ヘブン・バーンズ・ソウル   作:ZJapan

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変わる

春水「大河君、君はその立場になって…悩む事は無いかい?」

 

京楽さんはもう一度酒を飲むと、俺にそう問いかけた。

その視線は俺を見ていなくとも、何故かこっちを向いているような気がした。

 

大河「なんですか急に…」

 

春水「上司としては、部下のメンタルケアは大事だから」

 

大河「はぁ…全く」

 

俺はいちごオレを飲み干して、同じ様に何も無い空を見上げながら答えた。

 

大河「正直、何も悩む事が無いかって言われたら嘘になります…けど」

 

俺は新しい飴を取り出し、口に入れる。

 

大河「俺が悩むのは、世界を救ってからでいい」

 

俺の言葉を聞くと、京楽さんは笠を深く被り少し視線を落とした。

 

春水「そうかい…」

 

しばらくの沈黙の後、俺は口を開いた。

 

大河「ってかこの立場になってって言ってましたけど、この立場にさせられたんですが…」

 

春水「細かい事は気にしないの」

 

細かいと言う文字を辞書で引いてきて欲しいものだ。

 

大河「それで…姉ちゃんは今どこにいるんですか?」

 

春水「今は一護君と織姫ちゃんの所にいるよ。けど」

 

大河「慣れてませんか?」

 

春水「それもあるけど…彼女に死神の力が宿りはじめてる」

 

大河「…マジっすか?」

 

姉ちゃんに死神の力が…だとしたらなんで急に?

 

春水「そもそも、一護君と織姫ちゃんの子孫で、君が近くに居るってのに今まで出なかったのがおかしいんだよ。本来なら隊長格の強さだよ」

 

確かに…血縁で考えれば今まで出なかった方がおかしい。今までなるべく死神の事には触れさせない様にしてきたけど…それも限界か。

 

大河「はぁ…隊長格の強さでワンチャン滅却師や虚、完現術の力まであるかもしれない…か」

 

春水「特に、完現術に関しては使っていたセラフが媒体になるかもしれない。強いよ、あの子は」

 

大河「おっそろしいっすね」

 

考える事は多い、けれどやる事は変わらない…なら考えるのは後でも構わない。

 

春水「それで、こんなに美少女に囲まれてる大河君。そろそろいい子見つけてもいいんじゃない?」

 

すると京楽さんはまるで親戚のおじさんの様な発言をして目を輝かせた。

 

大河「あいにく今日初めて来たもので、ここの人ほとんど知らないんです」

 

春水「えぇー、釣れないなぁ…けど本心は?」

 

大河「美少女多すぎて緊張してます…」

 

春水「あははッ!君らしいねぇ」

 

正直な話、ここに来てからドキドキしっぱなしである。

カッコつけて余裕なフリしてたけど…え?セラフ部隊って顔で選んでる?

 

春水「それで?良さそうな子は?」

 

大河「とりあえず…31Bと31Aに手を出すと姉ちゃんに怒られそうなんで…」

 

春水「え?喜びそうじゃない?」

 

大河「…そうですかね?」

 

春水「ほら、月歌ちゃん…だっけ?あの子が義理の妹とかになったら喜びそうじゃないの」

 

大河「あー、けど多分月歌さん?が興味無いでしょ…そういうの」

 

つか今日知り合ったばっかりだし…下世話だなぁ本当に。

 

春水「まあ初めて会って誰が好み?なんて聞いてもしょうがないか。いい報告待ってるよ、色々と」

 

大河「勘弁してくださいよ…」

 

ちなみに京楽さんは俺の師匠でもある。

そのおかげで口調やら雰囲気やらが似てると言われることもしばしば。

 

春水「それじゃあ、そろそろ帰るよ」

 

大河「あ、その前に京楽さん」

 

春水「ん?なんだい?」

 

帰ろうとする京楽さんを少し引き止めた。

 

大河「薄々気付いてるかもしれないっすけど…もしかしたら一護のじいちゃんや更木さんの力も必要かもしれません。俺だけじゃいつか限界が来る」

 

すると京楽さんは大きくため息を吐いてこう言った。

 

春水「考えておくよ…最もそんな事にならなきゃ良いけど」

 

大河「それは同感ですね」

 

そう言い捨て、京楽さんは尸魂界へ帰って行く。

 

大河「…虚化キャンサー、それに破面化までされるとなぁ」

 

キャンサー、あいつらは人を魂ごと食べてしまう…今までキャンサーに食い殺された人間の魂は、全てキャンサーに吸収されている。

そしてキャンサーが人の魂の力を蓄積し続け…やがて虚化して…破面化も有り得る。

 

咲「あら、こんな所で何を?」

 

大河「お、司令官…そっちこそどうしてここに?」

 

司令官「あなたが見えたものでね…少し気になって」

 

大河「目良すぎない?」

 

時計塔の下からなんで俺だって分かった?

 

咲「よく言われるわ。それで何を?」

 

大河「京楽さんと少しね…」

 

司令官と京楽さんは面識がある。

お互い軍隊の幹部同士、気は合うらしい。とは言っても護廷十三隊とセラフ部隊だとあまり共通点は無いけど。

 

咲「そう…ここに来たと言うことは何かあったのでしょう?」

 

大河「…姉ちゃんに死神の力が発現した」

 

咲「蒼井さんに?」

 

司令官は珍しく驚いた表情を見せる。

いじりたいのは山々だが、今は空気も気分も乗らない。

 

大河「もしかしたら…部隊として復活出来るかもしれないけど…さすがにもうあんな思いはさせたくない」

 

咲「…そうね」

 

大河「それと…キャンサーの破面化があるかもしれない」

 

咲「…そう。それはマズイわね」

 

マズイなんてもんじゃねえ気がするけど…。

 

大河「俺のセラフみたいに、また用意するか…もしくはセラフ部隊と死神が共闘出来るくらいセラフ部隊を鍛えるか。どっちかだね」

 

ぶっちゃけ後者はあまりおすすめはしない。

破面化キャンサーなんて、正直隊長格が本気で戦って勝てるかどうか…。

セラフ部隊をあんなバケモノと一緒に戦える様になんてのは正直厳しいだろう。30Gの月城さんでもかなりの時間がかかる。キャンサーは待ってくれはしない。

 

咲「今の世代は…強いわよ?」

 

すると司令官が俺の表情を見て意図を察したのか、そう言った。

 

大河「…そうかい、司令官が言うならそうなのかもな…けど司令官は死神の隊長格の本気を見た事あるのかい?」

 

司令官「…無いわね、あなたですら無いのに」

 

大河「隊長格は俺みたいなのばっかしだよ…それにあの人達がこの世界で本気で戦おうものなら…正直周りに人がいると危ない」

 

司令官「…そう」

 

だが、これは今の客観的な状況だ。

もしかしたら…近い未来に隊長格と肩を並べるセラフ部隊員がいるかもしれない。

なんか司令官がしょんぼりしとる…なんやこの人可愛ええやないの。

 

大河「ま、まぁこれから俺が鍛えて行くから何とかするさ…」

 

司令官「お願いね…」

 

まだしょぼくれてる…珍し…。

 

大河「…司令官はどう見る?」

 

司令官「…あの子達は必ず何かやり遂げてくれる。私はそう確信しているわ」

 

司令官は迷わずにそう言った。

きっと彼女がそう言い切るのだから、何かやり遂げるのだろう。それほど彼女の眼差しは真っ直ぐに未来を見ていた。

 

大河「…確かに、俺から見ても彼女達は何かをやり遂げる…そんな気がするんだ」

 

司令官「今日初めて会ったのに…よく断言出来るわね」

 

大河「まあ…雰囲気だよ。彼女達を見ているとどこか感じるんだよ」

 

司令官「あなたが勘だよりなのは珍しいわね」

 

大河「ふっ、そうでも無いさ…見る目はあるつもりだよ?」

 

司令官「そうね。なら私達で賭けましょうか、あの子達に」

 

大河「司令官さんよ?俺も含まれてるって忘れてないかい?」

 

司令官「だからよ」

 

やばい、なんか司令官が女子高生みたいな眼差しをしとる。めっちゃワクワクしとる。

やっぱ可愛くね?

 

大河「はぁ…この世界俺だけ役割多くない?」

 

司令官「それほどあなたに運命がかかっていると言う事よ」

 

大河「勘弁してよぉ…」

 

すると司令官は無邪気に微笑んだ。

珍しく今日は司令官が笑う日だ。便秘でも改善したのかな?

 

大河「司令官もニコニコしてれば可愛いのに」

 

司令官「ずっとニコニコしていては隊員に示しが付かないでしょ?」

 

あ、可愛いのは否定しないんですね…いや事実だから言いけれども。

 

大河「さて…さっさと全部終わらせて楽になりますかね」

 

司令官「期待してるわ」

 

こうして俺は厄介な役回り…世界を救う英雄と言う役回りを引き受けたのだった。

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