俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。 作:萩月輝夜
調理描写が出てきますがネットとかで引っ張ってきたレシピです。
「うーん…こっちのスーパーは物は良いけど高いのが多いな…」
シリウスドームからの帰り。
俺たちは夕食の準備のために市街にあるスーパーに来ていたのだが…。
「あはは…此方は上流階級御用達のスーパーですからね。置いているものはどれも一級品ですね」
「豆腐1個で五百円とか高すぎだろ…何?俺に陳○一バリの中華の達人になれというのか…」
手に取った豆腐の値段でビックリしたのは当然としてここのスーパー…と言って良いのか普通に伊勢丹みたいなでかいデパートのような…てかデパートかこれ。の生活食料品館に俺は綺凛ちゃんと一緒にカートに買い物かごを乗せて買い物をしていた。
1個五百円もするような豆腐を一先ずカゴにいれて必要な、足りなくなっていた調味料とか買っていると隣から疑問が飛んできた。
「そう言えばお義兄さんは今日何を作るつもりだったですか?」
「今日は久々に麻婆豆腐を作ろうと思ってさ。それに付け合わせの蒸し鶏のゴマダレ、汁物は卵スープかな」
「わぁ…!美味しそうです!」
そう教えると目を輝かせて楽しみにしてくれているようで下手な料理は作れなくなったな。うん。
「そう?それをいったら綺凛ちゃんの作る料理の方が美味しそうだけどなぁ…」
《鳳凰星武祭》の際の時に作ってくれたお弁当の方が美味しかったような?
「そ、そんなことありません!わ、私なんてまだ未熟で修行の途中です…そ、その…まだ花嫁修行の途中ですから…」
「…?何か言った?」
「な、なんでもないですっ…あ、それよりお買い物を済ませてしまいましょう。」
「早く終わった、って言っても時間が有り余ってるわけじゃないしさっさと買い物を」
続きの言葉を言おうとしたときに此方を覗き見るような視線を感じ言葉を中断し綺凛ちゃんの手を優しく引っ張って利用客の合間を縫うように移動する。
「ひゃっ!?お、お義兄さん?」
「さて、もう買うものも買ったしさっさと帰って夕飯の準備をしないと」
「あ、は、はい…」
ビックリさせて申し訳ないが事態が事態なので誤魔化しながら会計を済ませるべくレジへ向かう。
セルフレジが置かれているので素早く会計を済ませて左手にレジ袋、右手には綺凛ちゃんの手を引きながら店を出る。
(まさか”銀河”の差し金か?)
イヤな予想が頭の中を駆け巡るが此方に向けられた視線はあくまでも”監視”という意味合いが強いのか”殺意”は感じられない。
…どちらかというと”敵意”、剣呑なものではない子供が出す無邪気なものだった。
アスタリスクの中心地から歩いて移動していると巻いていた連中が此方を見つけたらしく追ってきているのが分かりどうしたものかと頭を悩ませていると並走している綺凛ちゃんが神妙な表情で此方を見る。どうやら気がついたらしい。
「…まさか”銀河”の刺客、ですか?」
「いや、違う。敵意が無邪気すぎる。消しに掛かっているのならこれはおかしい。」
「だとしたらこのまま巻いて…」
場所的には市街から離れ再開発エリアに近づいてきていたのか人はほぼ居ない。
「いや、ハッキリさせておこう。何か聞き出せるかもしれないし」
「え?」
綺凛ちゃんがすっとんきょうな声を挙げる前に俺は左手に持っていたレジ袋を《次元解放》のポータルに放り込み物陰隠れていた人物達に声を掛けた。
「おい、そこに隠れてる奴ら。出てこい。」
通る声で呼び出すと尾行をしていたことがバレた、と集団…五人ほどだろうか?少女達があわてふためいた声を挙げて路地の奥へと逃げていく。
「あ、逃げましたっ。追いかけないと…ってお義兄さん?」
手を離れた綺凛ちゃんが追いかけようとしたが制止する。
「いや、あの様子だとここ辺りの地理を分かってないみたいだ。すぐに追い付くよ。」
「は、はい!」
俺と綺凛ちゃんは走って逃げていく五人組を追いかける。
路地が入り組んでいる為かなかなか追い付けないが迷うことなく進む。
進んでいると周囲は廃ビルが立ち並んでいる再開発エリアに立ち入ってしまったようだが此方の誘導が効いたらしい。
そう、その場所は進行方向が崩落したビルによって塞き止められており左右も高いビルが聳え囲まれている状態になっているが抜け出す方法は俺たちを方向に走ってくるしかない。
五人の少女が俺の視界に入る。
が、その制服と校章を見て思わず眉をひそめてしまう。
「(グラサンで変装?をしてるのか知れんけど校章と制服は隠すか別の衣装に変えろよ…)綺凛ちゃんは何があっても動かないでね?」
「は、はい…」
目の前にいる不審者に見えなくもないマスクとグラサンを掛けた姿でありその身に纏う衣装は見間違いでなければクインヴェールの制服でありその校章も”偶像”を象ったものだ。
そんなバレバレな所属にあきれていると…
「ふっふっふ」
俺たちの姿を見て五人のうちの少女の一人が不敵な笑みを浮かべるがその後の一言。
「…迷った。」
その言葉に四名がへたり込むように地面に座る。
「あああ…やっぱり…」
「だろうね…」
「ミルシェが先頭で大丈夫かな?って思ったけど案の定だよ…」
「勘弁してくれリーダー…」
やはり、というか道に迷ったらしい。
先ほど不敵な笑みを浮かべていた少女がミルシェ、と呼ばれたこの集団のリーダーらしく少なくとも殺気は感じられない、が調べておく必要がある。
何やら陣形を組んでこの状況を打開するかの会議を目の前で始めたのでその隙に《瞳》を用いて彼女達の情報を確認することにする。そのなかには何処かで見た顔があり情報と照らし合わせていると一致する。
(……ってこいつらあの時の俺とシルヴィアを見てた奴らか?なんでこいつらが俺たちを見ていた?)
《獅鷲星武祭》の初日。自販機のすぐ近くで通りすぎた二人の少女、ミルシェとトゥーリアという人物でこの星武祭にも参加をしているチーム・ルサールカだった。
ますます俺たちを見ていたことを結び付かなくて一瞬フリーズしていると変わりに綺凛ちゃんが警戒し腰の千羽切の鞘に手を掛けようとしていたがリーダーが咳払い、わざとらしくすると現実に戻ってきたので此方から先に仕掛けることにした。
「クインヴェールのチーム・ルサールカがなんで俺たちを盗み見るなんて真似をしてやがった?敵情視察でもしに来たのか?」
「え、偵察?い、いや違うけど…」
「は?」
「え?」
俺とミルシェが視線を合わせその場が一瞬時が止まったような。
(…偵察でなければやはりこいつらが銀河の回し者?だが他の学園を使って俺たちを遅いに来るメリットがない。
と、なれば銀河達は自分達で行ったことの足が着かないように利用している?)
何やら騒いでいるようだがこいつらから事の事情を聞き出さなければならなくなった。
が、だからと言って殺気を込めて脅すのも憚られる…シルヴィアの知り合いだろうしな…
「何の用で俺たちに近づいて盗み見ていたんだ?答えてくれないか」
「「「「ッ!?」」」」
俺の星辰力が形となって現れ稲妻のようなバチり、と音を立てて出現する。
《壊劫の魔剣》を抜かずともこのような芸当が出来るようになっており主に”雷”に関しての技をつかえるようになっておりその威圧効果は中々に有効だった。
その雰囲気に当てられて先ほどまで和気藹々としていたが五名だったが黙り込む、がミルシェがそんなものは知らない!といわんばかりに質問を投げてきた。それに思わず吐き出していた星辰力も引っ込んでしまう。
「な、名護蜂也ッ!あんた、シルヴィア・リューネハイムと一体どんな関係なのか答えて頂戴っ!」
「は?」
「お義兄さん…?」
何故か隣にいる綺凛ちゃんが悲しそうな、興味を示し伺うような視線に変わっているのか、コレガワカラナイ状態であったが別に隠すことでもないので素直に答えた。
「どんな関係なのか…ってただの世界の歌姫と一ファンだけなんだが。つかそれを知ってどうしたいんだお前達は…」
「そ、それは別にあたし達の勝手じゃん!」
「そうかい。じゃあ俺とシルヴィアが知り合いであったとしてもお前達には関係ないな?それこそプライベートに抵触する部分だ。ずかずかと踏み込む方が失礼だろ。それともなにか?クインヴェールはそこまで見張ってるのか?ただ一言言っておく。俺とシルヴィアはただの知り合いだ。それ以上でもそれ以下でもない。」
きっぱりそう言いきって否定するとミルシェが口ごもり隣にいたトゥーリアが一歩前に出て噛みついてきた。
根性あるなこいつら。
「ちゃんと答えられないってことはやっぱりシルヴィア誑かしてるんだなこの変態っ!」
同年代に変態、と言われてなにも感じなくなってるのは俺がその言葉に耐性が付きすぎたせいかなにも感じない。
「はぁ?」
「ネタは上がってるのよ。この間シルヴィアと一緒に学園祭でデートしてたでしょ?」
「そーだそーだぁ!ネタは上がってるんだぁ!」
後ろでピンク髪と黒髪の少女が騒ぎ立てている。
「しかも今日は別の女の子…実妹とデートだとぅ?この女の敵め恥をしれぇ!」
「色欲魔!背徳インモラル男子!」
さんざんな言われように頭が痛くなるしそれを聞いた綺凛ちゃんは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしているのでどうしたものかと頭を抱えていると大人しそうな少女が前に出てくる。
「どうしてそんな言葉ばかり知っているんですか……あの、すみません名護さん」
ペコリ、と頭を下げたその行動に女子四名は目を剥いて驚いていたがどうやらやっと話の分かる人物が出てきてくれたらしい。
彼女達がなぜ俺を親の敵のように追求してくるのか説明してくれた。
「えっとですね…簡単に説明しますと名護さんの周りには色々な女性がいらっしゃるじゃないですか?それで、皆さんシルヴィアさんが騙されているんじゃないか、って心配してまして…その、プライベートなことで大変申し訳ないのですがシルヴィアさんとの関係を説明してくださると彼女達も落ち着くと思いますので…」
「説明、ね…。(…と言っても素直に出会いを話すわけには行かないしな…《ヴァルダ》の件もあるし知ってるのは俺だけで良い。それにはっきりしたことだがこいつらは【銀河】の手先ではない、な。適当にあしらうか。…あとでシルヴィアと帳尻を合わせないと行けないが)」
少し思案して説明した。
「まぁ去年の春先にシルヴィアが事件に巻き込まれてその際に助けてそこから縁が出来て知り合いになった、ってだけだ。それに今年の春先にシルヴィアがお忍びで学園祭を回りたい、っていうから俺がその護衛に選ばれた、って嵩の話だよ。まぁ強さ的には申し分ないと思うからな。」
事情を説明し殆どの人物が「なるほど…」と頷きを見せているが一人は納得していないようで噛みついてきた。
「そんな説明で納得できるわけないじゃん!その春先の事件ってなにさ!」
論破できないと知って論点をずらして追求をしてきたか…が、そのままにしておくのは非常に不味い。そこから基点として追求をしてくるだろうがそうは問屋が卸さない。
「その件についてはお前らのところの理事長にでも聞いてくれ。俺からはなんとも言えない。それだけだ。」
「ぐぬぬ…!」
リーダー格の少女がと緑髪の生徒が俺を睨み付けているが他三人はもう諦めたような納得しているような素振りを見せている。綺凛ちゃんも俺が人助けをした、という事実に気がついてか先ほどの悲しそうな表情はなくなって誇らしげにこちらを見ている。綺凛ちゃんありがとう。今日は美味しい麻婆豆腐作るからな…!
と、その時だった。
「下がれっ!」
唐突に星辰力の高まりを感じて叫んだ。
CADを起動させ重力障壁を展開したその瞬間に後方を塞いでいた倒壊した廃ビルに剣閃が走り吹き飛んだそのコンクリート破片が飛び散るが展開した重力障壁によって五人の少女達を守ることに成功した。
立ち上る土煙の中からは年若い女の姿が出てきたがその見た目とは裏腹に言葉遣いは荒々しい。
ウルサイス姉の言葉遣いをもっと荒くしたらこうなるんだろうなと。
煙が晴れるとその姿はボサボサの手入れのされていない金髪とギラギラとした目付き、手にしている大剣が特徴的だろうその少女は続いて出てきたメガネを掛けた少女と言い争い?に近い掛け合いをしており先ほど出てきた少女と比べると悪いがスタイルは良くかっちりと制服を着こなしている。
「おいあんた!いったい何をしやがる!危ないだろうがっ!」
とその掛け合いを中断するようにトゥーリアが女に向かって抗議の声を上げる。
俺が障壁を張っていなければコンクリート片に潰されていたかもしれないが無理もないが相手を選んで喧嘩を吹っ掛けて欲しいものだが。
「あぁ?」
凄むような声を挙げたと思ったその矢先、”その拳をトゥーリアの腹部に押し当てようとしていた”のが見えたので移動した。
「え?…な、なんで?」
「なんだてめぇは…?」
「はぐれ者ってのは女子供見境無しに攻撃を仕掛けるのがデフォなのか?」
俺は腹部に押し当てられそうになっていたトゥーリアの目の前にたって拳を弾き蹴り返してきた足先を掴みメガネを掛けた少女の隣へ投げ飛ばすと猛犬のように歯を剥いて此方に威嚇してくる。
…うん、【猛犬注意!】の立て札を用意するべきだろう。
俺は呆けているトゥーリアを無視し興味のないという風な視線を向けるとそれが気にくわなかったのだろう。
「しゃしゃってきて邪魔するんじゃねこのクズがっ!!」
右手に持った大剣を無造作に持ち上げ鋭いスピードで此方の間合いを詰めてくる。
「ちょ、あんた…っ!」
後ろにいる誰かが俺を心配して声を掛けたのだろうが問題ない。
大剣の刃が俺の体に突き刺さる前に左手に抜いていた【フェンリル】のスライドで受け止める。
「ちっ…!!」
弾き返し何時でも【重力弾】と【ドライミーティア】を発動できる状態にして銃口を向けるとボサボサ金髪女は舌打ちをして距離を取る。
その際に女達が身に付けている衣服はレヴォルフの物ではなかったがその胸襟に付けた校章が《双剣》を示していたのだ俺の嫌気度は更に上昇した。
「…レヴォルフの関係者ってのはろくでもない奴らばかりらしいな」
そう言うと金髪ぼさぼさ女は不愉快そうに顔を歪める。
どこかで見たことがある顔だと思ったがこいつらはレヴォルフの傭兵生チームであるへリオンとか言う名前だったはずだ。
なんでそんなことを覚えているのかと言うと既にコイツらは本戦出場を決定しており嫌がおうにでも名前とその戦闘方法を覚えておかなければならなかったからだ。
「その身のこなし…手にしてる武器…そうかてめぇは…」
「星導館学園チーム・エンフィールドの《戦士王》こと名護蜂也とそちらの後ろにいるのは《疾風刃雷》の刀藤綺凛。そしてクインヴェール女学園のチーム・ルサールカの面々ですね。」
説明をしたの同じチームにいるメデュローネと呼ばれる女性が説明していた。
こっちはまだ理知的に見える。金髪女を無視してそっちの方に話しかけた。
「知ってるかもしれんが今は《星武祭》の最中だ。参加者全員は防護フィールド以外の場所での私闘を禁じられてる。今のルサールカのメンバーの一人に攻撃しようとした事態でもバレたら出場停止食らうぞ?さっさとそいつを引き取って消えてくれ。」
「はっ!それがどうした。俺の知ったことじゃねぇ。むしろそれこそ清々するぜ!」
「やめなさいロヴェリア。騒ぎを起こすつもりですか?」
嗜めているがこっちに謝罪の気がないのはやはりレヴォルフだった。
「そっちのメガネの娘にお願いしたんだ。お前に話しかけたんじゃねーよ狂犬女。耳までバカになったのか?」
「殺す!!」
そう言って金髪女…もとい手にした大剣…《
「いくら命令と言えどこんなクズどものお遊びにつきあうなんざ最初から気が乗らなかったんだ!」
「「危ない名護蜂也っ!!」」
そう言ってロヴェリアと呼ばれた女は大剣を両手で持って突っ込んでくる。
…本当にめんどうくせぇなもう
(主、変われ。少々あの《邪剣》…”小僧”に説教が必要なようだ。)
(…頼めるか?あ、戦闘不能にするなよ…てか今小僧って言った?)
(細かいことを気にするな。あの程度のナマクラに我を傷つけることすら出来まいよ。)
大剣が振り下ろされる瞬間に俺の瞳は《黒目》から《蒼窮色》へ変化した。
「へっ!ざまぁないなザコ…が……なっ!?」
「………ッ!?」
「「「「「はっ…??」」」」」
『やはりその程度か貴様の力は…所詮は魔剣になり損ねた《ナマクラ》だったか。』
振り下ろされた大剣の一撃を素手で握りしめ脳天へ叩き込まれるはずだったそれは”なにも装備していない”俺に防がれている。
その光景に後ろにいるルサールカの面々と綺凛ちゃん…はあんまり驚いてないな。
へリオンの二人、特に当事者は何が起こっているのか分からないようだ。
『我が主へ刃を向けたことをその身を持って悔いるが良い《虚渇の邪剣》よ……ぬぅん!!』
次の瞬間に握られた刃先が砕け散り刃を形成できなくなり発動体へ戻る《虚渇の邪剣》を見て呆けるロヴェリアの腹部へと掌を翳し星辰力を放出する要領で”飛ばした”
「がほっ…!?」
吹き飛んだ女は後ろにある廃ビルに激突し手にしていた発動体を取り落としたのを確認し
女は気を失っているのか起き上がる気配はなくメガネの女も此方へ攻撃を仕掛けようとしていたが既に展開している《魔弾の射手》《フラッシュエッジ》を展開しているので動きを見せた場合すぐに攻撃が飛ぶことになる。
が、やりすぎだ。
(おいおいやり過ぎだっつーの!!)
『(謝るのなら今のうちだぞ小僧………最初からそう言えば良いものを…。安心しろ主。本気で壊さぬ。脅しを掛けただけのこと。)さて、ご婦人その狂犬をさっさと連れ帰ってくれればこの武装を返そう。』
「…それに応じない場合は?」
『こやつを砕く。…おっと、変な動きをしない方が身のためだぞ?』
「それは此方の台詞です。それをすれば先ほどの言葉はあなたに返ってきて出場停止になるかと思いますが?」
『悪いが先ほどの攻撃はそちらが仕掛けてきているのを録画させて貰っている。後は分かるな?』
「……」
『………』
一触即発か、と思われたが男の声がこの場所に響いた。
「引け。メデュローネ、ロヴェリカ。」
「!?ネヴィルワーズ…はい。」
奥からメデュローネより上の大人の男がやって来たのだ。
その一言に反撃しようとしていたのをやめていた。と、同時に俺も魔法と武器を下ろす。
「チームメンバーが迷惑を掛けた。この件無かったことにして貰えないだろうか」
そう言って頭を下げると吹き飛ばされ気絶していたロヴェリカが騒ぎ出す。
「邪魔するなネヴィルワーズ!…くそっ俺の剣を返しやがれっ!」
今にもこっちに飛びかかりそうな勢いだったが男が前に立ち進路妨害をする。
「そう言うわけにはいかん。我々が失格となればディルク殿の名前に泥を塗ることになる。」
「あんな豚のことなど知ったことか!」
うん、それは俺もそう思った。
男は嗜めるようにロヴェリカに話しかける。
「…そうか。それはすなわち我が主の面目を潰すと言うことを由とするのだな?」
「くそ…っ」
そう言われて忌々しそうに吐き捨てるロヴェリカ。
なんだか良く分からないが攻撃をしてくれなくなったのなら俺が《虚渇の邪剣》を持っている意味がない。
そう思い俺は重力魔法で浮かせて持ち主の元に返してやることにした。
「…ほらよ。返すぜ」
「てめっ!?…このっ…分かったよ…チッ」
投げ渡す?と慌てて浮けとるロヴェリカはこっちに襲いかかってきそうだったが進路方向をネヴィルワーズに阻まれてその勢いを削いだようで男が来た道から引き返すようにメガネの女と一緒に戻っていった。
相変わらずこっちを睨み付けて殺気を撒き散らして返っていった。本当に駄犬だな。と思っていると男が此方を興味深そうに見ていたので視線を向ける。男にじろじろ見られる趣味はないんだが?
「…未だ何か用か?」
「いや、《戦士王》という男がどれ程の男なのか…なるほどな。ディルク殿が警戒するはずだ。…ではまた会おう《戦士王》」
そう言って男は来た道を引き返し暗い奥へと戻っていった。
「…どいつもこいつも【
そう呟くと隣には綺凛ちゃんが居た。
「だ、大丈夫でしたかお義兄さん!?」
俺の手を取って大慌てだが問題ない。手を星辰力で覆っていたので傷一つ無い。
大丈夫なことをアピールするために手を開いて握って見せる。
「大丈夫だよ。ほら痛くないし」
そう言って見せると安心したように「ほっ…」と息を吐いている綺凛ちゃん。
…なんかもう色々疲れた…さっさと料理を作って食べさせたいとその足でこの場から立ち去ろうとしたその時ーー。
グゥ~~ッ
誰かの腹の音色が聞こえた。
俺ではない。綺凛ちゃんを見ると大慌てで否定する。じゃあ誰だ?となって後ろにいるルサールカの方向を見ると同じようにその音の主を探しているようで視線が一人に集中する。
「………」
ルサールカのリーダー、ミルシェが吹けていない口笛を吹いて顔をそらしている。いや下手くそか」
「だ、誰が下手くそだぁ!べ、別にお腹の音なんか鳴ってないし!!」
「いや、リーダーそれ自爆だからね?」
ピンク髪の少女がツッコミをいれるとその虚勢がなくなり恥ずかしそうな表情を浮かべている。
…聞かない振りをしていた方が良かったか?何て思っていると綺凛ちゃんがミルシェに声を掛けていた。
「その…良かったらお夕飯一緒にいかがですか?」
「え?」
「「「「「え」」」」」
「はぅ…っ!」
まさかの誘いに困惑する五名とビックリする綺凛ちゃん。俺もビックリしちまったよ…
こうして俺は六名分の夕飯を作ることになったのだ。
◆ ◆ ◆
「…………じー…」「…じー……」
「ふ、二人とも見すぎだって…」
大所帯になった夕食会なのだが…流石に自室に呼んでのご馳走、というのは問題なので星導館の食堂を副会長権限を使っての食堂を借りて居た。
食材…は結局足りなくなったので許可を得て大型冷蔵庫の食材を利用し人数分の本来の献立を作る。
調理所に近いテーブルでミルシェとトゥーリアが此方を警戒するような目で見ておりそれをマフレナさんが嗜めるようにしているが聞きはしないだろう。それ以外はリラックスしてお冷やを飲んでいる。
「そ、そのごめんなさいお義兄さん…勝手なことを…」
「いや良いよ。多かろうが作る量が変わるだけだし。んじゃ早速麻婆豆腐を作ろう」
「はい!」
綺凛ちゃんにお手伝いをして貰いながらメインを作成する。
先ずはにんにくを大玉一つを皮から解し身を取り出し微塵切りにする。
小気味良いまな板を叩く音が食堂の厨房に響き渡る。
続いては手渡されたしょうが一つを皮を剥いてこれも同じく微塵切り、続くネギも斜めに切り込みを入れ反対側から刻んでいく。こうすればすぐに微塵切りにすることが出来るだろう。
刻んだ食材をバットにいれて準備をして綺凛ちゃんに指示を出す。もうまな板と包丁は使わないのだ。
「はい、洗っておきます。」
洗い物は綺凛ちゃんに任せて続いて厨房のガスコンロに点火し本格的な中華なべが会ったので使用することにする。
油を敷かないで火を付ける前に牛豚の合挽き肉を鍋底に敷き詰めるように広げ塩、ブラックペッパーをかけてから片面を確りと焼き面を付ける。
片面が焼けたのを確認し格好良く鍋を振ってひっくり返すと綺凛ちゃんが手を叩いて「すごいです!」と誉めてくれたのはなんともむず痒い。
挽き肉から出た油は旨味調味料となるので肉と油は別皿で取っておく。
焼き目の付いた肉はバラバラにしてパラパラにすることにする。こうすることで味がまとわりやすくなる気がする。
そして別皿に取っておいた粗びき肉から出た油に香味野菜の香りを移す香味油を作ることにする。
弱火と中火の中間で先ほど分けた油にネギ、にんにく、生姜をそれぞれ適量いれて煮詰める…沸々と油が泡立ってきたら敢えて空気に触れさせて入れた野菜達が素揚げの状態にし網で分ける。後で作った料理に突っ込むので捨てないようにまた別皿に分ける。
「綺凛ちゃん。豆腐を茹でておいてくれる?塩いれてね」
「はい分かりました。」
沸騰したお湯に木綿豆腐を入れて塩を加え茹でる。
理由としては豆腐が崩れないように塩で固めるようなものだと思って貰えれば。
まぁ必要ないのだが気持ち的にな?
素材が揃って中華なべに豆腐を入れてパラパラに炒めた肉を投入し香味野菜の旨味が移った油を投入し絡めていき…なぜかあった紹興酒を加えて酒を飛ばし炒める。うん、もういい匂いだ。
そして更に甜麺醤、豆鼓醤を加える。あ、そうだ
「そういやお前らって辛いの苦手か?」
「は、はい…あまり得意じゃないです…」
「あたしもー」
「私もあまり得意じゃないな」
三人が反応したが二人はこっちをじっと見ている。が少し口元がいい匂いのせいで緩んでいるように見えるのは気のせいではないだろう。
味を馴染ませるために残った刻んでいた香味野菜達を入れて味見をする。あ、これを入れてなかったな。
ポン酢を一匙入れて味を整える、うんこれだ。
決まったのでゆすり回すように鍋を振るって絡ませてから粘度調整のために水解き片栗粉を回し入れもうひとゆすりして…完成だ。
鍋から大皿によそう。同時進行で作っていた蒸し鶏のゴマダレと簡単鳥ガラスープの素で作った中華スープの三つが出揃った。
綺凛ちゃんがせっせとテーブルへ持っていき小皿を用意する。
「おまちどうさん。麻婆豆腐と蒸し鶏のゴマ和え、中華スープだ。召し上がれ」
「うわ美味しそう…!」
「これは…本格的ね。」
「名護さんは料理もお上手なんですね…?」
「まぁね。…って二人も熱いうちに食べてくれよ。…別に毒なんて入れてない」
「………」「………」
「もー二人とも警戒しすぎ。あと作ってくれた名護さんに失礼だよ?」
「そうね。料理には罪はないわ。『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』じゃないけど頂きましょう。」
「そ、そうですよお二人とも…もういい匂いで口元緩んで」
「「いただきますっ!!」」
マフレナの指摘を掻き消すように二人は取り皿を持って麻婆豆腐をよそい蓮華で掬い口に放り込む。
「「う、うまいぃぃぃ…っ!!」」
二人は顔を揃えて俺の料理を絶賛してくれた。
「しつこすぎない油と濃すぎない味が絶妙でご飯が進んじゃう…!」
「辛すぎず甘すぎない丁度良いその味…レンゲが…止まらないっ!」
その光景を見て残り三名もそれぞれの料理に手を伸ばし食べ進めるとそれぞれの反応を見せてくれた。
「うわっ鶏肉やわらかいっ…あとゴマダレが濃厚で美味しい…」
「中華スープも美味しいわ。入っている白髪ネギが良いアクセントね。」
「ほわぁ…全部美味しいです…」
舌が越えているであろうルサールカの面々だったがどうやら満足してくれたようだ。
それを見て綺凛ちゃんが耳打ちする。
「良かったですねお義兄さん。」
「そうだね。…俺たちも食べようか?」
「はい。」
二人して手を合わせて挨拶をした。
「「いただきます」」
こうして結構な量を作った筈の手料理は大好評のうちに平らげられたのだ。
◆ ◆ ◆
「ごちそうさまでした。名護さん。美味しかったです。」
「お粗末様。…これで少しは信頼してくれたか?」
「少しは…」「多少は…」
そう問いかけると二人は未だに警戒をしているようだが先程よりましだろう。
今は俺たちしかいない食堂で聞いてみた。
「そもそも俺とシルヴィアの関係をそんな探るようにしてるんだ?」
「そ、それは…」
そう問いかけると口ごもったミルシェ。
言い出しづらいのだろうなかなか喋ろうとしない彼女を見て俺は独り言を告げる。
「…言っておく。他人の不幸で飯を食うのは旨いだろうな?正常な人間は罪悪感を感じないし何も感じないのは人でなしだ。」
「ッ」
「お前達は確かに実力があるだろうさ。だがそれ以上にシルヴィアは実力がある。アイツを追い抜こうなんざ血反吐を吐く努力をしなきゃ生半可な覚悟じゃ無理だ。」
「「「………」」」
「そいつを貶めるような事をして頂点から蹴落として空想の椅子に座るのは気持ちいいだろう。…だがなそれは本当に”自分の実力”で勝ち取った気持ちの良い勝利か?」
「「「「「!?」」」」」
ハッとするルサールカの五名達。
何が言いたいのか分かったのだろうミルシェが声を小さくして問いかけてきた。
「だからあたし達は…あんたに誑かされてるシルヴィアが可愛そうだと思って何とかしてやらないとって思ったけど…あんたに助けて貰って…料理まで振る舞われて…もう滅茶苦茶だよ。」
「知るか。実力で勝てないからって情報操作で勝負を挑もうとするのは愚策にもほどがある。第一、シルヴィアはW&Wがバックについてるだろ。俺がもし恋人に準ずる関係なら今ごろ消されてる。」
そう言うと誰かが「確かに…」と呟いた。いやいや…お前らのバックだろうが…。
「歌、人気、個人の実力でダメなら”集団戦”で挑め。違う土俵でな。」
「違う、土俵…ですか」
「ああ。シルヴィアは未だにタイトル…つまりは《星武祭》を制してない。お前達は何に参加してる?」
「っ!そうか…《獅鷲星武祭》での優勝すれば…!シルヴィアに勝てる…?」
パッと明るくなった表情のミルシェ。
それに続いてルサールカの四名は気がついたようだ”個人ではなく集団、チームでの優勝を目指せば良い”と
夜遅くになりかけたのでお開きにしそれからはルサールカの面々は表情が明るくなり帰る間際には「ごちそうさまー!」と言われて敵対視が若干弱まった気がした。
「お義兄さん格好良かったです。」
「え?…まぁ経験談って言うか」
「?…それより驚きました。敵であるあの人達にアドバイスをするなんて…でも感動しちゃいました。」
「まぁでもアイツらの目的は達成できないんだがな…」
そう言うと綺凛ちゃんは不思議そうな表情を浮かべていた。
「どうしてです?」
その疑問に俺は気負うこと無く普段通りに答えた。これをルサールカや別のチームに聞かれたらぶちギレされそうだがな?
「俺たちが優勝するからだ。」