から”純星煌式武装の凍結”を指示されたんだわ…生徒会長はその話耳に入ってたか?」
そう問いかけるとディルクは先ほどの不機嫌さを露にして答えた。
「…知らねぇな。何処ぞの誰かから恨みでも買われたんだろ?」
「はっ…」
状況を知らないものが聞けば…リースフェルトが聞けば逆上して殴りかかっていただろうが全てを知っている俺としては失笑するしかない。
俺は手に持った端末を掲げる。
「その時の音声通信がここにあるんだが…そのときの声帯波長が…そこに転がってる《黒猫機関》金目の七番…ヴェルナーだっけか?そいつと一致するのよ。ほらよ。」
俺は立ち上がりディルクに近づいて端末を放った。
その光景を見てクローディアは愉快そうに笑っているのはあのディルクが表情を浮かべているからか。
相も変わらずディルクは忌々しそうに鬱陶しそうに俺と端末を見ている。
《瞳》で見る限り演技でもなさそうで実際にそう思っているのだろう。
畳み掛けるとするか…。
「…何が言いたい。」
「うちの知り合いの子を誘拐するようお前さんが指示して床に転がってるこいつをけしかけた…ついでに純星煌式武装を凍結するように指示した…そうだろディルク・エーベルヴァインよ?ネタは上がってるんだ素直に認めたらどうだ?」
《瞳》で射貫きながらディルクに証拠を突きつける。
「俺がこいつを使って指示を出したっていう証拠は何処にあるんだ?俺はそもそもこいつを”知らねぇ”ぞ。」
ほう、そう来たか…まぁディルクがこいつを使って誘拐暴行事件を指示した、という証拠は今俺の手元にはない。それこそこいつが使っている端末を調べない限りは。
だが、”レヴォルフ黒学園が保有する諜報機関《
「だが現に”こいつが《黒猫機関》の構成員”ということがネタとして上がってるんだよ。」
「何が言いてえ。」
致命的な一言を突きつけた。
「
「…。」
俺がそう告げると不機嫌な顔に青筋が立つ。
うんうん。十分な煽り文句らしい。
「そもそもこれを公の場で公表しなかったことに感謝して欲しかったもんだがな…まぁお前さんの学園は犯罪上等だから関係ないんだろうが…この情報とこの男の身柄を星猟隊に身柄引き渡ししたらどうなるだろうな?」
「……!なっ…!」
ほぼ脅しのようなものだがそう煽り立てるとディルクが青筋を立てながら怒号を叫ぼうとして生徒会長室の皮張りの椅子から立ち上がり何か指示を出そうとしていた。
恐らく部屋に備えている自分を守る配下に指示を出そうとしたのだろうがそうはさせない。
『動くな。』
部屋に居るであろう配下に対して武器を使わずに俺の持つ”威圧感”と”殺気”を解放し室内に居る人間の動きを止める。
「…相変わらずおっかないねぇうちの大将は…。」
「それは我が学園の副会長ですしね。」
まぁ二人には感じさせないように”殺気”は押さえ目にしていたが
「………っ!!」
「か、あ…はひゅ………!!………はぁ…はぁ…はぁ…!」
ころなが恐怖で踞り呼吸も出来なくなりそうなほどパニックになっていたので少し和らげる。
うん申し訳ないがもう少し付き合ってくれ。
「俺達が…いやうちの学園がお前の部下によって被害受けてんだよ…補填して欲しいこと分かるよな?…レヴォルフ黒学園生徒会長ディルク・エーベルヴァインさんよ?これは言ってしまえば星導館とレヴォルフの問題なわけだ。この問題を拗らせるかは…あんた次第だぜ?」
「…ちっ…。良い性格してるぜ名護蜂也。」
「どうも。…それと言っておくわ。」
ディルクの目を見ながら《瞳》で射貫く。
「これから先俺の知り合いに手を出すようなら…お前諸ともこの学園を消してやるから覚悟しておくんだな。」
「…。」
「つーわけで俺達からの話は終わりだ。邪魔したな。」
ソファーから立ち上がり目配せするとクローディアと夜吹と共に生徒会長室を後にする。
冗談ではなく俺にはそれが可能だ。面倒だからしないだけだが。
しかし俺の”暴”の感情を解放し有無を言わさずに俺の意見を押し通すことに成功した。
結果として俺は口止め料としてディルクから慰謝料を要求。
「…まぁ、ざっとこんなもんだな」
「てめっ…!」
それに反論したディルクだったが
「お前反論できる立場にいると思ってるのか?」
「ちっ!…クソが…ッ!!」
そういって俺は雑に投げられた小切手の金額を確認して懐に入れる。
要求を飲んで貰い今回の事件に関してはこちらからは追求無し、これでお開きになった。
ディルクの顔色が青くなったり赤くなったりと忙しそうだったが良い気味だと思ったがまたなにかしら仕掛けてきそうなので警戒しておくことに越したことはないだろう。
だが。
本当に俺の知り合いの命に関わるようなことがあれば”代償”を払って貰うがな?
◆ ◆ ◆
「お、おっかなかったですぅ…なんなんですか星導館の副会長さんは…?あ、あれさっきの人がいない…?」
「………(ギリッ)」
「ひぃぃ~!!ごめんなさい黙りますぅ~!!」
蜂也の威圧感から解放されてようやく呼吸が出来るようになったころねは先ほど英士郎が地面に放り投げた黒ずくめの男が居なくなっていることに気がつき慌てるがその反応にディルクが忌々しく鬱陶しそうに歯軋りして睨み付けた。
「てめぇはさっさと帰りやがれ…!」
「は、はい!お先に失礼しますぅ!」
ころねは大慌てで荷物を纏めて生徒会長室から出ていった。
慌ただしさを示すように生徒会長室の扉は開かれたままだ。
「…ちっ!」
バァン!、とイレーネによって破壊され修復されたばかりの扉を乱暴に閉めて皮張りの椅子にドガりと腰かけて高級そうな執務机にディルクの拳が叩きつけられて音が響き渡る。
苛立っているのは目に見えていた。
「…。」
ディルクも予想外だったのだ。
”脅しを掛けた本人がまさか自分の所に指示し実行した手下を取っ捕まえて目の前に転がし脅しを逆に掛けられる”とは予測していなかったからだ。
「一体どんな手品で探し当て捕まえやがった…?」
再開発エリアではなく歓楽街の目立たないところを選んでいたはずだ。
それを1日も掛からずに見つけ出しヴェルナーがあの状態で自分の目の前に放り投げられたことよりもディルクの脳内には忌々しさより”いつどうやって探し当て救出したのか”と。
仲間は試合中であり親しい人間はあの試合会場にいた。
動けるのは蜂也とそのパートナーしかいない。
「まさか…自分で探し出して”猫”を無傷で倒しやがったのか…?」
しかし、それよりも思うところがあった。
「それにあの殺気…名護蜂也…てめぇは一体何者だ…。」
蜂也の本当の正体を知らないディルクの呟きに返答できるものは誰一人としていない。
「あいつを本当に引き込もうってんだからあの男の気が知れねぇ…ちっ…」
ディルクは苛立ちながら蜂也に対するアクションを心底面倒そうに起こしていた。
◆ ◆ ◆
アスタリスク中央行政区エリア、その中心部に《星武祭》の運営本部がある。
一位二位を争う高さの高層ビルの最上階…その一室にマディアス・メサの執務室があった。
自分の執務室の椅子に腰を下ろすと着信が来ていることに気がつき空間ウィンドウを開かせる。
「どうしたんだいディルク。何時も増して不機嫌そうじゃないか?」
「ちっ…!いけしゃぁしゃぁと…俺はあんたのためを思ってやったんだがな。」
空間ウィンドウに映る赤毛の少年は不機嫌そうに鼻をならす。
マディアスの反応も拍車を掛けているからだろうが。
「ああ。報告は聞いていたよ。随分と手痛い目にあったようだね。」
「《
「だからといって今回の件は乱暴すぎる。君も痛い目を見ただろう?君も歓楽街の反乱分子を一掃して一挙両得を狙ったのだろうが…もう少し自重して欲しいものだ。」
やんわり釘を刺すが毒づいた言葉に画面越しの青年は眉をひそめた。
「こういう時のために放っている連中だ。役に立って貰わねぇと意味がねぇ。」
「そちらの諜報員が捕まり揺さぶりを掛けられるのは滑稽としか言えないのだがね…。」
「……。」
ぐうの音もでないのか黙ってしまう青年に少しあきれた表情を浮かべるマディアス。
「まぁ…いい。ところで彼女の方はどうなった?」
「話は聞くようになったが…あれを本気で引き込むつもりか?《
「彼女の擬形体の性能は見ただろう…我々には戦力が足らないのだから…それに彼女には計画の事を知らさせるつもりは無い。」
「まぁ…それが懸命だな。」
「とにかく君はそれに今回の件で名護蜂也くんと天霧綾斗くんを仲間に引き入れられてくれるように頑張ってくれたまえ。私が直接動くわけにはいかないからね。それじゃ。」
「ちっ…!無茶いってくれるぜ。」
青年が通話を切りちゃんと切れたことを確認して別の携帯端末を操作しウィンドウを展開する。
「…。」
その映像は何処かの病室の監視カメラの映像だった。
それはどこかの病室の液体で満たされた治療カプセルに入った少女の姿があり死んだように横たわっているが死んでいるわけではない。
「さてどうしたものかな…。」
眠り続ける少女を見ながらマディアスは計画の進行構築を練り始めた。