「あんた、一体いつからフー君の事が好きだったのよ!?」
「全然気づかなかった……不覚」
「わ、私自身も、何ていうか、気づいてなかったというか……」
学園祭という一大イベントを終えた次の日、タワーマンションヘキサゴンの一室では姦しい声が響いていた。
「五月ちゃんは意外と鈍感だからね〜」
「こんなの認めないわ!!」
「ま、まぁ二乃も一旦落ち着いて……」
「四葉は黙ってなさい」
「落ち着けるわけがない」
「三玖までっ!?」
シュンっとしてどこか小っ恥ずかしそうな五月。囲む様に座る姉妹はそれぞれ多種多様の表情を浮かべている。
。
「まあまあ。良く話を聞いたらまだ二人は付き合ってはいないみたいだし、認められないなら風太郎君と先に付き合っちゃえばいいんじゃない?」
「……!? な、何を言って」
「その手があったわね!!」
「疾きこと風の如く……!!」
「ちょ、ちょっと二人とも――!!」
一花の言葉を聞いてその手があったかと勢いよく飛び出して行った二人を呼び止めようと五月は手を伸ばした。
しかし二人が振り返ることはなく、部屋には一花、四葉、そして五月の三人が残った。
「い、行っちゃった」
「ど、どうしましょう」
「五月ちゃんも早く風太郎君の所に向かったほうがいいんじゃない? お姉ちゃん『達』は本気だぞ?」
固まる四葉とオロオロと狼狽える五月を眺めて、ニヤリと笑いながら一花は言った。
「五月、行こう!!」
「四葉は……いいんですか?」
恐る恐る尋ねる五月に、太陽のように眩しい笑顔を向けながら四葉はグッと腕を構えた。
「もちらんだよ。今度は私が応援する番!!」
「よ、よづばぁ〜〜」
ホロリと来てベソをかきながら五月はぎゅっと四葉を抱きしめた。
四葉は「わ、あわぁあ」と驚いてよろけたがすぐに立ち直してニシシッと笑って五月の頭を撫でた。
「上杉さんは確か……お昼までバイトがあると言ってました!」
「今の時刻は12時過ぎ……二乃達はREVIVALに向かったはずです。急ぎましょう」
「五月ちゃん!!」
二乃と三玖を追って家を出ようとした五月を、後ろから一花は声をかけて呼び止めた。
「……頑張って!!」
声に気づいて立ち止まり振り返った五月を見て一花は笑顔を見せて言った――
※
「ちゃんと、笑えてたかな……」
自分以外誰もいなくなった広いリビングで、机に顔をうずめながらポツリと一花はつぶやいた。
「本当に、嘘だったらよかったのにな」
そう発せられた言葉は、誰に聞かれることもなく寂しく部屋に響く。
ひっそりと頬を伝った涙も、誰に気が付かれる事もなく静かに乾き始めていた。