サッと読める恋愛小説短編集。   作:true177

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物心つかない頃からの付き合いである陽介(ようすけ)と実有紀(みゆき)。VR戦闘機で初勝利を飾った陽介は、退出しようとした実有紀を引き留めて大空にメッセージを……?



大空キャンバスに想いを込めて。

 現代技術の進歩は、目まぐるしいものがある。VRも、その内の一つだ。仮想空間に、まるで物があるように見える。昔の人がVRゴーグルを被ったとすれば、きっと祟りで悪霊が取りついたと大騒ぎするだろう。

 

『ほらほら、そっちに敵行ったよ!』

「はいよ」

 

 VRゲームにハマっている男子高校生の陽介(ようすけ)も、技術の進歩の恩恵を受けている一人だ。音声通話で繋がっているのは、同級生の実有紀(みゆき)。物心つく前から家族ぐるみで付き合いがあり、親友……というよりかは悪友と言った方が近くなる。

 

 実有紀は物怖じしない性格で、他の女子がトカゲやら芋虫やらでギャーギャーわめく中、単身木の棒をもって突いていたことがある。

 

 黒板消しを扉に挟み、見事教師が引っかかっても平然としている。そのくせ正義感は人一倍強く、イジメなどは身を川に放り投げてでも阻止してしまう。義賊という言葉は絶えて久しいが、実有紀はまさに現代の義賊だ。

 

『ナイスー! 次、南西方向から敵戦闘機2機来るよ! 機首反転!』

「あいわかった!」

 

 実有紀の指令だけでおおよそ察しがつくとは思うが、陽介たちは空中戦の真っ最中である。再現度の高い戦闘機のコックピットが、陽介の目前に広がっているのだ。どのボタンも英語で書かれており、何に使うかがよく分からないボタンも多数存在している。

 

「実有紀、どこにいるんだ?」

『挟み撃ちしようとしてる! 陽介はそのまま、突っ込んじゃって!』

 

 言われるがまま、搭載されている機関砲を、これでもかと対面しているグレーの敵戦闘機にお見舞いした。実有紀機に気を取られていたか、反撃も無く地面へと落下していく。

 

『YOU WIN!』

 

 最後の一機が地面に墜落した瞬間、勝利画面が映し出された。

 

『やったー!』

 

 マイクの向こうにいる実有紀も、興奮が収まらないようだ。熱気が、声から伝わってくる。

 

『初めて、マルチプレイで勝てたね! ありがとー』

 

 記念すべき、二人でつかみ取った初勝利である。

 

『陽介、それじゃ……』

「実有紀、待って! まだ退出しないで、一旦ゲーム画面から今いるエリアに戻って」

 

 ゲームから抜けようとした実有紀を、引き留めた。

 

『何、陽介? ここ、もう何もないよ?』

「いいから、いいから。操縦席から、じっくり飛行機雲を見てて」

 

 そう実有紀に伝えると、陽介は空中を自由自在に旋回し始めた。

 

 リアルを追及しているとはいえ、ここはゲームの世界だ。現実で飛行機雲に色が付くことは無いが、この世界でならその制限はない。

 

 陽介の、実有紀へのメッセージが、一文字一文字飛行機雲となって現れていく。

 

『I LOVE YOU』

 

 大空に描かれたのは、陽介の本心だった。

 

『……』

 

 実有紀も、驚きの余り沈黙でしか返せないようだ。

 

「俺、実有紀のことが好きになったんだ。ここまで一緒にやってきて、これからもそうしたい、って」

 

 静寂がしばらく続き、そして、

 

『……陽介、私もだよ……』

 

 嬉し涙で崩れそうな、か細い声だった。

 

 陽介は戦闘機を着陸させ、一目散に実有紀まで駆け寄った。実有紀も、陽介に向かって走り出した。

 

 デジタルデータで作り出された青空は、本物の青々とした空のようだった。

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