このハザ   作:ひつまぶし太郎

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今回はこの作品で一番の妄想設定が登場します。
そういうのが苦手な人は、ここで読むのをやめた方がいいかもしれないです。
そして、多少の残酷な描写が入ります。

“〜の記憶#”がついている話は狭間の地での話で、シリアスです。


あとがきに解説を追加しました。



第五話。“『いたみ』の記憶#”

 

 

私の名前はベルセルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリス。

一国の王女として、恩人の疑いをはらそうと精神を同化してから、眠りにつき、ずっと夢を見ている。

 

これは彼の『痛み』の記憶だ。

 

 

 

 

古き王の都、ファルム・アズラ。

遥か前からずっとゆっくりと崩壊しているというその都の一端に、一つの焼死体があった。

 

 

「ガ…ぁ…」

 

 

否。

顔から火が溢れ、手足が炭化し、全身火だるま。誰が見ても手遅れな焼死体と判断す状態だったが、それでも僕は生きていた。

 

 

「───ぁあああああああああ!?」

 

 

想像絶する苦しみだった。

絶望的な痛みだった。

 

 

───熱い。

 

 

転移する前に閉じた左目に飛び込んできた火花が燃え広り、僕の身を焦がしていた。

 

 

「……ッ!が、ああ、グひ…ああああアアアアア!!!」

 

 

───熱い。熱い。

 

 

いっそ死んだ方がましだと思うほどなのに、受け継いでしまった刻印の呪いが、火の番人として僕を生かす。

まるで、ただでは死なせないと言わんばかりに。

 

 

「ごォ…め…んナぁ…再…」

 

 

だけど、それも当然の報いだと思った。

だって僕は、僕が、メリナ姉さんを殺した。

世界を救う使命を帯びていて、世界を愛していて、心の底から世界に救われてほしいと思っていた人から使命を奪った。

 

 

───熱い。痛い。苦しい。とても、生きていけない。

 

 

『どんな選択をしても良い。王にならなくたっていい。世界を救うなんて役目、担う必要もない』

 

 

メリナ姉さんが使命を全うしたとしても、やることはきっと変わらなかった。

世界を救うためにメリナ姉さんは釜に身を捧げる必要があって、炎に抱かれながら僕の前からいなくなるのだ。

 

だけど、メリナ姉さんは僕を帰すことを優先した。

 

 

『世界より、私の使命よりも、姉として弟を家に返してあげないと。』

 

 

本来なら、新しいエルデの王のために黄金樹の棘を焼くはずだったその炎は、僕を使命で縛り付ける二本指と祝福を燃やすだけで役目を失った。

 

 

つまり僕のせいで、世界は希望を断たれたのだ。

 

 

「ヅぅあ゛あ゛あ゛あ゛あ…!」

 

 

───熱い。死ね。熱い。僕なんて。熱い。死んでしまえばいいのに。

 

 

死にたくなるほど体が熱くて。

 

体よりも心が痛くて。

 

自分の肉が焼ける音も臭いも不快で。

 

死の淵でただ藻掻きながら生き続けることに、頭がおかしくなりそうで。

 

 

 

死ねば楽になるのに、逃げることは許されない。

 

 

『どうか、幸せになって───』

 

 

メリナ姉さんの最期の願いが、僕を生かす。

 

 

「あぁ…うぁあ…」

 

 

世界を痛みだけが支配していた。

 

 

無感動に、苦しみ以外は無価値だと言わんばかりに世界が熔ける、そんな錯覚。

 

体も意識もバラバラになって、刹那の内に繋ぎ合わされる。

そこに整合性はなく、正常な手順もない。

 

 

不可逆な破壊と再生を繰り返して、体が作り変わっていく。

なんのために僕はまだ生きているのだろうと、わずかに回復した頭がそんなことを考えて、そのまますぐに灰になる。

 

 

一日たって、一週間たって、一ヶ月たって。

 

それでも死ねなくて。

 

悲鳴ももう枯れて。

 

 

 

 

愚鈍な僕は、ようやく償う方法を思い付いた。

 

「ぜがィを…スぐわな…きゃ…」

 

 

僕に宿る炎が、どうすれば良いか教えてくれる。

メリナ姉さんが本来するはずだった大罪。

 

 

黄金樹を焼くための炎は、ここにある。

 

 

「ぐぅ…ァあ…」

 

 

手を地面につく。

体を持ち上げようとしたが、炭化していた腕が崩れて体が再び地に伏せる。

 

 

足を引き寄せ、今度は崩れないように頭と膝で慎重に体を持ち上げ、すぐ傍の岩に背中を預ける。

 

 

軽く持ち上げて振り下ろすだけで塵になった脚を、なんの感慨もなく見つめて、おぞましい感覚と共に生えてきた、傷ひとつない手足でなんとか立ち上がる。

 

 

…もはや人間じゃないなんて感傷は、もう無意味なことだ。

 

僕の役割は、番人だ。

永遠の火守りとして何度でも呪いの力で甦る火の巨人を倒すために、その心臓を喰らい血肉と為したときに、僕は彼にかかった刻印の呪いと共に役目を引き継いだ。

僕の身に巨人の血が薄くではあるが流れていたことも関係あったかもしれない。

 

ついでに役目を終えてもう機能していない釜の代わりに、巨人の火を戒めるための器になってしまったのは、先代をぶち殺した罰だろうか。

 

 

「なんでもいいか」

 

 

炎の揺り篭として僕の体は燃えている。

一応宿主として認めてくれているのか、体の内側に止まって表に出て来ないでくれているものの、先程まで全身を覆っていたものと遜色ない痛みと熱さが、己の内側で暴れまわっている。

 

 

 

それでいい。

この痛みと熱さだけが、僕の罪の重さを実感させてくれる。

 

 

きっと僕は死後、地獄に行くことも天国に行くこともないのだろう。

 

 

薪の末路は灰だ。

肉体も魂も塵になって、輪廻の輪には帰れない。

 

 

だけど、それでも。

 

 

世界を救うために、終わりの炎を樹に灯そう。

朽ち果てて、壊れていく時代を壊し。

 

 

 

 

「僕が、王になる」

 

 

 

 

 

 

『ありがとう、友よ。素晴らしい、戦いであった。

優しい貴公には過酷な試練だったやもしれんがな、俺は必要だと思ったから矛を交えたんだ。世界を救うというのなら、友であっても切り捨てる覚悟が必要だ。こんなこと二度としない?はは、まぁそうだろうな』

 

 

『…いつか俺が言った言葉を覚えているか?

英雄をめざすものならば、郷愁は捨てていけ、と。

だが、誰よりも故郷を思う貴公こそが、英雄となった。俺はな、そんな英雄が対等な友として自分を認めてくれていることが心底嬉しい。共に戦場を駆け抜け、共に飯を食らう。これ程気持ちの良い関係を築けたことを誇りに思う』

 

 

『…迷うな。ただ罪悪感で突き進んでいたら、簡単に死者に足を取られてしまうぞ。仮にたどり着いてもきっと世界の重みに耐えられない。

だから、迷うな。誰かに行く手を阻まれても、突き進む覚悟を持て。蹲って泣いてもいい。だが、世界を救うつもりなら、そこから立ち上がってみせろ』

 

 

『そう泣くものではないぞ、貴公。…うむ、鼻水まで。顔がぐしゃぐしゃではないか。

なに、気にするな。壺はいつか壊れるもの。どこぞの強者に壊されるよりも、自分が認めた友の手で終わりを迎えられたことを、俺は誇りに思う』

 

 

『それに。貴公に願いを託したメリナ殿のように、人間とは思いのバトンを繋いでいく生き物だろう?俺は壺だがな。

是非、受け取ってくれ。俺の中身と、この身の破片を』

 

 

『ふふ、ハハハ。

友に恵まれ、強敵に恵まれ、戦いに恵まれた。

まこと、良き壺生だった。

このアレキサンダーは、最後まで戦士の壺であったぞ!

ワーッハッハッハ!!ハーハッハッハッハ!

貴公の旅路に祝福あれ!!』

 

 

───試練として立ち塞がった壺の友人を殺した。

 

 

 

 

 

 

『ああ…お前か。俺を止めてくれたのは』

 

 

『情けない話だ。心のどこかで、お前に先を任せて死ぬことに安心している自分がいる』

 

 

『泣くな、破滅の狼よ。お前は強い。お前だから、後を任せられるのだ』

 

 

『さらばだ』

 

 

 

────正気を失った、主人を同じとする従者仲間を殺した。

 

 

 

 

 

 

『…そうか、よかった…

こんな無能でも、最後に…』

 

 

『ふふ…こんな私の、今際の際に泣いてくれるのだな…私は貴公が心配だ。優しすぎる』

 

 

『いつか、貴公が痛みを忘れてしまったら、思い出してくれ。貴公は友人のために泣ける優しき心を持つ男なんだと』

 

 

 

────迷子の先で壺を守ると決めた友人を助けられなかった。

 

 

 

 

 

 

『…ヘッ、ざまあねえな

勘違いした小悪党には、相応しい最後ってわけだ』

 

 

『…なあ、お前、助けてくれよ

俺は、呪われたくない。死ぬのはいい、だけど

今度こそ、真っ当に産まれたいんだよ…

なあ、お願いだから…』

 

 

『ありがとうよ…お前の炎は暖かいな…』

 

 

 

────ならず者の友人を呪いから解放するために殺した。

 

 

 

 

 

 

僕は、3人を除いて親しくなった人たちの命を全て取りこぼした。

 

 

 

「アハ」

 

 

気づいたら、体の内側で暴れ回る炎以外、痛みも熱も世界から消えてしまった。

 

 

「アハハハ」

 

 

僕の体には傷が残らない。

 

腕や頭が吹き飛んでも生えるし、お腹に穴が空いても塞がる。

 

痛いと泣き叫んで、手で押さえた時にはもうそこに傷跡はない。瘡蓋もない。

 

 

何もないのに、何を痛がればいいのだろう。

 

そう思うと、痛がるのがなんだかバカらしくなってしまった。

 

 

他人を抱きしめても温もりを感じれない。

 

自分の痛みに気づかない。

 

他人の痛みは想像するしかない。

 

 

「アハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 

僕は所詮、化け物だ。

 

 

 

 

 

私は夢から醒める。

彼の『悼み』の記憶から。

 

 

「───おはようございます」

 

 

私の名前はベルセルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリス。

最近の目標は、誰かが二度と彼のような苦しみを背負わないためも、ベルセルグを立派な国にすることだ。

 

 

そのためにも手始めに、年下の彼に「お姉ちゃん」と呼ばれるところから始めよう。「お姉ちゃん」。いい響きだ。

 

そして、痛いと言えなくなった彼を抱きしめてあげるのだ。

 

胸に宿る、くすぐったいようなはじめての感情に胸をときめかせながら、私は起き上がった。

 

 




妄想の塊を最後まで読んで頂き誠に有難うございます。

話はまだまだ続きます。
次が投稿されたその時はよろしくお願いします。

なんか不死身の力と自分の体が燃え続ける炎の力を得て、周りがいっぱい死んで主人公は壊れたんだなあくらいの認識で大丈夫です。


・主人公が燃えていた理由
メリナさんが主人公をこの世界に呼びつけた二本指と祝福を燃やしていたときに火の粉がかかったから。
そして、それは偶然ではなく役目を終えて自分達の器である火の釜が壊れることを悟った巨人の火が、『お、ちょうどいいところに番人おるやんけ。移ったろ』と新しい器を求めて主人公の体に飛び込んだからです。

・主人公が不死身な理由
火の番人であった巨人を倒すときに、その巨人が持っていた不死性を攻略するために心臓からなにまですべて食べたから。
その時に巨人の血をついだ遠い末裔だったのもあって、巨人にかけられていた火の番人としての証でもある刻印の呪いも取り込んでしまい不死となった。
ついでに火の釜も兼任しているため、呪いなしで死ぬと世界が燃えます。

・壺の友人とは
エルデンリングに登場するNPCの一人アレキサンダーのこと。
彼はゲーム内で決闘を申し込んできます。
今回はただ戦いたいというよりは、世界を救うつもりの主人公の覚悟を問うために戦い、討ち果たされました。

・従者仲間
彼はブライヴ。
彼は物語のとあるルートを進行していると呪いによって正気を失い、主人公に襲いかかってきます。
呪いをどうすることもできない主人公によって殺されました。

・壺を守ると決めた友人
ディアロス。
彼はイベントを進めると壺村という場所で死にます。
従者を殺されたり、火山館で働いてみたりいろいろ迷走しつつようやく見つけた安息の地を守るために彼は一人で戦い殺されました。主人公が間に合っていれば死にませんでした。

・ならず者
ビッグ・ボギーです。
彼は糞食いというキャラを解放すると、彼の標的にされてむごたらしく死にます。
主人公が深く考えずに解放した結果殺して楽にしてあげないといけない状態になりました。

・その他
ヒューグやローデリカ、指読みの婆さん、ベルナール、イジー等原作で死亡イベントがあった人たちは皆死にました。
生き残った親しい3人は、亜人のボック、ラニ、パッチです。
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