邪教徒の平穏な日常   作:kohet(旧名コヘヘ)

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マッドサイエンティストと有識者会議

 

今際望は外なる神シュブ=ニグラスの狂信者にしてマッドサイエンティストである。

 

そして、主にコンピュータ技師として働く個人事業主の探索者でもある。

 

豊穣実がやって来た16歳から現在まで9年間学業や研究と同時並行で働いている。

 

常識的に考えて神である実と同居して一般的な就職、研究所等に勤めることは無理である。

 

それ故に比較的自由な個人事業主としての将来設計を立てていた。

 

 

人類の電脳化という研究を個人で進めているので殆ど進んでいない状況である。

 

望としては焦りはあるが、研究は引き継ぐという選択肢もある。望は信仰を優先していた。

 

 

現代日本に住む望はシュブ=ニグラスの信仰をほぼ自分だけで完結していた。

 

他の狂信者が神からの恩恵を望んだりする中で信心深いが無欲な存在である。

 

望の敬虔な姿勢を見てシュブ=ニグラスは呪文を教えたり、豊穣実を派遣したりしているので第三者から見ればかなりの恩恵を得ているのも間違いではない。

 

最も、望の願望とはほぼ無縁な恩恵であり、望は神からの恩恵を利用することは殆どない。

 

呪文を使うのも自己防衛の延長であり、他者から魔力を積極的に奪うという意思はなかった。

 

アドゥムブラリに対して初めて『アザトースの呪詛』を使用した。9年間未使用であった。

 

 

今際望はシュブ=ニグラスの信者だが、一般的な狂信者とはかけ離れていた。

 

望は自己解釈している範囲内では常識的な行動をする善良なる探索者であった。

 

 

 

今際望は優秀なコンピュータ技師である。コンピュータ91、電気修理72、電子工学65、物理学75等の技能値がそれを表している。

 

その能力は界隈でも有名であり、数多くの企業からスカウトがあるが断り続けている。

 

滅多に人前に顔を出さず、メディアへの露出もない今際望は架空の人物であるとよく勘違いされていた。

 

 

 

その日、望は最近多発するクラッカーに関しての有識者による対策会議に参加していた。

 

 

公的機関が行う会議であり、企業も関与した公開生放送でもある。

 

顔は出さないという条件付きであるが、望は参加していた。

 

 

望としても研究をクラッキングされでもしたら問題なので対策の状況を知りたかった。

 

外部との接続が一切ない状態で保管しているのだが、最近多発するクラッキングに関しては既存の常識が通用しないものだった。

 

 

「最近のクラッキングの大半はInteligent Difference Engine 2.0で遊んでいるのだと思います」

望は自身へクラッキングを仕掛けてきた奴らの情報を開示して説明した。

 

モラルがどうこうよりもそもそもの原因を話す奴がいないので望はとっとと話を原因に関して持っていった。

 

 

だが、

「異議あり!…それは特定の企業に対する中傷行為です。取り消してください!」

対策会議に参加する国会議員である中肉中背の中年男性が望に対して訂正を求めた。

 

望が指摘したのは多国籍企業の通信機器であり、国会議員が国に取り入れるようにアピールしていた。

 

 

「IDE2.0は従来の数十倍の通信速度、安価・小型で安全と信頼性もあります!」

国会議員は望から与えられた印象を取り除こうと必死になっていた。

 

 

同時中継のネコネコ動画等では『必死で草』『利権確保にやっきだなww』等のコメントにあふれていた。

 

 

「いや、だから性能が悪いとかは言っていないですよ。良い物は悪用されるのが常…いや、普通に怪しいから国等では控えた方が良いと思いますよ」

望は国会議員へ一応忠告することにした。伝わるかは別として。

 

IDE2.0は間違いなくある種の人間への精神汚染がある。人類よりも強大な何かが干渉しているとしか思えないのだ。

 

 

『言いやがったww』『誰よこのヤベェ事ガンガン言う奴は…』『IDE2.0使ってた俺の友人がおかしくなって失踪したんだよな』『←アンチ乙、お前みたいなのが陰謀論にハマるんだよww』

動画のコメント欄は加速した。望は同時中継で読み取れる内容から失踪までするとなると本気でヤバいのではと推測が真実味を帯びてきたのを悟った。

 

 

「話にならない!おい!こいつをつまみ出せ!!」

国会議員が警備に向かって望を放り出すように言った。呼んで置いて滅茶苦茶であった。

 

 

「あ、あの、こ、この人がこの中だと凄い人なんでそういうの、辞めてほしいかな?って思うんです」

とある有名大学の電子工学の権威である女性博士が国会議員の狼藉を止めようとした。

 

博士は個人で裏で表で活躍する存在である今際望本人と出会えて喜びもあったが、真面目にいないと話が進まないのもあり困っていた。国会議員等が相手では自分では弁舌で押し切られそうだった。

 

 

「イケメン無罪ですか、昨今のポリコレに反しますよ」

コンピュータ掲示板の配慮された管理運営で有名な中年女性は博士の言葉を遮った。

 

顔面偏差値で誹謗中傷する輩を野放しにしていいわけはない。

 

 

『イケメンなのか、この牛男…』『このオバハン、顔の評価だけは一流やで』『差別主義者が一番差別に煩いの草』『でも、牛男しかまともに情報出してなくない?』『イケメンはギルティ』

動画のコメントが荒れてきた。関係ないところで盛り上がっていた。

 

なお、望の名前と顔は隠すようにしており、ネット上では牛の顔を貼り付けていた。

 

望は女性博士の顔と名前を覚えた。

 

この中で一番頭が良いというか望よりも電子工学に関しては上であると判断するには十分だった。

 

 

「荒れて来たので帰りたいと思います。…確かにバベッジ・インコーポレイテッドに対して不確定な要素での発言でした。そこに関しては謝罪したいと思います」

望は他にも止めようとしてくれる人物がいることはわかったので、後日私的にコンタクトを取ることにした。

 

有識者会議というが、どう考えても場違いな人物がいてしかも声が大きかった。

 

 

だが、ここにいる面々の中には会議に集められるだけある優秀な人物も多い。望はそれを得ただけでも収穫だとしてそのまま席を立ち帰った。

 

 

なお、後日この場面だけ取り上げて動画サイトで議員達はネットの玩具にされるようになった。望の途中退席は帰れと言われて本気で帰る奴がいるか等賛否両論であった。

 

ちなみに望的にはほぼボランティアに等しい参加であるので問題ないと思っている。

 

 

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