孤高と孤独。潰すというその真意とは。   作:しるゔぁ

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諦めが悪い奴が勝つ

『………もしもし』

 

《今どこにいるのですか!?これ以上ママを困らせないで頂戴!!》

 

『…知り合いの家です…』

 

電話先は母親だった。自分が死ぬかもしれないというこの状況であれだけ嫌だった家に帰りたいと思ってしまったのだろう。だが自分を縛り付ける母親の声を聞きただけでため息が出てしまう。

 

『帰る前に電話?律儀だね、ナーゴ』

 

『ナズナさん…』

 

『ここでリタイアするつもり?』

 

『理想は叶えたい。だけど、ゾンビになって皆に噛みつきたくない…。でも…死ぬかもって思ったら、家出したいってずっと思ってたのに…帰りたくなっちゃった…』

 

『何でアタシが助けたか分かる?』

 

目を合わせる事なく下を向き首を振る。

 

『まだゲームは終わってない。言ったでしょ、このゲームは諦めが悪い奴が勝つって。ゾンビに噛まれたらライダーになれないわけじゃない』

 

『……え?』

 

『…じゃ、アタシは大会前にゲームを休むわけにはいかないから。第3ウェーブで会えるなら、またね』

 

『……まだ…やれる…って…こと?』

 

去るナズナを見ながら首に広がる傷を触り、少しの希望に期待して立ち上がる。その目にはチリっと腹を決めたのか燃える瞳だった。

 

 

『嬢ちゃんちょっと付き合ってもらうぞ?』

 

_______

 

『……またね…とか…何言ってんだ、アタシは…』

 

_______

 

『祢音ちゃんをどうするつもりですか!』

 

『この子も噛まれてるんだから仕方ないだろー!?俺等に噛みつかれるのも困るしよぉ!』

 

黄金屋が祢音を乱暴につかみ引きずる。対抗しようと景和も祢音の腕を離さない。

 

『バッファローは血の気が多いなぁ!!』

 

奏斗と祢音を地下につれて拘束していた。ナズナが居なくなったことを確認してからやっている様に帰った後に連れてきたのである。

 

『ふん…ただのゾンビ狩りだ』

 

バックルを取り出し変身する。レイズウォーターを片手に祢音に近づくバッファを止める様に景和が飛び出す。だがバッファは本気で狩るつもりなくタイクーンからの攻撃を受けるだけで動かない。

 

《プレイヤー同士の攻撃は違反です。スコアを減点します》

 

『やめておけタイクーン。何故俺がお前にとどめを刺さなかったかわかるか?お前はまだ完全にゾンビになってない。スコアにはならないんだよ』

 

『ふん…。マジになんなよ。ただのジョークだろ』

 

バックルを取り変身を解き部屋から出ていく。景和も変身を解き、俯く祢音の側による。

 

『祢音ちゃん…』

 

『……仕方ないよ。私噛まれてるし…。でも仮面ライダーになれないわけじゃない。だけど勝てる自身も無い…』

 

『…ヴォルクの口癖を知ってるか』

 

『口癖…?』

 

_______諦めが悪い奴が勝つ

 

『ここで諦めるのは早いんじゃないか?』

 

『そうだよ、祢音ちゃん。一緒に頑張ろうよ!』

 

『……少し考えさせて』

 


 

『……よし…付いてない…』

 

必要最低限の荷物をトランクケースにいれて家を出る。デザイア神殿から戻りこの先の事を考えていれば、配信をしていないにも関わらず居場所がバレた。そう、すべての物にGPSが仕込まれていたのだ。

 

『……この家で欲しいものなんて……ッッッ!!』

 

門を飛び越え少し寂しそうに家を見つめていれば、傷の痛みが広がり倒れ込む。だがアスファルトに身体が当たることは無かった。

 

『……猫はあまり過ぎじゃない』

 

『…ナズ、ナ、さん…何で、ここに…』

 

『……気まぐれ。歩けないなら姿変えるから乗って』

 

祢音を背中に乗せて爽快に走る。痛みが落ち着いたのかハーネスをしっかり握り直す感覚が伝わってくる。

 

『そういえば…どうして昼間の事知ってたの?』

 

『…ゲーム配信してるから。ファンはそこら中にいるから情報を提供してくれる。……祢音…も…よく来てくれてるから、ファンも知ってる。……ほら着いたよ』

 

ナズナは足を止め1つの方向を見つめる。

 

『…英寿様…景和…』

 

『祢音ちゃん!大丈夫!?』

 

ついた先には英寿と景和が待っていた。

 

『私は別に用事があるから』

 

『あの…ありがとう…』

 

『…今回のデザグラで唯一の同性だから。情けをかける事は今後は無い。…いいライバルになる事、…少しだけ期待してる』

 

そう言い残して銀の毛並みを靡かせながらまた夜の街に駆けだしていった。

 

『もう、会えないかも知れないな…友達になれたら良かった…』

 

傷に触れながらナズナが消えた方向をぼんやり見ながら少しだけ寂しさを口にする。

 

『ヴォルクの事気に入ってるのか』

 

『気に入ってる…っていうか…うーん…ちょっと酷い事言ってくるけど何処か優しくて。お姉ちゃんが居たらこんな感じなのかなって。ナズナさんはライバルだって言ってたけど…』

 

『ゾンビになればそんな事もすべて忘れる』

 

『うん。だから最後まで戦うよ』

 

『……既に決断はしてた、か。ナーゴ。1つだけゾンビにならなくて済む方法がある』

 

『……え?』

 

『ゾンビになる前にゲームを終わらせる事だ』

 

『そんな事できるんですか!?』

 

『あぁ、ゲームが終わればデバフはすべて無効化されてリセットされるからな』




ゲームが終了するとジャマトによる状態異常はすべてリセットされる。
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