夕食が終わり、外をほっつき歩いていると1人の少女が俺の横を通り過ぎた。
ん?あれは…ハンカチ?さっきの人が落としたのかな?
大河「おーい、あんた」
「私に何か用か?」
黒髪のポニーテールとは…やりおるな。
つか腰になんつー物騒なもんぶら下げてんだ…刀て…。
大河「このハンカチあんたのかい?」
俺はそう言うって落ちていたハンカチを見せる。
「…私のだ」
大河「なら良かった、ほれ気を付けろよ」
「…感謝する」
その少女はそれだけ言って去って行った。
なんか、ムスッとした子やな…。
大河「セラフ剣舞祭?」
翌日、休みの日。急にすももに呼び出されたと思ったら…どうやらセラフ部隊の中でその様なイベントがあるらしい。
すもも「それに私が選ばれたにゃ」
大河「えー、俺も出たいな」
すもも「お前が出たら優勝確定にゃ…」
セラフ隊員同士で最強の剣の使い手を決めるらしい。大丈夫なのかな?色々と。
大河「ふーん、ま頑張って」
すもも「ちょっと訓練付き合えにゃ」
普通に立ち去ろうとしたらすももに襟を捕まれ止められた。
大河「…はい」
こういう時、何を言っても無駄だと姉ちゃんから習いました。
大人しく俺はアリーナに連れて行かれた。
すもも「なんで竹刀なのにゃ?」
大河「今回対人戦もあるかもしれないだろ?ほら…あの破天荒な浅見さんの事だし」
とにかく、俺はナービィ広場ですももに指導をした。
すもも「また負けたにゃ…」
すももは不貞腐れながら草の上に寝転がった。
大河「まあまあ、殺しと試合じゃ全然違うからそこはしょうがないんじゃないかな?」
しかし、それはそれとしてすももはもう少し強い気がする。何かしら本気を出せない原因があるのか?
大河「それはそれとして、もう少しすももは強いんじゃない?」
すもも「どう言う事にゃ?」
大河「意図的に潜在能力を抑えてるって感じかな?怒った時とかもっと強いでしょ?」
するとすももはバツの悪そうな顔をして、俺から目を逸らした。
ビンゴってところかな?
すもも「なんで分かったにゃ…」
大河「何となくだよ、特に根拠があった訳じゃ無いよ」
すもも「はぁ…あれは出したくないにゃ」
すももは身体を起こして、座ると俺に視線を向けてそう言った。
大河「ま、何かしら理由があんだろ。けど」
俺はすももに近づき、すももと視線を合わせる様にしゃがんだ。
大河「それを常に出せる様にしておきな」
すもも「常に…?」
大河「もし突然、レッドクリムゾンみたいなキャンサーに出くわした時…それは役に立つよ」
ずっとすももの戦いを見ていて感じた違和感があった。どこか無意識に手を抜いている様な、本気でやっていないんじゃない、本気で出来ていない様な。
大河「それが出来ない様なら…ずっと弱いままだよ」
そう言うと、すももは竹刀を握りしめて立ち上がった。
すもも「それは…絶対嫌にゃ…!」
俺はそのすももを見て安堵に近い笑顔をこぼし、竹刀を持って俺も立ち上がる。
大河「その調子だ…さて、もっと貪欲に行こうか」
そしてセラフ剣舞祭当日。
大河「おぉ、快晴だ」
そんな独り言を漏らしたくなるほどの快晴、お日様と暖かい風が気持ちいいな。
「おや、大河ではないか」
俺が気持ち良さそうに会場に向かう途中で、誰かに話しかけられた。
気になりふと後ろを振り返る。
大河「あ、久しぶりだねぇユイナさん」
そこには貴族の様な服を着て、凛と佇んでいるユイナさんがいた。
いやぁ、なんかこの人だけ『さん』付けちゃうんだよね…なんか威厳があってね?
ユイナ「久しいな、前回の大規模な作戦以来か?」
大河「そのくらいになるね…30Gのみんなは元気かい?」
ユイナ「あぁ、相変わらずな」
大河「そりゃ良かった、確か剣舞祭出るんだって?」
ユイナ「あぁ、成り行きでな…」
本人はあまり乗り気ではないらしい。
穏やかな性格のため、人間と戦うのは好まないらしい。
大河「うちの舞台からも一人出るから、面倒見てやってくれ」
ユイナ「全く…お前と言う奴は…」
俺は全てをユイナさんに預けて、セラフ剣舞祭が始まった。
隣の観戦席では31Aの面々がいる。
最初は団体戦、AチームとBチームに別れて競っているが…Bチーム大丈夫か?ユイナさんが強すぎるのもあるけど。
大河「あの子…この間の」
ポニーテールだ。
いや、覚え方よ。いや自分で覚えておいてなんだけども。
月歌「何?いのりん知ってるの?」
そう月歌が俺の顔を覗き込む。
大河「前に、ちょっとな」
結果はAチームの圧勝。まあ予想通りかな。
Bチームは悪い意味で個性が強すぎたな。
大河「みんな腕は悪くないんだけどなぁ」
月歌「みんな強かったねー」
俺は月歌と一緒にベンチに座り、俺はポッキーとオレンジジュース、月歌はシガレットチョコとコーヒーを飲んでいた。
月歌「あ、そろそろ行くね」
大河「おう、頑張れよ」
月歌の様子が最近少しおかしい…おかしいと言うより少し変わったのかな?
大河「まあ、そんな事もあるか」
すると先程のポニーテールの少女が俺の前まで歩いて来た。
祈「お前、最強らしいな」
大河「えーと、夏目さんで良かったかな?それともいのりんがいい?」
すると夏目さん、もといいのりんは溜息を吐いて目を逸らす。
祈「好きに呼べ…」
大河「それじゃ親しみを込めて下の名前で呼ばして貰うぜ」
祈は諦めたように表情を固め、一息ついて俺に問いかけた。
祈「お前は、何のために剣を握っている…」
大河「…そう言う事か」
俺の中で全てのピースが当てはまった。
悩みのある様な太刀筋、具体的に言うなら躊躇が所々に見られた。
祈「どう言う事だ?」
大河「いや、こっちの話さ…それで戦う理由だっけ?」
祈「あぁ…最強のお前に問いたい」
戦う理由か…。
大河「一緒に、平和な世界で暮らしたい人がいるんだ…」
祈「…それだけか?」
驚いた様な表情を浮かべて祈が俺を眺める。その珍獣を見た様な目やめろ?
大河「あぁ、そんなけ」
祈「単純だな」
大河「単純で良いんだよ…ごちゃごちゃすると本質が見えなくなる」
結局単純な方が…良いのかもな。
祈「単純…か」
大河「一生懸命悩みなよ。悩んで悩んで、切り捨てて消して…どうしても切り離せなかったものが何なのか…結局単純になるのかもな」
祈「…そうか」
そう言って祈は俺の前から去って行った。
俺が裁かれるのは、世界を救った後でも遅くは無いだろう。