五等分の花嫁五月√   作:katoten

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この話でチューさせて終わらせようとしたんですけど書くのが思っていたより楽しいので続かせます。
この話の短いアフターストーリーも今夜か明日上げます。


第2話

 どうしていいか分からなくなって、思わず教室を飛び出して、がむしゃらに走って。

 

「一体私は……何をしてるんでしょうか」

 

 屋台を片付け始めている生徒達の頭上、夜空に収まりきらない程の星。美しい星と、まん丸に満ちて欠ける事の無い満月を眺めて中野五月は二度大きくため息をついた。

 

 なぜ上杉君が私のところに……全くもって意味がわかりません。

 これではまるで、まるで……上杉君が私の事を………!!

 

 ボッと顔を赤らめ、またまた五月は走り出す。

 

『そいつらが困った事に馬鹿ばかりなんだ』

 

『1人でよく頑張ったな』

 

 走る最中、頭をよぎるのは彼の事。

 

『努力した自分を信じろ』

 

『他人の戯言なんて聞く価値もない!お前の夢だろう?』

 

 私は……もしかして……本当に……

 

 ドンッ

 

「す、すみません!!」

 

 考え事をしながら夢中で走って、知らない人ぶつかってしまって。本当に私は――

 

「い、五月!? 大丈夫?」

 

「よ、四葉!?」

 

 学校の中庭。ぶつかった相手はここにいるはずのない、姉妹の1人だった。

 

「なぜこんな所に!?」

 

「あ、あはは〜 居ても立っても居られなくなって……」

 

「もし上杉君が四葉の所に来ていたら――!!」

 

「来るはずないよ」

 

「な、なんでそんな事……!!」

 

「私のところにはきっと来ない。上杉さんが向かうのはきっと……ううん。もう来たんでしょ? 五月の所に」

 

 全てを見透かした様な目で最愛の姉妹はこちらを見つめている。

 屋台を解体している生徒達の声が耳からどんどん遠くなって聞こえなくなる。

 

「な、なぜそれを!?」

 

「あはは……五月は私の次に顔に出るからね。分かりやすいよ」

 

「す、すみません四葉。決して四葉と上杉君、2人の邪魔をするつもりは――」

 

「謝るのはおかしいよ」

 

「え――?」

 

「誰が選ばれても恨みっこ無しって言ったじゃん」

 

「でも私はずっと四葉を……」

 

「ごめんね……私の恋を手伝わせて、いつのまにか五月の恋の邪魔をしてたみたい」

 

「そんな事は……とにかく四葉、早く戻って――!!」

 

「もういいよ! 私の気持ちより、自分の気持ちを優先してほしい!」

 

 そう言う四葉の目には雫が溜まり始めて、ポタポタと頬に一筋の線を描きながら流れていく。

 

「五月はお母さんじゃない。私にとって1人しかいない妹なんだから……もっと自分の事を考えていいんだよ!」

 

「別に私は――!!」

 

「違うよ。きっと気づいてなかっただけでずっと前から五月は上杉さんの事が――」

 

「見つけたぞ!!!」

 

 言い切る前に後ろの人混みから聞き慣れた声が大きく響いた。

 

「上杉さん!?

 

「う、上杉君!? ど、どうしましょう四葉……四葉!?」

 

 追いかけてきた風太郎。それに気がついて側にいる姉妹に助けを求めようとしたが、四葉の背中は遥か彼方に過ぎ去っていた。

 

「何がぁ……四葉なんだ……」

 

「キャーーーー!!!!」

 

「ブヘアァ!!」

 

 いきなり肩を掴まれたことに驚き、叫びながら振り返った五月の腕が風太郎の顔に当たって地面に倒れ込んでしまった。

 

「う、上杉く〜ん?」

 

「……」

 

「だ、大丈夫ですか……?」

 

「いや、大丈夫……というか好都合だ!!」

 

「へ?」

 

 仰向けに倒れた風太郎を心配して覗き込んできた五月の腕をここぞとばかりに風太郎は掴んだ。

 

「だ、騙しましたね!?」

 

「もう一回聞くぞ五月!」

 

「は、離してくださいぃ!」

 

「五月、お前の返事は――」

 

「――私もわからないんですっ!!」

 

「わ、わからない……?」

 

「確かに私にとってあなたは友達以上の関係と言うのは間違いありません。でも、この胸の痛みやモヤモヤがあなたに対するもの断言できない……」

 

 この気持ちが何なのかまだ自分でもわからない。どうすればいいかもわからな――

 

「っぷ、めんどくせえ」

 

 私の腕を掴むのをやめて大の字に腕を広げて空を仰ぎながら笑った。

 

「な、何なんですかあなたは!! 私は真面目に――!」

 

「経験したことの無いもの、教わったことの無いものわからないのが普通だ」

 

「そ、それとこれは……」

 

「同じだよ。俺もこんなに大真面目に恋愛ってやつをしたのは初めてで、さっぱりわかんねぇ」

 

「ならどうしてっ!?」

 

「お前が好きだって気づいたからだ」

 

「な、なななななな何をいきなり!?」

 

 風太郎の言葉にさらに顔を赤面させた五月はヘナヘナと力尽きたように柔らかい芝の上にへたり込む。

 

「これに気づいたのはつい最近だ。それも一人じゃ分からなかった。分かるはずなかったんだ」

 

「なら……私の……この気持ちが何なのか」

 

  大粒の雫を一筋頬に垂らしながら五月はまっすぐと風太郎を見て言葉を綴る。

 

「……教えてくれますか?」

 

「もちろんだ……これまで通り、分かるまで、何度でもな」

 

 上体を起こしてまっすぐ私の目を見つめて、少しいたずらっぽく笑いながら彼は言う。

 肩の力が抜けた私の手を包み込むように握る彼の手はとても暖かて、優しくて、愛おしい。

 

「ふふっ、よくもまあそんなに恥ずかしいことを長々と言えますね」

 

「言うな……これでも人生で一番勇気を出したんだ」

 

「冗談ですよ。あっ、見てください。……今夜は綺麗な満月ですよ」

 

「………ははっ。まだまだ勉強が足りな――」

 

 ドサッ

 

 呆れた様に言いかけた風太郎のを押し倒しながら五月は優しく微笑む。

 

「今度はそのままの意味だよ?」 

 

 五月は顔を風太郎に寄せる。

 

 ――が、唇と唇が優しく触れ合う直前で動きは止まった。

 

「やっぱり無理ですぅっ!!」

 

 ひどく顔を赤面させながら五月はその場から飛び退いた。

 風太郎も頬を林檎の様に真っ赤に染め上げて、視線をゆらゆらと逸らしている。

 

「と、とりあえず片付け手伝いに行くか!!」

 

「そ、そ、そ、そうですね!!」

 

 どこか照れくさそうに2人は立ち上がり、同じ方向を向いて歩き始める。

 

 頭上には満ち足りた満月が2人を優しく照らしていた。

 

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