俺が《六花》で二つ名で呼ばれるのは間違っている。 作:萩月輝夜
『第二十四回【
実況に呼ばれ中央ステージへ歩みを進める為に姿を現すと歓声が大きくなる。
『第四回戦では圧倒的不利と評された予想を覆し前回の準優勝チーム・トリスタンを下して見せた前大会ベスト8!世界的ガールズロックバンドであるチーム・ルサールカ!』
歓声に応えるルサールカは俺たちとは対照的で悠然としていた。そこはやはりプロだなと感じた。
両チームのメンバーを解説している中、お互いがステージへ降り所定の位置に着く。
「ーさぁて、そちらさんには悪いけど四回戦目に引き続き番狂わせとさせて貰おうじゃんかー」
リーダーのミルシェがギター型の純星煌式武装《ライアポロス・カリオペア》が肩に背負いニヤリと笑う。
「生憎と前回の戦いぶりが評価されてオッズ表では五分の評価になっていますよ」
「ふーん、そっか。まぁどっちにしても勝つのはあたしたちだもんねー」
「そう言うわけには行かないな」
俺はクローディアと入れ替わる形でミルシェの視線を受け止める。
前回と同じく胸に輝く校章はリーダーの証である。ここで敢えて焚き付けることにした。
「お前達じゃ俺を倒せない。勝つのは俺たちだ。」
「…言ったな?それはこっちのセリフだ!」
ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべるミルシェ。
ミルシェが踵を返し定位置へ向かうのを見届けて俺も定位置へ向かう。
チーム・エンフィールドの陣形は最前列に天霧、綺凛ちゃん、クローディアの三名、遊撃でリースフェルト。そして後衛で後方支援でリーダーの俺という陣形だ。
対するルサールカは前衛にミルシェとトゥーリア、中衛にパイヴィとモニカ、その後ろにマフレナがそれぞれに《ライアポロス=カリオペア》ドラム型の《ライアポロス=エラード》、空間投射型キーボードの《ライアポロス=タレイア》を準備した。
『そろそろ開始時間が迫って参りました!お互いに準備は万端といった感じです!果たして準決勝の切符を勝ち取るのはどちらのチームになるでしょうか!』
意識を切り替える。
機械音声が火蓋を切る合図をした。
『【
◆ ◆ ◆
試合開始の数時間前。チーム・エンフィールドの控え室にて。
『再度確認しますが《ライア=ポロス》の中で厄介な能力はモニカさんの『阻害弱体化』とマフレナさんの『活性強化』です。このどちらかの能力を封じぬ限り私たちは勝利を得ることはできないでしょう。』
四回戦目の試合を見ながらの作戦会議を行うなかで厄介なのはモニカのもつ《ライアポロス・メルポーネ》とマフレナが持つ《ライアポロス・タレイア》の二つだ。
そのためこの二人を最優先撃破対象に選択する。
後者は後衛のため狙いにくいが前衛であれば話が違ってくる。いくら強化したところで蜂也、綺凛、綾斗と切り結べるほどの実力はない。
が、それを補うためにパイヴィの持つ《ライアポロス=エラード》が障壁を張ることができる為少々手間取る可能性もある。
そのクローディアの言葉に一同は耳を傾ける。そこで俺が発案する。
「そこでだ。その厄介な二人の相手…俺に任せてくれ。」
「対抗策があるのか?」
リースフェルトが反応して見せたのはまぁ当然だろう。いきなり「俺に任せろ」と言えばそんな顔になるか。
「まぁな。ただ時間が足りなさすぎて完全に押さえることは出来ない。」
「なんだ」
「ユリスちょっと落ち着いて…」
暴れだしそうなお姫様を天霧が宥めてくれているとこで説明をする。これまで隠していた自らの能力を。まぁ少し言葉にするのは難しいのでこっちのイメージで話すが。
「…俺の《魔術師》としての能力、其れは”化学反応や超常現象を起動式に置き換えて”具現化する能力だ。」
「其れはつまりどう言うことですか?」
綺凛ちゃんが反応を示す。
「まぁ簡単に言うとAからB間での地点を移動する…あーそうだな…仮にだ、綺凛ちゃんそこのキッチンからここのテーブルに卵を移動させるのにどういう動きが必要になると思う?」
その話を綺凛ちゃんに振るとちゃんと答えてくれた。
「えと…そこから立つ、そこへ向かって歩く、目的地で止まる、そこに座る…ですかね。」
「大体正解だ。これを俺的に言わせると加速、移動、減速、停止の四項目で一つの結果が生まれる。」
「其れを全て魔法で行っている、と言うことか?」
リースフェルトが少し難しそうに考えているようだが其れほど難しいものじゃない。
「正解だ。でもまぁ…俺の《魔法》は少し特別でな。その行程を踏むのに一項目”移動”でも大体3万文字のアルファベットを処理…四行程あるから大体12万文字だな」
「そ、其れってつまりその文字数を処理しているって事なのか…!無茶だ!人間の脳内で処理できる文字数とスピードじゃない!」
「だが実際に俺はその行程を踏んで加速魔法や光波振動魔法を使ってるだろ?俺は”其れができちまう人間”なんだ。俺が嘘を言ってるように見えるか?」
「………」
「ユリス。やはり副会長が鳳凰星武祭の際に使っていたあの銃のようなものは補助器だったんですね。」
「やっぱり天霧は分かっていたか。」
あの一度で見破るのは相当”眼”が良くないと分からない。
「ええ。銃の形をしていましたが銃口が無かったですから。其れに銃弾?が銃口から少し離れたところから出てましたからね。」
「…蜂也の能力の秘密は分かったが其れがどんな対策の糸口になるんだ?」
「言ったろ?俺は《魔法》を起動式に起こして事象改変を行うって。詰まる所”魔法”を作ることは出来るってことだ。」
「なるほど。つまりはルサールカに対抗するための術式を組むことが出来る、と言うことですね?」
クローディアが放った一言に全員が驚いていた。
当然だろう。俺の魔法がプログラミングと同じ要領で組まれているのなら”新たに作り出して”対抗手段を作成できる事に他ならないからだ。
「…ッそういうことか。其れなら対抗手段が”時間が足りなさすぎて完全に押さえることは出来ない”と言うことか」
「理解が早くて助かる。前例があるからすぐ作れた。確実に止めることが出来るだろうが相手が《純星煌式武装》なのもあって押さえるのは数十秒程度…だがその”隙”があれば要を潰すことは出来る。」
そういって前衛を務める三名に視線を向けると其々頷いた。といっても綺凛ちゃんは少し緊張していたので頭を撫でる。
「頑張りますっ」
「そんなに気負わなくて良いよ。自然体でね。」
「はいっ」
「でだ。俺が今回用意した策と言うのは………」
対抗策を説明すると全員が納得してくれた。途中シルヴィアの名前を出したら綺凛ちゃんとクローディアに少し複雑な顔をされた…何でだ?
一先ず、真っ先に仕掛ける手段として決定し其れ以降の作戦を予め用意していたクローディアが二段階構成を説明する。
作戦会議を進めていると試合開始まで程なくとなった。
◆ ◆ ◆
次の瞬間にフィールドを吹き飛ばし塗りつぶすような黒い重低音が濁流のように押し寄せる。
が、俺は其れより速く俺はフィールド全体に同じ音の波長へ調整した音波減衰魔法【サイレントヴェール】を発動させた
「なんだ…っ!?」
「音が響いていないよぅ!?」
《ライアポロス》をかき鳴らすルサールカの面々は困惑する表情を浮かべる。
発した”万応素を通じて震える音色の波”が俺が発動した”万応素に干渉する音波の波”で星辰力で活性化された万応素を減衰し効果は発揮されない。
《純星煌式武装》が奏でる音が普通の音の波である筈がない。
星脈世代が持つその楽器が奏でるのは万応素を触媒として観客や敵に対して影響を与える。
このときばかりは友好関係に感謝した。
「【阻害弱体化】が発動していない…あっ!?」
慌てるモニカを他所に綺凛ちゃんの《千羽切》の銀閃が煌めいた。
『おーっと!?試合開始早々モニカ選手がチーム・エンフィールドに対して【阻害弱体化】を発揮…ってなんとその効果を受けていないのか刀藤選手稲妻の如く駆け出した!てか速すぎです!』
『恐らく何かしらの方法でモニカさんの『阻害弱体化』を封じている可能性があります。その発信源は名護選手でありましょうか?』
実況のミーナの声より先に綺凛ちゃんが駆け出している。
【ライアポロス】の能力ダウンは発揮されずその音の発生源であるモニカの持つベースが重低音を叩きだすが意味を成さないギターの部分に光刃が展開されているその光景は禍々しいものだったが効果はない。
「モニカッ!」
パイヴィがドラムを叩き急ぎ音圧防壁を多数展開する。
その校章に刃が触れるよりも速く展開されその刃が通らない
「折り込み済みだ。」
訳ではなかった。左手の【フェンリル】の引き金を引いてプログラムされた《星辰解体》を発動し【音圧防壁】、即ちモニカを守る重要な部分を消滅させることで攻撃が通ることになる。
「………そこですッ!!」
勢いそのままに振り抜くと校章を真っ二つに両断しステージには硬質な音が響くと同時に機械音声が告げる。
『モニカ、
「そ、そんなぁ…!」
『おーっと!?試合開始早々にモニカ選手が校章破壊で離脱です!』
速攻で要を潰す。これが俺が考えた攻略方法だ。だがもくろみは成功し総崩れになる。
ガクリと項垂れるモニカを他所に攻撃が本格的に開始された。
「くぅ…!モニカが早速…やってくれたなぁ!…うわわっ!!」
モニカが倒れたことでこちらに掛かるデバフはもう発生しない。
リースフェルトが牽制を開始した。
「咲き誇れ!赤円の灼斬花!」
動きを見せようとしていたミルシェとトゥーリアに炎のチャクラムが襲いかかり一歩遅れた。
その隙を突き現に今クローディアと綺凛ちゃんが動きだし頭を押さえた。出遅れたミルシェが後手に回り始めた。
残る要を潰そうと考えたがモニカがやられたことで前衛に対する攻撃が激しくなったので一時中断し一先ず俺は援護をするため《魔法》を発動し牽制する。
一方相手前衛であるミルシェとトゥーリアが《ライアポロス》から放つ破砕振動によって真っ先に飛び出した天霧がいた地面を大きく削り取る。隙を見せた天霧に対しミルシェの持つ《ライアポロス・カリオペア》のギターから発せられた光刃と《黒炉の魔剣》と切り結んでいる。
「まさか私たちの音を封じるなんて…!」
「これも副会長が立案した作戦だからね…俺に当たらないでくれよっ!」
「くッ…!!《叢雲》悪いが今回は最初っから全開だーっ!!」
天霧とミルシェがお互いの純星煌式武装で斬り結んでいるそのとなりでトゥーリアもトライデント状になった矛先をクローディアの《パン=ドラ》綺凛ちゃんの《千羽切》とぶつけ合っている。
「モニカがやられたけどちょうど良いハンデだ!俺たちのサウンドに酔いしれなーっ!!」
ミルシェとトゥーリアが持つ純星煌式武装同じ色の青がその瞳に灯っている。
先程より交戦的なのはその手にしている武装のせいなのかもしれない。
デバフがこっちに掛かっていないとは言え強化と技量込みであの二人に近接戦闘に挑み押さえ込んでいるのは異常だった。
(能力込みとは言えあの二人を押さえ込むか…厄介だな。一先ず援護だ)
マフレナがキーボードを叩きその周りに無数の光弾が出現し前衛で戦っている三名へ襲いかかるその瞬間にリースフェルトが放った炎の戦輪が襲いかかるが全てを消し去ることは出来なかった。
「行けッ!」
俺は素早く《フラッシュエッジ》を投擲し《重力弾》で打ち漏らした光弾を破壊していく。
残った光の戦輪は前衛の校章を目掛け飛翔するがその直前で叩き落とされるように霧散した。
その背後でパイヴィがドラムを叩く、音圧防壁によって防がれてしまう。強度はそこまででもないが数を用意できるという点で対処が面倒くさい。
「天霧、一旦下がれ!」
「了解!だったら先ずは作戦通り、」
「させねぇーよ!」
「ぐぅ……!!」
マフレナの光弾を回避するために上空で回転し着地、後方へ下がろうとしたが着地の隙を突かれて横薙の攻撃を受けるために咄嗟に《黒炉の魔剣》の腹で受け止めるが軽く、ではなく重い一撃のようで食い縛る様子だ。
五分割された純星煌式武装とは言え能力アップも相まって押し込まれておりその光の刃を《黒炉の魔剣》で切り落とすことが出来ていなかった。
「おらおらおらっー!!」
「……ッ!!」
トゥーリアは続けざまに横薙からの上段振り下ろしからの切り返して逆上げ、踏み込んでの突き出して体勢を崩したところに光の刃が続けざまに回転切りの要領でぶつかり凄まじい音が響き渡る。
普段のトゥーリアからは想像できない粗暴なスタイルから基本に忠実な近接戦闘を披露しているのは彼女が生真面目に基礎訓練をしている証拠だ。
天霧とトゥーリアの近接戦闘はほぼ互角だ。
「はぁぁぁぁっ!!」
全体に意識を向けているため《瞳》で視ることで何が起こっているのか把握できる。
別の場所では綺凛ちゃんがミルシェの鋭い斬撃を千羽切で防ぐ…がそのあまりの威力に身体吹き飛ばされ追撃を行うためにミルシェが動くがその直後に同時に戦っていたクローディアが《パン=ドラ》で挟み込むがてにした《ライアポロス・カリオペア》を振るって弾き返し逆にクローディアを蹴り飛ばす…が咄嗟にバックステップを踏みその蹴りから逃れることが出来ていた。
「あらあら…これは厳しいですね」
そう告げるクローディアだったが直ぐ様ミルシェの追撃が迫るが難なく受け止めている。
同時に天霧の方も同じ状況になっていたが純星煌式武装のスペック出力が勝っているため押している状態だ。
が、トゥーリアがギターの弦に指を掛けているのは破砕振動の用意をしている。
通常時の天霧の瞬発力ならばその範囲から回避をすることは出来るだろうが攻撃に専念させるため俺は後衛に徹する。
「俺が居ることを忘れちゃいないか?」
次の瞬間に赤く輝く全てを燃やし尽くす熱線がルサールカに襲いかかる。
「んなッ!?」
その一つは天霧を襲おうとしていたトゥーリアの校章目掛け撃ち抜く…事は出来ずその寸前でギターの腹でガードされてしまう。
「な、なんだ今の…!?」
「危なかったわ…!」
「いきなり校章を狙ってくるなんてぇ……!」
ミルシェ達から焦ったような声が漏れている。
ちっ、今ので一人潰せたら良かったんだが流石にソコまで甘くないようだ。
だが綺凛ちゃんとクローディアと天霧の体勢を整えることが出来たのは重畳。
「ちょ、ちょっとちょっと…なんだよあれは…?」
ミルシェが俺へ驚愕の視線を向けてくるが別におかしな事はなにもしていない。
俺本人ではなくその背後。
その背面が水面ように揺らめきその中から六つの特化型CADが銃口だけを見せて起動式を待機した状態で狙いを付けている。
「【華焔の魔女】みたいに【煌式遠隔誘導武装】みたいなのを使ってるのか…ってギターと…って服の一部焦げてるし…ひぇっ」
放った魔法の一撃で武装の一部が焦げ付いている。
…逆に焦げ付く程度で済んでいるのはこの世界の武装と人間が頑丈なのか知らないが”ある程度本気で放っても問題ない”ってことだ。
《瞳》が黄金色に輝き驚きを隠せないルサールカのメンバーを射貫く。
「ちっ…時間があればマフレナの【活性強化】も潰せたんだがな…仕方ない。」
振動系統魔法【レーヴァテイン】を背面に浮くCADに【疑似多重展開】六つ施し順次発射体勢を待機させた其れを展開しホルダーから【フェンリル】を抜き放ち構える。
「行くぞ。構えろみんな…勝負をつけにいく!」
◆ ◆ ◆
【レーヴァテイン】の熱線とリースフェルトの煌式遠隔誘導武装、そして【魔女】としての力を遺憾なく発揮しミルシェ率いるチームルサールカは押されていた。
デバフは解除され頼みの綱であるマフレナを守りながらの攻撃は非常に厳しいものであるのは明白だ。
援護を受けながら天霧とクローディアの持つ純星煌式武装を受け止めるのは厳しく其れに綺凛ちゃんの攻撃が入るのはその牙城が崩れるのも時間の問題だ。
が、其れでも決めきれないのはパイヴィの【音圧防壁】が的確なタイミングでサポートに入ってくるからだ。
「咲き誇れー
が火力で押しきってしまえば問題はないと言わんばかりに十全に力を発揮するリースフェルトが放った炎の竜がマフレナ目掛け襲いかかる。その隙を突いて天霧が《黒炉の魔剣》をトゥーリアを押さえ込みクローディアが《パン=ドラ》、綺凛ちゃんが《千羽切》を構え要を守るためにミルシェに斬りかかる。
綺凛ちゃんに至っては【連鶴】を叩き込み完全に防戦一方になる。
「舐めるなよ【叢雲】っ!」
「ーッ!!」
しかし、不意に鋭い踏み込んだ一撃を受けてその気迫に舌を巻く。
状況は圧倒的に不利でありながらその食いつく根性は確かなものだ。
だからこそ、油断しては行けない、手負いの相手ほど危険なものはないのだから。
「確かにオレの素の戦闘力じゃお前には及ばねぇ…こうして打ち合えてるのもマフレナの…純星煌式武装の力があってこそだ。だけどよ…オレにだって意地があるんだ!!」
其れに反応するようにミルシェが打ち合っていた二人を弾き飛ばしギターを構える。
「えーい!しゃーないよね!こうなったら出し惜しみは無しだ!みんな、【
「(【共鳴】…?)全員下がれっ!」
嫌な予感がした。
次の瞬間にミルシェとトゥーリアがギターを激しく掻き鳴らしマフレナがキーボードに指を滑らせパイヴィがドラムを激しく叩く。
直後、ステージ全体を始めの重低音の比にならない程の激しい音が響き渡り天霧達は吹き飛ばされ其々が受け身と着地を取ってダメージの軽減したらしい。
「大丈夫かみんな」
声を掛けると其々が頷く。
「はい…なんとか…でもあれは…?」
「破砕振動波ではない筈…」
「むしろあれはパイヴィの【音圧防壁】の筈…っ!」
こちらと向こうのチームの間、何十メートルに渡りその空間が波打つように歪みを見せる。
「まさか…これ全部が【音圧防壁】なのでしょうか…?」
綺凛ちゃんが信じられない…と言った表情でそちらをみている。
「だとしたらとんでもないな…一体今までの何倍の規模だ?」
険しい顔でこちらに合流するリースフェルト。攻撃を試してみたが通じないらしい。よほどの強度だ。
やがて距離を保ち防御をしていた音圧防壁が消え去りメンバーの欠けたルサールカが集合していた。
「ふふん!どうだ、驚いたか!」
ミルシェが得意気な表情で俺たちにギターを突きつける。
「あたし達の《ライアポロス》を全て共鳴させることで本来の力を引き出す必殺技だ!万が一にでもあんた達に勝ち目はないよ!」
「…その割りには随分と顔色が悪いな。化粧でも落ちちまったか?」
「うぐっ…!」
顔色が悪いことを指摘してやると露骨に顔色を変えるミルシェ。…あんまり勝負事とかに向いてないな。
だが実際にメンバー全員が先程よりも顔色が悪く息も荒いのはどうやら【共鳴】と言う能力は著しく体力を消耗する”切り札”であるのは間違いないらしい。
「ふ、ふん!どっちにしろこれで終わりには変わり無いんだ!」
ミルシェはそういってギターを構え直すその瞬間にぞわりとした悪寒を感じる。
【共鳴】を果たしたことで発せられる万応素の周波数帯が変わったため恐らく既に【サイレントヴェール】の効果はその意味を失くしている。即ち”本来以上の力”を発揮する他ならない。
「みんな俺の後ろに下がれ!」
素早く指示を出す。俺の言葉にその意図を理解したのか素早い動きで防御の姿勢を取る。
「こいつからは逃げられねぇーぞ!!」
トゥーリアがその腕を振り下ろす。
「やぁっー!」
俺が防御のために準備をするには少し時間が足りなかったがそこで綺凛ちゃんが一歩前に出て手にしていた《千羽切》を投擲する。
槍投げの要領で投擲された日本刀はミルシェのギターの中心に深々と突き刺さりタイミングをずらす。その一瞬が明暗を分ける形になった。
音響と衝撃の二つに耐えるために『重力障壁』と調整した『遮音フィールド』に二つをマルチキャストし二重詠唱し揺らめく重力の壁と静穏のヴェールが展開すると同時にミルシェとトゥーリアが二人して掻き鳴らすギターの音色は暴力的なまでの破砕振動波を産み出し俺たちへ襲いかかる。
「綺凛ちゃん………ッ」
「蜂也ッ!」
クローディアの心配する声が聞こえた。
正直想像以上の衝撃に頭と校章を守ることに全力を費やす。
「あとは…お願いします…」
『刀藤綺凛、校章破損』
膝を突いて気絶する綺凛ちゃん。
「ぐぅ…ッ!!」
「副会長ッ!!」
「くっ…!まだだ…っ!咲き誇れー【
後方には天霧達が声を俺に掛ける。
防ぎきったが制服はボロボロで体は衝撃でガタガタ、後ろにいたメンバーは無事ではあるもののその衝撃で動けない。正直想像以上の衝撃で立っているのもやっとな状態だ。
だが其れはむこうも同じことで動けるメンバーは限られる。【共鳴】のバックファイアを受けているからだ。
「やらせるかぁ!!マフレナッ!」
「はいっ!!」
「させないッ!!」
トゥーリアが呼び掛けるとマフレナがキーボードに指を走らせるとその瞳が紺碧の色へ変化したのは【活性強化】の【共鳴】を行ったからだろう。
其れにリースフェルトが放った特大の攻撃をパイヴィの障壁とトゥーリアが割って入って防ぐ。
そして反撃を受けてしまう。
『ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルト、校章破損』
『トゥーリア、校章破損』
『パイヴィ、校章破損』
その反動で三人とも校章破壊判定を受ける。
「これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
最後に残ったミルシェは強化を受け尋常ではないスピードで俺へ向かって駆け抜ける。
負傷し万全な速度を出せない後ろにいる二人では追い付けない。
このままでは手にしたギターの紺碧の閃刃の餌食になるだろう。
(勝った……………!!!)
ミルシェが勝利を確信し俺へギターを振り下ろす。
これで良い。これこそが”俺の勝利への筋書きなのだから”
◆ ◆ ◆
其れは瞬きの出来事だっただろう。
紺碧の銀閃が煌めいたかと思えば”立ち上がっている蜂也”の姿があったのだ。
ここまで速度を上げて接近されるとは思いもしていなかった蜂也だったが”予測”をしていなかったわけではない。
ただ冷静に蜂也はセカンドプランとして”直接リーダーを倒すために危機的演出を行う”と言うの実行していた。
無手の状態で接近させる。あと少し、もう少し、ほんの少し…今だ、と。
紺碧の銀閃を体を捻って回避し目線をギターへむけるとそちらに寸分の狂い無く手を伸ばした。
その手の伸ばした先にあったのは綺凛が直前に投擲した《千羽切》が。
力の抵抗無く引き抜き体制を崩し次の攻撃のテンポを崩させたミルシェの眼が驚愕に染まるがまだ諦めない闘志を宿す瞳のまま振り下ろした刃をこちらに向けその狙いは校章があり切り裂いた…筈だった。
「えっ…?」
ギターの刃が弾かれその体は蜂也を前にして隙を晒してしまう。
”体に触れた筈の刃が大きく弾かれる”その光景を蜂也の黄金色の《瞳》が射貫きながら今日始めて蜂也は剣を振るった。
「『影技反撃術・罪斬《ツミキリ》』」
銀閃が袈裟懸けで振るわれた。
蜂也が開発した斬術の一つ、身体に空間的な力場を形成し吸い込まれるように近づく相手の力を利用したカウンター技が発動しミルシェの校章を両断する。
背合わせになる二人。蜂也は立ったままでその場に崩れ落ちるミルシェ。
「そ、んな…」
「悪いな。…ルサールカは気迫ならシルヴィアを上回っていたが…それだけじゃ俺たちには勝てない。」
『ミルシェ、校章破壊。』
『試合終了!勝者、チームエンフィールド!!』
両断された校章が乾いた音を立てると同時に観客席から歓声が響き渡った。