このハザ   作:ひつまぶし太郎

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原作にようやく合流します。
三巻からです。



第七話。アクセルの黙っていれば美人な三銃士

 

 

昨日は調査対象がお縄になったことに頭を抱えていたが、とりあえず自力で噂を拾い集めることにしよう。

 

それに具体的に何の罪でしょっ引かれたのかはわからないが、本人は否認してるらしいし、冤罪なら冤罪で、疑いを晴らすことが出来ればデストロイヤーの恩返しにもなるかもしれない。

 

 

「なるほど、国直々のクエストですか…。はい、確かに。なら、ちょうどあそこにいらっしゃるめぐみんさんが、そのパーティーのメンバーですよ」

 

 

『───なんですか?私の身長が小さいから見えなかったとでも言うんですか!いい度胸ですね!』

 

 

自分がクエスト受けてる旨を説明して、書類が正式なものであると確認してもらったギルドの受付のお姉さんが指差した先では、なんか自分の倍くらいの身長の男性に掴みかかる少女が一番目立っている。

 

 

「…えー、どれですか?まさか、あの男性冒険者に掴みかかってる女の子じゃないですよね」

 

 

「その冒険者さんです。この街でも知らない人はいない有名な紅魔族の女の子ですよ?」

 

 

「ほんとにぃ?」

 

 

 

 

 

 

 

「ほう…あなたが私の母がいっていた、空から降ってきた男の子ですか。私の家族がお世話になったようで」

 

 

とりあえず話を聞くために、彼女に声をかけギルドの酒場の一席に腰を掛ける。

メニューから適当な野菜スティックと水を頼んで、自己紹介しあったところ、その少女は自分こそがひょいざぶろーさんの娘だとか意味わからないことを言い出した。

 

『私に似て背が高くて胸の大きい美人だから、すぐに分かると思いますよ』と、ゆいゆいさんは言っていた。

だが、思い返すとゆいゆいさんも別にスタイル抜群ではなかった。

どう言い繕ってもスレンダーな美人だろう。

つまり。

 

 

「嘘だったってことだ」

 

 

「は?あの、ちょっと?」

 

 

「なぁにが、私に似て背が高くて胸の大きい美人だから、すぐに分かると思いますよ、だ!何処だよ。夢のはなしか!?返せよ…美人なお姉さんと知り合えると期待してた僕の気持ちを返してくれよ!よくもだましたアアアア!! だましてくれたなアアアアア!!」

 

 

「…喧嘩売ってますか?売ってるんですね!いいでしょう買いましょうとも!年上として生意気な年下は、私の杖の錆びにしてやりますよ!」

 

 

「めぐみんさんは僕よりも三つ年上の魔法使いなんだから、身長が僕と同じくらいなはずがないだろ!こちとら外見年齢八歳やぞ!偽物め!!」

 

 

「…ぶっころ」

 

 

「なんで初対面で喧嘩になるんですか!?ギルドを出禁にしますよ!」

 

 

結局、ギルドのお姉さんに仲良くつまみ出された僕たちは、あのあととりあえず互いに謝った。

そして、僕が国のクエストでパーティーについて調べていることや、カズマさんの冤罪を晴らそうとしていることを共有し、協力関係を結ぶことができた。

 

 

アークウィザードらしく、高いかしこさを持つらしいので、とても心強い。

 

…ただ、なぜか頑なにスキルの欄を見せてくれなかったのは何故なのだろう。

嫌な予感がするのは気のせいか?

 

 

 

 

 

 

 

「はー…せっかくの簡単な調査クエストでいきなり躓くとは…。カズマさんの冤罪の証拠も探さないとなのに」

 

 

次の日、僕はとりあえず宿代を稼ぐためにカエルをアクセルの市壁付近の草原に狩りに来ていた。

 

ジャイアントトード。

体は大きいが動きは遅く、死体にも良い値がつくという、稼ぎの低い駆け出し冒険者にとってとてもありがたいモンスターだ。

しかも繁殖力が高いため、どれだけ狩っても、生態系に易々と影響がでないのも良い。

 

 

神すら殺せる最大強化されたロングソードで簡単に腹をかっさばきながら、返り血を払う。

ジャイアントトードは金属を嫌う傾向があり、チェーンメイルを来ている僕からすれば、こんなに美味しいモンスターもいない。

 

 

こっちに戻ってきての初クエストクリアも目前で、浮かれていた僕は。

 

 

「『エクスプロージョン』ッ!」

 

 

唐突な爆炎によって吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

じゃんじゃじゃ~ん。今明かされる衝撃の真実ぅ~!

 

なんとめぐみんは爆裂魔法しか使えない、超一点特化の魔法使いだった。

頼りになると思っていたのに、頭爆裂女だったのはもはや詐欺だろ。

さん付けもやめてやる。

 

とはいえ、あのひょいざぶろーさんの娘さんなのだからそういう可能性を考慮しておくべきだったという節もある。

何故か極端な効果を持つ魔道具しか作れない父ひょいざぶろーさん、あらゆる耐性を貫通する異常な熟練度を誇る魔法【スリープ】使いの母ゆいゆいさん、爆裂魔法しか愛せないめぐみん。

まさかこめっこちゃんも一芸特化の魔法使いになるんじゃないだろうな。悪魔使い特化とか。

 

 

そして、爆裂魔法は最強魔法とは良くいったもので、確かにその威力はとんでもないものだった。

天変地異でも起こったかと焦ったくらいだ。

 

術者がカエルに食われてなければ、格好もついたのに。

 

 

「くっ…忘れていました。今日はカズマだけでなくダクネスやアクアもいないんでした…。あー、居ませんかね!幼気な私を背負って街まで帰ってくれる親切な人は!」

 

 

「いや、くっ…じゃないが。思いっきり僕を視認してからぶっ放したじゃん」

 

 

「なんのことかわかりませんね」

 

 

「めちゃくちゃ目があった上で、一発かましてびびらせてやろうって笑い方してたじゃん。どうせ昨日のこと根に持ってるんだろ、僕は詳しいんだ。騙されんぞ!」

 

 

とはいえ、目の前で人が補食されるのを眺める趣味のない僕は、結局動かなくなったカエルを討伐し、めぐみんを背負って、カズマさんの屋敷に帰還することになった。

 

 

「私よりも少し背が低いのに意外と安定していますね、びっくりです」

 

 

僕におぶられているめぐみんが、背中で呑気なことを呟いた。

何でもいいけど耳元で喋るのやめてくんないかな。

こそばゆいんだけど。

 

 

「そりゃどーも。昔姉に強請られて何度かおぶったことがあるからな」

 

 

「私に似て美人だったんでしょうね」

 

 

「…とびきりな。て言うか、そんなことよりも、だ!」

 

 

僕は会話を中断して回りを見渡す。

 

 

「微笑ましそうに見てんじゃねーぞ!散れ散れ!お前も粘液まみれにしてやろうか!」

 

 

身長のほとんど変わらない幼い男女がおんぶしてる姿は、端から見れば微笑ましいのだろう。

わざわざ立ち止まって、僕らの姿を見物している街の人たちを威嚇して追い払う。

 

 

「ったく…背負われている女の子がカエルの粘液まみれなのに、微笑ましいわけねえだろ。普通に臭いしネチョネチョしててゾワゾワする。罰ゲームすぎるんだよな」

 

 

「し、失礼な!」

 

 

…というかやっぱり8歳の時から成長してない僕と、そんなに目線が変わらない13歳のめぐみんは普通に小さいと形容して問題ないのじゃなかろうか。

そんなこと言ったら、カエル臭いお姉さんにギュッとされてしまって泣きを見る羽目になったのは完全に余談だろう。

 

 

 

結局、送り届けるだけじゃなくて屋敷でお風呂まで借りてしまったのが申し訳なかったので、キッチンを借りて、グラタンを夕飯として振る舞った。

 

あと、なんか尋常じゃないくらい神聖な力を持ったアークプリーストの女の人が『大変よダクネス!めぐみんが…めぐみんが男の子連れ込んでる!』と騒いでいたので、鼻で笑っておいた。

脛を蹴られた。

 

 

 

 

 

 

カズマさんに屋敷に勝手に上がらせてもらったお詫びと陣中見舞いを兼ねて、警察署に差し入れしようと唐突に思い立ち、一緒に調査していためぐみんにキッチンを借りれる場所を聞いたところ、再び屋敷を訪れることになった。

 

あれ、無限ループか?

 

 

「アクアー!帰りましたよー」

 

 

「おかーえり!って、めぐみんったらうちにまたつれてくるなんてその子のこと本気で気に入ったの?まぁ昨日作ってくれた料理が美味しかったり、良い子だとは思うけど。私としてはなんだかちょっと不吉な雰囲気がする子よりは、うちのカズマさんの方が…方が。ねえめぐみん、カズマさんの良いところってなにかしら」

 

 

「バカなこと言ってると、カズマが釈放され時、アクアがカズマの隠していたお酒飲んだことばらしますよ。彼にはキッチンを貸すために連れてきただけです!」

 

 

「今すぐお茶を用意するわね?ゆっくりしていってちょうだい!」

 

 

「アッハイ」

 

 

というやり取りを経て、僕は屋敷のキッチンに通された。

昨日も思ったけど、暖炉や柱、庭なんかから、とてもじゃないが駆け出し冒険者が住めるとは思えないくらい豪華な屋敷なことが見てとれる。

キッチンも魔力式のコンロや窯なんかがあって、これなら僕の腕も存分に振るえるというものだ。

 

 

「……」

 

 

めぐみんは料理には時間かかるだろうからと、自分の部屋に引っ込んでしまった。

必然的に、僕はお茶を用意してくれようとしているアークプリーストのアクアさんと、キッチンで二人きりと言うことになる。

 

 

「えっと、どうしました?」

 

 

お茶を用意する、と言われたのに何故か出てきたお湯を飲みながら、食材や調理器具なんかを確認していると、無言の視線が突き刺さってきたので、声をかける。

 

 

「なんでこんな良い子そうな子に、不吉な雰囲気を感じるのかしらと思ってね?」

 

 

「一応アンデッドでも悪魔でもないですよ?」

 

 

たぶん。

ターンアンデッドもエクソシズムも効かないことは確認済みだし、アークプリーストのゼスタさんにもセーフ判定をもらっている。

 

 

「そうなのよねえ…」

 

 

「…アクア様って水の女神様を名乗ってるんですよね。本当なんですか?」

 

 

「まぁね。私ってば本当の女神だからね!もしかして信じてくれるの!?」

 

 

「えっと…まぁ」

 

 

少なくとも常人では洪水なんて起こせないだろう。

今日の調査知った事実なのだが、彼女は魔王軍幹部のデュラハンを討伐した際、多くの家が流されるほどの水を召喚している。

 

 

「ほんとに!?やっぱりめぐみんの彼氏なだけあるわね!私も最初からいい人だと思ってたの!」

 

 

「すいませんめぐみんの彼氏だけはありないです」

 

 

好きな人がいる人に恋するほど僕の目は節穴じゃないし、僕には好きな人だってちゃんといるのだ。

それにタイプは身長が高くておっぱい大きい美人なので、めぐみんは当てはまらない。

 

 

「それならちょっと聞いてみたいことがあるですけど───」

 

 

 

 

 

 

 

あのあと、相談事に関して思わぬ収穫もあり、物欲しそうな顔をアクアさんがしていたので警察への差し入れ前にお裾分けしておいた。

 

 

『ありがとう親切な男の子!あま~いお酒と一緒に、大事に食べることにするわね!』

 

 

皆さんでどうぞと渡した筈のかごを、とてもいい笑顔で大事そうに抱えて自室に戻っていたが僕は知らない。

他所のパーティーの問題に首を突っ込むほど僕は愚かではないのだ。

 

ついでに、

 

 

『ずるいですよアクア!スイーツの独り占めは犯罪です!』

 

 

『ふぁんのことかわからないわ』

 

 

『おいアクア、食べながらしゃべるな。あとそのいい匂いのするスイーツ、私にも分けてほしのだが…』

 

 

と、扉越しに喧嘩する声も聞こえた気もするけど、きっと気のせいだろう。

 

 

作ったのは蜂蜜を溶かし込んだ生地を使ったカヌレ。

これは結構な自信作で、機嫌の悪いラニ様すら一瞬で子供のような笑顔にする最強のお菓子だ。

 

最終兵器と言っても過言ではない。

 

昔、『はあい調子いい?』と言いながら近づいてきたセルブス教授に唆されて、ラニ様に激辛ジュースを差し入れしたときも、僕の命を救ってくれたのだから。

 

 

 

───セルブスのお尻は死んだ。本体の方がブライヴにけつの穴から激辛ソースをぶち込まれたからだ。

 

 




今回も最後まで読んで頂き誠に有難うございます。
評価してくださった方やお気に入り登録してくださった方がいるという事実に喜びと緊張で震えております。
本当にありがとうございます。
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