クロム先生の説教回です。
「おい、帰還したぞ……取り込み中か?」
俺たちがペレジアへの潜入任務から帰還してすぐ目にしたのは、腕を組んで仁王立ちしたクロムと、その前で小さくなって正座しているルフレだった。
「おお、ガイア!サーリャも!良かった、怪我はないか?」
「ああ、驚く程すんなり済んだよ。相手の士気に助けられたな。
……で?ルフレはどうしたんだ?」
俺たち二人に密令を出して、ギャンレル以外の血を流すことなく戦いを終わらせた作戦の立案者。
いつものコイツなら飛び跳ねて帰還を喜ぶかと思ったが……
「ぐずっ…ガイア、サーリャ、おがえりなざい……」
おーおー、顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。
「ちょっと……何ルフレのこと泣かせてるの?殺すわよ」
「落ち着けサーリャ。ひとまず報告からだろ、今大丈夫か?」
報告と言っても、道中特に問題もなく作戦は完了したのですぐに終わった。
最後のギャンレルとの戦いも、ルフレが気を引いている隙にサーリャが魔法で強襲、怯んだところに俺が追撃して終わり。
撤退時なんて俺たちへの報復どころか、戦いが終わった事への安堵で雰囲気が明るくなっていた。ギャンレルの暗君っぷりがよく分かるな。
で、この報告を受けた上でクロムからルフレへの説教が再開した。
「いいか?俺は別に、俺に無断で二人を動かしたことに文句はない。
作戦の安全性も十分取れていたようだし、実際二人には怪我もないしな。
だがな、俺は、お前が、無断で、俺より前線に出た事に怒っているんだ」
「だ、だってぇ……二人に一番危険な役目を押し付けたのはあたしだわ……
それならあたしだって矢面に立つべきじゃない…!
あの場面で戦場全体の気を引こうとするならアレが最善だったわ!」
「気を引くというなら聖王代理である俺の方が適任だったと思うが?」
「そ、それは、でもぉ……」
淡々としてはいるが、メチャクチャキレてる。
サーリャは初めこそクロムへの恨み言を呟いていたが、ルフレが無断で最前線に出たのを聞いて手のひらを返したらしく静観の姿勢だ。
「あー、クロム?ルフレは俺たちの安全の為に作戦の隠密性を高めようとしてくれたんだ。
内緒にされてたのが気に食わないのはわかっ「そこは気にしていないと言っているが?」
……そうだったな」
ルフレの目が「見捨てるな!」と訴えている。見なかったことにした。
明らかに秘密にされたことを根に持っている。
そこを表立って糾弾出来ないから、余計に怒ってるらしいな。
「お前が優れた軍師なのは理解している。勿論今回の作戦なんてお前以外の誰が考えてもここまでの結果にはならなかっただろうさ。
姉さんの意志を汲んで、無益な血が流れないようにとここまでやってくれたんだ。
だがな、お前は前衛じゃないだろう。前線に出るのは俺の仕事だ」
「な、何の説明も無しに貴方を最前線に出せるわけないでしょ!
貴方自分の立場分かってるの?クロムとあたしなら前に出るべきはあたしだわ!」
「立場?倒れられて困ると言うなら軍師のお前も同じだろう!」
「あたしだって剣くらい使えるわよ!魔法だって扱えるんだから!クロムより対応できる幅は広いもの!」
だんだんヒートアップしていく言い合い。
天幕の入り口には野次馬が大勢駆けつけてきているが、二人とも気が付いていないらしい。
…というか俺たちのことも忘れられているんじゃあないか?
「貴方の半身になるって言っておいて秘密にしたのは悪かったわよ!
けど、あたしが一番役に立てるのは戦場だわ!
あたし、あたしは、それ以外じゃ役に立てると思えないもの!
あたしが動けなくったって指揮は出来る!
クロムが怪我するくらいならあたしが囮だってなんだってやってやるわよぉ!」
「戦場以外で役に立てない?お前はこれから俺の隣に立つことになるんだぞ!
そんなに言うなら今後一切戦場に出るのを禁止するからな!」
「なによそれ!あたしにお城のお姫様にでもなれっていうワケ!?」
頼むから、他所でやってくれ。
珍しく俺とサーリャの考えが一致した瞬間だった。
この後メチャクチャ告白した。