俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。   作:萩月輝夜

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久々の投稿。
内容は勝敗結果だけしかかわってないかも




先生って実は昔やんちゃしてました?(釘バット)

学園祭が終わってアスタリスクにも初夏の風が吹く。

因に俺は夏が嫌いだ、暑いし。因に冬も嫌いだ、寒いし。因に春は嫌いだ、虫が沸くし。

やはり秋が一番季節的にちょうど言い時期なのだと俺はそう思う。

 

…が、そんな初夏の始まりを感じること無く俺達、というか俺は今年行われる星武祭…チーム戦である獅鷲星武祭(グリプス)の為に付き合わされ…もとい、俺に合わせるために天霧達星導館学園のチームメンバーは特訓をしていたのだった。

 

「なぁクローディア。そういや夜吹に聞いたんだが次の星武祭のステージが改修される、って聞いたんだが…」

 

そう問いかけると軽く頷いた。

 

「はい。夜吹君の言うとおり大規模ステージとメインステージが改修されますね。なんでもアルルカントが新開発した防御機構を組み込むとのことらしいですよ?」

 

床に《千羽切》を床において隣で柔軟運動をしていた綺凛ちゃんが問いかけた。

 

「新型の防御機構、ですか?」

 

「はい。なんでもアルルカントの【黒婦人派(ソネット)】が開発した衝撃吸収用の特殊防護ジェルが使用されるとのことです。」

 

「あぁ…だからこの間の序列戦が中央ステージに変更されたのな…ったくこっちは目立ちたくねぇって言ってるのに余計なことしやがって…って三人はなんで凄い不満そうな顔でこっちを見てるんですかねぇ…?」

 

そう告げると天霧は苦笑いしリースフェルトは呆れたような表情を浮かべクローディアは笑っているものの目が笑っていないし綺凛ちゃんに至っては不満げである。

 

「まぁ…こればかりは…副会長に責任の所在があると言いますか…」

 

言うようになったじゃないか天霧…お前だけトレーニング辛くしてやるからなおめぇ…と思いながらその視線の意味に思い当たらないこともない。

 

まぁ言わずとも分かるんだがな。

月に一度の公式序列戦は各々の学園にあるステージで行われるのだが注目カード、即ち【冒頭の十二人(ページ・ワン)】の生徒達の戦いを一般客が観れるように都市部のステージが解放されることがありそれはオフシーズン、《星武祭》が行われないアスタリスクにおける観光客を呼ぶための基幹イベントなっているのだ。

まぁ戦うの大好き!が上等な界龍は例外として…【冒頭の十二人(ページ・ワン)】の試合となれば大規模ステージが宛がわれるのは必然…ということだ。

実際に俺やクローディア、綺凛ちゃんにリースフェルトに天霧も実際にその場に立ちメインステージであるシリウスドームにて挑戦者を退けている…がソコが問題なのではない。

 

俺はクローディアに詰め寄られる。

 

「蜂也?私言いましたよね。【獅鷲星武祭(グリプス)】前には必ず序列一位に上がってくださいね、と」

 

笑っているが笑っていないその気迫に思わすリースフェルトと天霧が若干引いていた。

 

「…お前それ綺凛ちゃんのいるまで言うことか?失礼な奴だなお前…」

 

「そ、そうです!お義兄さんの実力があれば本当は綺凛よりその地位が相応しい筈です!」

 

歯に衣を着せぬ言い方に思わず真顔になってしまう俺だったが綺凛ちゃんへ視線を投げるとその当の本人はというとクローディアの発言に強く同意しているようでその表情は酷く不満です!と言わんばかりだ。

 

「綺凛ちゃんまで…」

 

「まぁ確かに…名護の実力ならばさっさと序列一位になっていても可笑しくない。悔しいがその実力は他学園の序列一位にも引けをいや、それ以上なのかもしれないが…つくづくお前のその面倒な性格が厄介ではある。」

 

ここぞとばかりにリースフェルトもクローディアと綺凛ちゃんに同調した。

なんだこれイジメか?新手のイジメなのか?イジメなんだな?と問いかけたい。

そもそもだ。俺は別に権力に傘着て好き勝手したい訳じゃない。

俺が序列入りしているのはこの世界である程度自由に立ち回れる地位が欲しかったわけでその頂点に立ちたい、とかそういうのじゃないしクローディアの手前不義理は出来なかったとかそういう理由だ。

…それに綺凛ちゃんとは剣術における師弟のようなものではあるが刃を向けたくないという本人が聞いたら怒るような事を思っているので…。

 

だからその理由を告げるのは何となく…憚られた。恐らくクローディアは察していて今みたいなことを言ったのだろうが綺凛ちゃんは大真面目にそう思っていそうなので其らしいことで誤魔化す。

 

「あー…ともかくその話はやめだ。一先ずは全員序列入りしてるしそれで良いじゃねぇか。それに綺凛ちゃんと決着を着けるのは確りと刀藤流本家に行って純星煌式武装が出来上がってからにしたいんだよ。な?」

 

そう告げて銀髪の頭を撫でると不満げだった表情は落ち着いたようで「分かりました…」と一応は納得の形を見せてくれた。

 

「よー。揃ってるなガキ共。」

 

とほのぼの?とした休憩中の会話をしていると一人トレーニングルームに来た気配を感じとり視線を向けると同時に気だるげな挨拶と共に現れたのは我がクラスの担任である八津崎匡子だ…相変わらずその肩にのせた近代的な見た目だが少し懐かしさを感じるという逆現象が起こっている釘バットが物々しい…先生って実は昔やんちゃしてました?(釘バットを見つつ)無用な迫力が凄いが悪い人ではない。

 

「八津崎先生どうしたんすか?」

 

そう問いかけると面倒そうに凄んで来た。やっぱりヤンキーだよこの人。

 

「あん?どうしたもこうしたもねぇよ。呼び出したのはお前らだろうが。」

 

「「「呼び出した?」」」

 

俺と綺凛ちゃん、リースフェルト、天霧が同じことを口を揃えて言うと更に八津崎先生の機嫌が悪くなる…というかあれは困惑している表情だな「え、知らないの…?」って言った感じだがその表情は隣にいる綺凛ちゃんをビビらせるのに十分な凄みがあり実際に義妹は「ぴっ…!」となって俺の後ろに隠れてしまった。可愛いね。

八津崎先生が釘バットをトレーニングルームの硬質な床へ先端を突きつけると同時に声をあげなかったクローディアが一歩前で出た。

 

「ああ。言い忘れていましたが実は今日からチームでの実戦練習に入ろうと思いまして…そのお相手を八津崎先生にお願いしていたのです。」

 

「「え?」」

 

綺凛ちゃんと天霧がハモる。リースフェルトは呆れたような表情を浮かべていた。

 

「お前な…そういうのは前もって言えよ。」

 

「ごめんなさい蜂也。以後気をつけますね」

 

頭を下げるクローディアではあるが「してやったり」といったような雰囲気が感じられたのでこいつは恐らく反省していないなと感じていたがいつまでも話している訳に行かない。

どう言うことなのだろうと困惑している天霧と綺凛ちゃんへ予測ではあるが予て説明する。

 

「恐らくもう個別での連携は問題ないレベルまで達していると考えたからクローディアが八津崎先生を呼んで本戦レベルの連中に通用するかを見て貰おうってことだ。俺達は”個”では確かに強いかもしれないがカラードワースの連中ほど”集団”という物に特化していない。集団戦における状況判断、臨機応変に変化する作戦への対応、それは実戦でないと確認できないから八津崎先生を呼んだ…であってるか?」

 

そう告げると二人は「なるほど…」と納得しクローディアは満足そうな表情をしていることから的中したらしい。

この中では唯一、【獅鷲星武祭(グリプス)】への参加経験があるクローディアが発する言葉には説得力があった。

 

「蜂也の言う通りチーム戦は模擬戦であってもその相手を見つけることが難しいです。極力手の内を晒すのはどこのチームであっても一緒ですしなにか目的が有るか、或いは余程自信の有るチームでなければ模擬戦を受けてはくれないでしょう…それに蜂也達のチームは他のチームに警戒されていますから」

 

クローディアは曖昧な笑みを浮かべた。

まぁ正直クローディア率いる俺達のチームは同学園のメンバーからも警戒されているのは知っている。

クローディア、綺凛ちゃん、リースフェルトに天霧…と俺はまぁ除外しておくとして上澄みも上澄みの連中が揃っているチームに胸を借りたい、と思うのはいないだろう…即ち手の内が明かされる、と同義だ。

端的に言ってしまえばこの《獅鷲星武祭》という場所は経験が積みにくい一番やりづらい星武祭である。

 

「そこで八津崎先生の出番、というわけです。」

 

クローディアがそういうと八津崎先生は大袈裟に溜め息を吐いた。

 

「ま、めんどうくせーがこれも教師の務めって奴だ。それを抜きにしてもこいつと名護には借りがちーっとばかしあるからな。存分に相手をしてやるよ。」

 

借り、というのは恐らく去年の《星武祭》の件だろうなと思った。あれで大分先生達も”ウハウハ”だったらしいし。

所詮はやっぱりマニーか…と遠い目をしそうになった。

が、八津崎先生口ではそう言っているが端々に生徒の面倒見がいいというのが所々に見えるので口下手なだけだろうな…と思っていると睨まれた。やべっ…。

 

天霧がちょうど良く質問してくれて意識が削がれてくれたがその際にこの試合はチーム戦であり俺達が五人揃っているが対戦相手の八津崎先生は一人、近くにチームメンバーが存在しないことをリースフェルトが指摘すると不敵な笑みを浮かべ手にした釘バットの釘が青白く光ったその瞬間。

 

《魔女》であるリースフェルトが息を飲み俺は思わず流れを読み取って少し身構えた。

 

大量の万応素が解き放たれてのっぺりとした土人形が生成された。その数がちょうど八津崎先生を入れての五人。

その姿を見た綺凛ちゃんとリースフェルトがそれぞれの感想を述べていたが先生が一周する。

 

「この人形共は昔のチームメイトの能力だ。対象者の戦闘力と能力をコピーし傀儡を使役する…まぁ今回はあたしの能力をコピーしたものだがな。」

 

「昔のチームメイトつーと《獅鷲星武祭》を制したときのっすか?」

 

俺も一応調べたことがあったが八津崎先生は元レヴォルフの卒業生…現役時代はレヴォルフで唯一《獅鷲星武祭》を制したチームの一員、というのは有名な話だ。…やっぱり先生昔はやんちゃしてましたな?

 

「まぁ、やってみれば分かる話だ…。」

 

そう言って先生はホルダーに入れていた煌式武装を傀儡に投げ渡すと其々に発動する。

 

「ー元レヴォルフ黒学院序列第二位【釘絶の魔女(マキャベリス)】の実力、見せてやるよ。」

 

ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

◆ ◆ ◆

 

機械音声が試合開始の合図を告げて、綾斗が先陣を切った。続くは蜂也で今回は前衛を担当するらしい。

蜂也のチーム…もといクローディアのチームは前衛を担当するのは綾斗と綺凛、クローディアの三人、そしてユリスが距離と作戦に応じて臨機応変に立ち回るというフォーメーション…攻撃全振りである。

蜂也はというと前中後全ての距離を担当する役目があり有る意味で後衛、と言った方が良いか。

 

対する匡子のチームはアサルトライフル二丁、2丁拳銃もちの傀儡が二体、小型剣を両手に長剣をもつ傀儡が二体、そして本人は少し離れた位置…遊撃だろうその場所で俯瞰している前衛二、後衛二、遊撃一というバランスの取れた構成だろう。

 

チーム戦においての敗北はチームリーダーの校章破壊、意識消失、敗北宣言(リザイン)することだ。

それら以外はメンバーが倒されようが関係なく極論を言えば最後までリーダーが残っているチームが勝つことになるのだ。リーダーは蜂也になっている。

 

模擬戦闘が開始された。

 

蜂也は駆け出し《壊劫の魔剣》を起動し長剣を構えた傀儡に狙いを定め《黒炉の魔剣》を振りかぶる…よりも早く直前で長剣傀儡が此方に接近し攻撃を中断される刃は合わさずに手元を狙った攻撃に思わず回避を選択せざる得ない蜂也は避ける、その直後の隙を突いて無数の光弾が襲った。

 

「ちっ……!!」

 

回避し長剣傀儡を抜けて匡子目掛けて駆け出すが入れ替わる形で土塊の壁が姿を現して進路妨害されてしまう。

隙を突いて後衛がしつこく牽制を仕掛けてくるために追撃が出来きず直撃する弾丸は回避しながら突き進むが弾幕が凄まじく匡子まで辿り着けない。

 

(後衛二人掛かりで俺を狙ってくるとかどんなイジメだよ…!?)

 

「ははっ、良いか名護と天霧!チーム戦に置いて、てめーらと接近戦をやろうとする馬鹿が早々いると思うなよ!」

 

匡子が不敵に笑い声を張り上げてそう告げた。

 

「お前もさっき言った通りもっとも警戒されてる。対策を練られてるのは間違いなく名護、テメーのその《能力》と《壊劫の魔剣》だ。何せ天霧のような《黒炉の魔剣》をもってこない限り剣を合わせることも出来ねーし遠距離に置いておいたらどんな能力が炸裂するか分かったもんじゃねーからな。そんなおっかねえもんと能力をノーマークはあり得ねえってこった!おめえもだぞ天霧」

 

「そっとしておいて欲しいんすけどねぇ…うおっ!?」

 

「くっ…!!」

 

途切れなく続く弾幕を《壊劫の魔剣》で切り払いながら突き進む。

クローディアと天霧も同じように警戒されているだろうが蜂也は別格でならばと蜂也への対抗策、それは戦力を集中し動けなくさせる。単純ではあるがこれが一番理に叶っている作戦だ。

だがそれは考えなしで攻撃していれば蜂也の直感で抜けられるタイミングというのは把握できる…が今はそれが出来ないほどに”押さえ込まれている”のだ。

 

匡子の操る傀儡達の判断が正確さもありながら此方が来て欲しくないタイミングでの襲撃がイヤらしい。

緩急と駆け引きが凄まじく蜂也が防御と回避に意識を回せば銃撃を緩め接近型が近づいて来て攻撃へ移ろうとすると出鼻を挫くが如くその鼻先へ銃撃が飛んで来る。魔法を使おうにもそれを許してくれないのが実情だ。

それに同じく?遊撃に当たるユリスは匡子を警戒してか煌式遠隔誘導武装で銃撃を牽制するのだが傀儡達は軽やかなフットワークでその攻撃を避けてしまうが射線は決して外さずに蜂也へ攻撃を仕掛け続けているのだ。

 

「ですが、このチームの剣はお義兄さんだけではありません!」

 

両サイドへ回り込むように動いていた綺凛とクローディア、そして正面から進む天霧が匡子へ向かう。

 

戦力が分断される、つまりはリーダーを守る者がいなくなるという欠点も抱えている。

しかし、そのリーダーが”弱いわけがない”のだ。

 

「んなことは当然分かってるさ」

 

「!?」

 

先ほど下がった相手チームの前衛が純星煌式武装を持たない綺凛とクローディアへ斬撃を見舞いそのまま切り結び其々が相手取る。

単純な剣技の差では圧倒的に綺凛とクローディアが勝っている筈だがタイミングが上手いのかすぐには抜けられないようで釘付けになっている。

 

「はぁあああっ!!」

 

「おっと、甘ぇぞ天霧!!」

 

その隙を突いた天霧が匡子を攻撃しようとしたが恐らくはコピーした傀儡の能力だろうそれが発動し土の壁に斬撃が阻まれてその刃は届かない。

 

「ぐぅ……!!」

 

二撃目を与えようとした綾斗であったが戻ってきた後衛に攻撃を受けて防御に専念せざる終えない。

そのうちに土の壁は崩れ去り万応素に還っていく。

その光景を見た蜂也は手にしている釘バットに其々の能力が格納されているのなら面倒だな、と頭を悩ませるが情報が少ないために対抗手段としては匡子に能力を使わせる前に倒すしかない。

攻略の道順を探し蜂也は攻撃を捌きながら次の一手を決めるために動き出す。

 

剣を合わせずに受け流そうとしている傀儡に”強制的に戦闘をして貰うため”CADを発動する。

その瞬間に引いた利き足の地面の摩擦を魔法で掻き消され”自らの意思とは反して蜂也側へ進んできた”のだ。

 

星辰力を込めた《壊劫の魔剣》を振りかぶり狙うは胴体…だが手にしていた武器の片方を吹き飛ばす。

その隙を突き胴体へ掌を叩きつけてぐらつかせ一気に匡子へ近づく蜂也。

 

「へぇ、抜けてきたか名護」

 

「当然っすよ」

 

「だがまぁお前さんの《壊劫の魔剣》とも刃を合わせたくねぇけどな!」

 

接近された匡子だが経験がある彼女はうろたえることなく手にした釘バットを構える。

 

彼女は《魔女》でありその特徴は”相手の能力を吸収する”というものでありそれはこの世界における《魔女》と《魔術師》の能力であって蜂也の《魔法師》、科学的に”実際に有る物質”で再現された事象を吸収することは出来ないだろうそう考えた蜂也は匡子へ重力魔法を発動する。

 

しかし、それは悪手だった。

 

「ぐうっ…!?…だが、その方法はあたしには悪手だっつたろ…!」

 

「マジか…っ!?」

 

がそれは裏切られて釘バットに刺さっていた釘が片手に”5本”握られ青白く輝いている。

 

(ああやって他人の能力を吸収する…考えが甘かったか。俺は異邦人、その能力は《魔女》と《魔術師》だけに判定が入るかと思ったが…”その枠”に俺も押し込まれたってこと…!)

 

その能力に思わず舌を巻いてしまう蜂也だったが素早く意識を切り替えて一歩踏み出す。

この距離ならば確実に斬れる…!反撃される前に切り捨てれば良いのだと自らに加速魔法を掛けて匡子の死角へ移動し胸の校章目掛け《壊劫の魔剣》を振り下ろすーーその寸前。

 

「それじゃあ返すぜ?」

 

直感で嫌なものを感じ取った蜂也は反転術式を発動させて匡子から距離を取る。

その瞬間に先ほどまで自分がいた地点が大きく陥没する。

 

「おいおいこれはチーム戦だ。敵はあたし一人じゃないぜ?」

 

「ちぃっ…!!」

 

飛び退いた次の瞬間に《壊劫の魔剣》の腹を横にするとアサルトライフルの弾丸が殺到し蜂也の剣を握る手に振動が伝わり匡子が釘バットに重力魔法を纏わせているのか振りかぶって吹っ飛ばされる。

 

「便利な能力だなこいつぁ…!」

 

「(なんつー戦闘センスだよ八津崎先生…初見で使いこなすってマジか…!…だが!)…ッ!!」

 

そこまでは想定内である。この技を発動することも。

 

「ー咲き誇れ、【六弁の爆焔花(アマリリス)】!!」

 

不意にユリスの凛々しい声が”匡子の死角”で響き渡った。

 

「……!!」

 

驚いた、といった表情を今日初めて浮かべる匡子。

何故ならば先程まで匡子の視界にいた筈のユリスが”死角に入り込み”細剣をタクトのように振るい燃え盛る火球を放ちそれだけでなく後衛に煌式遠隔誘導武装を取り扱いながら空間認識能力を維持しながら立体攻撃を行っているのは本人の地力があるからだろうが凄まじいの一言に尽きるだろう。

 

しかし、その爆炎も手にした掌に吸収、釘に3本覗かせる。が、それが蜂也の狙いだった。

 

隙が出来たその瞬間、自信に加速魔法を”二重詠唱”を施して匡子が知覚する前に到達し死角、つまり真下に移動し切り上げるように手にした《壊劫の魔剣》を振り上げる。

 

つまりはユリスの技を囮にしたのだ。

 

「……ッ。やるじゃねーか名護。」

 

その言葉を発した後に地面には匡子が胸に付けていた簡易校章が真ッ二つに分かれ落下した。

 

◆ ◆ ◆

 

「全体的に悪くねぇ。初めてのチーム戦にしては十分に及第点だ。今のままでも十分に本戦出場は楽に果たせるだろうよ。こういっちゃなんだが前回エンフィールドが率いていたチームとは天と地の差があるな。」

 

匡子は授業の時のように気だるい口調で気だるそうに、それでいて威圧感を潜ませていた。

 

「ただ、《獅鷲星武祭》を勝ち抜いていくには少々難しいかも知れねぇぞ?」

 

そして不意に声が低まったと思うとその三白眼が鋭く光る。

 

「いいか?てめーら特に天霧と刀藤の二人は身体スペックで言えば今のあたしよりも上だ。近接戦闘の技量においても同様…だが刀藤はあたしと同じ能力を持つ人形を突破できなかったし、天霧はあたしを仕留めきれなかった。何でだか分かるか?」

 

「先生達の連携が俺達よりも上だから…ですか?」

 

綾斗がそう答えると匡子は腰に手を当ててほっと息を吐く。

 

「まぁその辺りは年の功ってやつだが…単純に集団戦における技量と経験が違う。まずは刀藤、テメーの連鶴とやらは優秀な技だがあまりチーム戦むきじゃねぇ。一定の実力を持った奴を仕留めるには時間が掛かりすぎる。足止めが目的だと思われている敵には十分すぎる隙を与えてる。」

 

「は、はい…」

 

「そんでリースフェルトは…あたし相手にその行動は無謀だったがあたし以外には十分な奇襲力だな。本戦で十分に通じるだろうさ…だがあたしにそれを使用するなんて舐めてたのか?」

 

「ありがとうございます。ですがさっきのは先生の実力を自分の目で確かめたかったものですから。」

 

射貫くような匡子の視線を受け止めるユリス。

相手の能力を封じ込めそれを自分のものとして使用する《魔女》としてはやはり軽率な攻撃だったと思ったが試合前に蜂也に提示された作戦と匡子の能力が本当に再現されるのか自分の目で確かめたかったのだ。

そう告げると匡子はニヤリ、と笑みを浮かべた。

 

「ははっ!良い度胸だリースフェルト。そう言うことなら今回は見逃してやる。」

 

そう告げて視線は天霧に切り替わる。

 

「次に天霧オメーだが…正直驚くぐらい周囲の状況把握が出来ていやがった…が、少し”出来すぎ”だな。」

 

「と、いいますと…?」

 

「名護もお前も警戒される特記戦力で狙われるのは分かる…チーム戦に置いて役割分担は必要だ。前衛として他二人のチームメイトの動向をや後衛の動きを気に掛ける必要があるがどれもお前さんは凄まじいレベルで把握していやがった…しかし、そのせいで自分の行動に支障が出ている。具体的に言えば周囲に気を取られ過ぎて判断が鈍い、突貫してきたときにそれがなければもっと早く能力を展開する前にあたしを斬れたかもしれないが…まぁこれは結果論に過ぎないんだが」

 

「分かりました。」

 

場合によっては”識”の境地を発動させるのは控えたほうが良いな、と思った綾斗。

 

「と、まぁとりあえずはざっとこんな感じだ。個々の連携は悪くない…経験を積めばあのお坊っちゃん連中に勝てるだろうさ。”連携”をすれば、な。」

 

綾斗とユリス、綺凛は”連携”という言葉が強調されていることに気がついたがそれを指摘する前に今回コメントを貰わなかった残り二人が挙手する。

 

「あの、先生。私には何か無いでしょうか?」

 

「俺にも何かないんすか?」

 

「てめーら二人は可愛げが無さすぎる。そつなすぎて気持ちが悪いぐれーだ。」

 

匡子がつまらなそうに吐き捨てるとクローディアは大袈裟に肩を竦め蜂也は頭を掻いた。

 

「それにクローディア、テメーは足止めされつつ虎視眈々とあたしの校章をたたッ斬ろうとしてやがったろ。気が抜けねーったらありゃしねえ。」

 

「ふふふっ、残念ながら八津崎先生相手にそんな隙はありませんでしたけどね?」

 

チーム戦の経験者だけあって他四名よりも練度が違うようだ。

 

「名護オメーは正直どんな攻撃を仕掛けてくるかとヒヤヒヤしたぜ。まさか味方の攻撃を囮にして私の校章をたたッ斬るなんて不和の原因になっちまうぞ…しかもそれ相談無しの自己判断でやりやがったな?」

 

そう匡子が告げるとユリスが蜂也へ視線を向ける…その視線は若干の呆れが含まれていたが気にしない、とばかりに肩を竦める。

 

「そっちの方が早いんで良いかな、って思いましたけど。」

 

特に気にしない感じで反論する蜂也に匡子は呆れた声を出す。

 

「バカ野郎か。《獅鷲星武祭》はチーム戦だ。一人の力が突起していても駄目だし独断専行ももっての他だ。…まぁこの場合力が抜きん出て過ぎる、っていった方が良いか。つくづくテメーはタッグやチーム戦に向いていねぇな。どちらかというとテメーは星導館(ウチ)じゃなくて《レヴォルフ》向き…《王竜星武祭》が似合ってるぜ。まあ、チームメンバーを信頼するのも仕事ってこった。それでも初見で私の校章をたたッ斬るのは流石…としか言えねぇな」

 

実際に蜂也は全てのレンジで戦うことが出来て”裏技”を使用する気になれば匡子を一方的に殴り勝つ事も出来ただろうが今回はチーム戦、ということが意識に引っ掛かりこのような策を取らざるを得なかった。

チームのメンバーを信用していない訳ではない…が何処かで”俺一人で良い”と考えている節があるのだろうとそれは蜂也自身が思っていた。

 

「まぁ…努力しますよ。なるべく。」

 

「はっ。そんじゃ今の指摘を踏まえた上で第二ラウンド突入だ。言っとくが今のアドバイスを踏まえて改善されてねぇようなら容赦なくブッ飛ばすから覚悟しな。」

 

そうして口元に狂暴な笑みを浮かべて手にした釘バットをぐるりと回す。

冗談を仄めかしているが恐らくは本気だろう、それだけ匡子が真剣に生徒のお願い事を聞き入れてくれているということだろう…まぁ先の校章を斬られて火が着いた、いうのは聞かれたらぶっ叩かれるだろうな…と蜂也はそう思いながら《壊劫の魔剣》を構える。

 

結局、匡子との特訓は週一で行われ最初こそはその経験と動きに翻弄され校章を斬れるのが蜂也だけであったが夏季休暇に入る前に全員一人づつが匡子の校章を割ることに成功しチームでの動きが完成したのだった。

 

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