黒曜石でできた高さ11センチ程の彫像に祈りを捧げる男がいた。
部屋にはその像とパック詰めされた五千円のステーキ肉が供えられていた。
…人型の像には乳房がいくつもあり、感の鋭い者がみれば気味が悪くなるような物だった。
それは2万年も前に作られた漆黒の像。男以外の所有者は血肉を捧げる儀式、生きた人間などを捧げられていた。
だが、今の捧げ物はスーパーで買ったパック詰めのステーキ肉である。
そのなんとも滑稽な儀式()を呆れた様子で見つめる少女がいた。
「毎回思うのだけどお父様に失礼だと思わないのかしら…」
黒い長髪の艶めかしさを感じさせる少女は男を見つつ呟いた。
信仰心だけはやたら高いために、父にして母なる神に気に入られている邪教徒である。
正しい儀式を教えて信仰を辞めるようなことがあっては少女にも被害が及ぶ可能性があった。
噛み合っているようで噛み合っていない信仰を否定し、今の関係を壊したくないという冒涜的な感性を持つ神格らしくない想いもあった。
「いあいあ!しゅぶ=にぐらす!」
男はいつものように真剣な面持ちで祈りを捧げていた。
だが、見るものが見れば神聖な像にパック肉を供える様は、他の信徒からみればノーカンでぶちのめすような絵面であった。
男の名は『今際望』25歳。発達する電子工学によって人類を電脳化し、死で終わらない世界を作ろうとするマッドサイエンティストである。信仰する豊饒の神シュブ・ニグラスに喧嘩を売っているような思想の持ち主である。なお、狂信者の癖に正気度が72もある。
少女の仮初の名は『豊穣実』。男が16歳の頃に遣わされたシュブ・ニグラスの化身パンの娘であり、分類上では外なる神に該当する本物の神である。母体は人間なのである程度の人間の機微を理解できるが、未だに男が持つ全力で明後日の方向な信仰心は全く理解できない。
なお、今日の晩ごはんは捧げ物の肉を使ったステーキであった。神が供物を信徒に与えてくださったという判定らしい。娘である実からすればバチ当たりも大概である思考回路をしている。…ステーキは美味いので文句は言わないが。
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登場人物(六版基準)
今際望(25歳)年収700万円 性別:男 クトゥルフ神話14 SAN72
STR17 DEX13 INT16 CON15
APP16 POW21 SIZ16 EDU19
幼少期に両親を喪い、当時のコンピュータサイエンスに死への克服を見出した男。
9年前高校生の頃に神話体験でシュブ=ニグラスと出逢う。当然発狂し、狂信者になる。
だが、狂信の方向性が既に形成されていたので信仰する神を独自に解釈してしまっている。
現在進行系で真っ当な探索者している狂信者。シュブ=ニグラスと関係ない魔導書を所持しており、今のところ呪文を4つ使える。一つはシュブ=ニグラスの招来/退散。
豊穣実(外見年齢16歳、パンの子にして神格)性別:女(変更可能) SAN該当無
STR18 DEX16 INT21 CON24
APP18 POW70 SIZ16 EDU該当無
豊穣の父であり、母でもあるシュブ=ニグラスの化身であるパンから9年前の事件の際に遣わされた神格。
産めよ増えよ地に満ちよ(邪悪)な神格ではあるが、望の誤った解釈の信仰に振り回されている。
なお、望に邪心があれば世界規模のカルト教団を設立し、冒涜的な儀式によって全人類の精神を汚染していた。
正直、能力で望を洗脳して全うな邪教徒にすることも容易だったが、上位存在であるシュブ=ニグラスに誤解されても困るのでそのまま一緒に生活をしている。
神格なだけあり、当然自然界にまつわるあらゆる魔術が使用可能だが、職業がコンピュータ技師である望には無縁であるのもありほぼ使うことがない。