なんと十二話目です。
アニメ1クール分です。
そして、今回は幕間的な物です。
設定込みで思いついたけど話に差し込みづらいな…って話を、ぶつ切りで短編集みたいにしています。
時系列もちょっとばらついてます。
●何でも入る魔法のポッケ
「めぐみんってその体にポケットみたいな収納でもついてんの?」
「なんですか急に。セクハラですか?」
じゃん負けで奢るという賭けを持ちかけられ、あっさり負けた僕のお金で食事をするめぐみんに、僕は問いかけた。
僕は運勝負じゃ部が悪すぎるんだよな。
レベルが上がってなんとか三桁に到達したかしこさと違って、幸運はいまだに二桁を低迷している。
「や、その小さな体に槍とか短剣とかも収納できるのかなって」
「やっぱりセクハラじゃないですか!…んぐ!?」
「ちがわい!誰が貧乳爆裂女なんかにセクハラするんだよ!カズマさんくらいだろ、それは!」
机をばんっ、と叩いてとんでもないことを叫んだめぐみんの口に、手元の唐揚げをぶちこむことで黙らせる。
「…いや、そうじゃなくてさ。紅魔族なら武器とかアイテムとか、大きな鞄使わなくても、魔法とか無限収納バックとかで持ち歩けるのかなって」
「そんな便利なものがあれば、今頃もっと普及してますよ」
「やっぱりそうかー…」
狭間の地では、鞄を持ち歩かないのが一般的だ。
こちらの世界でのように複数のスキルを使い分けるのではなく、戦技をセットした複数の武器を持ち歩いて場に合わせて武器を使い分ける。
武器だけではない。あそこでは何処にしまっているのか、アイテムや矢束まで体の中に閉まってしまうのだ。
そして、祈祷や魔術も記憶スロットという物にセットすることで、スキルポイントを消費せずに使うことができる。
???????
僕の体はそれなりにまぁ普通ではないが、収納なんてものは存在しないし記憶スロット何て言うロボットかなにか?みたいなものも持ち合わせていない。
ラニ様があれやこれや理屈をつけて教えてくれたが、結局
『ほら、ルーンの力を応用して出し入れしてみろ』
『わ、わかんないっぴ…』
となって、泣く泣く狭間の地では増えないスキルポイントを使って戦技やら祈祷を覚えるはめになったのだった。
一応レベルが下がった今でも、狭間の地で取得したスキルは冒険者カードに記載されているし、こっちでも使えるのが唯一の救いだろうか。
そんな僕が旅を最後まで続けれたのは針子のボックの作ってくれた【魔法の鞄】のお陰だ。武器は2つ、遺灰は3つしか収納できないものの、アイテムや素材は他の一般褪せ人と同じように収納できるという優れものだ。ありがとう。
「それに魔法の鞄なんて持ってたら命狙われたり、変な疑いかけられたり。厄介事に巻き込まれるのは目に見えてますよ」
ただ、この鞄は他人に見せびらかすのはやめておこう。
●安楽少女ハンターってなんか響きやばくね?
アクセルの街。
なぜかレベルの高い男性冒険者が意外と居たりする駆け出し冒険者の街。
エルロードから帰還して、カズマさんやアクア様への挨拶も兼ねてアクセルの街に来て二週間。
僕も結構この街に馴染んできた方だろう。
結構な数のクエストもこなしてきたし、僕もようやくレベル相応の冒険ができているのではないだろうか。
───アクセル付近の森に根を張る安楽少女の親玉の討伐、下水道のネズミ退治と清掃、安楽少女の討伐、協会に住み着く元プリーストのゴーストの討伐、安楽少女、アクセルと他の街を繋ぐ街道に住み着いた初心者殺しの討伐、安楽少女、安楽少女。
…安楽少女の討伐が多いのには、特に深くもない訳がある。
安楽少女は典型的な人間の庇護欲と良心をくすぐることで生き残っているタイプのモンスターだ。
つまりは基本的に敵を殺害することに良心の呵責がない僕からすれば、カモでしかないというわけで。
塩漬けクエストとなっていた安楽少女関係のクエストに何度も駆り出されるということになったのだ。
とはいえ二週間もギルドの強制でクエスト漬けの毎日だったので、結構精神的に疲れた気がする。
「疲れた。アクセルの街ってクソブラックだな…」
「失礼なこと言わないでくださいね?あなたが問題を起こしたから、奉仕活動としてクエストをお願いしてるんですから。清掃とか、お金にならないものでもよかったんですよ?」
「ウス。あざまーす。反省してまーす」
そう、そもそも僕がこの二週間こんなにも塩漬けクエストを積極的にこなしていたのは、ギルドの命令があったからだ。
理由は、僕が見通す悪魔との初遭遇でやらかしたから。
『初めましてだ、我が同胞を一人で殺しきった冒険者よ!フハハハ!まさか我輩が冷や汗をかくほどの炎を内に秘めているとは恐れ入った!汝、不滅となって火ではなく自身の貞操の番をしている初恋を拗らせた男よ!くれぐれも、その力の使い方を見誤らぬことだ。おっと、その殺意は見当違いであるな。吾輩は街を守るいい悪魔なので、攻撃する必要はない。貴様が自爆するのは勝手だが、その結果アクセルの街が滅びましたでは困る。いいな?自爆だけはするなよ!』
という前降りを頂いたので、その悪魔と一緒に空で自爆した。
怒られました。
「延長しても良いんですよ?」
「やー!やっぱりルナさんは美人で気遣いも出来てすごいなぁー!憧れちゃうなぁー!何で結婚できないんですか?」
ご機嫌を取るために思いつくまま喋ってたら、ペナルティ期間が延長した。
●臣下ゼロ人
「ぐえー疲れたぁ…」
「えっと大丈夫?」
「ああ、ボッチ先輩チース」
「いきなり失礼すぎない!?」
追加ペナルティでさらに忙しい日々に疲れ、崩れ落ちるように腰を落ち着けたテーブルに座っていたのは、アクセル一の孤独なシルエットの持ち主、紅魔族のゆんゆんさんだった。
というか普通に座るまで気づかなかった。
「…ヴァン君だってパーティー組んでないよね?」
「今のところ組んではないですね」
僕の場合うっかりすると、腕とかポロリしちゃうしあまり団体行動は取りたくない。
王都では目撃した人が胸に秘めているから、大騒ぎにならずに済んでいるのだ。
思い返すと、狭間の地でも僕は臣下ゼロ人で、他勢力と協力して狭間の地を運営していたし、一人の方が性に合ってるのだろう。
「それに僕にはこいつらがいますから」
りぃん、と腰に吊るした鈴をならせばはぐれ狼たちが僕の足元に出現する。
彼らの頭をなで、テーブルの上のステーキを皿ごと床におく。
ちなみに今魔法の鞄に入れて持ち歩いているのははぐれ狼と霊クラゲのクララだけだ。昔は【ラティナ】さんも連れていたのだけど、弔ったのでもういない。
「精霊…!」
「…撫でます?」
むしゃむしゃと肉を平らげていく彼らを見て目を輝かせるゆんゆんさんは、年相応だ。
そう、こっちの世界に来て遺灰って幽霊とかそういう扱いになるのかな?と心配していた僕だったが、どういうわけか【精霊】という判定になってるらしく、大っぴらに使用していても問題ない。
精霊というのはまぁ、自然が形になったりとかいろいろあるが、ターンアンデッドの効かない霊体はとりあえず全部このカテゴリだ。
なんと言うご都合主義。
そのあと、酒場で精霊とはいえモンスターを出したことを注意しにきた他の冒険者を、うちの狼たちの肉球で撃退した。
●ありのままの報告書
ついにペナルティ漬けの毎日を終え、久しぶりに昼頃に起きてギルドの酒場に行くとダクネスさんがホールスタッフとしてアルバイトしていた。
貴族なのに?と思わないでもないが、いろいろあるのだろう。
アルダープが捕まって、急に父親が領主になったりして、なにか思うところがあったりとか。
それにしてもダクネスさんか。
あんま喋んないんだよなぁ。
めぐみんはカズマさんが屋敷に引きこもって冒険にいかなくて暇だと定期的に僕に絡んでくるし、アクア様はこないだちょっとした相談事をしてから割りと気にかけてもらっている。
そしてカズマさんとは、最近よく会ってる気がする。これは間違いなく互いにとある喫茶店の常連だからだろう。
『サキュバスのお姉さんって最高だよな』
『わかるってばよ…』
等、頭の悪い会話をしながら、喫茶店で駄弁ることもしばしばだ。
とはいえ、僕はまだ未成年なため、サービスの利用はサキュバスのお姉さん達に止められている。
…話を戻そう。
そんな感じであんまり一対一で話したことのないダクネスさんと、僕は少し話してみることにした。
「ダクネスさーん」
「ん?ああ、ヴァンか。一緒にいいか?今はどこも混んでてな…」
「勿論です」
昼休憩に入ったのだろう。
先程まで着ていた給仕服ではなく、簡素でいて上品な軽装に身を包んだダクネスさんは、本人的には地味な格好をしてるつもりらしい。
まぁもう、みんな貴族って知ってるから誰も気に止めてないか。
「それで、なんで給仕なんてしてたんです?また借金ですか?」
「いや、そうではないさ。ヴァンのお陰で、我が家が負担した洪水被害の弁償金も帰ってきたし、パーティーとしての借金ももうない。…改めて例を言わせてくれ。本当にありがとう」
「じゃあ変態過ぎて勘当されたんですか」
「…まったく。カズマのようにとは言わないが、誉め言葉と感謝は素直に受け取っていいんだぞ?照れ屋め」
「…は?照れてないが?」
「ふ…そういうことにしておこう、うん。それで、本題なんだが」
なぜか大人な対応をしてくるドMクルセイダーにいらっとしつつも、話が進まないので口をつぐむ。
これは決して照れてるからではない。
「うちのパーティーがアイリス様と会食することになったんだが大丈夫だと思うか?」
「……」
悩みが思ったよりも深刻だった。
そういえばこないだアクア様に宴会芸のために初心者殺しの捕獲を依頼されたけど、もしかしてそういう?
「ヴァンは王女様と懇意にしてると聞いている。そんなお前から見てどうだろうか…」
懇意というか、なぜか姉を名乗ってくる仲というか。
「まぁ、ほら。あ!あれですよ。僕がもう報告書出してるので、大丈夫だと思いますよ。王女様も知ってるはずです。ありのままの皆さんを報告したら、王都のお抱えの戦力として抱え込むって話は立ち消えましたけど」
「なに?」
「まぁ、裁判中に僕が集めた話なので多少古い情報ですけど」
■報告書───────
│
汚染されたアクセルの街の水源の湖を彼らだけで向かったにも関わらずたった一日で浄化、魔王軍幹部【ベルディア】の撃破、伝説のリッチー【キール】の浄化、そして【デストロイヤー】の停止という功績を半年という短期間で達成しているパーティーについて、各メンバーについて敬称略で報告する。
・アークプリーストのアクア(本名?)
彼女はデュラハンの死の宣告の解呪や複数人の大規模回復、蘇生など高い能力を持つ。
しかしアクシズ教のご神体である女神アクアを自称しており、墓地に結界を貼って街で悪霊騒ぎを引き起こした他、魔王軍幹部ベルディアの撃破に多大な貢献をしたものの、その際に街に洪水被害を引き起こし多額の借金を負うことになっているなど、頭脳面で重篤な問題を抱えている。
日常においてもその問題点は遺憾なく発揮されており、本人は明るく善性を持つ女性ではあるものの、よかれと思ってしたことが厄介事を引き寄せ、リーダーであるサトウカズマ殿が対応するというのが、ある種のお約束となっているようだ。
・アークウィザードのめぐみん
彼女は優秀な紅魔族であるものの爆裂魔法のみしか使えないし覚える気のないという凄まじい一点特化の魔法使いである。それだけなら運用次第で活躍することは可能かもしれないが、彼女は喧嘩っ早く爆裂魔法に関して堪え性がない。
「1日1爆裂」という趣味を持っており、アクセルの街の防壁の工事や草原の埋め立てなどの事業が多い原因となっている他、生態系にも変化が生じている。最近では街中に響く轟音と揺れは風物詩として受け入れられつつあるのは彼女の愛される人柄のお陰か、それともアクセルの街の特異性だろうか。ただし、彼女はどこでも構わず爆裂魔法をぶっぱなし、警察による一時的な禁止令にも従わないなど他のメンバー同様あまりにも強い我を所持しているのを忘れてはならない。
・クルセイダーのダクネス。
本名はダスティネス・フォード・ララティーナ。今のところパーティーメンバーには本名を明かしてはいないようだが、関係は良好な模様。
流石はダスティネス家のご令嬢というべきか、凄まじい防御力を持ち、盾を持たずにベルディアの攻撃やキャベツの群れを真正面から何度も受け止めて他の冒険者を守っている姿が目撃されている。だが、他のパーティーメンバーと同じく欠陥を抱えており、具体的にはモンスターに敗北したいという欲望のために、攻撃スキルを一切取っておらず、攻撃が全く当たらない。根が真面目であり善良な彼女は彼のパーティーの中でも一番問題を起こしていないが、医療用スライムをいかがわしいものと断定し、貴族特権で勝手に押収したりしている。
・冒険者のサトウカズマ
彼は最弱職の冒険者でありながら、一癖も二癖もある上級職の彼女たち三人の手綱をリーダーとして握っており、パーティーで唯一の常識人である…と言いたいところだが、彼もまた他のメンバーに負けず劣らずなかなか愉快な性格をしていることがわかった。
街での噂を集めるとカスマさんやらクズマさん等と呼ばれており、スティールを使用して女性から下着を奪っていた、言葉だけで女性を泣かせていた等の噂が確認された。
とはいえ臨時で組んだパーティーにおいても、初級魔法によって【初心者殺し】を撤退させ全員を生還させるなど、得難い頭脳を持っているのは間違いない。
他にも魔剣の勇者をスティールを使って撃破したり、魔王による強化によって弱点である聖属性に高い耐性を得ていたデュラハンのディアベルが、流水を弱点としていることを見抜き即座に周りに指示を出すなどの活躍を忘れてはいけないだろう。
以上からもわかるように、彼らは全員特別優秀な点を持ち、優れた活躍を見せているものの、それを補って余りあるくせ者集団である。
彼らの能力が噛み合い、実力が十分に発揮された場合はとてつもない爆発力を生むが、普段の彼らはジャイアントトードにすら苦戦する弱小パーティーでしかない。この安定感の無さから、常に高い成果を求められ、規律によって統制される国お抱えの戦力としてはまともに機能しない可能性が高い。
割れ鍋に綴じ蓋的な彼らには、自由な冒険者こそが相応しい。
王都の戦力として抱え込むよりは彼らにはのびのび活動してもらった方がいいだろう。
…というのは建前で、正直ダスティネス家のご令嬢も含めて、アイリス様の教育に悪すぎる性格をしているので遠ざけるのが吉。ただでさえ魔王軍の襲撃で眠れない夜を過ごす国民のためにも、爆裂魔法使い、自称女神、鬼畜冒険者、ドMクルセイダーを呼び寄せて街を混乱に陥れるべきではない。彼らがアクセルの街で活動を初めてから警察やギルド職員の仕事が倍忙しくなくなったことも含めて考えれば、尚更に。
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「これは…いやしかし事実しか書いてないし…うう…」
なぜか安堵したような、困ったような複雑な顔をしたダクネスさんは、頭を抱えていた。
「ま、あの人珍しい物好きなんでセクハラかましたり、爆裂したり、宴会芸で消しちゃいけないもの消したりしなけりゃ大丈夫だと思いますよ」
慰めるように肩を叩くと、僕はその場を後にした。
ダクネスさんが正気に戻った時に、説教されるかもしれないからだ。
最後まで読んで頂き誠に有難うございます。
今回で毎日投稿は終わりになります。
次回からはのんびり投稿させて頂きます。