【運命を】半身を愛でるスレ【変える】   作:レムフィ

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かわいそうな皇女さまのおはなし





幕間:ある皇女のはなし

 

泣きじゃくる御母様の腕に抱かれていた。

これが私の中で一等忘れられない思い出です。

 

分厚い雲に覆われた空の下、血塗れの御母様の腕に抱かれていました。

いえ、あれは抱かれていたというより、縋りつかれていたのでしょうね。

 

言葉にならない嗚咽の合間に引き攣った喉で御父様の名を繰り返す御母様。

けれど幼い私はどうしたらいいのかなんて分からなくて、ただ御母様の背に腕を回すのが精一杯でした。

 

御父様が、泣いている私によくそうしてくれていたので。

 

 

後から聞きましたが、その日こそが。

御父様と自警団の皆さんが御母様を置いて逝ってしまった日だったのです。

 

皆さんは軍師である御母様に全てを託して、文字通り命をかけて御母様を守り抜いたのだと。

 

その日から御母様は、時々みんなから隠れるようにして泣いていました。

廃墟の隅で、崩れ落ちた城壁の影で。

みんなも気が付いていたけれど、その事には触れませんでした。

 

御母様は、私たちの前ではいつも笑顔でした。

私たちに心配をかけぬよう、少しでも明るく振る舞っていてくれたのでしょう。

けれど、私たちはみんな。その笑顔が引き攣っていたのを知っていたのです。

 

御父様が居なくて。私以外は両親とも居なくなって。

御母様だけが、私達の拠り所だったのです。

それを壊したくなくて、幼いながらにも必死でした。

 

御母様が居れば、怖い屍兵も恐ろしくありませんでした。

御母様は私たちに、一人で戦う術を与えてくれました。

御母様は、私たちの知らない御父様と自警団の皆さんの話をしてくれました。

 

マークが産まれてから、いくらか歳を重ねた後、御母様は突然姿を消してしまいました。

 

勿論みんなで探しました。

ですが10に届くか届かないかの子供達です。

ましてや幼いマークを抱えて、何処へ消えた御母様を見つけ出すことなんてできませんでした。

 

私は一番お姉さんだったので、その日からは私が御母様の代わりに皆を纏めるようになりました。

幸い、御母様の授けてくれた力は生き抜くための力でした。

その力のおかげで、僅かに生き残っていた人々と協力することが出来ました。

私たちはあの絶望の未来を乗り越えることが出来たのです。

 

 

いえ、乗り越えたというのは可笑しいですね。

私たちは結局、あの邪竜を滅ぼすことが出来ずに逃げ出したのですから。

 

私たちが今ここに居るのは、この時代に送り届けてくれた聖竜ナーガ様と、あの未来を耐える力をくれた御母様のお陰なんです。

 

御母様は、きっと、自分が長くないことをわかっていたんです。

それでも、その短い間でわたしたちに残せるものを授けてくださったんです。

私の、大切な、お母さま、なんです。

 

 

だから、だからどうかお願いです。

"それ"以外なら、なんだってこなしてみせますから……。

 

 

 

私に、お母さまを、殺せだなんて、言わないで……。

 

 






邪竜に育てられた子供達は、そうと知らずに邪竜を討伐せんとするのです。

ちなみに泣いていたのは屍王にしたクロムを見るたびに色々な感情が抑えきれなかったからです。
ただの情緒不安定。
引き攣った笑みは思ったより子供達が可哀想な状態になっちゃったから。
罪滅ぼしに丁寧に育てたので原作よりも強化されてる。
自分で滅ぼした世界に絶望なんてするわけないので。

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