邪教徒の平穏な日常   作:kohet(旧名コヘヘ)

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大英帝国の闇医者

今際望は狂信者、マッドサイエンティストである。

 

狂信者である彼は定職についておらず不定期の収入で年収700万円台は稼いでいる。

 

きちんと国民年金や医療保険にも加入している。だが、深淵を覗いた者である以上、人には言えない怪我をすることがある。それ故、闇医者に治療して貰うことも多々あった。

 

同居している神である豊穣実は治癒や癒しといった魔法を使うことができるが、畏れ多いと望は頼ったことがない。

 

望は薬学1初期値である。オカルトやクトゥルフ神話技能で作成できる薬でも薬学技能がないため、ファンブルを出す可能性が高かった。

 

そして、その行為は法律的にアウトゾーンだった。望としては闇医者に治療して貰う他なかった。

 

望も一応、医学44持っているが、適切な医術を持つ者に見てもらえるのならばそれにこしたことはない。

 

 

「おーい、ヘレナさん生きてる?」

望は家事5の人間的にも社会的にも駄目人間を思い出し電話をかけた。

 

電話の直前に凄まじく嫌な予感がしたが、望は卜占など未来を占う魔術をまだしらない。

 

「あー…はい。生きてます」

望からの電話に対して、ヘレナと呼ばれた女性は生きるために覚えた東洋の言葉で生返事をした。

 

望の電話の相手の名はヘレナ・ノートン。1893年ヴィクトリア朝時代のイギリスからタイムスリップして帰れなくなったイギリス人である。

 

父の影響で医学の心得があり、ポナペ教典やアバダンのカルトの巻物等の魔導書を読んだ経験や事件に巻き込まれた経緯もあり神話的事象への対処も心得ている。

 

下手な医師よりも実地で学んだ経験があるので裏で有名な闇医者になってきている。

 

「んー…あー…」

時計が昼の12時を指しているのを確認したヘレナはボーとしたまま腹が減ったのを確認した。

寝そべった状態でアメリカから輸入された安売りのシリアルチョコバーを探す。

 

…ない。ヘレナは死を直感した。金はあっても食べ物がなければ人は死ぬのだとヘレナは知っていた。

 

「…ちょっと隣の事務所に行ってきます」

ヘレナは元の時代から共にある300口径ライフルを手に取り、隣のヤクザに押し入り強盗することを決めた。

どうせろくでもない連中である。もし、生きていたら治療費を前払いで用意させる。

 

私が生きるために死ね。ヘレナは隣のヤクザの処理方法を考えていた。東京湾はヤクザの聖地である。

 

「ご飯ないなら作ってあげるからやめなさい」

望はガチの犯罪者の思考を電話越しの心理学で読み取った。

 

どこにいるかわからないが、犯罪者なら殺しても良いという思考だ。

 

犯罪者でなくても気分で殺しにいく。そんなヘレナ・ノートンの正気度は90である。

 

ヤクザの事務所が隣にある空きビルまでやってきた望は作ってきたお弁当と保温ポットにいれた味噌汁を野蛮人に食べさせた。

 

「…落ち着いた?」

望はヘレナの様子を見て、なんでこいつと知り合いになったのだろうかと思った。

 

「臭い汁ですが、やはり空腹は最高のスパイスですね!」

ヘレナは空腹を満たされたので機嫌よく望を罵倒した。

 

実際、味噌汁の臭いはヘレナには中々馴染まないものであった。

 

「私は患者なので、とっとと治せパツキン」

望はキレた。呪文でもなんでもいいから治してもらって帰りたい。

 

 

「褒めたのに酷い男ですね。ロリコンというのでしたっけ?」

23歳APP17という己の顔面偏差値を理解しているヘレナは望に嫌味を言いつつ、治癒の魔術で治すことにした。

 

オカルトと科学が混ざっていた時代、ヘレナ・ノートンは魔導書ではなく魔法を使う現地人から直接魔法を学んでいた。

 

ヘレナの正気度が89になり、望の本来ならば手術が必要な負傷は完全に治癒された。

 

「よし、帰るか」

望は罵倒のレパートリー豊富になってきた外人にキレた。

ついでに謝礼は口座にでも振り込めばいいと真剣に関係を断つことを考えた。

弁当だけ片付けてとっととこの場から帰ることにした。

 

一方、

「…結構持ってますね」

ヘレナはスリ70の早業で望の財布を盗んだ。

望の複数ある連絡先をメモし、弁当を片付けている間に五万円程抜いて望に財布を戻した。

 

ヘレナは望のところにいる邪悪な存在と関わりたくない。

 

だが、自分の経歴を知るほぼ唯一の存在である望と関係を絶ちたくはない。

 

だからといってレディに対して失礼なので自分から態度を改めるつもりはさらさらなかった。

 

後日、望はヘレナの口座に謝礼から五万円引いた額を振り込んだ。邪智暴虐な知り合いだが、見捨てると孤独になるかもしれない。そう思うとなんだか惰性で関係を継続していた。

 

 

帰ってきた望に対し、実は共依存気味な関係を続ける望を上位存在として叱りつけた。

 

その通りなので望はしばらく落ち込んだ。

 

 

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登場人物(6版基準)

ヘレナ・ノートン(23歳、英国人)SAN89 クトゥルフ神話8

STR9 DEX14 INT17 CON14

POW17 SIZ13 APP17 EDU17

ヴィクトリア朝ロンドン出身。犯罪界のナポレオンが引き起こした時間転移事件に巻き込まれて一人だけ帰れなくなった。

ライフル技能カンスト、回避80に加えてオカルト魔術が多数使える。

貯めておいた魔力を使うことで格上殺しも可能だが、流石に神格くらい絶望的な差があると無理。

望の家に住み着いている外なる神と関わりたくない。他方でタイムスリップを経験していた望くらいにしか経歴を話せない。望相手にはかまってちゃんと化す。

 

望も両親を喪った頃の自分を思い出すのでかまってちゃんに構うので外なる神はキレる。

 

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