俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。   作:萩月輝夜

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魔法科の方が行き詰まったので久々に投稿。


グラン・コロッセオ

星露に飛行船に無理矢理?乗せられた道中…でいいのだろうか目的地に付くまでの間に星露のお付きの生徒で虎峰、と呼ばれていた人物がシルヴィアに対して緊張した感じで自己紹介をしていた。

なんでも彼はシルヴィアの大ファンらしくまさか生で、しかも間近にその姿を視界に収めるとは思っても見なかったらしく随分と興奮をしてた。

まぁ目の前に希代の世界の歌姫がいたなら大ファンなら絶頂…いや言葉が汚かったな”大興奮”するのは当然といえるだろうか。

 

その自己紹介にシルヴィアは思い当たる節があったらしく名前と顔が一致して腑に落ちたような感じだった。

なんでもシルヴィアは観客の顔を出来るだけ覚えるようにしているらしく中でも虎峰の事は印象的だったらしい。

そう言って微笑むと虎峰は頬を染めていた。

 

「こ、光栄ですっ!」

 

そんなやり取りを傍目で見ていると隣にいた星露が声を掛けてきた。

 

「すまぬのう。あやつは歌姫殿にぞっこんでな。」

 

「まぁシルヴィアのファンは多いだろうし仕方ないだろ。…”あの子”でいいのか何者?」

 

俺がそう言うと星露があきれた表情を浮かべていた。

 

「お主も意外に物を知らぬ奴よの…あやつは趙虎峰は界龍(うち)の序列五位《天苛武葬(てんかむそう)》の二つ名を持つ儂の弟子じゃよ。」

 

天苛武葬(てんかむそう)》と言われてようやく思い出した。

天苛武葬(てんかむそう)》…界龍第七学園の序列五位で《鳳凰星武祭》を優勝した実力者…の筈なのだが今はどう見ても限界オタクにしか見えない。

 

「そういや星露は今回のイベント参加するのか?」

 

「いんや儂は今回運営側じゃよ。お主が参加するともっと早くに聞いておれば…ううむ惜しいことをしたのう。まぁ過ぎたことは仕方がない。代わりに虎峰が代わりに参加することになっておる。」

 

その言葉に浮かれていた虎峰はビシッと背筋を正して眉をひそめた。

どうやら今回の催し物に関しては意図しないものだったらしく見た目に違わず随分と真面目な性格なのは言動から察することが出来たのとやはり虎峰は界龍の生徒であることも分かった。

 

「それに師父が”お気に召している”という《戦士王》の実力を間近で漸く観ることが出来ますので有効活用させていただきますよ。」

 

虎峰はこちらに挑戦と妬みが混じったような視線を俺に向けてきた。

正直こういった厄介ごとに関わりたくない…が時既に遅しと言ったところか。

後で夜吹は〆る。

 

と、さらに星露が爆弾を投げ入れる。

 

「他にも昨夜、緊急参戦が決定したビッグゲストがおるぞ?」

 

「ビッグゲスト?オーフェリアか?」

 

「違う違う。まぁ《孤毒の魔女》とコンタクトを取ろうとしたんじゃが連絡先を知らんでのう。改めて別じゃよ。」

 

俺とシルヴィアが怪訝に首を傾げると得意そうに告げた。

 

「聞いて驚け。聖騎士(ペンドラゴン)殿じゃ。」

 

聖騎士(ペンドラゴン)?……ああ聖ガラードワースの生徒会長…だっけ?」

 

「うん。そうだよ。まさか彼がこういった催し物に参加するなんて珍しい…。」

 

俺の反応が薄いので星露が少し拗ねてしまった。

いや、面識ないし。

 

「あやつの剣技だけを見ればお主を越えておるじゃろうが。じゃがお主…何かを剣技以外にも何か隠しておるようじゃしのう?」

 

此方を探るような視線を向けるが俺は肩を竦めるだけで答える気が無いことをジェスチャーで伝えると嬉しそうにニコニコしている。

こういうところだけ見ると本当に童女だよな…。

 

「ふーんアーネストが参戦するのかぁ…」

 

俺の隣でシルヴィアが何か不吉な事を言い始める。

おい、まさかとは思うが…。

 

「ねぇ、星露。その大会参加ってまだエントリーできる?」

 

「おい。本気かよ。」

 

「し、シルヴィアさん!?」

 

その行動に俺は呆れて虎峰は驚き星露は不敵な笑みを浮かべている。

 

「ほう?歌姫殿もやる気かえ?」

 

「うん。丁度良い機会だしね。《戦士王》に《聖騎士》の二人と戦えるだなんて滅多にない機会だし。」

 

そういうと星露はかんらかんら、と笑っていた。

 

「うむ!よいよい!そうこなくってはのう!なに、エントリーに関しては儂に任せるが良い。必ずねじ込んでやろう。…それにあの《世界の歌姫》がエントリーするとなれば拒むものはおるまいて。」

 

「流石だね。話が分かって助かるよ。」

 

そういって星露は携帯端末を取り出して何処へと連絡をしている。

 

「…そりゃお前とシルヴィアの名前だしたら下は必ず言うこと聞くっての。」

 

隣を見ると虎峰が「あぁ…師父またですか…?」と困っているのが見えたので妙な親近感がわいて肩を叩くと

 

「…もしかして、貴方もですか?」

 

「お互いにえらい上司を持つと大変だよな…?」

 

「……分かってくださいますか《戦士王》、いや蜂也。」

 

「ああ。虎峰とは仲良くなれそうだ。」

 

「僕もです蜂也。」

 

俺たちは互いに握手をしてここに奇妙な友情が成立していた。

その光景を視たシルヴィアと星露から怪訝な視線を向けられたが。

 

◆ ◆ ◆

 

こうして連れてこられた『グランコロッセオ』の会場場所…鳳凰星武祭(フェニクス)が開催されていたシリウスドームとのことらしい。

会場は物好きが集まり司会が声を挙げると観客席が呼応するように歓声が上がる。

その盛り上がりたるや《星武祭》に劣らないだろう。

 

ステージには既に《グラン・コロッセオ》に参加する為に集められた計三十名が待機しており催し物に適した《煌式武装》を手渡されている。

因にだが俺の持つ《壊劫の魔剣》等の《純星煌式武装》は大会レギュレーションに適していないとのことで使用が禁じられていた。

 

『解せぬ。』

 

(まぁお前がいるとややこしくなるから黙ってろ?な?)

 

ホルダーに仕舞い込んだ発動体の柄を触れながら辺りを見渡すと集められたメンバーのなかにそわそわしているのを見かけたのはこれから何をさせられるのか?と言うのを聞いていないからだろう。

そう言う俺もこれから何をさせられるのかは聞いていない。

 

『三学園合同によるこのイベント、実況は私、星導館学園新聞部夜吹栄士郎がお送り致します。』

 

実況席に目をやるとノリノリというべき表情でマイクを握り実況している。

話し方を聞いて分かるが元々そう言うのが得意なのかもしれない、天職かもな。

置かれた状況に溜め息をつくのは参加したのが間違いだったかもな…遠い目をしながら見ていると背中を肩を叩かれた。

振り返ると見知った少女の顔が視界に入った。

 

「よぉ蜂也。相も変わらずしけた面してやがんな。それでも鳳凰星武祭(フェニクス)の優勝者の一人か?」

 

「…イレーネか。お前も何かに釣られた口か?元気そうだな。」

 

「そうでもねぇよ。誰かさんのお陰で《覇潰の血鎌》が使えなくなって商売上がったりだよ。今じゃ序列も十八位だ。」

 

「あの試合で俺を倒しきれなかった自分に文句を言ってくれ…俺は悪くない。」

 

「へへっ。いうじゃねーかよ。それよりも聞いたぞ?さっきうちの学園に女連れだったらしいじゃねーか。意外にも隅に置けねえな。しかも星導館の生徒会長じゃないときた。」

 

俺を見ながらニヤニヤと笑っているイレーネ。

困惑しながら返答した。

 

「別に俺とクローディアはそんな関係じゃねーよ。その事か…敵情視察って奴だ。」

 

「別にごまかす必要ねぇよ?いやはや色男め。」

 

肘でぐいぐい脇腹を突っついてくる…無駄に痛いんだが?

恐らくはプリシラさんからその時の状態を聞いていたのだろうが俺だけしか正体を知られていないので隣にいた人物の正体がシルヴィアでないのが幸いだったかもしれない。

 

とは言え俺が女連れでデートしていると勘違いされているのは非常に不本意であるのでどう訂正しようと思案しているとイベントが進行し俺にスポットライトが当たったので思考を中断せざるを得なかった。

 

『今回のグラン・コロッセオにエントリーしている選手は各自厳粛な選考を潜り抜けた各学園の猛者ばかり!その中でも著名なゲスト出場者をご紹介致しましょう!まずは皆様のご記憶にも新しい《鳳凰星武祭》制覇者にして星導館学園序列三位!この水上学園都市(アスタリスク)の歴史上唯一の最凶・最悪の純星煌式武装《壊劫の魔剣》の完全適合者、魔術師にして武人、《戦士王》名護蜂也ーっ!』

 

スポットライトを当てられ思わず尋問されている犯人の気持ちが分かった気がしたが俺以外は熱気が高まり歓声が盛り上がっている。

 

『急遽参戦が決定した聖ガラードワース学園の《聖騎士》!前回前々回と《獅鷲星武祭》を二連覇している銀翼騎士団団長にして序列一位かの《聖剣》に見初められし騎士の中の騎士、アーネスト・フェアクロフーっ!』

 

今度はスポットが聖ガラードワースの制服を着用した美男子に当たるとが軽く手を挙げる。

途端につんざくような黄色い悲鳴が響き渡っていた。

見た目通り女性人気が高いらしい…イケメンか、爆ぜろ。

俺と《聖騎士》がかなりデカ目の歓声を浴びていたがそれよりも大きな歓声の大瀑布が会場内に響き渡る。

 

『そしてそしてーっ!まさかまさかの緊急参戦!希代の歌姫にして世界最高のトップアイドル!そしてクインヴェールの序列一位にして《王竜星武祭》準優勝者!その歌声は万物を魅了する《戦律の魔女(シグリドリーヴァ)》シルヴィア・リューネハイムーっ!!』

 

もはや歓声…と言うか絶叫に近い。

俺は耳をやらないように遮音スクリーンを自分の付近にだけ展開させて普通の反応を見せている。

紹介された俺を除く二人はエンタメ的に手を挙げたり大きく手を振ったりしている。

 

「すげぇな二人とも。特にシルヴィア。」

 

「そりゃそうだろ…世界の歌姫様だからな。」

 

そう言うイレーネはあまり興味が無いらしくどちらかというと虎峰の方に興味があるらしい。

実際に今イレーネは合う武装がないため徒手空拳で戦っているので実力者である虎峰の戦い方を参考にしたいようだ。

 

「改めて徒手空拳で戦うようになってから界龍の武術ってのは理に適しているんだよな…特に虎峰って奴は星辰力の使い方が抜群にうめー。」

 

「そうなのか…。」

 

可愛い顔に似合わず徒手空拳ではかなりの実力者…まぁそうじゃなかったら《鳳凰星武祭》で優勝することなんて不可能だしな。

そんなことを思っていると夜吹が試合のルール説明をしていた。

 

かい摘まんで説明するとこの大会は三つのフェイズ…段階を踏んで次に進んで最終フェイズまで到達しなければならずそのフェイズ中に達成できなければ失格、ということになるらしい。

そしてこの《グラン・コロッセオ》は選手同士のバトルロワイヤルでなく選手同士で潰し合うのは禁止らしい。

意図的に攻撃した場合は失格となり公平を期すために出場選手は同じ出力規格の一般的な煌式武装を使用しなくてはならない。

 

そのため俺が今手にしている装備は一般的に六花で流通しているブレードタイプの煌式武装を手渡されている。

確かに《壊劫の魔剣》がここで使用できると大変なことになるのは想像に固くない。

 

『同様、《魔女(ストレガ)》や《魔術師(ダンテ)》の方々は能力の使用を禁止します。まぁと言っても今回参戦の該当者はお二人しかいませんが。』

 

運営は純粋な身体能力で戦って欲しいようだったが。

それを聞いて今回俺とシルヴィアの参戦はかなりギリギリのラインだったことに気がついた。

両者ともに《魔術師》と《魔女》のカテゴリーの選手だ。

恐らくは星露が無理矢理ねじ込んだのだろうと理解して大会運営の苦労が忍ばれたがまぁ…どうでも良いか。

 

そんなこんなで第一フェイズが始まった。

ステージ内の選手を取り囲むように展開されたのはユリスが使用していた煌式遠隔誘導武装だ。

その数は”百”は下らない。

 

ターゲットの”赤色”を破壊しなくてはならなくなりその数は二十。参加者三十一名のうち十名は脱落してしまうようだ。

 

『なお、第一フェイズは《星武祭》と違い身体全体が判定となります。攻撃が当たった事態で失格の判定となりますのでご注意ください。』

 

取り囲む武装の数は大量で尚且つ参加者が入り乱れて戦うので接触は免れない…何処ぞのスクロールシューティングゲームかよと言わんばかりの鬼畜難易度だが星脈世代なら造作もない、ということなんだろう。

 

「はぁ…夜吹め。面倒なことに巻き込みやがって…俺は見世物じゃねーんだけどな…。」

 

面倒だ、と思いながらあれだけ捲し立てられて一発で退場になりましたー、というのは俺の上司であるクローディアの顔に泥を塗ることになるので真面目にやるしかないようだ、と腹を決めて《瞳》の力を解放する。

 

位置情報と何処に動くのかを把握し武装を励起させる。

こっちの世界に来てから《予測》能力の精度…というか発動時間が長くなっている気がする。

これも修行できるってことか。

 

ある程度までどこに移動し、停止するのかを確認し《壊劫の魔剣》と違って流しすぎると壊れる可能性があったのでセーブして常識の範囲内の大きさに固定しておく。

同時に三百六十度から光弾が襲いかかるが『縮地』でその場から飛び去り剣型の誘導端末が襲いかかるが無造作に武器を上に押すように掲げると受け流す。

 

その瞬間に受け流された武装は勢いそのまま俺を狙い撃ちしようとしていた銃型に突き刺さり破壊されたのを確認し奥にある赤いターゲットを発見した俺は斬撃と銃弾の雨霰の隙間を縫うように駆け抜けてターゲットのまで数メートルのところで踏み込んですれ違いざまに切り裂き破壊した。

 

『こ、これは早い!名護選手開始1分も経過せずに第一フェイズを通過してしまいました!』

 

「……。」

 

俺は武装をしまい壁際に退避し未だにターゲットを探しだしながら避けている選手を尻目に小休憩していると不意に声を掛けられた。

 

「ー流石だね。《戦士王》」

 

隣を見ると白い制服…聖ガラードワースの制服を着用しているフェアクロフが声を掛けてきた。

どうやら俺と同じタイミングで第一フェイズをクリアしたようだ。

 

「…《聖騎士》にそう言われるのは恐縮です。」

 

「僕はそんなに大した者じゃないよ。初めまして、と言っておこうか。まぁ実際に君とは《鳳凰星武祭》の表彰式で顔を合わせているのだけど。」

 

唐突に手を差し出され困惑した。

俺は困惑しながら差し出された手を握ると少し強めに握られたのは目の前の男が俺に何か言いたいことがあるのではないかと勘ぐってしまうが悪意は感じられない。

 

「君は《魔術師》と言うことだったが…能力を封じられた状態ではあるがこう言った状況が得意なのかな?」

 

「まぁ、それなりっすね。《刀藤流》は一対複数を想定しないですし…貴方の剣術に近しいかも知れないですが。」

 

「そのようだ。《魔術師》は得意技能が突出しているが身体スペックが劣ると思っていたが…君はそれには当てはまらないようだね。」

 

目の前の少年、いや青年は俺より年上で落ち着いた雰囲気があり《聖騎士》なんて二つ名があるからもっと厳粛で堅苦しいマッシュポテトをマッシュマッシュしているような人物だと思ったが違ったらしい。

そんなことを思っているとフェアクロフは俺の手を握ったまま俺を見つめている。

…男に見つめられる趣味はないんだが?

 

「えーと…俺の顔に何か付いてます?」

 

「いや失敬。君とは一度ゆっくり話してみたいと思っていたんだよ。星導館の生徒会長が気に掛けている少年と《壊劫の魔剣》の完全適合者がどんな人物なのかとね。まぁ、この状況でゆっくり話している暇はないが。」

 

そう言って苦笑するフェアクロフ。

俺も釣られるように苦笑いを浮かべる。

 

「そうっすね…同じことを界龍の生徒会長…星露にも言われましたよ。」

 

「ははぁ公主のお眼鏡に適したのならいよいよ本物だね。」

 

「あれは童女のガワを被ったヤベー奴だと思うんですけど…あれって中になんか入ってるんじゃねーかと。」

 

「ははは。そんなことを公主に聞かれたら大変だぞ?」

 

「とんでもない事を吹っ掛けられそうですが…。」

 

ははは、と笑い声が聞こえた後に唐突にフェアクロフが真面目な表情を見せる。

 

「君に話しかけたのは話してみたい、と言うのものあったのだが…感謝を伝えておかないといけないと思ってね。」

 

「感謝…っすか?」

 

「ああ。先日クインヴェールでそこの生徒がレヴォルフの生徒に乱暴され掛けたのを知っているかい?」

 

「…どうしてそれを?」

 

思わず眉をひそめてしまった。

どうしてその事を聖ガラードワースの生徒会長が知っているんだと思ったが説明してくれた。

 

「今回の学園祭に対して情報収集をするために情報収集の任に着いていた諜報審問官(インジュギター)がその場面に遭遇してね。」

 

「ああ、やっぱりこっちを見てる視線を感じ取ってましたがそうだったんすね…でもどうしてそちらの諜報部員が他校の生徒の手助けを?」

 

俺が視線があったな…告げると驚いたような表情を浮かべていた。

まぁそれには同意するがそれは俺は他人からの感情の籠った視線には…敏感だからな。

 

「その乱暴されそうになっていたのは僕の妹…ソフィア・フェアクロフなんだ。」

 

俺はようやく合点が言った。

あのとき助けた女性の雰囲気は今目の前にいる青年に近しいものだったからだ。

俺は助けに入ろうとした聖ガラードワースの諜報部員の邪魔をしたことになる。

 

「…すいません。余計なことをしたっす。」

 

「いや、諜報部員が聞いたタイミングだと襲われていたのを防げなかったようだから君に助けに入っていなければ…ソフィアは心に深いダメージを負っていたかもしれない…改めて感謝させて欲しい名護君、いや《戦士王》。我が妹ソフィア・フェアクロフの為に危険を省みず飛び込んだ件に関して感謝したい。ありがとう。」

 

「いや、そんな大袈裟な。ただ俺はレヴォルフの生徒にムカついてぶん殴ったらそうなっただけで…。」

 

実際に女性が乱暴されていそうになったのをムカついたので殴りに行っただけなので結果論でしかないのだが…。

 

「本来なら君が聖ガラードワースの生徒ならば騎士の位と二つ名を授けたいのだが…君に入れ込むとミス・エンフィールドとレティシアにも叱られてしまいそうだ。」

 

「はぁ…。」

 

「それに余計なお世話かも知れないが…ミス・エンフィールドがいるのにミス・リューネハイムと逢い引きするのは男性として如何なものかと思うぞ?」

 

「どうしてクローディアの名前が出てくるんですか?」

 

「うん?君達は男女の仲ではないのかね?」

 

「俺とクローディアはあー………………。何て言ったら良いんだろうか…ともかく、そんな関係じゃないです。それに今回のシルヴィアとの行動も日頃の感謝を予てのお出掛けですから。俺がシルヴィアとそんな仲にでもなったらファンに殺されますよ。」

 

きっぱりそう言いきるとフェアクロフは苦笑いを浮かべていた。

何でだ?

 

「成る程…これではミス・エンフィールドも彼女も苦戦する筈だな。」

 

「???」

 

「あれ?アーネスト。私の名前が出ていたような気がしたけど…蜂くんとなんの話をしていたの?」

 

「いや、第一フェイズのこの新装備について名護くんの感想と雑談をしていただけだよ。相対してみてどうだったかなミス・リューネハイム。」

 

俺が疑問符を付けているとターゲットを破壊し第一フェイズを突破したシルヴィアが此方に歩み寄ってきたのに気がついて頭の疑問を消した。

フェアクロフもこれ以上話を深掘りするつもりは無いようだったのは有り難かった。

俺たちの近くまで近づいたシルヴィアの顔を見るとどうも満足していないようだ。

 

「そっか。うーん…これが煌式遠隔誘導武装(レクトレクス)かぁ…思ってたより、って感じかな。蜂くんもそう思うでしょ?」

 

「まぁ実際に試作品を使ってるのがうちに居るしな。比べるまでもなく直ぐに狙っている場所が割れる。」

 

「おや、やはり君は名護君と知り合いだったのかい?」

 

「まぁね。でも、やはりって?」

 

「昨日、うちに来ていただろう?」

 

「あらら…バレてたんだ。」

 

俺とシルヴィアは顔を見合わせる。

確かに聖ガラードワースの学園祭に訪れはしたが何の問題もなく一番平和な場所だったと思う。

それにさっきフェアクロフから「逢い引きしていただろう」と言われたが一介の諜報部員が俺達、いやシルヴィアの正体を見抜くことなどできない筈だ。

 

「うちには一人、目の良い子が居てね。」

 

「ああ。あの男装のあの子」

 

シルヴィアはあちゃー、という仕草を見せていたがそんなに大事には思っていないらしいがしまった、という表情をしていた。

 

「クインヴェールに星導館の序列一位と三位が我が学園に訪れたと聞いてうちの副会長が少しばかり心配していたんだが…杞憂だったようだね。」

 

「そりゃデートしてただけだもん。ね、蜂くん?」

 

「デートじゃねぇだろ…ただの学園祭を廻りを俺がボティガード兼任してただけだって…まぁ護衛なんて要らないと思うけどな。」

 

「むぅ…。」

 

「ほぉ…?」

 

俺が否定するとシルヴィアは頬を膨らませて不機嫌になってしまった。

俺が悪いのかと思っているとフェアクロフはそのやり取りを楽しそうに見ている。

終わった三人にで雑談をしていると会場内にブザーが鳴り響いて第一フェイズが終了した。

三十一人いた筈の参加者はその半分である十五人、失格になった選手は肩を落として会場から退出していくが会場の観客席からは決して多くはないが健闘を称える拍手が送られていた。

残った参加者は虎峰にイレーネ、それ以外にも強者たちが顔ぶれとして残っていた。

 

一応全員序列入りしている事を考えると煌式遠隔誘導武装も一定の有用性があることを示した、と言えるだろうからこの大会で評価試験も兼ねていたんだろう。

 

『さてさて、参加者の皆さんはお疲れのところ申し訳ございませんが時間の都合もございますので早速第二フェイズへ進みたいと思います。』

 

夜吹の声を受けて俺達の反対側のゲートが開くとその中から巨大な人影が姿を現した。

 

「あれは…擬形体、いや中に人が入っている…強化外骨格か。」

 

重厚で堅牢な装甲に包まれた巨体…一見俺が戦った《鳳凰星武祭》のアルディ逹…ではなく《瞳》を通して確認するとその内部には人の反応があった。

アルディ逹よりも武骨なデザインは搭乗する人間の生存性を高めるための処置なのだろう

 

(成る程…こっちじゃ既に戦闘用強化外骨格は実用化されてる…みたいだが俺の望む物じゃないな。)

 

夜吹の実況が入り第二フェイズの説明が入った。

 

『さて第二フェイズのクリア条件は先程の第一フェイズとは異なり一定時間この新型戦闘用強化外骨格から逃げ続ければ勝ちになります。無論参加者は戦闘用強化外骨格からの攻撃を受けた時点で失格となります。今回は参加者側から攻撃を仕掛け戦闘不能にしても構いません。』

 

一定時間逃げきるか相手を伸せばこっちの勝ちというのはシンプルで分かりやすい。

視線の先には二十の戦闘用強化外骨格が佇んでいる。

かなり物々しいな。

 

「ふーん…数はざっと二十体か…」

 

「恐らく第一フェイズの突破人数よりも少なくさせないための措置だろうね。」

 

「あり得るっすね。」

 

壁際に集まる俺達三名はそれぞれに感想を述べていると第二フェイズ開始の合図が下された。

 

その瞬間、戦闘用強化外骨格逹はその鈍重そうな見た目とは裏腹にかなりのスピードで此方に突っ込んできた。

 

「へぇ…これは驚いた。」

 

フェアクロフは感嘆の声を挙げていた。

それは俺やシルヴィアは声には出さずにリアクションで見せる。

 

最も近くの選手がブレードタイプの煌式武装で迎撃しようとするが腕から出力された光の刃がぶつかり拮抗する前に選手を吹き飛ばしたのだ。

体勢が崩れた選手は体勢を建て直そうとするが腕部に搭載された銃器から放たれた光弾が追撃した。

 

「おおー、これは手強そうだね。」

 

「うわぁ…えぐいな。」

 

『さぁ早速挑戦者が一人脱落してしまいました!果たして第二フェイズは一体何人が突破できるのでしょうか!』

 

「夜吹テンションたけぇなぁ…はぁ…いくか。」

 

シルヴィアが感心していたが能力無しで相手をするのは少々…というか結構面倒だなと思っていたが此方に向かってくる。

俺は溜め息を吐きながら迎撃の準備をしようとしたがシルヴィアが待ったを掛けた。

 

「ここはレディーファーストってことで」

 

ウインクをして愛らしい表情を見せるシルヴィアに俺は呆れていたが隣にいるフェアクロフは「お先にどうぞ」と言わんばかりの態度だ。

騎士道はどうしたんすかねぇ…?

 

「まぁ使い慣れていない武器だけど…なんとかなるでしょ。」

 

シルヴィアの手に握られているのはシンプルな片手剣タイプの武装であり普段使いしている銃剣一体型の煌式武装の《フォールグファング》とは性能が段違いであるが…。

 

そんなことを気にも止めず、そして気負うこと無く戦闘用強化外骨格の前に立つと対峙している敵が戸惑っているのは希代の歌姫が目の前に立ちはだかったからだろう。

しかし、直ぐ様戦闘に移行し右腕のブレードが発動しシルヴィアに襲いかかるが難なく回避して胴体部に一撃を食らわせた。

 

しかし、強化外骨格はその攻撃を入れられたが微かに装甲面にダメージを受けただけでの軽微であり堅牢な装甲を有しているのは明らかだった。

 

「あらら…思ったよりも固いかな。」

 

シルヴィアが手加減したわけではない。

先程実況でも「新型の戦闘用強化外骨格」と銘打っていたので今回の大会は新装備のお披露目も兼ねていた商品のショーケース…と言ったところだろう、そんな商品の発表会で直ぐ様壊れてしまうような装備を提供するのはスポンサー側も販売前の商品の性能に疑問を持たれたくないだろう。

 

(つまり俺達の力を制限するために貸し出した装備にもリミッターが掛けられているってことか。)

 

「ふむ、興ざめな小細工だね。」

 

その事にフェアクロフも気がついたようで手に持つ装備をつまらなさそうに見ている。

 

「まぁ、そう言うことなら少し工夫しますか。」

 

間合いを取っていたシルヴィアは光弾を発射する体勢に入っていた戦闘用強化外骨格から放たれた光弾を回避しながら素早く後ろに回り込み攻撃を仕掛けようとしたが同時に相手も機敏な動きで迎撃しようと旋回したがシルヴィア相手には”単調だったのかもしれない”。

 

「残念、君は少しリズムが単調すぎるかもね。」

 

旋回するよりも先にシルヴィアの剣閃が煌めいたかと思えば戦闘用強化外骨格の腕がだらり、と下がり後ろへ下がるように膝を着いて動作を停止した。

 

「…?!」

 

声は聞こえないが戦闘用強化外骨格の中にいる操縦者の困惑が聞こえるようだったがその原因はすぐに分かった。

 

「手足の関節狙うとか…それもう秘伝レベルなのでは?」

 

そう、シルヴィアは動作する関節の一瞬の動きを見切ってその間に攻撃を叩き込んだのだ。

重装甲の相手と戦う際には装甲の薄い部分を狙うのがセオリー…というか圧倒的な攻撃力を持たない限りは”そうするしか方法がない”と言っても過言だろう。

 

とはいっても腐っても新兵器であるこの戦闘用強化外骨格の稼働領域に対策を講じている筈なのだが…シルヴィアは意図も容易く一度の接触でその弱点を見抜いてダウンを取ってしまったのだ。

俺がそんな芸当に若干引いていると隣にいるこの青年は「彼女なら当然できるだろう?」と言わんばかりの反応を見せている。

 

…もしかして水上学園都市(アスタリスク)って逸般人しかいない感じか?と思っているとフェアクロフは自分の煌式武装を起動させる。

 

「それじゃ、年長者として次は僕に任せてもらおう。」

 

「あ、いや片方は俺が……どうぞ。」

 

俺はそう言い掛けるが有無を言わせない無言の笑顔に俺はすごすごと次方を譲るしかなかった。

前へ出るフェアクロフの後ろ姿を見ながら状況を把握する。

今現在二体の戦闘用強化外骨格に挟まれる形であり狙われる当の本人は自然体の剣を握った腕をだらり、と力を全くいれていない状態であった。

一見すれば隙だらけの状態だが俺には分かる、”とてつもないことをしでかす”筈だと。

 

案の定、二体の戦闘用強化外骨格はフェアクロフに飛びかかったその瞬間に爆発と共に武装が付いた腕が吹き飛んだ。

 

実況が仰天した声で叫ぶが俺には何をしたのか理解して苦笑せざる得なかった。

 

(敵が武装展開と同時にその部分を突いて爆発させる…しかも”二体同時”と来たもんだ。とんでもねぇな聖ガラードワースの《聖騎士》は…。)

 

そんな妙技は流石の俺でも《瞳》の能力を使わなければ無理だろうし剣を握っている時間が俺よりも長い綺凛ちゃんや天霧でも無理だろう。

 

アスタリスクでも最高の剣士、と言われるだけの実力を垣間見た気がして俺は柄にもなく昂っていた。

何より、この試合は”お遊び”であり両者共に本気を出していない、と言うことに俺は更に高まり無意識にブレードを握る手が強くなる。

 

(んじゃまぁ二人に見せて貰ったし頑張るとしますかね。向こうが技ならこっちは”力”ってね。)

 

此方に向かってくる戦闘用強化外骨格が襲いかかってきた。

 

「…っ!」

 

俺は斬撃を回避し懐に潜り込みその隙だらけの胴体に”少し力を込めてブレードを叩きつける”。

端からみれは俺が”軽く振るったように見えるだろう”が少し違う。

 

「……!?」

 

次の瞬間に戦闘用強化外骨格はボーリングのピンの如く会場の壁に叩きつける…とまでは行かないが大きく吹き飛びその動きを停止させた。

《瞳》で見る限りは中の搭乗者は気絶してしまっているようだ。

外が頑丈でも中の人間は衝撃には耐えられない、それを狙った攻撃だったが成功したようだ。

 

「わぉ…蜂くんってば大胆。」

 

「軽く振るったようだが…なるほど衝撃で堅牢な戦闘用強化外骨格の中にいる人物を戦闘不能にしたのは流石だね。」

 

「…どーも。」

 

俺は各学園のトップに呆れ気味に感心されたような表情で見られながら俺はこの後どうするかを考えていた。

 

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