俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。 作:萩月輝夜
翌日。
俺達は揃ってヨルベルトに王宮に呼び出された。恐らくは昨日の襲撃の件だろう。
その名前を聞いて俺は思わず眉をひそめ天霧が繰り返す。
「ギュスターブ・マルロー?」
問い掛ける天霧に陛下は本当に何も知らないようで他人伝の情報なのだろう。
「うんまぁ僕たちもよく知らないんだけどね。警官達が昨日の襲撃犯の名前だとそう言っていてね。」
場所は昨日と同じく陛下の自室でありスウェットを着用しラフな格好をしている。
隣に王妃がいないのは昨日の騒ぎで愛人の一人が体調を崩したため見舞いに行っているらしい。
…すげぇ関係だな。もっとどろどろしてるのかと思ったがリースフェルトがいうには愛人と王妃の関係は悪くない…というか友好らしい。
「なんでも国際手配中の犯罪者らしいよ?昔はアスタリスクのどこかの学園に所属をしていたとか言う話らしい…えーと確かどこの学生だったかな…ええと」
「アルルカント・アカデミーですよ陛下。その筋では”有名人”です。」
だからか、俺たちを見て「後輩たち」といったのはそれが原因だったのか。
興味なさそうな陛下の代わりに俺が説明すると「ああ!それだ!」と反応した。
天霧が質問してきた。
「有名人…というと『星武祭』とかで優勝した、とかですか?」
その問いに俺は首を振った。
「いや。序列入りはしていたが『星武祭』には一度も参加しちゃいない。…どっちかというとそう言う名誉よりも悪名の方が轟いているかもな。奴は《翡翠の黄昏》を引き起こしたメンバーの一人、《
そう告げるといち早くリースフェルトが反応していた。
まぁお前なら知ってるか。
「っ!そうか!奴が《創獣の魔術師》か…!」
そこからクローディアが端末を操作し天霧達に公開されている《翡翠の黄昏》についての説明を始める。
その発端や事件内容…誰が解決し誰が捕まったのかを説明されて天霧が疑問を浮かべた。
「あれ?でも全員が捕まったんじゃ…」
疑問に思う天霧。
それに対してクローディアが説明した。
「残念ながら全員が捕まったわけではありませんよ?七名程逃げおおせたものがいるのです。ギュスターブ・マルローはその一人であり裏社会では”有名人”なのですよ。」
…まぁその《翡翠の黄昏》を引き起こした張本人である《ヴァルダ=ヴォロス》の本体?こないだ偶然と遭遇した…という事を知ってるのは俺だけで良い。
『知られたら面倒なことになりそうだ』
「(そうだな…)…そういやあの男が妙なことを言ってたな」
「妙なこと?」
「ああ。『《
問い詰めるように隣にいるクローディアに視線を投げると淀み無く答えた。
「いいえ。ギュスターブ・マルローという人物とは面識がありませんね。あったのは昨日のテラスですし…まぁ他学園から恨まれる、という理由なら沢山ありそうですが…見当も付きませんね。」
《瞳》でクローディアを見るが…嘘を付いているわけでもなさそうなので視線を外し思案する。
ギュスターブはどうしてわざわざ『クローディアのチームに入られては困る』と言ったのか?
狙いが俺達ならばその言葉は相応しくない。
そもそもにおいて俺達が「クローディアたちとチームを組む」とは口外していないし仮にそうだったとしても噂の粋をでないものであの場面で言いきるには似つかわしくない。
だとすると…。
「………?」
視線を向けると一瞬だけだがクローディアがびくついた反応を見せていたが直ぐ様いつもの笑みを張り付けた仮面を装着していた。
その後少しこの後の対策を話した上で陛下からリースフェルトと天霧は呼び止められ解散した。
なんの話をしているのだろうか?と疑問に思ったがそれは後々聞こうと思う。
まぁその前に聞いておかねばならないことがあった。
◆ ◆ ◆
本当にこんな時ばかりは貴方は勘が鋭い事に恨めしいと思ってしまいました。
「クローディア。お前俺になにか隠してるか?」
貴方に陛下の部屋から出る際に「話がある」と言われ宛がわれた客室に連れ込まれた私。
蜂也が使用しているベッドに腰かける。
「…。いいえ?私は貴方に恨めしいことなんか隠してませんよ?」
何時までも平常的に、日常的に蜂也に返答しました。
でもそれは貴方には通用しませんよね?
案の定次の言葉は私の心臓が鷲掴みにされたのかと錯覚を覚えるほど衝撃的な言葉でした。
「今回の件…お前父親か母親に殺意でも向けられて刺客でも差し向けられたのか?」
「?!」
私の驚く表情を見て苦虫を潰したような表情を浮かべる蜂也。
「…やっぱりか。お前の両親が統合企業財体の人間だってのはリースフェルトとかから聞いてたから何となくそう思っただけなんだがな…。」
その表情はどこか苦しく苛立ったような感情が見て取れた。
それは私が貴方に隠していることを伝えない事対してかそれとも家族に対してなのかは分からない。
「話せ、と言ってもお前は話してくれないよな…」
「…ごめんなさい。こればかりは貴方には伝えられないのです。」
「夢、に関わることか?」
「……それは…」
その言い淀みはほぼ答えを告げているようなものだったが彼は追求してこなかった。
「そうか」
頑固にはそれを教えることは出来なかった。
”未来”が変わってしまう可能性があるかもしれないから。
その事に呆れてものも言えないような表情になる蜂也。
「はぁ…何を一人で抱え込んでるのか知らないが少なくとも少しは確認させて貰っても良いか?」
「はい。」
「お前の家族仲が冷えきってるからこうなってるのか?」
「…いいえ。私と父はそれほどでも…まぁ母は統合企業財体の幹部ですので。どうしてそのようなことを?」
どうしてそんなことを聞いてくるのかと私は蜂也から告げられた言葉に絶句してしまった。
いや、”知っていた”と言うべきか。
「俺は…絶縁されたんだよ。実の両親にな。あれは一年前だったっけか…今みたいな息が白くなる時期に実家から追い出されたんだっけな。」
今の時代…というよりも蜂也が元いた世界は『魔法』というのが技術確立し此方と遜色無い技術進歩を遂げている日本でそのようなことがあるのかと驚いた。
”絶縁”という言葉を私は生まれて初めて聞いたかもしれない。
「まぁ訳あって今の養父に引き取られて今があるからそんなに実の両親に対して嫌いとかじゃなくて…”無関心”って言った方が良いのか。まぁそのくらいだし。」
「無関心…って血を分けた実の両親なのでしょう…?そう簡単に…。」
「だからこそだよ。お前にはお前を”家族”と見てる父親…少なくとも娘と見てる母親がいるんだろ?お前が『獅鷲星武祭』に出ることで被害が出る、って考えた両親がまぁ…乱暴だが”忠告”をしに来てくれてる…愛情表現としては最悪だがな。」
妙な説得力に思わず笑みが溢れてしまった。
「ふふっ…確かにそうですわね。…愛情、ですか。」
「だからお前が狙われる理由を教えてくれない?」
「それはダメです。」
「お前なぁ…。」
「ごめんなさい蜂也。でもこればかりは貴方には教えられないのです。」
「そう言うところが頑固だよなお前…。」
「私、ということで納得してください。」
「…わかった。でも抱え込むんじゃねーぞ?」
そう近づき私の頭を撫でる蜂也。
その手の温もりに思わず目を細めて頭に置かれた手を取り頬に当てた。
「私の秘密を当てて見せた蜂也にはご褒美をあげないと行けませんね。」
「俺はお前の飼い犬じゃねーんだけど?っておい。」
取っていた手を引いて勢いで立っていた蜂也をベッドの私の横に座らせ肩を寄せて頭を置いた。
「……。」
「はぁ…。」
このままで。
何時か貴方に教える日が来るまで。
貴方を騙す悪い子を許して欲しいと。
そう思いながら私は運命の人の肩に頭を置いて温もりを何時までも感じていたかった。
◆ ◆ ◆
「ここか…。」
俺に宛がわれた客室で寝てしまったクローディアに毛布を掛けてソファーに腰かけようかと思った矢先に陛下に呼び出され「妹と綾斗が長い時間帰ってこない。見に行ってきて欲しい」という相談を受け子供の頃からよく行っていた孤児院への地図を渡され様子を見に行く事になったのだ。
因みに綺凛ちゃんとシルヴィア達は市街地へショッピングへ向かっていた。
どうも綺凛ちゃんの服を買いに行くとのことらしい。
俺は一人でリーゼルタニアの郊外…所謂貧民街へと足を踏み入れていた。
建物は中心地に比べると近代的な建物は殆ど無くくたびれそこに住む住人の覇気もあまり感じられなかったが近くにある目的の場所へと到着すると新築同様の教会と大きな屋舎が繋がった建物が見えた。
そこにいる孤児達に囲まれてわいわいとまるで動物園の珍獣のような気分になったがまぁ悪い気はしなかった。
どうも俺の事をリースフェルトが伝えていたらしい。
そこの責任者であるシスター・テレーゼに話を聞くと数分前までいたようだがつい先程帰路についた、とのことだった。
「無駄足だったか…?」
教会の敷地外へ足を踏み出すと不快な重く暗い星辰力を感じとり顔をしかめる。
「なんだ…この不快な感覚は…?」
『主。』
(どうした?)
不意に《グラム》の声が脳内に響く。
『リースフェルト殿と天霧殿がなにか禍々しいものと戦っているようだ。』
「昨日のギュスターブ・マルローか?」
『いや。それとは比べ物にならん負の星辰力だ。急いだ方がよいだろう。』
「分かった…。急いだ方が良いのは俺も同感だ。」
加速術式を発動し主要な道路を外れた山の中に入っていく舗装されていない道路を駆け抜ける。
道を進む度に舗装されていない道路が狭まり森の中へ誘われ次第に雪が濃くなり雪景色へ変化していく。
暫くすると車道に置かれた乗用車を発見しそちらへ進むと鼻に突く匂い…そして木々が枯れていた。
点々と続く足跡を視線で追うと突然目の前が真っ白に染まる。
「わっぷ…!突然吹雪いてきやがったな…ん?」
吹雪き道行きが白で閉ざされたがよくよく視界を凝らすとその先に朽ち果てた建物…研究所のような廃墟が見える。
「……っ!?」
その前に人影が三つあり《瞳》で見通すとかなり不味い状況だったことに気がついた。人はその二人からかなり離れているがその距離は直ぐ様詰められるほどだ。
(なんだこの威圧感は…)
戦わせてはならなくこいつはヤバイと、そう俺の本能が警鐘を鳴らした。
直ぐ様行動し白き地面を踏みしめ二人の前に立ちはだかるように割って入る。
「蜂也!?」
「副会長!?」
突然現れた俺に驚く二人はそれぞれの呼び方で俺を呼ぶ。
目の前の銀…白髪の女は感情の起伏が薄いのかさして驚いていない。
しかし、俺を射貫く真っ赤な瞳が見て揺れ動いた気がした。
「そう…貴方が…」
含みを持たせたその言葉に俺は問いかけた。
「お前、誰だ?」
「私は…。」
女は一拍置いて告げた。
その名前を聞いて俺は眉をひそめた。
「オーフェリア・ランドルーフェン。」
◆ ◆ ◆
そう告げられ目の前の少女に視線を向けた。
「お前が…【
(この女子生徒がか?)
『ああ。正真正銘の『
脳内に響く《グラム》に腰のホルダーに格納している発動体がカタカタと震えていた。
「ええ。…そうよ。まさか貴方に会うとは思わなかったわ…
俺を呼ぶ声は静かに冷たくどこか虚しさや諦めを含む声色だ。
しかし、その声色に喜びが含まれているように聞こえるのは俺の気のせいなのだろうか?
『有名どころを挙げるとすれば聖ガラードワースの生徒会長や界龍の生徒会長、それにクインヴェール女学院の生徒会長、それにレヴォルフの《
名前を告げられた瞬間に俺の脳内にクローディアと話していたときの会話がフラッシュバックする。
確かに目の前にいる白髪の少女はレヴォルフの制服を着用しているが肘まで覆う長袖に白タイツという冬場をバカにしてるのかと聞きたくなるほどの軽装であるが吐く息は白くなくまた今降雪しているのにも関わらず肩や頭に雪が積もっていない。
それよりも今立っている場所に雪すらない状態なのはまるでこいつが”輪”から外されているようにも感じた。
噂話程度だがこいつがこのような状態になったのはアルルカント・アカデミー…の運営母体である”フラウエンロープ”の大博士…マグナム・オーパスと呼ばれる人物が後天的にとある少女を被験者として”魔女を作り出す”という計画で産み出された…というある意味魔法師における調整体のような実験の犠牲者…としか聞いていなかったがまさかこいつがなのだろうか…?と白髪の少女を見る。
そして此方を見つめるは血のように真っ赤な瞳。
しかしその瞳を嵌め込んだ表情は今にも泣き出しそうな程に悲しみを湛えている。
何故だろう。こいつをみていると無性に…。
頭の中でこいつに適切な言葉を吐き出そうとするが中々出てこない。
喉元まででかかったこいつに対する印象を告げよう、と思案していると背後にいるリースフェルトが騒ぎだした。
会話する中に”一年前”、”お前がいるべき世界はここじゃない”、”貴女では運命を変えることが出来ないわ”
(一体こいつらに何があった?)
そう疑問に思う前にオーフェリアが物憂げに”双剣”の校章触れるとリースフェルトが炎の戦輪を呼び出し放つ。
『鳳凰星武祭』以降も技と戦術を磨いていたのか星辰力にキレが見え数多くの戦輪を操り視界を封じ襲いかかる。
その光景に思わず見入ってしまった。
しかし。
「…これは…。」
炎の戦輪がオーフェリアに届こうか、とした時に彼女の身体から凄まじい星辰力が吹き上がる。
それは目の前で戦っているリースフェルト、天霧、そして俺の量とは比べ物にならないほどの総量だ。
禍々しいほどの星辰力は一瞬にして吹雪と蒸発した煙を吹き飛ばす。
「…。」
次の瞬間にオーフェリアの足元から奈落へと引きずり込む亡者のような腕が現れ揺らめく。
毒々しい黒と紫の亡腕はリースフェルトが放った炎の戦輪を受け止められてしまう。
その光景をみて炎の戦輪の回転を早めるがその腕にとらわれたままで脱出することすら叶わない。
「…ああ。ユリス。ダメだわ。あなたでは私を運命から解き放つことは出来ない。」
オーフェリアが悲痛に満ちた声で呟いた瞬間に亡者の腕が握っていた炎の戦輪は硝子のようにくだけ散った。
「ユリス…ダメだっ!」
「…っておい落ち着けお前ら!」
しかし目の前にいるオーフェリアは待つ気は無いようで。
「ーー
そう呟いて次の瞬間にオーフェリアの周囲に瘴気が吹き出し足元に蠢いていた亡者の腕が集まり巨腕が現れ黒褐色の腕は雪原を地を這う蛇のように素早く蛇行しながらリースフェルトを掴み掛かる。
掴まれたリースフェルトは苦悶の悲鳴を上げながら掴まれ数十メートル後方へ吹き飛ばされてしまった。
どうも俺に意識を向けてはいるようだが”この二人”はオーフェリアにとっては炉端の石ころのように向かう方向にあり偶々蹴飛ばしてしまった程度のようだ。
天霧もリースフェルトの援護に向かうために《黒炉の魔剣》で亡者の腕を切り落とすが直ぐ様膝を着いてしまう。
どうしたのだろうか、と思っていると《瞳》が天霧の状態異常を知らせる。
毒状態…これは奴の能力…なのか?
「あなた”達”の運命はか弱い…だから言ったのに。…大丈夫、すぐに楽になるわ。」
止めを刺そうと再び亡者の腕が集まり瘴気の巨腕を形成し叩きつける。
しかし、巨腕が到達する前に俺が割って入り光振動系統魔法《フラッシュエッジ》を発動し瘴気の巨腕を両断した。
亡霊の腕が断面から霧散していく。
「……?」
その行動にオーフェリアは眉を動かし此方に興味を示した。
示さなくてもいいんですけどね…。
「ああ。それがあなたの能力?純星煌式武装を使わないでわたしの能力を打ち破るだなんて…あなたならわたしの運命を壊すことが出来そうね。」
やべ…更に興味引かれたんですけど…。
「
つまりは此処でお互い手を引こうと。提案したのだが…。
「蜂、也…待ってくれ!私は…!」
「副会長…それは…!」
その提案に対して反対意見を述べるのが二人。
俺は呆れながら二人をジロリ!と頭だけを動かして厳しい視線を投げ掛けた。
「黙ってろ。」
「あ、がっ……ぐ…!」
「副会長…」
「天霧はそのお転婆姫を押さえてろ。さっきの攻撃でまともに動けないくせにしゃしゃり出てくるな。」
後ろにいる二人に対して俺は黙らせるために”殺気”を込めた視線を投げ掛けると特にだがリースフェルトは俺からの”殺意”によって肩を震わし抱いており天霧もそこから動けずいるだけだ。
「……はぁ…。」
この程度の殺気で動けなくなるのならこいつらでは”絶対に目の前のこの少女に勝つことは出来ない”。
そう確信出来た。
俺は改めて正面に入るオーフェリアに対して頭を向けると亡霊の腕を展開しながら此方…俺を双貌の赤い瞳で見つめている。
「哀しいけど一度動き出した運命は私にも止められない…貴方が壊すが私を壊すしか止める術はないわ。」
「まるで倒されたい、みたいな言い方だな
「貴方なら…それも可能そうね。」
そう言って不敵に微笑むオーフェリア。
初めてこいつが笑ったを見たが全てにおいて諦めが含まれているような感情が感じ取れる。
ゆっくりと腕を持ち上げ足元の亡者の腕が起き上がり騒ぎだす。
それに応じて俺はホルダーから《壊劫の魔剣》を取り出し励起させた。
「……。」
「……。」
互いに校章に触れて”双剣”と”赤蓮”が輝きだすとそれは同時に開戦の狼煙となった。
瘴気で形成された亡者の腕が俺へ襲いかかる。
「ちっ…!」
襲いかかる腕を《フラッシュエッジ》で切り飛ばし道を切り開き雪原を踏み抜き駆ける。
駆け抜けると同時に利き手に持った《壊劫の魔剣》を一振する。
迸る稲妻がオーフェリアを切り裂く…とまでは行かずに身体を覆う膨大な星辰力に阻まれた。
(固ぇ…!)
いつぞや綺凛ちゃんに言われた「厚い鋼を突いたような手応えでした」といわれたことを思いだし苦虫を潰したような表情になってただろう。まさか俺がそれを体験する羽目になるとはと。
「……つらぁっ!!」
「…!?」
弾かれ返す刃で空中で身体を捻り回転させ《壊劫の魔剣》に少し星辰力を込めて振り抜き超神速の二連撃《影技・二練神威》を発動させるとオーフェリアの無造作に張っていた星辰力のバリアを突き破りオーフェリアの衣服を切り裂きその病的なまでに白い肌に一筋の剣先が入りツー…と赤い筋を垂れ流す。
「…ふふふっ!」
「…!?まじかよ!」
本気で星辰力を込めた攻撃で薄皮一枚しか切り裂けないのは正直言って異常だ。
その光景を見て驚愕したと同時にオーフェリアは狂喜の笑みが溢れ出す。
「ああ…。それが《
「っ!?」
次の瞬間に切り飛ばした亡者の腕は瞬く間に別の腕が映え変わり俺へと殺到する。
迫り来る亡者の腕を《連鶴》で切り落としながら距離を取る。
が、突如として身体に力が入らなくなる。
「(…!これは…体内に巡る星辰力を悪性にして毒にしてんのか…なんつう…ことを…!)(自己再生開始…『物質構成』
瞳が黄金色に変わる。
直ぐ様《
しかしそのその隙を付いた瘴気の腕が俺へと襲いかかる。
「…ちっ!」
「あら…耐えるのね…それなら、これは…どう?」
その数は”無尽蔵”といっても差し支えの無い。
この数は流石に《壊劫の魔剣》だけでは流石に捌ききれない。
だが…。
「
”足りないのなら足せば良い”、そのとおりだ。
言霊を呟き先程リースフェルトに喰らわせていた瘴気の腕を取り込み一つの巨大な腕を形成し凄まじい速度で俺を握りつぶさんと到達する。
背後で蜂也の名前を叫ぶ二人の声がしたが蜂也は今はそんなことに気にしている余裕はない。
素早く《次元解放》のポータルから
「………!」
近づいて俺を握りつぶさんとする巨腕を加重系統複合魔法《
「…ああ…やはり…貴方は…!」
いとも容易く紙屑のように切り裂いた状況に怪訝な声を上げるオーフェリアに追撃を仕掛けるために歩み出す。
近づく俺にオーフェリアが亡者の腕を俺へ差し向けるが片手に持った銃形態へ変化させた
「……!」
次々と打ち落とされる触れれば一撃で仕留める攻撃を無力化し悠然と向かってくる姿は相手にとっては恐怖を与えるだろう…まぁ実際にオーフェリアはその場から此方へ一歩踏みしていた。
表情には出てないが今まで押されていたことがないのだろうとその光景を見て俺は駆け出す。
当然だ。その圧倒的な星辰力と《魔女》の力を持つ彼女を討つことは当代の星脈世代は勝つことも出来ないだろうなと考察した。
…実際にこんなのが魔法師にいたら戦略級に匹敵するかもしれない”毒”を操る能力は見たことがない。
オーフェリアは自分と渡り合える人間を見たことがないのかもしれない。
…だからこそ。
「……!!」
迫り来る手…いや巨大な腕が数本現出し襲いかかり周囲を腐らせていくが片手に持った《超特化型》で無力化していく。
「ふふふ…面白いわ…やっぱり貴方は。…でもこれは耐えきれるかしら?」
感情の起伏が薄い筈の少女が声を張り上げ巨腕を集約し近くにある研究所よりもでかくなった。
それには蜂也も思わず足を止めて苦笑いした。
「まじかよ…。」
俺の背後にいる二人もその光景に愕然する。
「なんて大きさだ…」
「それに…この星辰力は……副会長!」
目の前に現れた巨腕は天を突こうかとするほどの迫力で叩き潰そうと振り下ろす。
このままでは研究所諸とも俺達は瓦礫の一部になってしまうだろうが…。
ポータルへ《フェンリル》を仕舞って片手に持った《壊劫の魔剣》を抜刀の動作で構える。
振り下ろされた巨腕が周囲の空気と雪を朽ちさせながら落下してくる様はまるで理不尽な暴力が降り注いでいた。
流石にこの大きさは《星辰解体》でも分解しきれない。
覚悟を決めて一息整えて。ぼそり呟いて一気に振り抜く。
「…しっ!!!」
『影技・抜剣術
《
赤色と黄金色の混色の横一文字の斬撃はオーフェリアの攻撃を破壊した。
しかし、霧散した亡者の腕はオーフェリアへと集まっていく。
周囲に爆風と爆発音が響き渡りその隙に俺は《壊劫の魔剣》をポータルに放り投げ無力化するために接近する。
かなりの距離があったが自己加速術式を発動し眼前へ立った。
すると。
「やはり貴方は……ぐぅ!?」
「なんだ…!?」
少女の産み出している瘴気の腕が彼女を取り込もうと彼女の四肢を掴み地面へ引きずり込もうとしていたのだ。
今まで起こったことがないのか困惑した表情になるオーフェリア。
(能力の暴走…?)
このままでは不味いと思った俺は《星辰解体》で亡者の腕を破壊するが丸で蛇口を閉め忘れた水道管のようにあふれでてキリが無く黒い奈落へとじりじりと落ちていく。
脳内に焦る声が響く。
『不味いぞ主…このままではこの魔女は自分の能力に食われてしまう!』
(ちぃ…だったらやるしかないわな…!)
『どうするつもりだ?』
(俺がこいつの手を取って直接《
『…成る程な。それは主でなければ出来ない手段…”無理を道理で押し通す”とはこの事か。』
(無茶振りは得意だろお前は?)
『ふっ…
奈落へと引きずり込まれそうになっている目の前の少女の片手を掴む。
「ぐっ…がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!!???」
手に取った次の瞬間に全身に象牙を刺されたような激烈な痛み、味わったことの無い強烈な熱が同時に襲いかかり思わず手を離しそうになるがそうはいかない。
この目の前の少女を助けなければならない、そう思ったからだ。
あまりの激痛で片手に持った《超特化型CAD》を落としてしまったが構わずに右手でオーフェリアの伸ばした手をがっちり掴みポータルから《壊劫の魔剣》を取り出し心臓目掛け突き刺す身体に張っている星辰力を霧散させた。
「かはっ…!?」
「苦しいだろうが…我慢してくれよっ!…俺も結構苦しいからなっ!」
喀血するオーフェリアに構わずその隙を突いて俺は《
意識がこの世全ての物質、人物の情報が記された
元の少女の姿を確認する。
虫も殺せない優しい女の子でそのあり方を”魔女”というあり方に歪められたという少女の過去が見える。
元の髪色も栗色で目付きも穏やかなものだったが後天的な”魔女”により髪色は白に瞳の色は赤へ性格は悲観的にと変えられてしまっていた。
遡り彼女を元に戻そうとするが何故か”平行同位体のなかに『魔女になる前の姿』の同位体”が無い。
選択すること出来ないのだ。
(どう言うことだ…!?)
何かが干渉しているのか、世界抑止が働いているのかは分からない。
”魔女”になるのが
しかし今の状況を打開するには”毒を内側に留め完全制御出来る存在である先天性の魔女”の平行同位体をロードさせるしかない。
事象を書き換える”魔法”を発動し虚飾を現実へ置き換える。
パチリ、と脳が焼き焦げるような感じを覚えた。
八幡からしてみればこれも…そう”少女の為ではない。全て蜂也の精神衛生上を保つ”為である。
「貴方は…一体…誰なの…?」
「只の…気まぐれを起こした一般生徒だ。」
オーフェリアを中心に幾何学模様の黄金色の魔方陣が現れ光を。世界を変える光を放った。
その呟きに答えること無くオーフェリアに光が収束していった。
その表情は穏やかで向ける視線は愛しいものを見るようなものだった。
◆ ◆ ◆
「………。」
「くっそ…めちゃしんどいぞこれ…。」
腕のなかに抱き抱える瞳を閉じているオーフェリアを抱き抱えながら痛む頭を押さえながら雪原に膝を突いた。
腕に抱き抱えた少女を落とさないようにするのは大変だわ…というか本当にこいつちゃんと飯食ってるのか?と問い掛けたくなるくらい腕のなかにいる少女は軽かった。
オーフェリアが持つ端末が震えているが今はそれを気にしている暇はない。
一仕事終えてさっさと寝たいレベルだったのだが…。
「…っち!こっちは疲れてるって言うのによぉ!空気読めやぁ!ジジィ!!」
身体に鞭打ち無理繰り立ち上がらせて抱き抱えたまま立ち上がると迫る悪意を察知してその場から飛び避けると地面が砕け散る。
正面を見ると笑みを浮かべるキュスターブが立っており三頭の万応素で作られたこれは…犬か?
「ご紹介しましょう。我が作品のウェアウルフにオルトロスとケルベロスです。どうですかな?…~~~~~。」
なんかごちゃごちゃ言ってるがこっちが不利であることには違いないらしい。
「くっ…。」
「ユリス!」
「まじぃなぁ…。」
立ち上がろうとしてる後ろ二人はまだ毒からの影響を抜けきれていないのか足元がおぼついている。
こっちを狙う一匹…人形っぽい犬は武器を構えて此方を攻撃してくるが適度に避けながらいれるが天霧達はそうも行かないらしく既に囲まれていた。
そっちに意識を取られていると武器を持った人狼の武器を弾き片手に持った剣を弾き体勢を崩したところに蹴りを叩き込みギュスターブの方に飛ばして天霧達の元へ向かおうとするが…。
「要らんみたいね…。」
牙を向いた二体の魔獣…一体は三つの首を剣閃によって消し飛ばされ巨体は雪のなかに倒れ込み舞い散る中に銀髪の髪が揺らめき残るもう一体も二つの頭を綺麗に泣き別れし地面に倒れ込み同じく雪が舞い上がるその中に紫色の髪がふわりと掻き上げられていた。
「お義兄さんお待たせしました!」
「八くんお待たせ!」
「蜂也お待たせしました…おやそのお方は…?」
先程俺がギュスターブに飛ばしていた人狼は両断され降り始めた雪のなかに煌びやかな金髪が風に揺れていた。
「綺凛ちゃんにシルヴィア…それにクローディアか。」
クローディアが現れた事で先程までギュスターブが余裕そうに浮かべていた顔色は一変、ほんの少し顔色が悪くなる。
クローディアと数度言葉を交わすと苦々しい顔に変わり森の中へ姿を消した。
一先ずは天霧達を王宮へ運ぶこと。と……。
「お、お義兄さんこれは…。」
「蜂くん~これは…どう言うことかな?」
「ふふふ…しっかりと説明してくださいね蜂也。」
俺はどっちかというと此方の方がタイヘンダナー。