このハザ   作:ひつまぶし太郎

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本日二話目の投稿です。
そして、真面目な戦闘シーンが挟まります。
作者の文才が足りないので、読者の皆様におかれましては、クライマックスでなんか格好いい曲をご自身でかけて気分をそれっぽくすることで雰囲気を補ってください。



第八話。アクマゲドン

 

 

お昼から執り行われた証拠なんかねえよ、知らねえよと言わんばかりの杜撰な裁判を眺めながら、報告書をそれっぽくまとめてみたけど、これは無理かもしれない。

 

報告書の方は割りと問題はない。

ギルドのルナさんのアドバイスのお陰で、ある程度形になっている。

 

無理かもしれないのは、カズマさんの裁判の方だ。

国家転覆罪も、領主のお屋敷を意図せずにとはいえ爆破したのは間違いないらしく、方向性としては刑を軽くするしか無さそうだ。

それか脱獄してよその国に行くとか?

うーん。

 

魔王軍疑惑はなんかもうあれだ。

また幹部でも狩ればいいんじゃないかな。

実績で黙らせれば、それですべて解決するだろう。

 

 

というか裁判中は忘れてたけど、アルダープってあれじゃん。

元囚人仲間のアンドルフさんを豚箱にぶちこんだ貴族じゃん。

…あいつぶっ飛ばしたらするっとまるっと解決したりしないかな。

 

とりあえず、明日は一度王都に戻ってアルダープの別荘に探りを入れてみよう。

僕一人だと難しいかもしれないが、何故か地上に降りてきてて、やたら薄着で破廉恥な格好をしたエリス様…もとい盗賊職のクリスさんに協力してもらえば、事は上手く運ぶだろう。

 

裁判に証人として出てきた時、なんの間違いかと思ったけど、アクア様も地上にいるのだし、そういうこともあるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

と、言うわけで次の日。

ダクネスさんのコネを使って仮釈放になったカズマさんとは一先ず合流せずに、クリスさんと一緒に、僕は王都へととんぼ返りしていた。

 

目的地は当然アルダープの別荘。

アクセルの街のアルダープの本邸はデストロイヤーの動力であるコロナタイトで吹き飛んだ上に、事実関係の調査で警察の手が入っている。慎重で小悪党なアルダープなら疚しい証拠は別荘に運んだ可能性が高いと僕は睨んでいた。

 

そして、都合の良いことにアルダープは現在、アクセルの街の高級な宿屋に泊まっているため、王都の別邸にはいない。

 

ガサ入れする絶好の機会だ。

出てきた何かしら不都合な証拠をネタに奴を脅し、訴えを取り下げさせるのが、僕が考えたたった一つの冴えたやり方という訳だ。

裁判なんかに付き合う必要もない。

 

アクア様への相談事を加味しても、カズマさんにはささっと普通の冒険者に戻ってもらうことにしよう。

 

 

「その為にもよろしくお願いしますねクリスさん」

 

 

「任っせてよ。これでも私は王都でも有名な義賊として…じゃなくて!盗賊職の冒険者として!それなりに有名なんだから」

 

 

「今義賊って言いました?」

 

 

「ううん、そんなことないよ?」

 

 

「…そういえば、最近噂の義賊は銀髪のイケメンらしいんですよね」

 

 

「ふーん!なら、ますます私と関係ないね!…さ、行こうか。目的地はアルダープの別荘だよ。気を抜かないように!」

 

 

じとりと見つめる僕を振りきるように、クリスさんは先陣をきって歩き出した。

なんなら男扱いにご立腹なまである。

 

それでいいのか女神。

 

 

「あ、待ってくださいよクリスさん。串焼き奢るんで機嫌直してください」

 

 

…結論から言うなら、僕らはアルダープを甘く見ていたのだろう。

せいぜい出てくるのは不正の証拠やら裏金くらいの小悪党、そんな風な認識があったのは間違いない。

 

 

だからこれは、僕のせいだ。

 

 

 

「ヒュー!ヒュー!あはは!出てこなくていいのかい?このままだともっとたくさんの人が傷付くことになるよ!」

 

 

「──────ッ!」

 

 

不気味な笑い方をする悪魔が、まるで指揮をするかのように、気取った動きと共に腕を振るう。

ただそれだけで衝撃波が産まれ、盾を構えた騎士や冒険者たちが声を出す余裕もないままに吹き飛ばされた。

 

 

 

「…いやぁまさか、アルダープの野郎が地下で悪魔を飼ってるとは。しかも地獄の公爵級のと来た」

 

 

無事、何事もなくアルダープの別荘に潜り込んだ僕たちは、地下室にも当然のように入り込み、そこで悪魔と遭遇した。

 

空気の淀んだその部屋で、その悪魔は気味が悪いくらいの無表情を浮かべて座っていた。

 

 

『やぁ、君たちは誰?ヒュー…誰もこれないようにしていたはずなのにたどり着けたのは、そこの眩しい誰かのお陰かな?まぁ、なんでもいいか。見られたからには、消さないと、だよね?』

 

 

言うべきことはもう言ったと言わんばかりにおもむろに立ち上がった悪魔の顔には、子供のような笑み。

 

 

『…まずいよ、こいつ公爵級だヴァン君…!』

 

 

構える僕たちを巻き込むようにして、悪魔は屋敷を吹き飛ばした。

 

 

公爵級悪魔は、世界の命運をかけて神々とガチンコでやりあってる連中で、その実力は他の悪魔たちと一線を画し、その一挙手一投足すべてが人間を殺しえる破壊の化身だ。

 

例えば悪魔自身が人間殺さないなどと言う縛りを自らに課していたり、破滅願望があったり、ご都合主義的に愉快な性格ならまだしも、基本的に性格は残虐で非道。人間を餌か、良い音のなる楽器程度にしか認識していない。

 

…そんな相手を自分の家の地下に首輪もつけずに閉じ込めておくアルダープには、一周回って尊敬すら覚える。

 

 

そして今、僕たちは瓦礫の影に逃げ込んだ状態で様子を伺っているというのが現状だった。

 

 

「ヴァン君どいて!あいつ殺せない!」

 

 

「いやいや、無茶でしょ。とりあえず落ち着いてください」

 

 

「離して!」

 

 

僕の腕の中で暴れるクリスさんを必死に押さえ込むも、なかなか大人しくしてくれない。

クリスさんを今解き放ったら、間違いなく女神としての力を解放してあの悪魔に突貫してしまうことだろう。

 

それは困る。

 

現在街中で急に爆弾が爆発したような状況だ。

ぞくぞくと騎士やら冒険者たちは集まっているが、逃げ遅れた一般の人の避難は完了していない。

そんな人たちを助けようとすれば、性格の悪い悪魔は、そこをあえて攻撃して、二次被害を続出させるのが目に見えている。

 

だから、ばれずに行動できる人が必要だ。

求められているのは悪魔を滅ぼす女神エリスではなく、冒険者の盗賊クリスさんだ。

 

 

「んぁ…っもう!」

 

 

ふと、クリスさんのむずがるような声に、今の状況って僕は大丈夫なのだろうかという疑問が沸き起こる。

 

クリスさんがなかなか際どい格好をしているせいで、嫌がる彼女の体を無理矢理まさぐっているような絵面になっているんだけども。

大丈夫?

神罰とか、信者の人に刺されたりとかしない?

 

ええい、気にしたら負けだ。

緊急時なんだ。

仕方がなかったってやつだ。

 

 

「この…っいい加減大人しくしないとチューしますよ!」

 

 

「!?」

 

 

「今は盗賊としてのクリスさんの力が必要なんです!」

 

 

「お、大きな声で…なにいってるのかな君は!…だけど、うん。落ち着いた」

 

 

僕の何十倍も生きてるくせに、初心な少女のような反応する女神様に若干戸惑いながら、クリスさんに自分の考えを伝える。

 

 

「とりあえず、クリスさんは潜伏して救助の方よろしくお願いします」

 

 

「君は?」

 

 

「時間を稼ぎます」

 

 

 

 

 

 

 

 

悪魔が僕の腕を千切る。

お返しにはぐれ狼たちが死角から噛みついて動きを止め、僕が悪魔の腸をロングソードで貫く。

僕の剣が悪魔に突き刺されば、悪魔の蹴りが僕の胴体を真っ二つに切り裂く。

 

互いに次の動作に移る時にはすでに再生が始まっており、不死任せの戦いは、一応拮抗はしていた。

 

 

「押し切ってやる…!」

 

 

防御を捨て、肉どころか骨すらも切らせて一撃を見舞う。

一撃で足りないから、二撃目三撃目を。

連撃が悪魔の防御を抜けて、何度かその身体に傷をつけているというのに、悪魔の存在感は未だに衰えない。

 

悪魔に撫でられただけで崩れる、弱くなった自分の肉体が恨めしい。

駆け引きが成立せず、殺されながら攻撃するか、壊されながら攻撃するかの二択くらいしかないのが正直きつい。

 

「時間を稼ぎます(キリッ)」などといってクリスさんと別れ、悪魔と相対してからこっちは既に15は死んでいるというのに、稼げた時間は長くはなく、同時に悪魔に与えれた筈の致命傷も回復されて、いい加減うんざりしてきた。

 

 

再生能力持ちってずるいしめんどくさいし。

戦っててなんて楽しくないんだろう。

 

おいおいクソか?と僕がため息つきたい思いに借られているのに、悪魔はとても楽しそうだ。

地下室で見たときは気味が悪い無表情だったのに、今は無邪気で嗜虐心丸出しの気色の悪い笑みを浮かべている。

 

 

「これはどう?こうしたらどうかな?血まみれな君はすごく素敵だよ!!」

 

 

というか下がったレベルを鑑みなくても、人間と悪魔ではそのスペックに差がありすぎる。

徐々に何も出来ずに殺される場面が増えてきた。

 

わざとらしい大振りの横凪ぎを潜り抜けるも、置くように放たれた回し蹴りで腸が裂けて中身がこぼれ落ちる。

勢いよく飛び散る赤い飛沫が、ただでさへ血生臭い足下をさらに汚していく。

 

 

「君の悲鳴を聞かせてほしいな!」

 

 

「お前の息が臭すぎるから嫌!」

 

 

戦力差は絶望的。

 

だが、悪魔と言葉を交わしながら、僕は内心でほくそ笑む。

周辺の救助を速やかに終わらせたクリスさんが、崩れた屋敷の上で隙を伺っている。

それはつまり、悪魔を殺す準備が出来たということに他ならない。

 

さりげなく、僕を餌に悪魔を誘導しクリスさんの足下へと回り込む。

 

まるでダンスだ。

足運びに呼吸、手の動きで相手をコントロールする。

頭の中で粋なジャズを流して、こんな状況でも気分最高潮だ。

 

くるり、と自分と悪魔の位置が変わるようにステップを踏む。

そして、悪魔の腕が僕の首に手をかけたその瞬間に、クリスさんが今とばかりに降下した。

僕の頭を破壊して無防備になった状態で、悪魔は咄嗟に反応してみせるが、落下の勢いのままに突き出した短剣の方が速い。

 

 

回避の間に合わない落下による致命攻撃。

しかも強力な聖なる力が込められた魔法のダガーによる一撃。

悪魔に当たれば、それだけで勝負は決まっていただろう。

 

 

「残念、外れ!」

 

 

だが、現実はいつだって非常だ。

悪魔は回避ではなく防御を選んだ。

それも、自分の体ではなくその場にあった最も便利な盾を使って。

 

 

「お前ッ!」

 

 

「刺したのは君だろ?」

 

 

悪魔は健在で、首のない僕の死体が激昂するクリスさんのダガーを遮っていた。

悪寒にしたがって、頭部が再生するよりも先に、罪悪感で動きを止めてしまったクリスさんを庇うようにして抱き締める。

 

その直後。

 

 

「外れた方にはもれなく空の旅行をプレゼント!」

 

 

凄まじい衝撃によって、僕らはまとめて空へ吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

ぐしゃり、と。

 

命が終わる音と共に、誰かが落ちてくる。

 

地面に頭から突っ込み、その手に抱いた人だけは傷つけまいとするかのように、自身を下敷きにして吹き飛んできたその誰かに、王城前の広場に避難してきていた人たちは慌てて飛び退いた。

砂塵を巻き上げて転がる小さな体は、その勢いを殺しきることが出来ずに城壁にぶち当たる。

 

 

そして、それを追いかけるように空から降ってきた悪魔によって、人々はようやく事態を飲み込んだ。

 

 

「きゃ、きゃあああああああああああああ!?」

 

 

恐怖が爆発する。

城の中へ逃げようと、順序を押し退け進もうとする人たちのせいで、避難誘導に当たっていた騎士たちの身動きが封じられてしまう。

子供が泣き叫び、大人が取り乱す。

 

あっという間に場を混乱と恐怖が支配してしまっていた。

 

 

「あははは!あははは!!良い声だよ、みんな!ヒュー、ヒューッ!」

 

 

笑い声と共に、一段と悪魔の力が増す。

人間の悪感情を餌に生きる悪魔にとって、今この状況は食べ放題のようなものだ。

絶望という自分が一番好みの感情に満ちたこの空間は、彼に潤沢な力を与えていく。

 

 

「う、うおおおおおお!」

 

 

極上の食事を味わい、感極まったように棒立ちになっている悪魔に向かって、人垣を越えた騎士や移動した悪魔を追いかけて来た冒険者たちが攻めかかる。

 

だが。

 

 

「禍れ」

 

 

たった一言を発しただけで、破壊と蹂躙がもたらされる。

 

『辻褄合わせ』、『真実を捻じ曲げる者』。

同胞の悪魔にそう呼ばれる彼は、アルダープに普段命じられているような人の意思や行動といった精神への干渉ではなく、空間…いや、世界そのものを捻じ曲げた。

 

 

体があらぬ方向に捻れ、武器も鎧も砕け、血飛沫が舞う。

僅か数瞬で引き起こされた惨劇に、逃げ遅れた人たちが、絶望に屈し、諦めたように足を止めてしまう。

 

 

「───」

 

 

彼はこの力の使い方を先程まで忘れていた。

だが、先ほどの女神お手製の聖なるダガーによる一撃で感じた命の危機、大量の悪感情を平らげたことで、足りない頭に閃きが降りてきてしまった。

 

まさに、悪魔的な閃き。

覚醒した悪魔を止められる者は、もういない。

 

 

「まだだッ!」

 

 

だが、そんな絶望を切り裂くように、金色の斬撃が悪魔の頭を掠める。

それを追いかけるように一人の少年が悪魔に向かって突貫した。

 

 

 

 

 

 

 

まったく。

睡眠以外で意識が飛ぶのは、この世界に来てからもう二度目だ。

狭間の地の外はもっと平和だと思ってたんだけどなぁ。

 

 

「まだやるの?」

 

 

「お陰様でよく眠れたからな」

 

 

当然ながら、お互いに傷はない。

悪魔を釘付けにするために接近戦を主体に立ち回っていたから、さっき使命の刃の戦技を使ったと言っても魔力だって全然残っている。

 

 

「ぺっ」

 

 

瓦礫を蹴飛ばした際に口に入った砂利を吐き捨てる。

問題なのは、現状確実に悪魔を殺すことの出来るクリスさんが落下の衝撃で気を失っていることだ。

 

だから、僕がやるしかない。

 

 

「禍れ、禍れ、禍れ!!ヒュー、ヒューッ!避けると他の人に当たっちゃうよ!」

 

 

…ないんだけど、回りの人を庇う必要があるせいで、悪魔に攻撃をしている暇がない。

さっきまでとは全然異なる性質の攻撃に慣れないせいで、動きが悪い。

捻じ曲がり、弾けた僕の体は即座に回復しているものの、このままでは埒が開かない。

 

 

「さっきからなんだよその攻撃は。イメチェンか?だったら僕は前の方が好きだったぜッ!」

 

 

「ヒューッ!禍れ!それは残念!」

 

 

「くそめんどくさい…だから第二形態ありのボス嫌いなんだ!特にお前みたいな強くて速くてタフなやつは!」

 

 

似ても似つかないのに、悪魔の姿と赤髪の麗人の姿がダブる。

 

 

───知りえたか?

 

 

「知らねえ、なぁ!」

 

 

幻影を振り払うように、僕の中でさらにギアを上げていく。

 

 

いつもは体の内側に止めて、たまに吐き出すくらいの炎を、解放する。

髪の毛一本から細胞の一つ一つ、僕の全てを薪に焚べる。

 

ただし、無差別に解放すれば、悪魔よりも僕の方が人を殺す事になってしまうので、慎重に。

 

…本当はレベルの下がった体が耐えきれるか分からなかったので、使いたくはなかったのだけど。

 

 

「────起きろ、食事の時間だ」

 

 

解放すると決めた瞬間に、全身が黒焦げになっていく。

 

自分の肉が焼ける悪臭が鼻を掠める。

忌々しい。僕の『いたみ』の記憶の象徴に、不快感が止まらない。

 

 

───熱い。

 

 

瞬時に焼け焦げた全身がひび割れ、その隙間から炎が舌を出す。

 

 

───熱い。熱い。

 

 

僕は普段、自分の身体を釜に見立て、幾つかの枷を掛けることで巨人の火を閉じ込める檻として機能させている。

 

その枷を一つだけ取っ払う。

 

 

───熱い。熱い。熱いッ!

 

 

僕はこの戦い方が嫌いだ。

打ちのめされ、みっともなく泣きわめく弱かった自分を思い出すから。

 

 

だけど、それでも。

そんな感傷は、出し惜しみする理由には成り得ない。

 

 

───閉じた左目から炎の雫が溢れ落ちる。

 

 

 

炎の涙は瞬く間に全身に広がり、炎に覆われた人間が出来上がりだ。

 

 

言うなれば、自分自身へのエンチャント。

儀式と言い換えても良いだろう。

僕の身体を巨人の火に捧げることで、ステータスの底上げを行う儀式。

 

だがこれは、大きな力を僕にもたらすと同時に自分の体を崩壊させる諸刃の剣でもある。

 

 

「そんなこと、知るかッ!」

 

 

────命が燃える音が迸った。

 

 

その音を置き去りにするように、僕は悪魔に向かって飛び込む。

自分の目すら眩むような熱光の中で、悪魔の照準が定まるよりも速く駆け、悪魔の口が開く直前に、サマーソルトキックで口を物理的に塞ぐ。

 

 

「はぁああああああああああッ!」

 

 

「ヒューッ!ヒューッ!なら、こうしようかな?」

 

 

僕の変化を見て、僅かとはいえ溜めが必要な業を即座に捨てて、悪魔の剛腕が振るわれる。

 

自分の命を削り、限界の果てにいるからか、極限までに引き延ばされた一瞬の中で、悪魔の口元が嗤っているのを確かに見た。

圧倒的な強者が獲物を痛ぶる時の、見下すような目。

 

それを真っ直ぐ睨み返しながら、何度も僕の命を破壊したその死の一撃に向かって、僕は回避も防御も捨てて突撃する。

何度も繰り返された僕の死という結果を、悪魔が確信したその交差の瞬間。

 

 

───今度は炎が真正面から食い破った。

 

 

「!?」

 

 

驚愕と餌に手を噛まれた事への不快感。

 

 

「やっと、その気色悪い笑みが消えたなあああああああああああ!」

 

 

自壊する肉体が、もう一刻の猶予もないことを伝えてくるが、全霊を掛けて走り回る。

悪魔の灰になった手足をすり抜け、無防備になった顔に炎を纏った全力のパンチを叩き込む。

 

身じろぎするだけで人を殺せる悪魔を、速度と破壊力で上回る事で完全に封殺する。

切り飛ばし、殴り飛ばされる事でようやく悪魔の足が、地上から浮き上がった。

 

 

「空の旅、さっきのお返しに僕が連れてってやるよ!」

 

 

その体を掬い上げるように体当たりをかますと同時に、踏み締めた足元の炎を爆発させて空高く舞い上がる。

 

 

「─────!」

 

 

そして。

 

 

 

 

 

世界を純白の極光が塗りつぶした。

 

 

 

 

 

 




今回も最後まで読んで頂き誠に有難うございます。
投稿前に確認したら過去最多の文量で驚きました。
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