俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。 作:萩月輝夜
学園祭二日目。
俺はシルヴィアに連れられて彼女の学園であるクインヴェール女学院の敷地を回っていた。
なんと言うかその…全員がキラキラしているしなんだか凄くいい匂いがします(不審者並感)。
しかし、全体的な雰囲気は六学園のなかでは星導館学園に近い気がするが…まぁ他学園界龍は体育会系だしレヴォルフは不良男子校だし聖ガラードワースは良いところの進学校というイメージがありニュートラルなうちの学園が雰囲気的には一番しっくり来ているかもしれない。
まだ二つの学園しか巡っていないが人の多さは今のところ一番多いかもしれない…というか全体的に男も女も人が多い…というか男が多い。
雑多すぎる人の肩にぶつからぬように《瞳》の力の一端を発動し場所を把握しながら移動している。
「混雑具合で言えば星導館よりも多いな…危ないぞシルヴィ。」
シルヴィアの前に立ちすれ違う人にぶつからないように避けながら前へ進む。
「ありがと。そうだねそりゃあ何と言っても男人禁制の秘密のはなぞのだもの。折角の機会だし六花に有る有名な女子高を覗きたいのは殿方の常なんじゃないかな?」
「俺は女子が怖いから出来れば関わりたくはないな……(見られている?)」
「おや?蜂くんも苦手なものがあったんだ。意外。」
心底意外な表情を浮かべるシルヴィア。
悪いが俺は同学年の女子ほど信じられないものはないと思っている。
口には出さないが今この状況もドッキリじゃないかと疑っているしな。
そんなことを口には出さずに思いつつクインヴェールの学園内を歩いているとシルヴィアも気がついたのか此方に視線を向けずに言葉だけを発した。
「ねぇ、蜂くん気がついてる?」
「ああ。尾行られてるな。数は…5人か?」
《瞳》の力で正確な数は分かっており尾行しているのは少女…何処かで見たことが有る顔だったが思い出せない。
「うそ…数まで分かっちゃうの?」
「まぁな。どっちだと思う?俺は付けられる理由がない。」
「だとすると…私かも。」
完璧に近い尾行だったが俺がこちら側に居る以上は相手はほぼ無駄に近い隠蔽工作になる。
かといって無視するにはリスキーすぎた。
俺は失うものが何もないが隣にいるシルヴィアは世界の歌姫であり男と学園祭を楽しんでいた、等と○○砲の餌食…(こっちに似たようなものがあるかは知らないが。)にでもなりもすれば謝罪会見や最悪辞退なんてことになりかねない。
こちらを尾行している少女達の集団は記者やファンには見えない所謂”同業者”のように見えた。
(まさかシルヴィアのスキャンダルをスッパ抜いて情報を売り付けようって考えか?)
記者にしては気配の消し方や星辰力の使い方がうまいと思い納得がいった。
しかし俺が気配に気がついたのかは気づいていないのか此方を尾行している。
楽観視するにはリスキーだ、と考え事をしていると後ろにいるシルヴィアに声を掛けられた。
「ねぇ蜂くんどうする?」
と、言っても俺たちが逃げるのは違うと思うので追いかけてきている彼女達に犠牲になって貰おうと考えた。
「いや、シルヴィアの折角のお出掛けを邪魔されるわけには行かないからここで巻こう。」
「どうやって…。」
「こうする。」
俺はブレスレット型のCADを起動し単一魔法を発動し気流を操作する。
「きゃっ」
次の瞬間に突風が吹き荒れ来客達の悲鳴と此方を尾行している女子生徒の悲鳴が轟くが次第にその喧騒は彼女達を中心にして広がっていった。
「行こう。」
「わわっ!?」
俺はシルヴィアの手をとって群衆の中へ紛れ込んでいく。
俺たちを尾行しようとしていた少女達の目論みは潰えたのだった。
◆ ◆ ◆
「しかし、さっきの尾行してた女子グループは何だったんだ?随分な騒ぎになってたが。」
俺たちは一応巻く目的で学園内に有る喫茶店に入り店内奥の壁際に向かい合って座っていた。
互いにコーヒーとカフェモカを頼み口を付けながら疑問を浮かべているとシルヴィアが答えてくれた。
「その事なんだけどさっきマネージャー…あ、ペトラって言うんだけどさっきメールが来ててわたしの後輩の”ルサールカ”の子達がどうもお忍び、というかわたしを尾行してたらしくて…でさっき蜂くんが突風を吹き起こしたせいで変装が解けちゃって近くにいた人が気がついて…それで連鎖していってバレて大変なことになっちゃったみたいだよ。」
「それは…なんと言うか…すまん。」
人を尾行してスキャンダルをスッパ抜こうとしていたのだから叱られて当然、とは思うがあの人混みで揉みくちゃにされた、と考えると悲惨だな、と思い思わず謝罪をしてしまったがシルヴィアは彼女達の尾行のツケを払わせられた代償にたいしてツボに入ったのかクスクスと声を殺して笑っていた。
「くすっ…ふぅ…大丈夫。蜂くんは悪くないから気にしないで。逆に今日のデートを続けるために守ってくれたんだから逆にわたしからありがとう、だよ。」
「つーか…まあシルヴィアが彼処にいたら天地大瀑布、って感じで大騒動になってただろうな…。」
「そこは大丈夫だよ。わたしだと気がつく人なんて今目の前にいる人しか見破られないだろうし。」
「?まぁどんな姿でもシルヴィアを見間違える筈がないからな(《瞳》の力は勿論として1ファンとしては間違えられないだろ)。」
「…!…////…ねぇ蜂くん?それって狙って言ってるの?」
「はぁ?」
唐突に引かれたような言葉を言われ俺は選択肢を間違ってしまったのかとギャルゲーの主人公のように選択肢からロードしてやり直したかったが残念ここは現実、というクソゲーなのでやり直しは効く筈がなく俺はコーヒーの入ったカップを手に持ち口を付ける。
ブレンドされた苦味の方が強いコクの有るブラックは寝ぼけた意識を覚醒させるのにぴったりだった。
ふと気になることが有ったので同じくカフェモカのカップに口を付けているシルヴィアに質問した。
「つか、俺と一緒に学園祭を回ってていいのか?天下の世界の歌姫が男と一緒にいる、何て知れたら大変だろ。」
「うーん。確かに男連れ…それも『
あっさりと言ってるがヤバイからなそれ?
「…俺帰っていいか?」
思わず本音が出てしまうレベルだったが。
「あ、ダメだよ!この3日間はわたしとデートするの!」
「お、おう…それともうちょい声のボリューム落としてくれ。」
「あ、ご、ごめん。…って蜂くんのせいでしょ?」
結構な大声を出していたが咄嗟に遮音フィールドを展開していたので店内にシルヴィアの綺麗な反対意見は響き渡らなかった。
しかし…俺がシルヴィアとお忍びデートという名の学園祭巡りがファンにバレたら爆発物にカミソリレターに襲撃者がくるレベルだろうしな…バレたくねぇ…それにクインヴェール女学園のスポンサー…といえば良いんだろうか”
「大丈夫だよ。わたしはあの子達とは陰業の年季が段違いだからさ。」
「…仮にバレたらどうするんだ?引退して芸能界の暴露本でも書いて印税で暮らすつもりか?」
茶化して引退話をしてみると意外な反応が返ってきた。
「その時はその時だよ。…そうだね~駆け落ちして引退しちゃってもいいけど。」
「駆け落ちね…ってその相手誰だよ?…ちょっと1ファンとして聞き捨てならない台詞が聞こえたんだが?」
思わず真顔になってしまう。
駆け落ちだと?それはシルヴィアのファンとしては聞き捨てならない台詞だった。
聞いているのが俺だからよかったものの…一般のファンだったら嫉妬に狂ってシルヴィアに脅迫メールとか出してるレベルだぞ?
と真剣な顔をシルヴィアに向けていると呆れたような困った笑顔を浮かべ此方を見ていた。
なんでそんな顔をしてるんだろうか皆目検討も付かなかった。
…というかそもそもにおいてシルヴィアが理想とする男性像はいったいどんなものなのだろうか?
年収が社長クラスか石油王…レベルで星脈世代でも顔のよさは上澄みじゃないと釣り合いが取れなさそうではあるから俺じゃ無理だな!(号泣)とまぁ冗談はさておいておこう。
シルヴィアの顔を見ていると不意に真剣な表情になって俺を見ていた。
「ねぇ蜂くん。せっかくの機会だし、わたしから質問いいかな?」
「?別にいいけど…面白いことは言えないぞ?」
「それじゃあ…許しも出たことだし質問…するね。……蜂くんっていったい何者なの?」
「…?なんでそんな質問をするんだ?」
不意の質問にコーヒーカップを持つ手が一瞬動きを止めるが直ぐ様元に戻りソーサーの上にカップが着陸する。
シルヴィアのアメジスト色の瞳を見つめている俺の表情はおふざけ無しのマジモードだ。
「…前にわたしを助けに割って入ってくれたことがあったでしょう?そのときに君に一目あってお礼を言いたくて…本当はこんなことしちゃ行けない、ってのは分かってたんだけど君の身元を調べるその途中で来歴を調べちゃったの」
「……。」
俺は黙ってシルヴィアの声を聞いている。
身動ぎもせず、感情の波もない状態、凪の心でシルヴィアの行った行為をただただ聞いているだけだ。
「この
「…人見知りで己の力を誇示するのが嫌いなガキだったんだよ俺は。それに俺は昔虐められてたからな。星脈世代の子供が非星脈世代の子供殴って怪我させたら親の監督責任になるから聞き分けの言い子供を演じてただけだ。」
シルヴィアが紡ごうとしていた言葉をぶったぎり其らしいことを理路整然と告げた。
まぁ本当と嘘で半々の実体験だからな。信憑性はあるだろ。
「だから俺は親元を離れて《六花》に来て鮮烈な高校生デビューして今に至る。今現在進行形で若気の至りしてるから追求はやめてくれ。恥ずかしくて死ぬ。」
実際に《壊劫の魔剣》を手にしてから黒歴史量産中だから本当に勘弁して欲しいんだが…?
本当に嫌そうな顔をしていたのだろうシルヴィアが申し訳なさそうな顔で謝罪をしてきた。
「いや、今のは俺の言い方が悪かったな。すまん。」
「ううん…それを言うならわたしの方がデリカシーなかった。ごめんなさい。」
そう言って俺たちはお互いの顔を見合わせて苦笑するしかなかった。
…俺が別の世界から来ていることを知られるのは少々面倒だから黙っているしかない。
秘密を知るのは最小で良いしな。
知られたことで危険に晒す可能性もあるから知っているのはただ一人で良いんだ。
その後店を出た後に出店を回っているときにシルヴィアがお花を摘みに行っている時(某サ○リオの先輩みたいにアレがアレで…とかは言わない。)に待っていたのだが…
「…めてください!」
「ん?」
建物の奥…の路地から微かに聞こえるようでそちらの方向を覗き込むと裏路地になっていた。
俺はその裏路地を進むと拓ける場所が見えた。
その場所には明らかに嫌そうで困っている声が上げている女性と明らかなチャラ男達…がその少女を取り囲んでいた。
見た目は俺より少し年上だろうその少女は胸辺りに”偶像”の校章を付けていたのでクインヴェールの生徒であるに違いない。
その見た目はウェーブの掛かった金髪で腰まである長さの煌びやかな金髪のロングヘアーでクローディアとはまた違った印象…こういうとクローディアに怒られそうだが此方の少女は”清純”といった雰囲気でその風貌も取り囲まれているチャラ男達に比べると雲泥の差で天使のように可愛い、よりかは美しい。
所作の一つ一つが上品で品が良い。明らかに”お嬢様”といった印象を受ける。
「…っ!な、何をするんですのっ。」
「落ちこぼれのお嬢様が兄貴のいる学園で役に立たないからこっちの学園に来て楽々トップ狙おうとしてんだろう?しかし、お前さんは戦えないと来た。とんだ役立たずだな?うまく活かせるのはその顔と体だけだな?ちょっと遊んでやるから一緒にこいや」
「…ひっ!や、やめなさいっ…!」
取り囲んで話しかけていたチャラ男の一人下卑な笑みを浮かべながらその女性の腕を強引に引っ張りあげる。
なにか気になることをチャラ男が呟いていたが俺はその光景を見ながらため息をついて魔法を使わずに《縮地》を使って女性とチャラ男の間に割って入る。
「え、あ、貴方は一体…?」
「ああん?なんだ手前ぇは!…いだだだっ!!」
突然現れた俺に女性と取り巻きのチャラ男達は困惑していた。
次第に怒りを露にして周囲の取り巻きが俺を取り囲む。
女性とチャラ男の間に割って入り女性を掴んでいた手を捻りあげ背中に回し捻りあげると苦悶の悲鳴を上げていたがどうでも良い。
「この人嫌がってんだろ…そもそも学園祭で問題を起こすなって通達来てただろ…ってお前達レヴォルフのバカ共か。」
捻り上げているチャラ男胸に”双剣”の校章を付けていたのでレヴォルフで間違いない。
あのディルクの学園は本当に面倒な連中しかいない…あ、オーフェリアやプリシラさんやイレーネは別だぞ?
そうして俺に腕を捻り上げられ身動きを取れずにただただ汚い言葉を吐くだけだ。
「手前っ!離しやがれ!俺はこの女に用があるんだよっ!おいお前らっ見てないでこいつを囲って痛い目見させてやれ!…うおっ!?」
女性を取り囲んでいたチャラ男達…その一人がはナイフ型の煌式武装を引き抜いたのを空気で感じ取った俺は真っ先に抜いたチャラ男に対して腕を捻りあげていた男をぶつける。
「あ、危ないですわっ…って…えっ?」
女性からの通知が届く前に陣形を崩しており呆気に取られていた。
「ぐわっ!?」
「ぐえっ!?」
体勢を崩されたことである意味取り囲んで偶然フォーメーションを保っていたものを切り崩した。
本当だと体術で十分なんだろうがこいつらがこの女性に対して二度と手を出したくないと痛め付けるのと一人のチャラ男に「手を出したらお前達もこの目に遭うぞ?」と警告のために腰のホルダーから《壊劫の魔剣》の発動体を引き抜き素早く発動させた。
動きは良いのか男達は体勢を建て直し此方にナイフとメリケンサックを向けてくる。その総数は動ける人数を含めて”二”と”一”
脳内に《グラム》の声が響き渡る。
『女性に手を上げるとは男の風上にも置けぬ…主よ叩き斬るか?』
殺意満々の《純星煌式武装》に苦笑せざる得ない。
(アホか。そんなことしたら俺が捕まる。刃先を潰して峰打ちしろ。)
『そういうことならば仕方がないか。…心得た。』
(それとお前が憑依してこのチャラ男達をビビらせろ。)
そういって俺と《グラム》が入れ替わると同時に発動体が刃《峰打ち》を形成し此方にナイフ型とメリケンサック型の煌式武装が襲いかかるが遅すぎて《瞳》を使わずとも俺自身の身体能力で見切る。
顔目掛けのナイフの突きを軽く顔を傾け回避して襲いかかってきたチャラ男に痛い目を見せるために一人に横一文字の斬撃を体に叩き込み返す刃(峰打ち)で神速の二連撃《二練神威》を叩き込み昏倒させ最後の一人はメリケンサックでおれの腹部を狙ってきたがヒラリと身を捩り回避して片手で腹部に拳底を叩き込んで未だに動けないチャラ男達の元に吹き飛ばすとボーリングのピンのように吹き飛んでいった。
「っ!…ごはっ!?」
「ぐわっ!?」
「ぶはっ!?」
「徒党を組んでもこの程度か。レヴォルフという学園の実力の底も知れるというものだな。」
冷めた目線をリーダー格の男に向けると怒りの形相で此方に突っ込んできた。
「舐め腐りやがってこのガキっ…!お前の守ってるその女は人を傷つけられないこの
「……っ!…。」
背後で女性が体をびくつかせているのが感じ取れた。
…もう良いよ。お前はもうこの人の前で口を開くな。
《グラム》の声でそれ以上を言わせぬよう威圧した。
「貴様如きがこの女性の戦う意義を決めるな。」
「…っ!?」
「当方がこの女性がなぜ満足に戦えぬのかは存ぜぬ…だがなこの六花において”願いを叶える”…ただ一心でその手に武器を取り自らの弱さを…痛みを知りながらも戦うこの女性を貶めることは当方が許さぬ。」
研ぎ澄ました刃のような殺気をチャラ男にぶつけると取り巻きはすくんで動けなくなっている。
「……っ…どうして。」
後ろの女性が何かを呟いた気がしたがよく聞こえなかった。
それよりもみっともない罵詈雑言を放ちあくまでも力のある自分が正しいと宣う男は所謂”鉄砲玉スタイル”でナイフを構え突進してくる。
「た、御大層な能書き垂れやがって…死に去らしやがれこのクソガキ!」
「あ、危ないですわっ!」
蒼窮色に染まった《瞳》が見開き此方に突進してくる男を見据えて直前で横に跳んだ。
「なっ…!?」
「えっ…?」
俺の姿を見失った男は狼狽の声を上げるがそれが最後の言葉となった。
「『連鶴』」
ナイフを持ったリーダー格の男に幹竹、袈裟、逆袈裟、円月してからの再び幹竹の逆袈裟、横一文字の斬撃の雨を叩き込む。
「っ!ゴホッ!?ぐあっ!げふっ…ぶふぁっ!!!?」
「「「「うわぁあぁぁぁぁ!!!!」」」」
刃先を潰していなければ五度程死んでいたであろう斬撃は男は大きく吹き飛び立ち上がろうとしていた男達の元に吹き飛ばされ再び転倒し砂煙を上げながら吹き飛んでいた。
「…????こ、これは一体…?そ、それにその武装は…!?」
後ろから女性の「???」を表す疑問の声が聞こえたが無視して転がっている男の元へ近づき片手で胸ぐらを掴んで立ち上がらせ宙に浮かせる。
「あっ…ぐっ…ああああっ…。」
痛みと恐怖からでまともに喋ることが出来ないのかもしれないがまぁどうでも良い。
後ろにいる女性に二度と手を出したくない、って思うようになっているかもしれないが最後のダメ押しをしておいた。
「二度とこの女性に手を出さぬこととクインヴェール女学園に訪れぬ、と約束しろ。」
「うっ…ぐっ…もう、ゆるしてくだ、さい…。」
《
「もし、貴様らが再び悪辣な行為をするようならば…」
見せつけるように俺の胸の校章と二つ名を告げると宙に浮いたチャラ男は恐怖に震えていた。
「星導館、”赤蓮”の校章を視て《戦士王》の二つ名を思い出せ。」
メガネ越しに蒼窮の《瞳》ギラり、と煌めきをチャラ男を射貫くと恐怖で震えていた。
「ひ、ひぃぃぃぃ?!…う、うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!?」
「「「ま、まってくれぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」
パッ、と手を離すと尻餅を着いて情けない姿で逃げ出すと取り巻きの男達も悲鳴を上げながら路地を駆け出し大通りへ逃げていった。
『ふん、やはり主の威圧感に耐えきれなかったか…情けのない男共よ。』
(いやいや…お前の口調と声のせいだと思うんだけどなぁ…。)
『中々に素晴らしい啖呵であった。流石は我が主。』
溜め息を吐きながら《壊劫の魔剣》を解除し腰のホルダーへ仕舞うと同時に憑依が解除され蒼窮の瞳は黒目へ戻る。
「あのう…大丈夫ですの…?それに貴方は…一体…。」
あ、やべっ。
後ろの金髪女性から声をかけられるがここはクインヴェール女学園であり星導館ではないのだ。
尚且俺は副生徒会長なので問題を起こしたことがばれると少々面倒くさい。
「あ、大丈夫です。俺は用事があるのでそれではっ!」
「え、あ、ちょ、ちょっと!お、お待ちになってぇ~~!!」
疾風の如くその場から離脱した。
後ろからその女性の声が届いたが身分を隠すことを優先した。まぁ許して欲しいもんだがな。
離脱し先に戻っていたシルヴィアからお小言を言われたが俺もお花摘みに行っていたことを告げると「しょうがないなぁ」とお許しが出た。
その後に聖ガラードワース学園へ訪れ出店を見て回った。
しかしこの学園の制服…というかカスタマイズされてるものを着用してる人物が中世ヨーロッパの軽装備のアーマーにブレザー?で”いかにも異世界ハイスクールの制服”といった見た目でだった。
…シルヴィアはこういう聖ガラードワースの制服も似合いそうだな。」
「蜂くんはわたしに着て欲しいの?……大胆。」
「え、俺口に出してた?」
「出してたよ?」
「すまん、忘れてくれ。」
失言をしてしまった俺をイタズラな表情で見ているが不快感、ではなく本当に愉快そうに笑っていた。
「えー?…でも確かに他学園の制服を着る、って言うのは少しロマンがあるかも。」
「まぁシルヴィアはなに着ても似合いそう。界龍のチャイナ服とかは?」
脳内でシルヴィアの各学園の制服姿を想像していた
…全部似合うな。」
「……///君はほんとにさぁ…刺されても知らないよ?」
「唐突な殺害予告はビビるからやめてくんない?」
その後、聖ガラードワースの催し物を見たり出店で食事を取ったりしてその日の学園祭巡りが終了した。
回ってる最中にめちゃくちゃカスタムされた制服を発見した。
しかし、女子はなんであんなにスカートを短くしてるんだろうか分からない。
腰に巻いている布一枚で下から風が吹いてすーすーしない?と思うんだが。
以前に小町に言われたことを思い出して勝手に納得していた。
時間は少し巻き戻る。
蜂也がチャラ男を撃退し金髪の女性が引き留めようとしたが疾風のごとき速度でいなくなってしまい追いかけたが見失ってしまった。
「…あの殿方は一体どなただったのでしょう…星導館の制服を着ていましたけど見たことの無い生徒さんでしたわ…それに…。」
女性は先ほどのチャラ男から言われた言葉、とある理由で人を攻撃できなくなりチャラ男が言っていることはある意味で正しく否定することがこの女性には出来なかった、がしかし。
『貴様如きがこの女性の戦う意義を決めるな。』
気持ちが良いほどの否定の言葉。
『当方がこの女性がなぜ満足に戦えぬのかは存ぜぬ…だがなこの六花において”願いを叶える”…ただ一心でその手に武器を取り自らの弱さを…痛みを知りながらも戦うこの女性を貶めることは当方が許さぬ。』
そして、目指す”願い”の目標を否定せずに肯定してくれたその言葉に金髪の女性は心打たれた。
まえに進める、そんな気がしたからだ。
「有り難う…名前も知らない騎士さん」
◆ ◆ ◆
聖ガラードワース学園の生徒会室。
一人の男が報告を受けていた。
「…以上が本日の成果になります。」
「うん。今年も随分と盛況のようだ。」
生徒会長室に置かれた机の上で指を組む
「今のところトラブルらしいトラブルもありませんし結構なことですわね。」
同じく生徒会室に備え付けられているソファーに座る金髪の少女ことレティシア・ブランシャールはホッと胸を撫で下ろしていた。
常に秩序と公正を重んじる聖ガラードワース学園ではあるが学園祭の際外部の人間が訪れる為少なからずトラブルが発生するものであるが今年度の学園祭は比較的平和な時間が流れていた。
「しかし…毎年この時期だけはアルルカントやクインヴェールが羨ましくなりますわ。」
「僕らは僕らの職務を全うするだけだよ、レティシア。他は他、他所は他所で僕たちの学園とはまた違ったトラブルを抱えているはずだしね。」
「それはそうですけれど…。」
レティシアが口を溢したくなるのもアーネストは理解していた。
既に時刻は深夜、といっても良い時間帯で生徒会役員は本日中に片を付けなければならない仕事が残っていた。
仕事を片付けながらレティシアはアーネストに問いかける。
「ところでクインヴェールと言えばソフィアさんが『
「さぁ?特に僕は何も聞いていないけれど…そもそもソフィアももう子供では無いのだから兄である僕が都度都度声を掛けるのはおかしいだろう?」
「それは…そうですけれど。」
ソフィア、というのはソフィア・フェアクロフという女性で今はクインヴェール女学園に通っているアーネストの実の妹である。
過去に辛い出来事があったがゆえに彼女がこの六花に来ることに大反対していたレティシアであったがアーネストに一言物申したいが実の兄がこう言っているのでは取りつく島がないと良い淀んだ。
「ああ、そういえば」
同じく生徒会室にて本日中の業務処理と報告を行っていた書記のパーシヴァル・ガードナーが思い出したこのように告げた。
男子学生服を着用こそしているものの歴とした女性でありその立ち振舞いから”男装の麗人”といって差し支えないだろう。
そして彼女は聖ガラードワースに所属する正騎士で序列五位の実力者である。
「今日そのクインヴェールの生徒会長閣下をお見かけ致しました。」
「『
「ええ。変装をされてお忍びのようでしたので他に気がつかれた方はいらっしゃらないようでしたが…」
「ふーん…気楽なものですわね。」
その言葉には棘があったのは今目の前にある書類が原因なのは決して気のせいでは無い筈だがそれを指摘できる者は誰もいなかった。
アーネストは困ったような笑みを浮かべパーシヴァルに至っては無表情である。
セカンド・フラッシュの紅茶に口を付ける。
学園祭の時は他学園への出入りは自由であるのでそれは学園代表の生徒会長も例外ではなく「来るな!」とは言えない。
だがこれがディルク・エーベルヴァインであるならば警戒をせざる得ないのだが…。
何やら最近は大人しいと専らの噂になっているので嵐の前のなんとやら…である。
そもそも訪れたのが権謀術数とは程遠いシルヴィア・リューネハイムなら心配する必要は…ありませんわね、とレティシアは口に含んだ紅茶を香りを楽しんだ後に飲み干そうとしたそのときだった。
「それと、お連れの方が一人。変装をされているようで閣下と同じように見事な変装でどなたかは一瞬分かりませんでしたが星導館学園の《戦士王》…名護蜂也副会長もご一緒でした。」
「ぶふっ!?…ごほっ!ごほっ!ごほごほっ…!」
「だ、大丈夫かいレティシア…?」
その報告に口に含んでいた紅茶を思わず吹き出し掛けてむせてしまい心配したアーネストに背中を擦られるレティシアの姿があった。
「せ、《戦士王》と《戦律の魔女》が揃ってウチの学園に来ていたと…?」
「はい。…どうされたんですかレティシア。まるで親の敵を見つけたような感情を籠った表情を浮かべて。」
パーシヴァルは淡々と無表情に答えた。
「《戦士王》名護蜂也…!クローディアというものがありながら《戦律の魔女》とお、逢瀬をしているですって…!?」
「落ち着きたまえよレティシア。君がミス・エンフィールドと昔馴染みということを知っているが早とちりはよくないと僕は思うよ?」
ソファーに座ってプルプルと膝においた拳が震えているがアーネストが嗜める。
「何故《戦士王》と《戦律の魔女》が一緒に我が学園に来ていたのかの意味は分からないが…《獅鷲星武祭》の敵情視察…だとは思わないかい?」
「…っ!す、少し気が急いていたようでしたわ。」
「いや、気にしないでくれ。二人はたまたま合流をしただけかもしれないし。」
レティシアは自分の気のせいだ、と言い聞かせアーネストに言われた考え得て思案する。
《戦士王》こと名護蜂也が《獅鷲星武祭》に出場するというのは確定であると見られているし何よりあの”クローディア”が気に入っている人物で癪ではあるがあの卓越した戦闘技巧と《壊劫の魔剣》の能力的に戦力として外す理由がないのとこの《獅鷲星武祭》の優勝を目指してこの六花に来ていることをレティシアも知っていた。
と、なればこそ現在二連覇している聖ガラードワースの優勝候補チームである『
それにシルヴィアの方も《王竜星武祭》が本命であることは知っているが彼女の学園に在籍している有力グループである《ルサールカ》が出てくる筈なのでそれの情報収集、と言ったところだろうか?
…実際にはシルヴィアからのお誘いで蜂也がデートをしているだけなのだが。
そうとは知らずにそう思案して顔を上げようとレティシアがアクションを起こそうとしたところにまたしてもパーシヴァルが口を開く。
「ああ。そういえば…。」
「ま。まだ何かあるんですの?」
思わず脱力しかけたがその報告にアーネストは表情を変えてレティシアは驚きを隠せなかった。
「当学園で起こった問題ではないのですが、クインヴェール女学園でアーネストの妹君がレヴォルフの生徒に乱暴を働かれたようです。」
「…なっ!?」
「…続けたまえ。」
レティシアはソフィアについてもちろん驚きその件について嫌悪感…というよりも怒りを示したがそれよりも隣にいた兄の静かなる怒りにその感情は引っ込んでしまっていた。
しかしその怒りを感じ取ってもパーシヴァルの口調は変わらない。
「はい。クインヴェールにて
「名護蜂也が…?」
レティシアは驚きを隠せないようだがアーネストは溜飲が下がったのかいつものような柔和な態度に戻っていた。
「…ふむ、続けてくれ。」
促され言葉を続けた。
「《戦士王》が割って入ったことにより当然ながらレヴォルフの生徒は手も足も出ずに逃走…助けに入った当事者は妹君が引き留めようとしてお礼を言おうとしていたのでしょうがクインヴェールの園内、ということで立ち去ったようです。その後の足取りを追いましたが見失った、と報告を受けております。」
「そうだったんですの…よかったですわ。」
レティシアもソフィアの実力を疑うことは無いが過去にあったトラウマがあり実力が出せない、ということを知っており男達に取り囲まれて乱暴された、ということを聞かされて気が気でなかったが《戦士王》に助けられた、と言うことを聞いて一安心したがレティシア的には複雑であった。
一方でアーネストは普段の表情を浮かべていたが大事な妹がそんな目に遭った、と言うことを聞かされ自身の精神をコントロールしていたが中に渦巻く怒りは相当なものであった。
そのタイミングで《戦士王》が助けた、という話を聞いて彼に対する評価がさらに上がっていた。
アーネストは腕を組んでスッと薄く笑みを浮かべた。
「そうだったのか…であれば本日当学園にわざわざ来園してくれた、というのに挨拶を出来なかったのは残念だね。」
「アーネスト?」
「ちょうど良い。公王からのお誘いを断るのは些か忍びない、と思っていたところだ。」
「ちょ、ちょっとお待ちなさいな!まさか貴方、例のイベントに参加するつもりですの?」
「確か彼はゲスト枠で招待されていただろう?どのような人物なのかこの目で見極めるちょうど良いタイミングじゃないか。…そうだなパーシヴァル。明日の分で今日で終わらせられる仕事をピックアップしてくれないか?」
「畏まりました。」
淡々と答えるパーシヴァルを退ける勢いでアーネストに詰め寄るレティシア。
「アーネスト!そんな勝手をしたら《聖剣》が…!」
「大丈夫だよ、レティシア。これは私心からではなくこの学園を慮っての行動だからね…それに僕の大事な妹を助けてくれたんだ。お礼が遅い、だなんてのは相手方に失礼だ。”《聖剣》”もそういうことならば僕の行動を納得してくれるさ。」
アーネストにそう言われてしまえばレティシアも折れるしかない。
確かにアーネストの言い分も理解が出来るのが苦しいところなのだが。
こうして人知れずに《聖騎士》が《戦士王》へ接触する機会を伺っていた。