ようこそデータ至上主義の教室へ   作:あもう

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第0章
真っ白な牢獄


突然だが、今から俺が出す問いについてYESかNOで答えて欲しい。出来れば理由付きで。

 

 

 

問い:異世界転生は実在する事があるか否か。

 

 

 

昨近では異世界転生俺TUEEEE系は空前絶後の大ブームを迎えている。例えば自分のゲームのアバターに入って魔王になっている作品、例えばスライムに転生して建国する作品等、数え切れないほどの作品がこの世にある。

 

 

だが多くの人間にそれは実在するかを聞けば恐らくは大半の人間がNOと言うだろう。中には本当にワンチャンを信じてる夢と希望に満ち溢れた子供達やオッサン達も居るだろうが普通の人は架空の出来事であると、それが常識だと思っている。

 

 

 

事実、過去の経験則に基づいて言うならそう判断するのも致し方無い事だとは思う。子供の頃俺たちが信じていたサンタクロースなんてものは普通に親だったし、イタリア戦を96回繰り返しても影山は手に入らなかったし、ニワトコの杖なんてどこにも無かった。

 

 

そうして大人達の優しい嘘に慣れてしまってるうちに俺たちは何時からか、フィクションとノンフィクションの見分けが着くように教育されて言ったのだろう。それ自体は決して間違った教育法では無いとは思う。高校教師だった俺が認めていいレベルだ。

 

 

 

しかし時には信じられないような現実に直面する事もある。事実は小説よりも奇なりと言う奴だ。

 

 

 

 

何が言いたいのかって?俺、異世界転生しちゃったわ。

 

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俺が初めて自分が異世界転生した事に気付いたのは4歳の時だった。

 

赤ちゃんとして生まれた時から前世の記憶があったので、最初の方は「前世の記憶があるなんて凄すぎるだろ、俺。」とか思ってた。イタイ奴とかではない。決して。

 

 

俺が4歳の時、俺は親に『ホワイトルーム』なるヤバそうな施設に送り付けられた。俺の父親は弱小派閥の国会議員らしいのだが、なんでも綾小路先生なる人に弱みを握られててホワイトルームに俺を送り付けるしか無いらしい。

 

なんでも最先端の教育である『天才を0から生み出すプログラム』なるものに参加させたいらしい。何処かで聞いたような取り回しだ。地球温暖化が騒がれてる昨近だが考え方までリサイクルしないで欲しい。

 

 

政治家の綾小路先生、俺の好きな作品にそんなキャラがいたような気がするが綾小路という苗字は珍しくもないのできっと別人だろう。

 

 

まぁそんな理由で俺は施設に連れて来られた。外の壁は一面真っ白で、人里離れた山の上に置いてある。

 

 

白い建物……綾小路先生……天才を生み出す、この時点で俺の頭の中にはここはある作品なのではという推測が立っていた。誰よりも俺が大好きな世界。そしてそれは、施設の前にある『ホワイトルーム』の看板を見て確信した。

 

 

俺は『ようこそ実力至上主義の教室へ』へと転生したらしい。ちなみに内心では嬉しさ半分怖さ半分だ。半壊しかかった人類として巨人と戦わされたり何度死んでも死んでも生き返り続けるなんてことにならなくて済んだ分いい転生なのかもしれない。

 

 

分からない人のためにホワイトルームを分かりやすく説明すると全国から身寄りのない孤児院の子等を集めて、決められたカリキュラムを行い続ける事で天才を生み出す天才育成施設だ。

 

 

だが当然、4歳やそこらの子供がそんなカリキュラムに耐えられる筈が無い。カリキュラム作成者は身体的な面には常にこなせるギリギリの配慮を流石にしているだろうが、精神的な面で耐えられる訳が無いのだ。

 

 

そもそも耐えられる人間はそのものの才能があった天然の天才なのではなかろうか?圧倒的に矛盾してる気がしなくも無い。とは言えあくまでもこの施設で試されるのは精神力、教師として働いた俺ならついていけるだろう。

 

 

大半の人間は知っているだろうが教師ってのは当然ブラックな仕事だ。大体が徹夜で残業。モンスターペアレンツやクソガキの対応に上からの無茶ぶり等環境の過酷さで言えばホワイトルームの育成プログラムを遥かに凌駕している。現代日本の教師の未来がなんとも心配なる話だが、お陰様で俺はホワイトルームの育成プログラムを見た時にこれなら着いて行けると確信した。

 

 

 

そしてホワイトルームで生活すること7年、俺は見事脱落する事無く生活している。職員の話だと俺以外の生き残りはもう2人しか居ないらしい。1人は綾小路だろうがもう1人の名も無きモブは何者なんだろうか。ちょっと気になってしまう。

 

 

ホワイトルームでは一点に特化した人間よりも万能にこなせる人間を求めているらしく、講義や課題の種類は基本的な数学や国語から、古今東西の格闘術に心理学や話術、プログラミング能力なんてのもある。

 

教師は国内外問わず優秀な人間を集めて来たらしく、その道の中でもプロフェッショナルなのが講義だけで分かる程に優秀な面々だった。

 

 

ただまぁなんというか教師陣の癖が強い。サングラスをかけた物理学の教師や「今まででしょ」が口癖の国語教師、数学ヤンキーを名乗る数学教師なんかだが、揃いも揃って何処かで見た事ある気がする。気の所為だろうか。

 

 

 

ちなみに当然だがゲーム等の娯楽類は一切ない。チェスや将棋のようなカリキュラムに含まれているボードゲームがかろうしであるかと言った所である。後は1番教養程度に現代文の小説で「人間失格」や「Yの悲劇」のような古典的名作を読める程度だろうか?お陰様で3年もしたらすっかり読書とボードゲームが趣味の体になってしまうのだが、それは仕方無い事だろう。

 

 

後はホワイトルームも所詮は義務教育の延長線上なのだろうか、音楽関係や芸術センスなんかを磨くために絵を描いたり、楽器を弾かせたりさせられる。あれは気分転換にちょうど良かった。まぁ合格を貰ったら次のカリキュラムにぶち込まれるのだが。

 

 

ただまぁベットは最高級のものなのか寝心地は最高だし、枕も上質な素材を使っているらしい。枕は固めの枕なのだが俺は柔らかめ派だ。この前職員の人に「枕柔らかくなりません?」って聞いてみたら怪訝な顔をされて枕を交換して貰えた。やったねたえちゃん!

 

 

 

毎日服は真っ白のシルク記事のワンピースのようなものを着させられてる。男なのだからズボン型にして欲しいのだが経費が足りないのだろうか?そういえばなんで部屋が真っ白なのかもよくわからんな。今度綾小路パッパにあったらデータとかあるんすか?って聞いてみる事にしよう。

 

 

そして食べ物、こちらは本人のコンディションの調整の為なのか毎日栄養素が考えられた献立が何種類か用意されており、自分達で選ぶ方式になっている。好き嫌いやアレルギーの配慮もあるのかもしれない。おかわりも自由なので正直食べることが唯一の娯楽なのかもしれない。

 

 

脱落に怯えてるイケメンを煽り散らかしたり、可愛い女の子のノルマ課題を職員にバレないように上手い事キャリーしたり(結局その子は脱落してしまったが)、7年間遊んでいたある日、俺はある事を思い出した。

 

 

『このままじゃ俺はどう頑張っても東京都高度育成高等学校に入れなくないか?と』

 

 

本来、東京都高度育成高等学校、通称東育は特別な推薦があって始めて入れる学校だ。綾小路が入れたのは坂柳理事長が『綾小路先生の息子でホワイトルームにいた事』を知っていたからである。

 

 

さて、ここでクエスチョン。俺はホワイトルーム生だとわかる要素を何か持ってますか?

 

 

答えはNOだ。

 

 

次にクエスチョン。俺は特別な推薦を貰えるツテがありますか?

 

 

答えはNOだ。

 

 

ラストクエスチョン。俺は東京都高度育成高等学校にこのまま入れますか?

 

 

 

NOである。つまりこのままじゃせっかく大好きな世界に転生したのになんの意味も無くこの真っ白でつまらない部屋で一生を迎える事になる。そんなのは嫌だ。

 

 

 

と、言うわけで本日12歳になった俺は、何とかしてホワイトルームから脱獄しようと決心する事にした。ある程度ホワイトルームで大事なものは教わったわけだしな。

 

 

翌日、俺は持久走のボーダーよタイムよりもワザと遅れた数値でゴールする。勿論着いて行けなくなったフリをしておく。前世で陸上部だった頃に手を抜いてるのがバレないようにするのによく使った死にかけ呼吸法をまさかこんな事で使う事になるとは思ってもみなかったがこの際仕方無い。

 

その後もテストではワザとケアレスミスを連発したり、ワザと楽譜を読み間違えたりする事2ヶ月。いっこうに脱落させてくれる気配が無かった。

 

 

もしかしてホワイトルームの職員達にわざと手を抜いてる事がバレているんだろうか?いやでもなんも言われないんだよなぁ。流石に手を抜いてると分かっていれば抜かないように注意が入るだろうしまだギリギリのラインで見逃されている。と考えるのが安牌だろうか。

 

 

 

次のカリキュラムは……新しく水泳をやるらしい。前世ではカナヅチだった上に死因は海で溺れて溺死なので自分の中でもある程度苦手分野だろう。ここでカナヅチの振りをしてホワイトルーム生として脱落を狙う事にしよう。

 

 

「被検体003ーPS0096、位置に着きなさい。」

 

そんな事を考えていると無機質な音声でアナウンス用の発信機からスタートの合図が下される。もしこれが小説なら何かしらいい感じの風景描写が入るんだろうが残念ながら何から何まで真っ白なので風景描写も何もあったもんじゃない。

 

「それでは、よーいスタート!」

 

俺は無機質な音声とともに水に飛び込んだ。ちなみに水着も真っ白だ。白統一をしている理由は結局謎だが理由がアニメキャラみたいでかっこいいからとかでは無いことは明白だろう。多分。

 

 

 

俺は自分の両腕を使い、水を押し出す推進力で前に進もうとして、進めなかった。体が水の下にどんどん沈んでいき、そのまま俺はプールの最下層に落下する。

 

 

 

(やばい!!溺れる……っ!)

 

 

呼吸の限界を迎える1歩手前で俺はプールの床に足を着き、何とか顔を水面より上に出すことに成功する。それにしても危ねぇな。三途の川の1歩手前で死にそうだった。なんか変な花畑が見えるところまではいったぞ。もう二度と転生はごめんだ。

 

 

「記録、2m、ノルマ未達成です。」

 

 

その後も何度もやらされたが結局俺は泳ぐ事ができなかった。1番良かった記録で7mだ。

 

暫くすると職員が来た。格好はエーテルパラダイスの職員みたいな感じだ。少なくともこの手のカリキュラムの時に職員が来たことは無いはずだが……。何やら険しい顔をしているし、ついにホワイトルームの最高傑作としての見る目無しとして処分されるのだろう。

 

「被検体003ーPS0096、貴方は脱落です。保護者にも連絡しましたので荷物をまとめて下さい。」

 

職員から苦々しい面持ちでそう告げられる。多分職員内では最高傑作候補がまた一人減った事に失望の感情でも抱いているんだろうか。生憎と俺はここから出られれば何でもいいのだが。

 

良心の呵責?そんなもんホワイトルームの職員が持てよ。割とマジで4歳のガキが耐えられるプログラムじゃねぇぞ。

 

まぁ何はともあれ第1段階はこれでクリアだ。ホワイトルームから出たら東京都高度育成高等学校の推薦を貰える所を探さないとな。

 

 

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「本当に良かったんですか?綾小路先生?」

 

私、松尾はホワイトルームの創設者、綾小路篤臣先生に今一度尋ねる。ただでさえホワイトルームのプログラムの成功者は少ない、今更この程度の事で残りたった3人しかいない適合者を追放する事が私には理解出来なかった。

 

 

「松尾か、今まで俺のやってきたことに間違いがあったか?」

 

 

綾小路先生はまるで自分に間違いは無いと言わんばかりの圧を向けてくる。事実、綾小路先生はいつだってその野心で上に登り詰めている。

 

 

「いえ、ありません。ですが良ければ私めに理由を教えて頂けたらと思います。」

 

 

水泳でこそ彼は失敗したものの、その他の成績不振は軒並み手を抜いたが故のものだった。たった1回のミスで失格にするには彼らはこの施設において「必要」過ぎただろう。

 

 

「アイツは、ホワイトルームの育成方針と真逆過ぎる。」

 

「と、言いますと?」

 

 

確かホワイトルームの育成方針は「本人が持っている血筋等の才能に寄らず天才を作るプログラムだったはずだ。」

 

 

「簡単な話だ、アイツは生まれながらにしての天才だった。だからホワイトルームでの育成には不適格だ。」

 

「それではまるで……」

 

それではまるで、彼の息子である清隆くんと、私の息子に才能が無いと言っているようなものだ。

 

「勘違いするなよ?清隆も、お前の息子の誠一郎も才能が無いと言っている訳では無い。だが才能の種類が違う。」

 

「種類、ですか?」

 

才能の種類と言われてもいまいちピンと来ない。色々な意味があるだろう。私は首を傾げた。

 

「あぁ、清隆や誠一郎は1から100を作る天才とでも言おうか。要するに言われた事を吸収し、自分の力として発展させる力がある。これはホワイトルームの育成方針の最終目標として持たせたい力でもある。」

 

「仰る通りです。それで『彼』の才能というのは?」

 

そういうと綾小路先生は少し失望した表情になる。

 

「今の話を聞いてもわからんか。」

 

「分かりません。」

 

残念ながら学がある訳でも無い。分からなくても仕方ないと思う。

 

「簡単な話だ、奴は0から1を作る天才でもあったと言うだけの話だ。奴はホワイトルームの教えを基にまだホワイトルームで教えてない事まで身につけ続けていた。このままホワイトルームに置いておくと我々でも手に負えなくなりかねない。」

 

「それで追放した、と。」

 

「あぁそうだ。清隆にも少しは見習って欲しいものだな。」

 

そう言って綾小路先生は冷めた目でガラスの向こうの息子を見る。どうして自分の息子にそんな目線を送れるのだろうか。

 

私は清隆君に同情の視線を向けるのだった。

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