邪教徒の平穏な日常   作:kohet(旧名コヘヘ)

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父と娘と狂信者

 

今際望は狂信者かつマッドサイエンティストである。

 

自宅兼研究所に他人を入れることは一部の例外を除いてほぼない。

 

16歳の時に信仰対象であるシュブ=ニグラスの娘である豊穣実が来てからはよりその傾向は強くなった。

 

だが、実に粗相があってはならないと嗜好品等は充実していた。故に来客対応は常に万全である。

 

望は未成年でストーカー行為を働いていたリサ・ホルツマンへ再会の挨拶と軽い説教をしてから取り敢えず自宅へ招いていた。

 

 

 

一ヶ月半前に再開した今際望はその時のことを覚えていないようだった。

 

リサは半ば廃人手前がなかったかのようだと思ったが、未だに体に不調があるようだと悟った。

 

心理学65と目星70、医学30で成功した結果、僅かに体の感覚が全快時に追いついていないとリサは見破った。

 

更に言えば飲み物を聞かれたのでコーヒーを頼んだのだが、望は微妙な感覚のズレを気にしているようにも見えた。

 

味に関しては大雑把なリサは別に気にしないのだが、コーヒーに凝る人間は非常に繊細な拘りがあるとリサは父から知っていた。

 

同時に昼を抜いたのがバレたらしく、サンドイッチを出された。夕食の時間を考えて量は少なめである。

 

 

リサは知らないが、最近料理85へ成長した望はさらなる高みを目指していた。85もあれば一流シェフ並の腕である。

 

 

 

リサが落ち着いたのを見計らって望は声をかけることにした。

 

 

「どうしてここが?」

望は今更ながらヘレナが突っかかってきたのを思い出した。

 

不定の狂気の際、見られたかもしれないと思った。

 

アーベル達が自分を誰が病院まで搬送したのか話さなかった。親バカなら隠すかもと思った。

 

 

「…父には秘密にして貰えないだろうか」

リサは今更ながら父親に男をストーカー行為していると思われるのではないかと思った。

 

「ごめん、もう連絡いれた」

望はリサに謝罪した。判断が遅い。

 

リサを見つけた時点でアーベルに連絡をいれ、夕暮れで危ないから一旦家に入れるとだけ伝えていた。

 

 

「ああ…」

リサは動揺を隠さないで声を漏らした。頭を抱えている。

 

友人の久遠達が見ればこんな声を出すのかと驚くだろう。

 

 

「いや、心配しているようなことはないかと思うのだけど」

望はリサがやらかした行為自体は若気の至りというか、無理に隠そうとしたアーベルに非があると思った。

 

 

「今だと仕事のやり取りをしているけど、無人島で突然消えた男とか怪しいから知らせにくかったんだろう」

望はリサとアーベルを慮って言った。実際、望としても実の強制帰宅命令があったからとは言えない。

 

「…今更ながらどうしてあの島にいたんだ?」

リサはそもそも誰もいなかったはずの島に突然現れ、数日過ごして空の怪物を封印し消えたことを思い出す。

 

誰かの通報ですぐに海上保安庁の船が来たらしく『何か』あったのは理解した。

 

だが、根本的になぜあの島にいた理由はわからなかった。

 

 

「端的にいえば、過去改変しようとした奴らに巻き込まれた?」

望は冷静に考えた結論というか推論を述べた。

 

カルトらしき面子をヒプノーシスで記憶を聞き出した際、未来の改変と過去への介入と言っていた。

 

ナチスとか銀の黄昏とか言っていた気がするが、望的には重要でないので大体忘れた。

 

 

「…そんなことができるのか?」

リサは望があえて真実を言うことで誤魔化そうとしたと看破した。

 

あの日、極彩色の空が生命を吸い取る様を見たリサはありえなくもないと動揺を完全に抑え込んだ。

 

 

「…できたのだろうね」

望はリサの質問を否定しないことにした。実際、時空間が滅茶苦茶に入り乱れる体験をした。

 

これ以上踏み込むとリサは危ないが、ある程度は伝えないと引かないと判断した。

 

 

「オカルトというには…些か濃い体験をし過ぎた」

リサは望の返答にある程度納得した。リサは望もわからないので問い詰めても無益と理解した。

 

同時に恐らく本来の歴史では自分達は死んでいたのだろうと確信した。

 

望は言わないがそういう結論になった。リサは他三人には秘密にすることにした。

 

「…」

リサも望もお互い沈黙した。

 

これ以上の詮索は良くないが、かといってどう話を切り出すべきか二人とも迷った。

 

 

そして、

「リサ!迎えに来たぞ!」

アーベルが、社長自ら望の家の前にやってきていた。

 

本業の、まだ業務時間内だよなと望は思った。

 

 

「パパ!?」

リサは父が仕事中に抜け出して来たのかと驚愕した。

 

リサの中の厳格な父のイメージが崩れていく。

 

「あーあ…知らない」

望は親バカが自分から尊敬をぶち壊したのを悟った。

 

同時にそんなに娘を自分と会わせたくなかったのかとも思った。

 

 

 

その後、リサに何かしてないだろうなとむさ苦しいおっさんに壁ドンされたり、リサが父の誤解を訂正しようとして余計に面倒臭いことになったりしたが二人共無事に帰っていった。

 

望はリサに隙を見て渡された連絡先はどうすべきか悩んだ。他三人とも話すのかしないのかも含めて。

 

更にどこからか帰宅した実に洗浄したサイフォンを見られ、来客を悟られて問い詰められた。

 

望はシュブ=ニグラスへの祈りの儀式の際、邪念が漏れ出るのを必死に堪えた。

 

後一週間、完治するまで外に出ないと望は自分自身へ誓った。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

登場人物

今際望

何かひたすら疲れたので療養を言い訳にして基本的に休むことにした。

 

アーベル・ホルツマン

親バカで頭がパーになり、帰宅した後猛省した。なお、娘からの尊敬をやや失った。

 

リサ・ホルツマン

自分を認めた上で話してくれたという望の対応は現在のリサにクリティカルだった。

望が父が色々隠す理由も含めてフォローしていただけに最後の行動で父への尊敬が減った。

 

豊穣実

別に自分がいない間に誰を連れ込んでいても構わないが、何かイラッときたので追求した。

最近は黒子さんと追いかけっこしている。なお、流れ弾=死。

 

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