シン・ザ・ソードマスターと呼ばれるまで戦ってみますかね ~炎帝ノ国の魔崩剣使い~   作:炎帝ノ国を箱推しします

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久しぶりのクロム視点からなので初投稿です。




第23話:片手剣使いと異質な強さ

 

 

 

 ああ、クロムだ。

 大楯使いのタンク、要するにパーティーの壁役をやってる。

 

「よっと!」

 

”バガンッ!”

 

 襲撃者(PK)のモーニングスターを受け流すと同時に、短剣を脇腹に差し込む。

 

「ごっ!?」

 

 そして、俺よりでかそうな襲撃者は、イズが調合した刀身に塗られた即効性の麻痺毒でそのまま体の自由を奪われ倒れ伏した。

 というか、めっちゃ強力な麻痺毒だなっ!?

 だが、スタンしてるだけで大楯と対の装備になる短剣は威力が小さく、ある程度防御を盛ったプレイヤーを一撃で仕留めるには至らない。

 シンと出会ってから何度か決闘システムを用いた模擬戦(PvP)をやったが、その時に言われたのが、

 

『クロム、斃れたからといってそこで倒したと思うのは早計だ。ポリゴンとなって消えるまで、決して油断すんな。倒れても腕が動くなら腕が動けばお前の脚をつかんで引きずり倒すことはできる。文字通り足元をすくわれるかもしれん。モンスターなら嚙みついてきて足を引きちぎるぐらいしてくるぞ? あるいは、中には死んだふりをしてる奴もいるかもしれん。トドメは大事。古事記にもそう書いてある』

 

 へいへい。最後のはともかく、わかってるって。

 俺の大盾は、シンのバックラーに倣って下辺をイズに軽く研いでもらい鋭くはないが刃物として使えるよう改造してある。

 つまり、

 

「その首置いて逝けやっ!」

 

 可能な限り小さな動作で、うつぶせに転がる襲撃者の首に振り上げた盾をギロチンよろしく叩きつける!

 PK野郎に賭ける慈悲は無しってな。

 出たダメージは、大盾の重量のせいもあり、短剣よりずっと大きい。

 加えて、NWOでは確かにVITやHPが防御力のパラメータだが、例外的に”一定以上の損傷”を受けると残HPに関係なく即死判定になる”()()”が人体と同じく存在している。

 具体的に言えば頭を砕かれれば死ぬし、首を落とされれば死ぬし、心臓を貫かれれば死ぬ。

 

(俺もシンみたいに”武器として使えるブーツ”でも発注するかねぇ?)

 

 多数との戦いを考慮するなら、一々盾を振る降ろすより踏み潰した方が手っ取り早そうだ。

 

「”敵対した以上、殺せるときには躊躇いなく殺せ。迷えば自分が死ぬ羽目になる”、ね」

 

 いや、ゲームの中の話だからではあるんだろうが、シンの言葉には時折妙な重さを伴ったリアリティーがあるんだよなぁ。

 それにしても、

 

(巧いな……)

 

 油断しないように周囲を警戒しながら、俺は横目でシンの動きを観察する。

 とにかくあいつの動きには淀みや迷いがない。

 俺とのPvP(タイマン)の時も底知れない強さを感じたが、こうして客観的に見るとシンの”異質な強さ”をより強く感じる。

 うん。異常ではなく異質だ。

 

 実は、シンの戦い方は、一つ一つを見れば常軌を逸したそれではない。

 少なくとも、ド派手な大技や理解不能の武器の使い方をしてる訳じゃないんだ。

 だが、距離や敵やその都度の戦術に対する各種取捨選択が恐ろしく早く、そして同時に的確だ。

 例えば今、おそらく【カバームーブ】でミィをかばった……正確には、襲撃者とミィの間に入り込んだ時も、敵の攻撃を盾で受けるのではなく【シールドアタック】でカウンターでブチ当て、体勢を崩して流れるように追撃し仕留める……

 そして、気がつくと左手には鞭剣(ウルミ)が握られていて、近づかせないための牽制を兼ねた不規則な斬撃を放つ。

 

 そして、動作はそこで終わらない。

 ミィがポーションでMPを回復すると、またしても左手には別の武器、ソードブレイカーが逆手に握られていた。

 逆手に握るのにも意味がある。シンのソードブレイカーは杖剣(ワンドソード)を元にカスタムしたもので、柄頭の部分がワンドと同じく魔法発動体になっている。

 そして、ミィが炎弾の連射を再開させると同時に、シン自身も初級の火系攻撃魔法”ファイアボール”をミィの弾幕に紛れ込ませるように放つ。

 

 無論、INTなどの違いから、魔法発動体でブーストをかけたとしてもシンのファイアボールは本職のミィの炎弾ほど威力は出ない。

 当たったところでそれなりに防具を整えたプレイヤーを一撃で沈めることはできない。

 だが、この混淆した戦場じゃあ、即座に必殺の威力を持つミィの炎弾とシンのファイアボールを瞬時に見分けるのは不可能だろう。

 

(つまり、ダミー弾を混ぜて見せ弾を増やして攪乱し動きを阻害する)

 

 そして、二人で形成した火球の弾幕を追いかけるようにシンは再加速し、

 

「【スラッシュ】! 【ウィンドカッター】!」

 

 刃から斬撃を飛ばすスキルと風の斬撃魔法をほぼタイムラグなしに牽制に放ち、火球の着弾で慌てる襲撃者たちに奇襲を仕掛けて再び得意の近接戦に持ちこむ。

 その近接戦とて使うのは手持ちの武器や盾だけでなく必要であれば、拳に蹴り、必要なら鉄山靠じみた体当たり技で容赦なく刈り取ってゆく。

 

 踏み込んできた襲撃者の出足を払い、斃れた所で後頭部で踏み潰し、同時に左手のソードブレイカーでロングソードの刃を絡め取るとゼロ距離でファイアボールを顔面にぶちかまし、同時に右手のカットラスで別の襲撃者が突き出した槍の穂先を斬り飛ばして返す刀で首をはねる。

 その動き、まるで片手で行う”燕返し”だ。

 

(フィジカル、いやプレイヤースキルも滅茶苦茶だが……)

 

「あいつは並列思考(マルチタスク)でもしてんのか? あるいは未来予知」

 

 いや、だってさ。確かに一つ一つのスキルや魔法は特別なもんじゃないかもしれねぇけど、これだけの短い時間で、あんだけのスキルや魔法を「最適に同時使用」なんて普通はできんぜ?

 

「あいつ、今魔法を切り払わなかったか……?」

 

 いや、そりゃ理論上はできるかもしれんけど。

 シンがNWOを始めたのは俺と同じ初日かららしいが、少なくとも俺には同じビルドをしたとしてもあんな真似はできない。

 シンの動きは、「同時に複数の事柄を処理」してるか、あるいは「予め自分が行うべき最適の行動が見えている」かでしか説明できないんだが?

 

(まあ、でもこりゃ勝ったな)

 

 数に任せた包囲陣が築かれる前に、シンが止まる事なく動き細切れにしてしまった。

 残っているPKプレイヤー達では、とても戦線を立て直すことはできないだろう。

 

 というかもう逃げ出しているのがいるが、シン相手には悪手だろう。

 ソードブレイカーから持ち替えた鋼糸が脚に巻き付けられて転倒すると、すぐに心臓を突き刺すカットラスの切っ先が降ってくる。

 無論、追撃するのはシンだけでなく、ミィやミザリーが放つ火や光の攻撃魔法が背中に次々に命中すしていた。

 

「この惨状を見れば、これ以上の増援は無いだろうしな……」

 

 流石に玉砕覚悟で、鉄火場に足を踏み入れる物好きはいないだろう。

 

 なんつーか、酷く微妙な気分になる顛末だな。こりゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




改めて、クロムの目から見たシンという感じでした。

クロムも十分に強いトップランカーの一人なので、この程度の襲撃には動じませんが、その彼から見てもシンは”異質”みたいな部分を書けていればと。


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