このハザ   作:ひつまぶし太郎

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実習を頑張っていたら、評価バーが赤くなっていて嬉しかったので短いですが書きました。

お気に入りと評価、ここすきありがとうございます。
個人的にコログ構文と万丈構文のところにここすきがあって嬉しかったです。




もしめぐ②

 

 

 

釈放され、めぐみんの家に住まわせてもらっている僕は今日、めぐみんには内緒で学校に向かっていた。

 

理由は勿論一時的に入学するためだ。

僕の年齢はもうすぐ10歳だし、学校で知恵をつけるのも悪くない。

つけるのは僕じゃないが。

 

それに10歳になれば特別な力を持つ子どもは魔法学校に入学するのは王道。

古事記にもそう書いてある。

 

そして毎年ハロウィンに呪われているかのように襲撃イベントに巻き込まれたり、真の友を得たりするのだ。

 

 

あと、なんか魔法使いの学校ってかっこいいし。

カーリアは魔法(物理)使いばっかりだったし、正統派な魔法使いの学校を見てみたい。

 

 

さらに加えていうのなら、下がったレベルを補うためにも、知識を蓄えておきたい。

 

 

───狭間の地とこの世界ではレベルとステータス、スキルの概念が異なる。

 

狭間の地ではステータスの限界は99だったし、レベルもステータス一個につきひとつ上がるから結構ぐんぐん上がったし、狙ったステータスを上げることが出来た。

 

だが、レベルを上げるには巫女が必要で、ルーンの力を巫女に捧げてはじめてレベルが上がったりと、どこか儀式めいた側面を持っていた。

 

 

逆に、こちらの世界での各ステータスはだいたい三桁はあるし、レベルは一つあげるのもなかなか大変で、レベルが一つ上がればその人の才能に合わせてステータスが頭打ちになるまで勝手にその人の適正やら経験次第で上がっていく。ついでにレベルが上がるとスキルポイントが一つ貰える。

 

そして、ルーンの力ではなく、倒した敵の持つ魂の記憶──いわゆる経験値を貯めることで、自然とレベルが上がっていく。

 

そんな感じだ。

 

狭間の地が能力の購入で、こっちの世界は貯蓄とか蓄積みたいな感じと言えば少しは伝わるだろうか。

実際ルーンは貨幣としても使われていたので、そこまで的外れな例えじゃないはずだ。

そして貨幣である以上、通貨が異なるどころか無価値になる国では、それは無いのと同じになる。

 

金が貨幣の国で、僕は葉っぱをたくさん持ってます!これは元の国では貨幣でした!本当なんです、信じてください!なんて言われて、誰が取引に応じるのか。

それが、僕のレベルが下がった理由だ。

 

 

「それにしても魔法使いの学校か…」

 

 

果たして狭間の地では知力初期値という、こっち換算だと脅威のかしこさ99だった僕でも魔法は習得できるのだろうか。

かしこさ3桁ないのはやばいわよ。

何せこめっこちゃん(五歳)のかしこさ170より低い。

 

 

僕には根本的に魔術の才能がなかった。

それを僕は狭間の地で思い知った。

 

そもそも元の世界でなかった素質が、狭間の地に来て急に芽生えるという都合のいいことがある筈もないと言われればそれまでなのだけど、僕は狭間の地で魔術を教えてくれるという人物に出会ったとき結構期待していたのだ。

 

 

『私から魔術を学んでみないか?正直、あまり向いてないようには見えるが…なに。私は優秀だからな。ただの暇潰しとはいえ迷える褪せ人を導くのなんてちょろいもんだろう…たぶん』

 

 

『たぶん?』

 

 

狭間の地はステータス至上主義だ。

これは、元の世界とレベルやステータスの概念が異なる狭間の地で、しばらく自分の変化について調べてだした結論である。

ただ武器を扱うにしても、十全に扱うには相応のステータスが求められる。

いわんや、祈祷や魔術といった魔法の類いなら尚更だろう。

 

だからこそ、僕は期待した。

愚かにもしてしまったと言い換えてもいいだろう。

 

これ、僕にもワンチャンあんじゃね?

理力上げれば行けるんじゃね?

フゥー!今日は焼き肉っしょー!

 

そんな都合のいい夢を見ていい気になっていた僕の姿は、とんだ道化だった。

 

 

とある引きこもり系教えたがりマッドサイエンティスト魔術師に師事したことで、僕はそれを痛感することになった。

 

僕はその師匠に少なくないルーンを支払い、それを対価に魔術のいくつかを教えてもらった。

結果として。

 

 

『あの…使えないんですけど。魔術のまの字も出ないんですけど』

 

 

『…?それはそうだろう。知識があり、扱うための理力があり、それで魔術が扱えるのなら学院の者たちはとっくに理力をカンストさせている。違うか?』

 

 

『詐欺じゃねえか!』

 

 

今思えばまともに授業していたはずなのに、『ここをこう、ギューンとだな』とか、『ギャキィッ』とか授業中に師匠が口にしていたが、たぶん魔術を扱う才能がなかった故に脳が理解できずにそれっぽい音声に勝手に変換していたのだろう。

 

ホラーか?

 

まぁ要するに僕は魔術を根本的に理解できずに、扱うことができなかった。

ウキウキで14まで上げた僕の理力は、後に生まれ直しのお陰で無駄にはならなかったけど、魔術を扱うという目的のためという意味では無駄骨だった。

 

 

『あなたを詐欺罪と男心を弄んだ罪で訴えます!理由はもちろんお分かりですね!?』

 

 

『ふむ…司法なんてものは当の昔に破綻していたと記憶しているが』

 

 

『いいですねッ!!!!』

 

 

『…はぁ…わかったわかった。わかったからとりあえず手を離せ。…おい、こら。服を離せ?泣きながら私にすがり付くんじゃあない!やめ、やめろぉー!私の輝石頭に手をかけるな!やめてぇ!脱げちゃう!』

 

 

───とりあえず輝石の魔術の才能はないようだから、私の心当たりを紹介しようじゃないか、とすがり付く僕を魔法でぶっとばしながら、服も呼吸も乱したその一言で師弟関係は一旦終わりを告げた。

セミの一生よりも短い。

 

その後もダラダラと関係が続いていたのは、何故だろう。

たぶん師匠も僕も互いの寂しさを埋めたかったんじゃにだろうか。

少なくとも、メリナさんと師匠で出会う順番が違ったら僕の方から師匠に頻繁に会いに行ったりはしなかったと思う。

 

 

たらればな話は一旦置いておくとして、血の涙を流して本気で悔しがる僕にドン引きし、それでも心当たりを紹介してくれた辺りたぶん最低限いい人ではあったのだろう。

…いや、あの人の末路を考えると、探求の邪魔だから早く追い出してしまいたかったのかもしれない。

 

結果として、会えるものなら会ってみろと紹介された場所こそが、スリーシスターズという。

後にそれなりの付き合いになる第二の師匠であり、それなりの付き合いとなる「魔女ラニ」様の住み処であり、僕はボロボロになりながらもなんとかたどり着いたのだった。

 

 

『誰だ、ドラゴンを放し飼いにしているバカは!僕が説教してやる!』

 

 

…まぁ、当たり前のように氷の魔術も使えなかったんですけどね。

 

ただ、知り合ったばかりのぶっきらぼうな狼男が本気で心配するレベルで気落ちした僕を哀れんで、ラニ様が「氷結壺」という儀式壺を使ったなんちゃって魔術を教えてくれたので、辛うじて収穫なしという結果に終わらなかったのは、不幸中の幸いだろう。

 

たぶん。

どうなんだろう。

その授けられた知恵の代価として西から東へ、果ては地下世界のその先まで使いっ走りとして扱き使われたのでプラスマイナスで言えばマイナスかもしれない。

 

 

 

 

「今日はうちのクラスに短期の転校生が来てくれた。多少複雑な事情もあるが仲良くしてやってくれ。じゃー、入ってこい」

 

 

教室の前で待機していたところ、中から先生に呼ばれた僕は、横開きの扉を開けて中に足を踏み入れる。

 

 

「ドーモ。紅魔族の皆=サン。ヴァンです。…じゃなかった」

 

 

郷に入っては郷に従え、という言葉がある。

さっさとクラスに馴染むにはこっちの方がいいだろう。

 

僕は徐に足を半歩開くと共にローブを翻す。

 

 

「我が名はヴァン。異世界からの来訪者にて、これから皆と共に知恵の探求に励む者…!」

 

 

どうしよう。

思っていたよりも恥ずかしい。

 

自分の白い頬が急激に熱を持っていくのがわかる。

顔が熱い。

普段薄い血の気が一気に巡ったせいで頭がくらくらする。

 

 

「どうぞよろしく…」

 

 

紅魔族が根が善良でよかった。

ぽしょり、と最後に付け加えた僕の挨拶に、暖かい拍手が迎えてくれた。

感動して涙を流している子までいるのは少し大げさな気もするけど。

 

 

「うんうんいい自己紹介だった。まさか里の外の人が我々の風習に歩みよってくれるなんてな…」

 

 

自己紹介が無事に終わったことに、ない胸を撫で下ろして教室を見回して、一人の少女と目が合う。

そして、同時に互いを指差した。

 

 

「「ああっ…朝の!」」

 

 

「───いちごパンツ!」

 

 

「───失礼な少年じゃないか!」

 

 

教室が静まり返る。

互いを指差して叫んだ僕たちを白けたような目で見ていためぐみんが、沈黙した空気に耐えかねたのか口を開いた。

ありがとうめぐみん。

転校初日で滑り散らかすところだった。

 

 

「いや、二人とも知り合いですよね。あるえもヴァンも何してるんですか。というか少年って…何故か違和感ありませんがヴァンはれっきとした女の子ですよ」

 

 

れっきとした?

 

 

「いや、転校生ならこれは嗜みかなって」

 

 

「うんうん、素晴らしい演技力。やはり私の目に間違いはなかった!」

 

 

ドヤ顔をする僕たちに、ゆんゆんは知り合いと思われたくないのか顔を伏せて一切こちらを見ようとしない。

前回、僕とあるえのせいで自分がめぐみんに恋してるという勘違いをさせられたのがトラウマになってるのかもしれない。

 

申し訳ないとは思う。

だが僕は謝らない。

いつかその葛藤を乗り越えて、めぐみんとの百合ルートに突入してくれると僕は信じているからだ。

 

 

「唐突な転校生は通学路で同じクラスの女子生徒とぶつかってパンツを見る。常識だろ?」

 

 

「どこの世界の常識ですか!」

 

 

机に手を叩きつけるめぐみんとしては、あんまりお気に召さなかったらしい。

教室の他の子たちも、ついていけないのかぽかんとした顔をしている。

 

…仕方ない。

あるえが腹案として用意していた、僕のとっておきを披露することにしよう。

 

 

「───思い…出した…!君は僕の前世、破壊の悪魔バルバトスの姫君…!ああ…こんな、こんな奇跡があるなんて…!」

 

 

僕の目の端から美しい涙が一筋流れ落ち、めぐみんに近づいてそのまま抱きしめる。

 

まぁ身長は若干僕のほうが低いが、めぐみんも低いのであまり酷い絵面にはなっていない。

腰に手を回し、不出来なお姫様抱っこのような形で見つめ合う僕たちは、まるでお伽噺のヒーローとヒロインだ。

 

体は少女と少女だけど。

 

 

「会いたかった…!僕の…僕だけの愛しの君…!」

 

 

「「きゃー!」」

 

 

ぼんっとめぐみんの顔が一気に赤くなり、教室も女の子たちの黄色い悲鳴でにわかに騒がしくなる。

 

勿論悪い意味での悲鳴じゃない。

たぶん。

 

 

「な、な、な、な…!」

 

 

なんだか満更でもない反応をするめぐみんに、僕は調子に乗って言葉を追加した。

すぐ調子に乗ってしまうのが僕の悪い癖。恥の多い人生を送っている割に、恥を知らなさすぎる。

学習能力セロかよ。

さすが知力初期値。

さすヴァン。

 

 

「僕と合体しよう」

 

 

僕はキメ顔でそう言った。

 

 

「…!この女最低です!」

 

 

僕の腕の中で再起動しためぐみんが、僕から一気に離れる。

めぐみんがキレた辺りで、担任の先生が僕らに声をかけてきた。

 

 

「おいお前ら、そろそろ席につけー?」

 

 

「そんなことよりもっと注意するべきことがあるでしょう!」

 

 

「注意…?ああ、そうだな。───避妊はしっかりな」

 

 

「女同士で妊娠するわけないでしょう!」

 

 

この先生ろくでもないな。

最高かよ。

 

 

「かしこま!」

 

 

「あんまり調子に乗ってると私の父に言いつけますよ?」

 

 

「やってみせろよ、めぐみん!僕の必殺の黄金砕き(蹴り)で返り討ちにしてやるよ!」

 

 

「ふ…父のなんていくらでもくれてやりますよ!」

 

 

「…いや、そこは娘なんだから守ってやれよ。それに最初はめぐみんものりのりだったじゃん」

 

 

「…まぁ心揺れる設定ではありましたね。変な転校生としての常識とやらよりはずっと」

 

 

「ちなみに僕は最後の戦いで勇者に破れ、君は勇者と結ばれてハッピーエンドだ」

 

 

「バッドエンドじゃないですか!」

 

 

「好きな人が幸せになるならOKです」

 

 

とりあえず、自己紹介という意味でならもう十分僕がどんな人間なのか理解してもらえただろう。

 

 

「ま、よろしく!」

 

 

こうして僕の学園生活が始まった。

 

 

「ちなみに、こいつはこないだまで牢屋にぶち込まれていたが、今はそけっとの占いを信じて釈放されてる形だ。仲良くしてやってくれ」

 

 

「先生無理です」

 

 

「大丈夫大丈夫。僕がなにかやらかしたら無職柱のぶっころりーが腹を切るから」

 

 

「なんで!?」

 

 

次回、魔法使いの学校に入学したのに馬鹿すぎて一つも魔法が使えない件について───【アズカバン直通編】───始まりますん。

 

 




最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。

皆さんの暇つぶしとして最低限のクオリティを維持するという初志を貫徹できるように今後も頑張ります。

あと作者の心に優しい評価と感想下さい(乞食)。
はい嘘です。欲張りません。 
いつもこの恥ずかしい妄想小説を読んでくださって本当にありがとうございます。

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