対消滅〜帰還のあたりの話です
みんなの愉悦部ルフレを諦められません
みんなの追走いつまでもお待ちしています♡
『こんな悪い女のコト忘れて……貴方は幸せに生きて!』
それが、ルフレの残した最期の言葉だった。
ギムレー……いや、未来の己自身と共に死ぬことを選んだアイツ。
この世界の未来の為に、自らを犠牲に選んでしまったアイツ。
……こうなることは分かっていた。
だからこそ神竜ナーガにこの可能性の話を聞いた時から、俺はルキナと秘密裏に手を組んだのだ。
放っておけばルフレはギムレーと死ぬことを選ぶだろう。
そんな事、到底許せるわけがない。
しかしギムレーを封印すればルフレは己を責め続けるだろう。
自分の命一つで、世界を脅かす邪竜を滅ぼせるとして。ルフレがその選択肢を選ばないはずがないのだ。
もし、それが成されなかったとしたら。何十年何百年先になるかわからない脅威を自分の責任だと言って、自分の罪だと背負いこむだろう。
アイツに己を軽んじる悪癖があるのは、自警団に属する人間なら全員が知っている。
俺の妻として、イーリスの王妃として。そしてルキナの母としての立場でもその天秤が傾けられないほど、アイツが背負わされた運命は、"未来"は重かった。
──ギムレーが自殺を選べば、と神竜ナーガは言った。
普通に考えれば、そんなことはありえないだろう。
だが、その『ありえない』とは本当にその通りなのか?
ギムレーはルフレの身体を器として覚醒し、俺達を殺した後に残されたルキナ達を育てたと言っていた。
奴は子供たちを配下にする為だと言っていたが果たしてそれは本当なのだろうか?
マークこそ奴に着いてしまったが、他の子供達は皆ギムレーに剣を向けた。
ルキナの話を聞くに、子供達の養育環境は(絶望の未来であることを加味すれば)十分に整えられていたようで、きちんと親としての責務を全うしていたのだ。
そう。俺達が死んだ後、一人でマークを産み、子供達を育てあげた。
世界を滅ぼす邪竜が態々そんな回りくどいことをするのか?
ここまで回りくどい手を打つならば、子供達全員に刷り込みなり洗脳なりしていたのでは?
死体を屍兵として即戦力にできる存在が、何年もかけて子供達を普通に育てる理由とは?
ほんの僅かな欠片かもしれないが、ルフレとして生きた記憶が邪竜に『人間らしさ』を与えていたとしたら。
ギムレーにも、人並みの"情"があるのではないか?
策とも呼べないような、あまりに暴力的な手段ではあるが……ギムレーが自ら死を選ぶまで、痛め付けてしまえばいい。
ルフレの決意を踏み躙ることなのはわかっていた。
姉さんの想いに泥を塗ることなのもわかっていた。
それでも、アイツを失うことになるくらいなら。
俺はなんだってやってやる。例え、お前を裏切り傷付けることになったとしても。
ギムレーを殴った感触を一生忘れることはないだろう。
中身がどうあれルフレと同じ顔を、自らの意思でもって殴り続けたのだ。常人であれば明らかに致命的なほど、何度も、繰り返し。本気の力で殴りつけた。
ルフレを救いギムレーを殺すための選択肢だ、後悔はなかった。
……無かった、筈なのだが。
この選択が俺とルフレの絆に亀裂を産んでしまったのではないかと、俺のせいでルフレが"ああ"なってしまったのではないかと、思ってしまう。
『幸せを願っています、また逢う日まで』
アイツは、俺との絆を信じてくれていたのに。
帰って来られる"かもしれない"という、軍師としてのアイツなら絶対に避けていた不確定要素を選択したのに。
犠牲になんてならないと俺に嘘をついてまで、俺の未来を案じてくれていたのに。
残された書き置きとは反対に『忘れて』と最期に言ったのは、言わせてしまったのは、アイツのことを信じきれなかった俺の罪だ。
眠りから目を覚ますと部屋の中には誰もいなかった。
俺の自室なのだから当然ではあるのだが、今までは隣でルフレが眠っていたのでどこか落ち着かない。
未だ慣れない喪失感を振り払うおうと、まだ眠気の残る頭を振って起き上がる。
寝起きの俺をルフレが大笑いして以来、日課となった身嗜みの確認をする。
ルフレが勝手に設置した鏡を見れば、久方ぶりに目の隈が取れていた。最近では珍しいことに深く眠ることができたらしく体調も悪くない。
今までならまだ眠り込んでいるルフレを起こしていたところなのだが……。俺がこんなに感傷的になるなんて、それこそアイツに笑われる。
窓の外を見遣ると、既に日は高く昇っていた。
……この日の高さは確実に寝過ごしている。後でフレデリクに小言を言われるかもしれないな。
軽く溜息をつくと、不意に扉の向こう側から遠慮がちなノックの音が聞こえてきた。
「……あの、起きてます?」
聴き覚えがある声なのに聴き馴染みのない話し方。
「ああ、ちょうど今起きたところだ。」
伝わらないと分かっているが、なるべく優しく声をかけてから扉を開ける。
そこには、俺の半身が立っていた。
「よかった、クロムさんがいつまでもお見えにならなくてみんな心配そうだったんです。朝ごはんには少し遅いかもですけど、お食事お持ちしましたよ!」
俺への接し方や呼び方、話し方こそ違うが、クロッシュの乗ったワゴンを手で指し示す仕草は見慣れたもの。
今日の朝ごはんも美味しかったんですよ、とにこやかに語る姿はやはり俺の知るルフレで間違いない。
「そのまま中に運んでくれるか?」
意識してゆっくりと話しかける。
扉を大きく開けて手で誘導してやれば、意図を察してルフレが部屋に入ってくる。
改めてルフレを拾った日から、早一月。
記憶どころか言葉も置き忘れてきたアイツは、初めはそれはもう取り乱した。
俺の名前を呼んでおきながら、差し出した手を振り払われた時は正直かなり傷付いたが……ルフレが帰ってきた、俺にはもうそれだけでよかった。
頭を抱えてうずくまるルフレを無理やり抱き上げて城に帰り、すぐに仲間達に説明し医者を呼び付けた。
記憶の欠落に、幻聴と失語。
医者は原因不明と言っていたが、十中八九ギムレーの影響だろう。
元々ギムレーの器として生まれたアイツが影響をどれだけ受けていたのかは未知数だ、これくらいで済んで良かったと思うべきなのかもしれない。
失語と言っても俺達の言葉を聞き取る、読み取る事ことが出来ないだけでルフレからの意思表示に問題が無かったのも幸いだった。
初めこそ泣いて暴れての大騒ぎだったが、今ではすっかり落ち着いて城の中ならほぼ自由に行動出来る様になった。
記憶にあるよりもどこか幼い立ち振る舞いだが、手を伸ばせば届く場所で、笑顔を振りまく彼女が愛しい。
無意識のうちにルフレへ手を伸ばす。しかし、その手が彼女に届くことはなかった。
「ッ!」
気が付いたルフレの表情が強張る。
伸ばした俺の手から逃れるように一歩後退り、怯えた目でこちらを見ていた。
「えと、あの、ごめんなさい……あたし、ビックリしちゃってつい……」
ルフレの謝罪の声がどこか遠くに聞こえる。
……分かっていたことだ。ルフレは、俺に怯えている。
「……いや、気にすることはない。今のは俺が悪かった。」
ちょうど良い高さにあるからとよく頭を撫でていたのが遠い昔に感じる。彼女に触れるどころか、こうして同じ空間にいることすらルフレの負担になっているのかもしれない。
ルフレは何かを言わねばと思ったのか、口を開きかけたが結局何も言うことなく閉じられる。
申し訳なさそうな顔で俯く姿にズキリと胸が痛んだ。……俺は、こんな顔をさせたかったわけではないのに。
ルフレが俺たちの言葉を受け取れないのは、きっとさいごに見せてしまった俺の裏切りのせいだ。
ルフレのためを思えば想うほど、俺はルフレの負担になってしまう。
どこまでも、俺は無力だった。
愉悦部渾身の誘導により湿度マシマシ。誰だよコイツってレベルにしたかったんですよね
知らない男に粘着されたら誰だって怯える、そんなことにすら思い至れない
身を引きそうに見えるかもしれないけど抱いたら一発で堕ちるから安心してください