俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。   作:萩月輝夜

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久々に投稿したらお気に入り登録と評価結構つけられててビックリ…。
他作品も投稿してるので頑張ります。


始動する者達

『いよいよKブロック一回戦!東ゲートからは星導館学園チーム・エンフィールドの登場です!』

 

新しくなったという入場ゲートの扉が開くとアナウンサーの解説に当てられ熱気と歓声を撒き散らす装置とかした観客達が出迎え空気が震えて熱を帯びている。

 

ステージの改装に伴って以前は内部通路が直接繋がっていたがフロアエレベータのような円柱の足場にのって移動し上空に有るステージに移動する…という面倒な仕掛けに変わっていた。

観客達の受けは良いのだろうが選手達は正直面倒くさい。

 

クローディアは涼しい顔で先頭に立ち俺はそれに続くように歩くが背後にいるリースフェルトは「下らん」と言わんばかりの不満顔を浮かべていた。

…リースフェルトは質素剛健ってのが好きそうだから装飾華美は嫌いなんだろうな。無駄にギミックの有るものとか「資材と資金の無駄だ」とか言っちゃうタイプだろ。

 

「今更言っても栓無き事だが…相も変わらずに無駄に演出を凝るのだな。」

 

「ふふっ、そう言うものだと割り切るしかないでしょうね」

 

一方でクローディアは涼しい顔で観客の声援に答えるパフォーマンスをしているのはこいつに余裕が有るからだろうな、と思いながら俺も不自然になら無いように軽く手を上げると一層歓声が大きくなった気がした。

 

「で、でもこれはちょっと恥ずかしいです…」

 

綺凛ちゃんはどうにも性格的に順応は出来ないようで顔を俯かせながら俺の制服の裾を握りながら歩いていく。

大きな声が挙がる度に「ぴっ…!」となるのはこう…なんとも言えない感情が沸き上がる。

 

「流石に…慣れない、ですね。」

 

天霧も慣れないながらに手を軽く上げてふっていたりするので順応性が一番高いかもしれないな。ほら見ろよリースフェルトを普段通りのツンを全開ですぜ?まぁ恐らく変態観客のなかには「リースフェルトのソコが良い!!」と興奮する諸兄らもいるんだろうな。

背面にチラリと目配せすると大画面の投影ディスプレイにでかでかと選手の顔と校章が映し出されている。

…流石にこれは恥ずかしい。

 

道の先端は階段になっているようでソコから降りると試合会場のステージへ到着する。

同時に対戦相手のチームが現れたらしい。

 

『そしてそして!優勝候補筆頭のチーム・エンフィールドに挑むのは、レヴォルフ黒学園のチーム・ブラックヴェノム!』

 

典型的なレヴォルフ…制服は改造されて原型はなく髪型も世紀末暴徒のようなヒャッハーヘアーでこちらに挑発的な視線を向けている。

 

『このチーム・ブラックヴェノムが優勝すればジャイアントキリングになりますが、さてさて…』

 

こちらを威嚇するように睨むもの、ヘラヘラと笑みを浮かべる者、それぞれではあるが明らかに態度が悪く既に全員がアサルトライフル型の煌式武装を展開しておりヤル気満々だぜヒャッハー!状態だ。

 

「全く…寄せ集めと聞いていたが想像以下だな。」

 

吐き捨てるようにリースフェルトが告げる。その表情はどこか呆れ、うんざりしているように見える。

 

「まぁ数を集めて戦おうってのは分かる気がするが…」

 

とその先の言葉を言おうとしていたが向こうのリーダーらしき人物がリースフェルトに話しかけていたが「誰だお前」の一言で撃沈、わなわなと震えるモヒカンだったがあんな奴いただろうか?と首をかしげていると俺に気がついたモヒカンが顔をひきつらせて捨て台詞を吐いてそそくさと自陣へ戻っていった…会ったこと有ったか?

リースフェルトが俺とクローディアを見て頷いたのを見て俺も「あー」…となりながら頷いた。

…あからさまな”あれ”に少々呆れてしまっただけだが。

 

としているうちにステージを取り囲む防護ジェルが充填されていき光を当てられて硬化していく。

どうやら光硬化の材質らしいそれは最初こそは青みがかっていたが次第に透明になって観客が中の様子が分かるようになった。

 

「【獅鷲星武祭(グリプス)】Bブロック第一回戦一組、試合開始!」

 

機械音声が試合開始を告げるとチーム・ブラックヴェノムのメンバーが一斉に銃口をリースフェルトに向けー。

 

「おらあああああああああああああっ!!」

 

咆哮と共にそのターゲットをチームリーダーである俺へ狙いを変更した。

五人分のアサルトライフルの弾幕が嵐のように襲いかかり、ステージのコンクリートを破壊し土煙が周囲に巻き起こり満たしていく。

リーダー格の男が高笑いを上げて自慢げに語った。

 

「はーっはっはっ!!どうだ!流石の《戦士王》ってのも流石に飽和攻撃なら耐えきれねぇだろ!!」

 

不意打ちを決めたモヒカンが笑っている。

成る程、その考えは非常に理にかなっているだろう。能力を発動する前に仕留めてしまえば楽に打ち取れるだろうからな?

 

だが、その銃弾が”俺たちに届けば”の話だが。

 

「所詮はレヴォルフ…端材の集まりだな。戦略など有ってないようなもんだな。」

 

「なっ…!?」

 

土煙が晴れると片手を掲げ空中にクローディアを覆い隠すようにしている障壁が展開しているその光景にモヒカンの表情は驚愕に歪む。俺とクローディアにはキズ一つ付いていない。

 

最初から狙いが俺に有ることは分かっていたので敢えてなにも構えないようにしていたが…的中も的中、狙いどおり過ぎて驚いたが。

狙った攻撃を俺は障壁魔法による物理障壁を発動させて無力にして流れ弾は飛ばないようにを全体に掛けて目の前にぶつかるように誘導した。

 

「く、くそっ!」

 

男達は大急ぎで煌式武装を構え直し真っ先にトリガーに指を掛けた男に対して俺は指を鳴らして攻撃を開始した。

 

「遅せぇよ」

 

「なっ!?ぐぁぁぁぁぁぁぁっ?!?!…がふっ…!」

 

アサルトライフルを持つ男に雨あられのように降り注ぐのは二酸化炭素(ドライアイス)の銃弾、放出系統《ドライブリザード》。星脈世代端頑丈だから少し痛め付けても問題ないだろうと言うことで普段より多めのドライアイスをぶつけてやると校章が割れて打ち込まれた男は瞬間的な痛みで気絶した。

それからを起点として崩れ始めた。

 

「参ります」

 

しゃらり、と動きだして綺凛ちゃんが構えた千羽切の切っ先を振り抜くと彼女よりも大きい巨漢の懐に飛び込んだその銀閃が校章を断ち切った。

返す刃で近づいていた禿頭の入れ墨を入れた男の校章も地面へ落とす。

 

「こ、このガキがっ!……かはっ!?」

 

「よそ見をしている暇が有るのか?」

 

リーダーを守るように立ちふさがっていた肥満気味の大男の鳩尾に向けて発動体の柄を捻り込ませると胃液を撒き散らし気絶し意識消失でダウンしさせて動揺するドレッドヘアーの男の目前に接近し左手に持った光波動振動魔法【フラッシュエッジ】で校章を切り落とすと同時に壁際に吹き飛ばすと気絶したのか壁紙の剥がれのようにポロリと落ちていく。

 

残りのメンバーは全て倒され残ったのはリーダーだけだったが圧倒的なその光景に口を開いて呆然としていた。

 

「私たちの出番はなさそうだな…」

 

「あはは…そうだね。」

 

リースフェルトと雨霧は出番無く後ろで苦笑いを浮かべていた。

 

「…それで?」

 

「ひぃっ!?」

 

呆然としていたせいで恐らく突然前にでてきたターゲットに驚いただろうがその首元に《パン=ドラ》の切っ先がピタリ、押し当てられた。

もう数ミリ動けば血が流れるだろう薄皮一枚の状態でクローディアは話しかける。

 

「…それで、リーダーがどうしました?」

 

クローディアがそう告げるとモヒカンはその場で腰を抜かしてギブアップ宣言してチーム・エンフィールドは第1回戦を勝ち抜いたのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

第一試合が終わって控え室に戻ろうとした道中で俺たちは報道陣のインタビューに巻き込まれた。

第1回戦の相手は木っ端も木っ端、映像映えするものもないため短く取材されるが優勝候補の一角、ということもあって話の裾を広げたい、という理由で聞いてくる記者たちがいたが正直話すこともないのでさっさと戻りたい。

 

一応序列一位ということで綺凛ちゃんに取材が集中していたが俺にも飛び火してきた。

 

「今大会、皆さんのチームが優勝候補の一角とはご存じかと思いますが名護選手から見て強敵だと思うチーム、ライバルになりそうだな、と思うチームはありますでしょうか?」

 

「…そうですね。フェアクロフさん率いるチーム・ランスロットだったり星露の一番弟子がいるとされている『黄龍』だと思います。まぁ全員強敵だと思いますので頑張りたいと思います」

 

俺は無難に答えた。

 

そんなこんなで全員にそれぞれインタビューを受けることになり既に二十分ほど経過していることにリースフェルトは既に冷徹お姫様オーラ前回であり天霧は困ったように笑みを浮かべ綺凛ちゃんに至ってはお目目がぐるぐるになりそうな勢いだったが。

 

「申し訳ございません。そろそろ切り上げさせていただきたいと思います。」

 

そのタイミングでやんわりとクローディアが幕引き宣言を行うと記者の一人が最後の質問をしてきた。

 

「あ、す、すみません。最後に一つ質問よろしいでしょうか?」

 

そう言って手を上げたのは新人記者らしい緊張した面持ちの若い男性で胸元のプレスカードには”ABC”と記入されている。

 

「ええと、エンフィールド選手は【獅鷲星武祭(グリプス)】から三年ぶりの《星武祭》に参加されたわけですがなにか特別なこだわりでも?」

 

「いえ、私としても十全に実力を発揮できるのがこの《獅鷲星武祭》だった、ということでした。それが私の望みを叶えるのに一番近い手段だったと思っています。」

 

「望み、といいますと?」

 

その質問に記者達全体がざわめいた。と同時に俺は嫌な気配を感じ取った。

俺は隣にいるこのクローディアがなにかをするのではないか、と。

 

「ふふっ…そうですね。これも良い機会ですから少し、話しておきましょう」

 

クローディアは楽しそうに肩を震わせて、少しもったいぶったように間を取って話し始めた。

…後日、頭を悩ませる頭痛の種になるのだが。

 

「…皆さんはラディスラフ・バルトシーク教授はご存じですか?」

 

「バルトシーフ教授というとあの…純星煌式武装研究の…?」

 

困惑する記者達のなかにその名前を聞いて落ち着きがなくなっている者がいることに気がついた。

当然だその人物は行方不明となっているが現在は投獄中でありそれを知っているものは少ない。

ましてやその人物が関わった”事件”はこのアスタリスクにおいて最大のタブーとされていて報道機関はそれを情報統制されているはずだ。

 

「ですが、バルトシーク教授は随分と昔に消息を絶ったまま、現在も行方不明の筈ですが…」

 

女性記者がそう問いかけるとクローディアは待ってましたと言わんばかりに情報封鎖されている筈の”秘密”を暴露した。

 

「いいえ。現在教授は《翡翠の黄昏》の裁判の重要参考人として拘束されているのです。私の望みは彼に会い面会し、話をお伺いすることです。」

 

動揺が伝播し波のように広がっていくのを感じ取った。

アスタリスクのタブーをクローディアは世間話をするかのように軽やかに語る。

 

「ええとそれは、どういう…?」

 

「教授しか知らない秘密…それを少し御裾分けしていただきたいと思いまして。」

 

クローディアはひきつった顔の女性記者を無視して一礼し会見スペースを去っていくのを記者達は声を掛けるが無視し俺たちへ声を掛けようとする記者がいたが俺が殺気交じり威圧感を出して動き出すと呆然としていた綺凛ちゃんのもその場から立ち去り後からリースフェルトと天霧も付いてくる。

 

先んじて移動していたクローディアに追い付いてその手首を握った。

 

「お前…あんな大勢の場所であんなこと言って大丈夫なのか?」

 

俺は少し怒気交じりの声で問いかける。

タブーとなっているその事件の関係者に接触するその一件は自分で”銀河を敵に回しかねない”と言っていた筈だ。

言うタイミングは優勝の時でもよかった筈だとそう思ったがクローディア的には今がベストだったらしい。

 

「今ここで言うのが…最善だと思いましたので。」

 

そう言っていつもの笑みを浮かべてその場から歩き出す。

俺にはクローディアがなぜその人物に接触し情報を得たいのか。そして、それは自分の望みの筈なのに泣きそうな顔になっていたのか分からなかった。

 

◆ ◆ ◆

 

少しして…クローディアの勝者インタビューに端を発した問題は銀河の最高幹部達を召集する運びとなった。

 

銀河総本部の特別な会議室。

会議室と言っても豪華な装飾はなくただただ一般品の長机と椅子が並べられているだけで普通の会議室だ。

だが、それが以上に寒々しく不気味な味気なさを感じさせるだろう。

 

この部屋にいる最高幹部の一人がそう思った。”嘗ての私が”という言葉が付くだろうが。

もっともそれを理解するのは自分の夫であるニコラス…ニコラス・エンフィールドもその意味を理解していることだろう。

 

この部屋には有益なもの以外は存在が必要ないのだ。

 

「では、始めましょう。」

 

その言葉に大半は映像通信ではあるが一斉にその視線が声の主に注がれる。

その声の主はイザベラ・エンフィールド。クローディアの実の母にしてその夫であるニコラスの配偶者でありその上司に当たる人物で銀河の最高幹部の一人である。

その見た目はクローディアに似ておりしっとりとした金髪を束ねており黒のスーツを着こなす姿はまるで年を取っていないような錯覚を覚えるほどの美貌を持っており言い表すならクローディアから甘さを抜いたような見た目だろうか?

だがその娘の時おり見せるような優しげな眼差しは一切無く機械じみた感情の無い冷たい瞳をしている。

 

「今回の案件は星導館学園生徒会長クローディア・エンフィールドの処遇についてです。忌憚の無いご意見をお願いします。」

 

自分の娘だというのに気にする欠片もないその様子に他の最高幹部の人物達も揶揄する気配も見られないのは当然のことであった。

それも当然で親族絡みのことで私情を挟むような輩が企業の最高幹部の席に着くことなど出来ないと知っているからこそ誰も何も思わないすその実の母親も”まるで他人のように”しているのだ。

 

「既にEP、ソルネージュ、フラウエンロープからは《星武祭》という大義名分をかざして早急な公正な判断を求めるように要求が来ています。W&W、界龍からも各方面への根回しが済んでいる様子」

 

「厄介なことだ」

 

最高幹部の一人がそう告げると其々が意見を述べる。一人が「様子見してはどうか」というものに一人の男が反論した。

 

「それでも用意はしておくべきだ。」

 

「《星武祭》ならばマディウス・メサを使えばよろしい。適当な理由を付けて失格にさせれば…」

 

「いや、奴は信頼ならん。」

 

「それに他の企業統合財体が含みを持たせている以上、工作は難しかろう」

 

幹部達より次々と意見が積み重なっていくがどれもこれもが個性を削ぎ落とされた声であるため誰の声か分からない。

彼らは弁論をしているわけではなく情報の共有を行い一つの答えを出そうしており言わば銀河が一つの個であり最高幹部達は情報の一つ一つを処理して”最適化”しようとしているのだ。

 

「今からでもバルトシークを処理するというのはどうか?」

 

「それではヴァルダ=ヴォルスとの協定に反する。」

 

「律儀にあれを守る必要があるのか」

 

「あれの存在が外に漏れてしまえば元も子もない。下手に刺激するのは悪手であろう。」

 

「そもそもあれは現在何処で何をしておるのだ」

 

「夜吹の者達の報告によれば春先に六花で確認されたらしいが…現在行方が分からない状態だ」

 

「やはりバルトシーク周りをどうにかするよりクローディア・エンフィールドを処理した方が早かろう」

 

「それは夜吹に任せればいい」

 

「いや、それは最終手段だ。まずは銀河としての立場を…」

 

それからもう暫くして静かな中に異様な熱量を秘めた不気味な会議はイザベラの言葉によってピタリ、と止まった。

 

「……では、そのように。」

 

そう言って立ち上がると、それを合図に会議は終了した。

 

◆ ◆ ◆

 

獅鷲星武祭(グリプス)】四日目。

画面に写る戦闘の場面を見てリースフェルト、天霧、綺凛ちゃんは驚きの表情を浮かべていた。

 

「これは…!?」

 

「まるで歯が立っていないなんて…」

 

「凄まじい…です…」

 

「これが星露の一番弟子の実力、か」

 

その映像は”武暁彗が敵陣一人で佇み星導館のチームのうち四名の学生が地面に転がっている”という光景が広がっているのだ。

 

『な、なんということでしょう…二回戦随一の注目対戦カードと思われていた第三試合でしたが、まさか此程までに一方的な試合運びになるとは…!!』

 

実況席からスピーカーを通して聞こえてくる声は僅かに震えているように聞こえるのは気のせいではない。

同時に観客席にいる観客も分厚い防護ジェルの向こう側で息を呑み静まり返っている。

それは同じチームの趙虎峰もその実力に震えているように感じた。

 

ステージに相対しているのは星導館の序列五位の【氷屑の魔術師(フリームスルス)】と暁彗だ。

《氷屑の魔術師》は膝を折って辛そうな表情と息づかいをしており対して暁彗は槍型の煌式武装を持ったまま悠然と見下ろしていた。

 

動き出したのは《氷屑の魔術師》からだった。

彼を中心として四方が凍りつく、それは地面だけでなく暁彗の足のふくらはぎまで凍らせた。

同時に気合いの入った声と共に六本の生成された巨大な氷柱が射出された。相手の動きを封じての攻撃は理にかなっているだろうがその程度で星露の一番弟子が止まるとは思えなかった。

その予想どおり何事もなくてにした槍の柄頭を地面に付けるとその瞬間に氷が吹き飛び足が自由となった暁彗が片手に持った呪符を使い術式を解放し矢のような速度で飛来する氷柱を炎の壁で遮られ激突し爆発するように蒸発し水蒸気へと変化した。

 

《氷屑の魔術師》は防がれることも加味しての行動だったのか水蒸気の霧に隠れて一気に距離を詰めて斬撃を繰り出すがそれを眉一つ動かさずに受け止めた。

 

その一撃は決死の一撃であったのに関わらず暁彗は涼しい顔で受け止めているのは相手にとって驚愕に値するものだろうがその攻撃の手を緩めること無く両手で生成した氷の刃の柄を両手で掴み力を込めるがびくともしない。

それどころが片手で軽く振った槍が氷の刃を吹き飛ばし打ち砕く。

それは圧倒的な”暴”であったが負けじと《氷屑の魔術師》は先程よりも大きい氷の刃を生成し振り下ろすが届かない。

その表情に絶望の色が広がるのが見えた。

振り下ろされた氷の刃は打ち砕かれて散らばった後に暁彗はその刹那に足を少し動かして何気ない左手の掌が《氷屑の魔術師》の腹部へと押し当てられたその瞬間

 

「……ッ!?」

 

《氷屑の魔術師》の全身にとてつもない衝撃が伝わったのが見て取れた。

その一撃で意識を失い人形のようにその場で崩れ落ちた。その地面はクレーターが出来上がっていた。

凄まじい衝撃だったのが見て取れる。

 

機械音声が勝者を示しチーム《黄龍》が次へ勝ち進んだ。

 

「………」

 

その光景に俺は無意識に口角を上げていた。

 

◆ ◆ ◆

 

獅鷲星武祭(グリプス)】六日目、シリウスドーム。

今は注目カードである銀翼騎士団(ライフローデス)はその気高さと全力の剣は見るものを魅了していた。

その象徴である白騎士(ペンドラゴン)の異名を持つアーネスト・フェアクロフがステージを駆けている。

 

「はぁっ!!」

 

アーネストが真横一文字に【白濾の魔剣(レイ=グラムス)】を薙ぐとその銀閃が淡い燐光を煌めかせた。

相手の選手は剣型の煌式武装で受けようとしたがその効果を思い出してハッとし身体を捻るがもう遅い。

 

その刃はまるで物理的な障壁など無いように青年の身体をすり抜けて行ってしまいただ胸の校章のみを断ち切ってしまった。

カタン、と音を立てて落ちる校章。

 

白濾の魔剣(レイ=グラムス)】の能力は”任意の対象のみを斬ることが出来るという”効果があるのだ。

これは経験がある選手こそこの能力に気を取られて身体が勝手に反応してしまうものでありこれに対処できるのは一握りだろう。

コメンテーターと解説がその性能と使い手であるアーネストを説明すると観客席は盛り上がる。

 

「………」

 

それを尻目に同じチームのレティシアは一瞬で星辰力を練り上げる。

次の瞬間にはレティシアの背中から左右二対の二十メートルの大きな光の翼が出現した。

天戒翼(エイル・ド・アンジュ)

光翼の魔女(グロリオーサ)》の異名を持つレティシアの能力だ。

 

バサリ、と翻りその大きい鋭角な菱形の翼が空中で折れ曲がりアーネストを守るように地面へ突き刺さるとその直後に相手チームが放った光弾の雨が襲いかかるがそれは光の翼によって阻まれ傷一つ付けることを許さなかった。

その隙に左側に移動していた【王槍(ロンゴミニアド)】ライオネル・カーシュがパルチザン型の煌式武装を振るうと相手の陣形は崩れ去り銃撃が止んだその瞬間に再びアーネストが飛び込み体勢を崩した前衛二人の校章を切り落としていくその姿は電光石火と呼ぶにふさわしい。

 

そして。

 

「汝らに、慈悲と贖罪の輪光を」

 

黒盾(ガレス)】の二つ名を持つケヴィン・ホルストに守られていた後衛のパーシヴァルが片手を天に掲げ厳かに言った。

彼女の持つ純星煌式武装、横に倒したような巨大な杯の中に立つ一本の鋭い棘のようなものに光が集約していきみるみるうちに黄金色の光が満ち溢れていくのだ。

 

満たされた杯から溢れた黄金色の光は奔流となって相手の残った後衛の二人を飲み込んだ。

それは悲鳴を上げることすら許されず飲み込まれた二人は意識を失って倒れていた。

パーシヴァルが持つ【贖罪の錐角(ゴート・アマルティア)】は学園保有の純星煌式武装でありその能力は【抜魂】であり聖杯が放つ光は一切の物理攻撃力を持たず相手の意識を飛ばすだけの武装である。

 

が、それゆえにこの【星武祭(フェスタ)】においては強力すぎる武器の一つであった。

聖ガラードワースはどの戦いにおいても常に敬意をもって全力で挑みそれを真正面から抑え上を行くと言う《獅鷲星武祭》の勝者の姿だった。

 

その二つの強力な純星煌式武装に対抗するのかで策謀を巡らすことにした。

 

◆ ◆ ◆

 

獅鷲星武祭(グリプス)】の七日目、シリウスドーム。

 

「やっぱり予選じゃ注目カード同士でぶつからないようになってるんだな…」

 

三回戦、相手は他学園のチームだったが俺たちと当たる、となってから表情がそれとなく死んでいた気がしたが気のせい…いや、あれは諦めの表情だったな。

そんなこんなで俺たちは無事に予選突破を果たした。

 

控え室にも戻った俺は冷蔵庫に直行しマッ缶を取り出して一口煽る。

暴力的なまでの甘さが疲労した脳の疲労部分にスーっと効いていって…と言うのは嘘だが意識がスッキリしていく感覚を覚えて。

 

「ええ。チームの状態も良いですし、このまま行きたいものですね。」

 

クローディアは何処かホッとした表情を浮かべている。

 

が、俺は俺で気が気でなかった。

何故って?それはクローディアがあの勝者インタビューで『翡翠の黄昏』に関しての爆弾発言をしたことで俺たちの学園の運営母体である『銀河』に目を付けられた筈だから。

しかし、今のところ銀河がクローディアやチームメンバーである綺凛ちゃん達に仕掛けてくる様子が見られないのは楽観視すればクローディアの杞憂、で片付くかもしれないが。

 

(様子を見ているのか…それとも泳がせているのか、だが。…あまり楽観視は出来ないかもな…)

 

マッ缶を再び一口煽り綺凛ちゃんが空間ウィンドウに写し出された予選のトーナメント表を見て不安そうに眉をひそめるのを見て頭を撫でると少しだけ頬が緩んでいた。

 

空間に投影されたトーナメント表には当然ながら銀翼騎士団とチーム黄龍が勝ち抜いて本戦出場を決めており他も油断ならない連中が多い。

特に上記二チームは対策が立てづらいだろう…と言っても俺も全力を出しているわけじゃないんだが…?

 

控え室が”どう言った対応策を講じるか?”といったような雰囲気になったがクローディアがパンっ、と手を叩いた。

 

「対戦相手の分からない状態で手探りで対抗手段を講じるのは時間の無駄ですし。ミーティングは明日の対戦抽選結果を決めてからで十分でしょう。私は組み合わせ抽選会に参加しなければならないので明日は皆さん英気を養っていてください」

 

今日はもう試合はないので夕方からはフリーになる。

そして翌日の八日目も対戦抽選会が開かれるため参加選手は休みとなるので明日は身体を休ませることが出来るだろう。

 

そう告げると天霧とリースフェルトは「お先に失礼します」と言って二人は出ていった。恐らくは食事にでも行くんだろう…見せつけるようにいちゃつきやがって爆発しねぇかなあいつら…。

 

と、思っているが時間が余っているし今日は久々に料理を作るかな。

 

「そういや冷蔵庫にはあれと…あれ、ああ、後あれもあったから…あれを帰りがけでスーパーで買えば問題ないか。」

 

独り言を行っていたのだろう俺はマッ缶に入っていた中身を飲み干してゴミ箱に捨てて控え室から出ようとする前に綺凛ちゃんに袖口を掴まれ俺は「?」と浮かべていると少し恥ずかしそうにしてパッと手を離した。かわいい。

 

「えと…」

 

「あぅ…ご、ごめんなさいお義兄さん、時間も空いたので一緒にお夕飯と思ったのですが…その、ご迷惑でした…か?」

 

不安そうに見つめる綺凛ちゃんに俺は返答した。

 

「そんなわけないよ。まぁこの時期に食べに行くと込み合いまくってるから部屋で料理でも作ろうかと思ってたんだけど…それでも良いなら。」

 

「わぁ!お義兄さんの料理ですか!是非…ってあぅ…///」

 

俺の料理が食べられる、ってことで嬉しくなってくれたらしくハッとして恥ずかしくなってしまって顔を赤くしているのを見て思わず頭を撫でてしまう。

作った本人にしてみれば嬉しいことこの上ないがそこまで完成度が高いものじゃないので複雑だが食べて貰うには下手は出来ない。…と一応クローディアに声を掛けるとしよう。

 

「お前も来るか?二人も三人も」

 

「いえ、結構です。この後生徒会の…会長決済でなければ行けないものがありますので夕食はお二人で撮ってください。それでは蜂也、綺凛さんもお疲れさまでした。」

 

そう言いきって振り返り先に控え室から立ち去った。

 

「?………あの…」

 

「どうしたの綺凛ちゃん」

 

「会長どうしたんでしょうか…なんだか…」

 

「?」

 

「いえ、なんでもないです…その…でも………寂しそうな顔をしていたような…?」

 

変わらないから飯食いにこいよ、と言おうとするその前にクローディアに遮られ断れ振り返らずに先に控え室から出ていってしまった。

護衛を予て気を使わせないようにしていたのだがこれは逆効果だったのかもしれないと少しだが後悔した。

…流石に銀河の連中も人混みでクローディアに刺客を放つようなことはしないだろうと判断し俺は綺凛ちゃんと共にシリウスドームからの道すがら、中心市街地にあるスーパーに立ち寄って食材を買って帰ることにした。

 

俺たちが控え室から立ち去ってそれを角から見ていた金髪が揺れていることに俺は気がつかなかった。

 

◆ ◆ ◆

 

「…貴方を守るために…私は貴方と一緒に居ては…いけないんです。」

 

少女の声が人が居なくなった広い空間にぼそり、呟く言葉がイヤに響くが届かない。

控え室が並ぶエリア、その曲がり角は設備の不調なのか灯りが消えておりその姿は暗い色の中に沈んでいる。

その中で煌びやかなしっとりとした金色の髪が揺れる。

 

「蜂也…」

 

隣にいる少女のその立ち位置をクローディアは今の立場を、役目を擲ってでも手に入れたかった。

しかし、それをしてしまえば”大切な人が死んでしまう”という事実が彼女を許さない。

 

《パン=ドラ》に見初められたその時から逃れない運命となっていたのだから。

 

「…………」

 

歩きだしその場から立ち去る。

震える身体を抱きながらクローディアは蜂也の名を呼んでいた。

 

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