NPCとサンラクとのお話 短編集 作:あか丸様
「さてマスター。ゆっくりとお話をしましょう。」
「ですわ。」
ロープに括り付けられたまま椅子に座らされたサンラク。その対面にはサイナとエムルが居た。
「……」
サンラクは何処かにこの場を切り抜けることができる糸口がないかを考え、辺りをキョロキョロと見渡す。
最初に目に入ったのは対面では無く横で飯を食っているティーアス先生。俺を拘束したという事は少なくともエムル、サイナを手伝っているということ。つまりこの幼女は敵陣営だ。
何と厄介な。俺のステータスはほとんどAGIよりだ。そしてティーアス先生は俺より速い(厳密には違うが)。つまりは俺の天敵ということ。
ティーアス先生が居るせいで俺が逃げようとしてもほとんどが失敗に終わるだろう。
次に拘束されてから姿が見えなくなったウィンプを探す。
あの野郎、隅のテーブルで目立たないよう存在感を消してやがった。
格上に喧嘩を売れるぐらいにはヘタレが治ったかと思ったが、今も十分、ヘタレニーネしてんじゃねぇか。
次にいつもここに居るであろうサバイバアルを探す。
っと思ったが、どうやらテーブルを見る限りはテーブルには座っていない。
今日は居ないのかと思ったとき、窓を見てみるとガタイのいい女性アバター。サバイバアルであった。
サバイバアルは窓から店の中を見てハンカチを歯で噛み鬼の形相でサンラクを睨んでいる。
サンラクは思う。コイツは使い物にならん、と。そもそも多分、どっちかっていうと第3陣営の敵陣営って感じだろう。
他の窓も見てみるとティーアスちゃんを着せ替え隊のメンバーがそれぞれハンカチを噛んでいた。
変態達から自然を外して店内を見渡す。が海蛇の林檎のスタッフしか居ない。もちろんマスター達が客の私情に首を突っ込むはずも無く。
「マイマスター、聞いていますか?マスターに逃げられた後の私達の心情を…」
「そうですわ。とても悲しかったですわ…」
2人はそう言ってシクシクと分かりやすい演技をする。
「サンラク、女の子を置いていくなんて良くない。」
横で幼女先生が言う。
サンラクはこれがいつ終わるのかと3人が言う言葉を左から右に、右から左に聞き流していた。
しばらく時間がたち、サイナとエムルが落ち着き始めたとき
「……と、いうことで私達からはマスターに要求があります。」
「ありますわ!」
何やら2人でニヤニヤしている。
何だ、金か…?
「一部においてはインテリジェンスが皆無なマスターの事です。どうせ金品を要求してくるとでも思っているのでしょう。」
「サンラクサンは本当そういう所ありますわ…。」
心を読まれた、だと?!てか、今思いっきり俺の事馬鹿にしたよな?
2人は俺の反応を見てはァとため息をしてやれやれといった様子だ。
何か無性に腹立つな、おい。
「じゃあ、何だよ?」
俺が聞くと
「「デートです!」ですわ!」
――――――――――――――――――――――――――――――
と、言うことで来ました二ーネスヒル。
道脇に屋台やお店が並ぶ大通り。
いつもならワイワイとプレイヤーが屋台やお店を回っているはずがやけに静かだ。
それもそのはず、プレイヤー達は道の真ん中を歩くパーティを見ながらヒソヒソと話していた。その目には恨みや妬み7割。後の3割は尊敬や憧れ、称賛であった。
「くッ、どうしてこうなった…。」
大通りの真ん中を歩くプレイヤー、サンラク。そしてその両手はがっしり捕まれ右にサイナ。左に魔法で人間化をしたエムル。背中にはティーアスを乗せ、その光景をチラチラと見ながら横を歩くウィンプ。
「警告 少しマスターに近付き過ぎでは無いですか?もう少し離れなさい。」
「サイナサンには言われたくないですわ。そんなに掴んだらサンラクサンが苦しそうですわ。」
「2人とも、喧嘩はダメ。」
「疑問 何故貴方達もついてきているのですか?」
そう言ってサイナは背中に乗るティーアスと横を歩くウィンプを睨む。
「サンラクは私の愛弟子。故に私はその身を守ってあげるという義務がある。」
「何よ、何か悪い?私は服が少ないの。だからサンラクに新しい服を買わせる為にここに来たの。」
「百歩譲ってティーアスサンは分かりますが、ウィンプサンは無理矢理感がありますわ…。」
「くッ、殺せ!」
まさか、プレイヤーが沢山いる場所でこんな羞恥プレイをさせられるとは…。くッ、殺せ!
「今日はしっかりと付き合ってもらいます。マスター。」
「そうですわ!」
「ちょっと待ったァァァ!!」
サンラクがくっころを連発しているとき、聞いた事のある声が進行方向から聞こえる。
そのアバターはガタイのいい女性。声は男。勇者サバイバアル。
「NPCハーレムを築き、挙句にティーアスたんとの密着!!もう許せねぇ!サンラク、地獄に落としてやる!!」
サンラクにはそれは希望に見えた。理由はどうであれこの状況を打開できる可能性のあるプレイヤーが目の前にいる。
「行くぞお前ら!!!」
「「「「「「おうよ!!!」」」」」」
サバイバアルに続いた声。それはティーアスちゃん着せ替え隊、サバイバアルを除いた5人の声にこの街に居てサンラクを恨み妬みの視線で見ていたプレイヤー達、およそ30人。
サンラクはそのプレイヤー達に希望を見出しキラキラした目で見ていた。
多くのプレイヤーがサンラクに向かって走ってくる中ウィンプはサンラクの後ろに隠れ、エムルとサイナは余裕と言った表情である。
それもその筈、この場にはサンラクよりも強い幼女が居る。名をティーアス。サンラクは忘れていた。この幼女が居るせいでこの束縛から逃れられていないという事実を。
サンラクの耳元にスキル名が聞こえた。
「超越速」
瞬間、世界は減速する。
――――――――――――――――――――――――――――
「な、何が…起こったんだ…。」
サンラクの目の前にいた多くのプレイヤーはいつの間にか道に転がり身体が塵のように消えいく。
プレイヤーが消えていく中1人、膝を付き剣で身体を支えているプレイヤー。
「くッ、ティーアスたん…何故…。」
サンラクの背中に乗ったティーアスは答える。
「ごめんなさい。サバイバアル。いくら貴方と言って愛弟子を傷付けようとするなら容赦はしない…。」
「ぐはっ…だが、これも……良い…。」
サバイバアルの身体が塵になって消えていく。
そしてサンラクは4人に付き合わされた。(半ば強制に)
この後サンラクは別ゲーへピザ留学に行ったとか行ってないとか。
―――――――――――――…
ピザ留学END