イッチの偽名はモイラです 運命の女神を名乗る不届者がよ
「アタシ達、上手くやれていると思ってたんだけどな。
荒れ放題だった国だって整備したし、イーリスとペレジアの溝だって随分と軟化したわ?先のヴァルムの件でも貴方への支援は忘れなかったし……
ねえ、どうしてそんなに怖い顔してるの?」
「ルフレに、何をした」
「何って……少し思い出してもらっただけよ?ルフレがどんな所でどう育ってきたのか……だって、なんにも覚えてないって言うんだもの」
「……とぼけるな、サーリャから聞いている」
「あら、最近見ないと思ったら。知っているのにわざわざ聞くなんておかしな人!貴女もそう思うわよね?」
にこにこと微笑んでいるルフレの肩を抱く、最高司祭モイラ。ルフレの姉を名乗った彼女が、ルフレと瓜二つの笑顔で言葉を紡ぐ。
「あの娘はどこまで知ってたの?貴方はどこまで教えてもらえた?例えば〜、この子のハジメテの」
言葉を遮るように、クロムの剣が向けられる。
モイラの喉元に一切の躊躇いなく突き付けられた刃と、油断なく相手を見据える彼の眼は明確な殺意を滲ませていた。
「へえ?剣、抜いちゃうんだあ……人払いしてあげたとはいえ、此処がペレジアの王城なの忘れちゃった?」
「ルフレを……俺の半身を返してもらう」
「あはは!双子の姉を差し置いて半身?その上他国の王様を『返せ』なんて、随分と俺様なのね!その血の気の多さはお父様譲りなのかしら?
──そも、コレから手を離したのは貴方でしょ」
あと数十センチもクロムが剣を動かせば、モイラの頭は胴体から落ちるだろう。
押し当てられた刃は彼女の首の薄皮を裂き、じわりと血を滲ませている。
目の前の人間に、命を握られている。そんな状態だというのにモイラはクロムへの嘲りをやめない。
「イーリスの新しい聖王様は酷い人ね!せっかく貴方のお姉様が命を賭して平和を説いたのに、貴方の半身が覚えてもない祖国に身を捧げて平和を成したのに、それを踏み躙ろうって言うんだもの」
「ふざけるのも大概にしろ!踏み躙ったのはお前達だろう!
ここでお前を殺してでも、ルフレはイーリスへ連れて帰る!」
モイラの首を断たんとクロムが踏み込もうとした、その瞬間。ずっと笑みを絶やさなかったルフレが、クロムに切り掛かった。
その顔に、笑みを貼り付けたまま。
「ありがとうルフレ、お姉ちゃん助かっちゃった!」
ドレスを翻しモイラとクロムの間に割って入ったルフレが、一向に構える様子のないモイラを忠実な騎士の如く背に庇う。
「ううん、お姉様。わたし、当然のことをしたまでよ。この人、お姉様に酷いこと……殺すね?」
「あら、いいの?」
「ルフレ!俺のことがわからないのか!?」
「…………誰だか、わからないけど、お姉様に剣を向けたんだもの。それに……この人のこと、ずっと殺したかった、気がする……?」
悲鳴染みたクロムの呼びかけを歯牙にもかけず、にこにこと人当たりの良さそうな笑顔のままサンダーソードを構えるルフレ。
剣を構えたことでドレスに覆い隠されていた手脚が晒される。白い肌にありありと浮かぶ夥しい傷痕。剣を握る手は指が数本欠けていた。
表情こそ笑顔を形作ってはいるものの、その眼は酷く澱んでいて。クロムが聞き及んだ“彼女への仕打ち”が、氷山の一角であったことを示唆していた。
「ルフレやめろ!俺は、お前を助けにきたんだ!」
「助ける?なんで?わたししあわせよ?お姉様とマークがいるもの、そろそろマークのご飯の時間だし……死んでよ」
顔こそクロムの方へ向けているが、その目はクロムを映していない。そんなルフレの影で、悪魔が笑う。
「過去の記憶がない上に今の支えも失って、未来に希望も無くて……思った以上にあっさり壊れちゃった。
だからね?入念に擦り潰してアタシ好みの女にしてみたの!
残念だけど、もう貴方のことなんてわからないわよ?」
くすくすと笑うモイラと、形だけの笑みを貼り付けたルフレ。
……思わぬところで知り得た『マーク』の情報と、ルフレの現状。
目の前で嘲り笑う女への憎しみが、壊れてしまった半身への後悔が、何も気が付けずにのうのうと過ごしてきた己への怒りがクロムを蝕んでいく。
「ふふっ、その表情とっても素敵だわ!
その顔に免じて、尻尾巻いて逃げ帰るならこの場の事は不問にしてあげる!
女一人と、国家間の戦争……どっちの方が『重い』かなんて聖王様なら理解るでしょ?
──認めなさい、貴方は判断を誤ったの。
そんなに大事だったって言うなら、首輪でもかけて繋いでおけばよかったのに!バカな人!」
Q.クロムなんか悪いことした?
A.もちろんしていない。イッチとルフレ以外に罪はない。
Q.時系列どうなっとんねん
A.クロム婚約→イッチが即ヴァルムの船出す→即屍島。
エクセライ経由のイッチ介入で予告期間を設けたことにします。
(ルフレにペレジアで子供産ませたかったので)
Q.このルートのマークは?
A.マーク君は記憶喪失の軍師としてクロム達に拾われてる。
(子世代はルキナの弟であることを知っているが、ややこしくなるので黙っている。)
ペレジアで産まれてるのはマークちゃん。一回だけ屍王貸してあげた。
Q.ルフレ抜きでヴァルム攻略?
A.事前に作った作戦ノートと強化版子世代が居るので勝ち。
Q.ペレジア整備する必要なくね?
A.クロムに壊させるために必要。
Q.ルフレの中身は結局どうなった?
A.本当に潰されました。女は壊れてる方が可愛いので。
Q.この後どうすんの?
A.知らん、そんな事は俺の管轄外だ。