シン・ザ・ソードマスターと呼ばれるまで戦ってみますかね ~炎帝ノ国の魔崩剣使い~ 作:炎帝ノ国を箱推しします
『いいか、クロム。NWOはキャラ設定の関係や性別変更や容姿変更の煩雑さ、面倒さやリアルマネーの課金やら何やらで、MMOでは珍しいくらい”リアル女性による女性アバター使用率”が極めて高いんだ。そして、初心者がMMOを辞める理由の一つに”PKに殺された”ってのがある』
『新規女性プレイヤーが、PKでゲームを辞める……そして、そんな事例が続けば”NWOは女性が襲われるゲーム”なんて悪評が流れても不思議じゃない。そんなゲームに今みたいに女性新規プレイヤーが集まると思うか? 女が逃げ出し、入ってこないゲームに未来はあるのか? ”女性が楽しめないゲーム”なんて世間様に認知されたらどうなるよ? 控えめに言っても叩かれて過疎決定だぞ?』
『んじゃあ別の言い方すんよ。女性の新規プレイヤーが減る方が、男性プレイヤーが減るより影響がでかいし、プレイヤー数の回復が難しい。ヤローしか残ってないゲームなんざ、俺はやりたくねーぞ?』
『極端に治安が悪化したり、プロモーションの大失敗でもやらかさん限り、NWOのクオリティなら放っておいてもヤローは辞める人間より新規の方が多くなるだろうよ。それだけの面白さがこのゲームにゃある』
「う~ん。なるほど、そういう解釈と認識なのかぁ?」
ここは”管理者”達がNWOというゲームの全てを統括する場所、仮想空間内に構築された【運営ルーム】だ。
そして、その管理者達の仮想空間の依り代である可愛いぬいぐるみのような印象のマスコットアバター、そのうちのタフガイからコミカルな声が出せそうなアバターの一体が腕を組みながらうんうんうなっていた。
「どうした?」
そう声をかけるのは、自分の分担作業をとりあえず終えた幼女を思わせる声の同じデザインの同僚アバターだった。
「いや、NWOって実装された全域でAIがPK行為と判断した場合、ルール適合の
「まあ、そういうシステムだな」
「あと、PK行為は加害側も被害側も、とりあえず【CALL】による報告推奨とも」
「そりゃな。まあ、普通はPKする側が襲撃前に【CALL】することはないけどな。いくらPK容認してるったって、別に推奨してるわけでもねーし」
原則、PK前に【CALL】を受けたところで運営はその行為に積極的に干渉したり制止することはない。だが、PKプレイヤーは、如何にルールで認められているといっても「プレイヤーを殺してアイテムを奪う、現実ではできない
だから、運営の方針を問わずに【CALL】という形で
多くのプレイヤーにとりNWOにおけるPKは、「大きなペナルティーが無くPKができる」程度の認識である。
PKという”プレイに緊張感を加味するミニイベント”は、スリルを求めるプレイヤーを呼び込むスパイスになっても、同時に扱いを一歩間違えればプレイヤーの脱退を招くリスキーな二面性があるものだという事は、しっかり把握していた。
「そうだね。基本、CALLは”PKされる側”が行うもんだ。だけど、中には”PKする側”から行われた例も少数だが存在する。実は、PK数トッププレイヤーの一人が、その小数例なんだよ」
「ほほう。律儀なのか?」
「いや、ログを調べてみると実に興味深い。”シン”というプレイヤーなんだけれどね、PKの内訳はほとんど全てがPKKに分類されるんだ。つまり、”自分がPKを返り討ち”にしてるケースと”プレイヤーを襲撃してるPKをキルしてる”ケースだな。そして、自分が襲撃されてる場合は事後に、PKハントする場合は事前に……おそらく、誰があるいはどっちがPkしてるか見極めてからだろうね。後者に関しては、”シン”以外から発せられたCALLとも場所と時間がかなり一致している」
「いわゆる、”治安意識高い系”のプレイヤーか?」
「そうかもね。上位のPKプレイヤーは
「それが、このリプレイ画面ってわけか?」
そう、二体のマスコットアバターの前には、イズ工房での一幕が空中投影で動画再生されていた。
「ふーん。そこまでは的外れって訳じゃないな? 一応、ゲーム全体の事も考えてるみてーだし」
と参加してきたまた別の同僚アバター。
「”シン”ねぇ。ん? おや、PKだけじゃなくてトップ5ランカーの一人だぞ、ソイツ」
本人、実は全く意識もしてないし、気にもしてないが実は”シン”、この時点でNWOの中で五指に入るトッププレイヤーにまでのし上がっていた。
別に特別なことをしていた訳ではない。
勿論、プレイヤーなら誰でも公式を含めてNWOの情報や攻略サイトを探り、情報収集に務めていたが、それだけだ。
最初はミィと、やがてはミィとミザリーと、今はクロムやイズとつるんでクエストに付き合いながら冒険の毎日、いや戦いを求めてあちこちで回っていたのだ。
無論、それぞれの面々とだけでなく、時間が許せばソロでもだ。
課金こそ相応にしているがシン、”風祭 真一郎”という男は本質的にはエンジョイ派ではある。ただ、彼の楽しみとは「リアルではできない死闘」であった。
また、シンはどちらかと言えば、モンスターより対人戦を好む傾向があった。強者との戦いは好みだが、同時に「よりリアルに近い戦闘」を指向しているのかもしれない。
だが、弱者を屠るのは趣味ではなく、かと言ってお眼鏡に叶う強者は滅多にエンカウントしない。
そこで行き着いたのが、自分が不利な「1対多数」の状況を作ることであり、その大義名分こそがPKKであった。
「まあ、発言を聞いてる限り、極端な治安厨とか正義厨じゃないからいいんでねーの?」
と今度は、ちょっと女性的な声の別のマスコットアバターが入ってくる。
どうやら、とりあえず一息は入れられる状況なようだ。
「まあ、確かになー。そういう面倒臭いタイプじゃねーみたいだ」
と幼女声のアバター。
それもそうだ。シンのプレイモチベーションに少なくとも”正義”は関係ない。治安云々は、”サービス継続に悪影響が出るのは困る”程度だ。
弱者救済などという考えは最初からなく、あるのはただ自分の都合であった。
「しかし、助けるの女の子ばっかってのは、自分に正直でよろしい」
「ところが、下心みたいなのは無さそうなんだよ」
と最初のアバター。
「ほら助けた事を理由に女の子にしつこく言い寄るようじゃちょっと……ってことでログを調べたんだけど、倒した相手がモンスターであれプレイヤーであれ、シンは女性プレイヤーにフレンド登録を持ち掛けた事はないみたいなんだ。むしろ聞かれない限り、名乗りもしない。ドロップアイテムだけ回収はするけど、さっさと立ち去りたいって感じだな」
「それは、シンが
「ストイックかと言われれば、それはそれでまたなんか違う気もするけどな」
正解である。シンは禁欲的どころか逆に「戦いたいという欲求」を隠そうともしてない。
結局、シンにとりクロムに告げたことこそが戦うための大義名分、口実や理由づけに過ぎないのだろう。
「どうあれ、行動自体はNWO的には有益だから、良いと言えば良いんでねーの? そういやつい最近、助けられた
「自由騎士て……ロードス島かよ」
「
「もしかしたら、看板プレーヤーの一人になるかもなぁ」
運営の管理者の皆様は、アニメ版仕様のマスコットアバターとなっております。